2003.3.8 丘珠
 眠いんである。昨日に続き、また4時前に起きた。昨夜は少し雪が降ったようだから、これを逃す手は無かろう・・・・・でまた、 ササラ電車に会いに、凍結した道をイソイソと。 さて、丘珠はどうであろう? どんなに頑張っても地下鉄は6時を回らないと走ってくれず、 空港へ着くのもそれなりの時分。YSの身支度が終わってしまわないうちに着きたい身としては、これはなかなか微妙なモノがある。

 8時だの9時だの回らねば入れぬどこぞと違って、既に開いてる送迎デッキへ出てみれば、やはり土曜日、早くからギャラリーがちらりほらり。 プロストラップな人、超望遠な人・・・・・交わす会話の感じから、お馴染みさんであろうか。そのうちこれまた顔馴染みらしき女性が現れて談笑。 ふぅーむ、ヒコーキな女性というのも、それも撮影側でたまに見かけたりすることはあるのだけれども、ふむふむ撮影側となると、線路端で見るそれと、 そう遠くもなさげ。その後彼女は稚内行きへと乗り込んで行った。昨日の私と同じパターンか。

 さてお目当ての・・・・・正面のJA8744は既に身支度をしていて、もう1機、エプロンの端にいるJA8761はというと、 ダッシュ8と並んでうっすらと雪化粧。背後の雲の間からうっすら光が差し込んできている。くぅぅ。今回やっとの雪化粧、それも僅かなものだけれど、 それだけでもめっけもの、か。そしてこれがきっと、最後の機会・・・。

 そのうちダッシュ8達が正面へ移動したり、その雪落しを始めたりと、小忙しくなるエプロン。JA8761も正面へ来たら雪落しシーンだな、 と心待ちにしていると、作業車が怪しい動きをする。正面のダッシュ8の片方がまだ済んでいないのだが・・・・・あややや、エプロンの端で、 作業を始めてしまった。超望遠で追っても、これはちと苦しい・・・。デッキのギャラリー一同、これを狙っていたらしく、溜息が漏れる。 それを見越してのアレかという見方は果たして穿ったものなのか・・・・・実際鉄道方面で、大勢に勝手にスナップされるのを現場サイドで迷惑していたらしく (そら監視されているようなもんだし、乗客からも苦情があったのカモ)、「人は撮らないでください」由の張り紙が出た例も、あった。 撮る側として、ちと考えておきたい問題では、あったが・・・。それに丘珠の雪落しは、雑誌で煽に出てしまったし。

 ともあれ、見られただけラッキー、ではある。状況の中で最善を尽くすしかない。雪落しは左の翼端から始まって、そして胴体中央へとかかる。 薄くなってた「AIR NIPPON」のロゴが現れ始め、やがて顔の方へと進む。融雪剤を吹き付けるタイミング、作業車のゴンドラの位置、 絵になる瞬間というのが、なかなか難しい・・・・・いきなしぶっつけ本番だし。そもそも出遅れているのである。それも縁。

 いつの間にかドアが開いてタラップが降りている、そこへ逆サイから吹き付けてる融雪剤がじょろじょろ垂れてきて、 こりゃ機内もびしゃびしゃになってんじゃないかと他人事ながら心配するも、結構大丈夫なもんなんだろか。尻尾の方を残して、とりあえず終わった風。 ここまでで、フィルム使う使う(汗)。

 そのうち、まずは函館行のダッシュ8が出発。空いたスペースへJA8761が牽かれて来て、昨日と同じく向かい合っての2機並び。 残ってた尻尾の雪落しにかかる。これも終わったところで、隣の中標津行JA8744が搭乗開始。除雪されたところを辿るように、 乗客の列・・・・・っとこれを撮り損ね。いつぞやの雨の日の傘の行列以来、悔しいねどうも。やがて中標津行出発。踏みしめた雪がタイヤに付くのを、 ひたすら追ってみたり。今回、積もった雪こそ散々見たけれど、雪の日の営みらしきものは、今回殆ど皆無だったと言っていい。出遅れた開き直りで、 口惜しさというほどのものは無いけれど、まあやっぱり、未練はあるか。それが細かなディテールを追わせるのかもしれぬ。

 次の稚内行きも見送ると、YS的には2時間ほど間があるのでデッキを降り、売店などチェックするもこれといってエポックはなさげで、 そんなことしつつつど−むへ移動。例のフェンス脇の丘から狙って、タキシング、或いは滑走するYSが積もった雪越しに見え隠れすれば、 結構雪国らしく撮れるのではないか、という魂胆である。除雪されてなくとも、一昨日の行軍からすれば、ケンケンパくらいなもんである。 着いてみるとつどーむは結構な賑わい。なるほど雪国にあって人々がスポーツを楽しむ施設なのだった。つどーむの中で小休止、寛いだところで、いざ外へ。 これが楽々でカンジキなど全く不要、丘ヘ上がる所は道が出来、丘の上はすっかり踏み固められており(笑)。先客も2、3人。

 ここで中標津からの便の到着を迎える。以前には考えられなかったことだが、YS的に次まで4時間も間がある。はてさてどうしたものか・・・・・ つどーむで荷物を預けさせてもらって、身軽になったところで、市電でも乗りに・・・・・。

 再びつどーむ。また丘で15:00の函館行を見送り、稚内からの便を迎え・・・・・風が出てきて、これまでケチって我慢してたカイロをここで出す。 暇なので走って飛んでは雪の中にズボッとはまってその深さ加減に一喜一憂、などということをしつつ待っていると、「こんにちはー」という声。 はて、と声のする方へ向くと、敷地の中からフェンス越しに自衛官氏。寒い中ご苦労なこったと思ったのか、「ヘリ撮ってるんですか?」と訊いてくる。 うーむ・・・・・彼は職業の誇りから、撮るなら陸自のヘリだろうと思っているだろーか?、旅客機への対抗意識があるのだろーか?、たまたま、 前に訊いた人がヘリと答えたのだろーか?・・・・・などと一瞬考えつつ、正直に「わいえすじゅーいちですぅ」と答えると、 「そうですか」で終わってしまった。うーむ・・・悪いことしたかな。

 やがて函館便が到着。青味がかってきた情景の中を降りる姿を撮り、今回最後の撮影となる、最終便をバルブせんと、再びターミナルへ。 果たして今日もデッキ追い出されないかと上がって行くと、なんとギャラリーがワラワラと。10人くらいいるだろか。なるほど今日は土曜日だった。 さすがに昨日最後まで粘っていたのは、私だけだったけれど。外は寒いから皆屋内側に篭り、これがなんともタイトな・・・ちうか濃いぃ(笑)。 皆バルバーなんだろうかとチラチラ装備を窺うも、三脚持ってる人が意外と少ない。独り、伸ばせば2m近い三脚な私、逆にチラチラと視線を感じ ・・・・・そういや「峠仕様」とか貼ってあるし(汗)。ときにヒコーキ撮るのに三脚って、フツーにスポッターやってる分には使わないか。 逆に、大技に出るでもないのに所構わず立てたがるのが、鉄連中(苦笑)。

 正面エプロンの3つの駐機スポットのうち、残りはあと2つ。稚内からのYSは寝床に入ってしまった。次の釧路からのダッシュ8が、 どちらのスポットに入ってくるか・・・・・これによって最終便の場所も決まる。やがてぶぅーんとダッシュ8の音。そら来た、 タキシングして来るのも待てず、表へ出て、地上で待ち構える作業員を探す。室内ではまだその便じゃないよ、 とばかりによゆーかましている人達・・・・・本当にいつでも撮りに来られる余裕なのかもしれなかったが、こちとら昨日は欠航喰らって、 後にも先にもこれっきり、なのである。そして鉄で培った経験というものがある(笑)。場所取りは何事も先手先手、先を読み、状況判断、 そして素早い行動。ぶっちゃければ早いモン勝ち、取ったモン勝ちである。そこは大人の譲り合いというものもあるけれど、 譲ってもらうことを当然の如く振舞うのは、はしたない。

 で、最後に残ったのは向かって左端となった。つまりここにYSが入って来る。すかさず送迎デッキの一番奥、角を確保、三脚を伸ばし、脚立を立て、 カメラを用意する。着陸まで僅かな時間だが、折から北風がこれまたが寒い。電池が眠ってしまってはという不安が頭を過ぎり、すかさず懐へ入れてカイロで温める。 やがて向こうを旋回してくる音。姿は・・・・・識別灯さえ見えない。しかしゆっくりと南へ回り込んでくるのが、窺えた。カメラを据え、 手順を確認する。機体が止まり、プロペラがまだ回っている間が狙い目。イメージではそうなんだが、果たしてどうだか・・・・・本番まで構図が決められず、 雲台は3ウェイでなくボールヘッドが良かったのだが、この寒さである、グリスが硬くなって、締め付けネジを緩めたままでもそれなりに固定してしまう。 ナルホド緩めっ放しでボールヘッドのように使える。よしよし。

 風はますます強くなり、びょおびょお吹き付ける。何℃か知らんが氷点下には違いない。素手で無いとうまく操作出来ないのだけれど、 カイロで温めても温めても、手をポケットから出した途端、鈍ってしまう・・・・・いよいよ着陸、焦らすような長いタキシングを経て、 ゆっくりと駐機スポットへ入ってきた。前が沈んで、停止。さー行くぞ!・・・と途端に、感覚が無いのを通り越して指先がカチカチに硬くなり、 ダイヤルの凸凹にさえ馴染まず、カスカス滑るは、不器用な人が箸で豆を摘めないでいるが如し。焦って指をグリグリ押し付けるも、これがまたカスる。 痛そうなもんだが感覚無し。マズイ。凍ってんじゃないか? カイロももう効かない。ああ、覗いてピントが合ってるのかどうかも分からない。 ズレちゃったかも知んない。レリーズボタンの感触が無い。プロペラはとうに止まってしまった。カメラを載せ換え、段階露光をしながら、もう半分パニクってる。 あとになって押し寄せて来た人々が三脚に当たったりしてるし。そうこうしながら、最後にデジカメで撮った分だけは確認出来たものの、 どうも手応えは芳しくない・・・・・あー。

 うーむ、参った。やはり北海道をナメてはいけない。

 後ろ髪を引かれる思いながらも、今日は帰らねばならぬ。散らかした荷物を片付け、栄町駅へ急ぐ。思い残すことは大アリながら、今しがたの高揚感か気分は軽い。 札幌で駅弁など買いながら新千歳へ。チェックイン済ませて駅弁食べて、AIR DO機上の人となる・・・・・雪に賭けてた今回だけれど、当初の目論見は尽く外した。 「成果物」という物差しで見れば、全滅と言っていい。先ほど霜焼けた指先が、ヒリヒリと痛む。しかしこれもまた愉しや。あーでもないこーでもないと走り回ってる間、 気持ちはずっと、YSに向いている・・・・・そんな時間を、過ごしに来たようなものだから。でもやっぱ、写真の出来は気になるケド。

 また、ANKのYSに会えるだろうか。残された時間はいよいよ少ない。1機くらい丘珠に保存されるのかな・・・・・機内でまどろみながら想ってみたり。