2003.12.12 佐賀
 佐賀である。アリがでかい佐賀である。松雪泰子の佐賀である。今回は佐賀から九州へ入る。実のところ佐賀とはタダナラヌ間柄にあったりする身なのだが、 しかし佐賀空港、どうすんだろなー・・・・・今回のような超割でもなければ、まずここへ飛ぼうとは考えぬ。やっぱ福岡から電車であろう・・・・・。そこへ今回、 ナニユエに佐賀なのかというと、まあ、その、なんだ、ANKのYS、JA8733に会おうと思ったのである。なにげにチョロQ化第一号の機体なのだなこれ。 ANAロゴだけど。

 例によって、出かけようとするところへまた色々と立て込んだ。ちびちび荷造りは進めていたものの、終電でどうにか帰ったへろへろ頭で始めた支度が捗るハズもなく、 着替えの都合で天候調査したりしつつ、例によってアレが無いアレはどこだと、そのうち寝ては危ないとなって、結局また徹夜である。 京急に乗って今回は余裕の羽田着、手荷物検査で待たされることもなく、そういや今日は平日だったのかと、 半ばバックレるが如く休み取った挙句の顰蹙モノなコトなど考えつつ、中へ。番号の示す通り搭乗口を目指すとどんどん端へ向かう。そのうち下向きの矢印が現れ、 今日は楽しいバス旅行(=沖止め)であったと知る。佐賀じゃ沖止めだわな。

 ANA451便の機材はA320。実は1軸車輪の軽快な主脚とほっぺの丸みあたり、仔リスのように可愛らしくて好きなんだが、 佐賀へはこれくらいで十分なのであろう・・・。バスが横付けしようかというところで、ちっさかねー、なーんたよんなかー、佐賀ぁなんかローカルしぇんやけんねー、 と結婚式か何かの帰りかもしれない人達が口々に言うのが聞こえ。常々思うにどうも佐賀の人々というのは、その地味なポジションを楽しんでいるようなフシがある。 福岡の隣が長崎だと思われようが、存在感なかもんねー、と余裕かましているのである・・・・・何かしらの自負がその余裕を生むのか?

 はさておき、そのA320に乗り込んで、やがて出発。まだ雨のぱらつく陽気の中、その水滴を振り切るように、34Rを駆ける。たちまち雲の中へ入り、 右へと旋回しつつ尚も上昇を続けると、ぼふっ、と雲の上へ出た。朝の陽光が機内を射る。遥かまで続く雲海に、今どこを飛んでいるのか見当もつかなかったが、 しばらくして、左下に富士山が見えます、との機内放送にそちらを見やると、ををを、雲海の中離れ小島のように、ぽこっ、と富士山。機は北側の裾野を掠めるように行く ・・・・・登山の際に、このコースを飛ぶ飛行機を何機も見上げたのだったが、とうとう、鳥瞰する側に来た。前回は鹿児島へのエンルートの読みが外れて、 右に座ったら逆サイで逃してしまったのだったが、今度は佐賀、ならばと左舷の窓側の席を確保したら、当たった。真っ白な頂に、あれは剣ヶ峯か、 大沢崩れかと見入っているうち、霊峰は間もなく、エンジンの下へ隠れてしまった。近過ぎるが故の、あっという間・・・・・しかし今回、なんだか幸先が良いぞ。

 いつしか雲も切れてきて、小牧空港らしきものが見えたり、瀬戸内の島々を眺めたりしつつ、再び雲の中へ。次に下が見えた時は、左へぐーんと回り込んで、 やがて海へ出た。有明海であろうか。東を向いているらしい。また左へぐーんと回り込む。長崎本線らしき線路が見えた。 一度航過してぐるーりと一周して降りるのかと思いきや、空港はまだ西にあったらしく、今度は海を左に見ながら飛び始める。有明海は敷物のように穏やかで、 薄曇りの光を優しく返す。田圃のような海苔の養殖場がうっすらと海面に透け、そこを小さな航跡が行き来している。ふと、数日前に見た諫早湾を巡るニュースが過ぎり。

 程なくして、A320は佐賀へ舞い降りた。滑走路の端でUターン。誘導路は無い。エプロンへと向かい・・・・・お、いたいた、トリトンブルーのYSが。 ボーディングブリッジを渡り始め、ふと右を見やれば、A320の鼻先の向こうにYSが見える。をを、これは乗らないと見られない構図(笑)、 というわけでぱちぱち始め。うーむ望遠も要るな、とごそごそ取り出して構えると、コクピットのクルーと目が合った(汗)。 そうこうしているうちに乗客も途切れてしまい、係員がこっち見ているのでそそくさと荷物受取へ向かう。

 再びフル装備に戻ったところで、まずは屋上送迎デッキへ。¥100ナリ。鹿児島は¥50であった。女満別も¥50であった。強気である。 そういや松本が¥100。強気な空港には何か共通点があったりするんだろか?(ぉ ・・・はさておき、いやはや佐賀空港、360°である。スバラシイ。 正面には滑走路とその向こうに有明海。振り返れば筑紫平野が広がる。市街からは離れおり、空がやたら広い。やがて今乗ってきたA320が、大阪へ向けて出発する。 そういやこの機体、ANKのロゴなんじゃん?・・・・・滑走路へ出て、東向きにタキシング。丁度YSの向こうでくるりと回り、そして離陸していく・・・・・ キラキラ光る海をバックに、ぱちり。

 さてと。

 YSである。空港ターミナルを出て、YSの待つ一角へと向かう。誰もいないその場所に、ぽつん、と佇むJA8733。そういえば、 所沢にいるのはJA8732である。各務原にはJA8731がいた。さーらーに秋に訪ねた但馬にはJA8734、そしてついこの間まで飛んでいた、 JA8735・・・・・レジ的に5連番の、YS達、か。で目の前のJA8733は、やや艶も失われているものの、晴れだした日の光に、 そして今日のフィルムはベルビア。フォローは万全(笑)・・・・・普通に佇まいを撮るのにも飽きてしまったのだが、それでも無い知恵を絞って、 あれこれと撮ってみる。困った時の魚眼も試したが、最早かなり陳腐(苦笑)。右舷にタラップがあるのが珍しい気がしたが、これは左舷側・・・・・ 鉄的には公式側(笑)の見栄えを考えたのかもしれない・・・・・ん、造り付けのタラップが邪魔なのかな?? そういや各務原のはどうしてたっけか。

 休日には機内へ入ることが出来るらしかったが、今日は平日、それは適わづ。また来る理由が出来てしまったような気もする・・・。(ぉ しかし、 今日はJA8733を独り占めである。独り昔語りを聞くような時間を、しみじみと楽しむ。冬の青い空と、キラキラの日差しの下で、流れる雲を見上げながら飛行機は、 空を懐かしんでいるようにも、見えた。

 なんだかんだで結構な時間を過ごし、ターミナルへ戻る。エスカレータは節電だかで停止中。これだけでも便数の程を物語る・・・。幸い土産物店は開いていて、 ここの緩〜いキャラクター「むっぴー」のキーホルダーやらを。むっぴー、無論、ムツゴロウと飛行機のかけ合わせなのだが、各地のこういうの、 飛行機がベースではどうしても似たり寄ったりになりがちなところ、その中で如何に主張をしていくか、そのへんの苦労の跡が涙ぐましい。 むっぴーTシャツの、売り物ではないらしい1枚がディスプレイされてて、よくよく見れば、はなわのサイン入り(!)。さすがご当地。今はこれしかないわね。 むっぴーのファンクラブというのもあるらしいので(笑)、申し込み用紙を頂戴。

 さて忘れてはいけない小城羊羹。小城の町には羊羹の店(メーカー)が犇き、味わいも店によって結構違っていたりするようで、 個人的にはあの駅から程近い角にある地味ぃ〜だった気がするお店が、幼少の時分より馴染んできた味だったりするのだけれど、 そこいらでフツーに売ってる羊羹が「こんなのぼそぼそしてて不味い」と、この甘党にして最初食べられなかったくらいだから、刷り込みというのは恐ろしい。 練りが違うとも、水が違うとも聞くが確かなところは知らぬ。・・・空港に出してるお店はネット通販もやってる所なので気楽に構えつつ、品定め。 試食の切り羊羹などご馳走になり、練りの方も昔は尻尾の方が密封してなくてあそこのカリカリが大好きでしたなどとしょーもない話をしていたら、 濃いぃ客と思われたか、時節柄もあろうが小城町の写真を纏めたカレンダーを、立ち去り際に下さった。でかいリュックに脚立に三脚という井出達に、 先方も気遣いながら差し出した風ではあったが、そんなものがあったかとこっちとしては有り難い限り、遠慮なく頂く。あらためて訪れたい・・・。

 バスに乗って、まるで弥生時代な風景の中を、佐賀駅へ。相変わらずぱっとしないの風情にほっとしつつ超割の特権「九遊きっぷ」 JR九州乗り放題¥3Kナリを求め、鳥栖へ出て「つばめ」に乗って一路、西鹿児島。

 1週間程前より、気象予報をチェックしまくっていたのだが、九州には傘マークが広がっていて、今回は空振りかと覚悟していたのであった。 そのうち傘が消え、雲マークの隣にお日様マークが、やがて曇り時々晴れは晴れ時々曇りになり、とうとう、雲マークも消えてしまった。

 天祐か?

 またまた晴れ男の気迫であろうか? 台風も避けて通った。既にモーゼか新田義貞の域。(ぉぃ

 西鹿児島でバスに乗り継ぐ。完全なる勝利を確信した私は、徹夜明けにも関わらず夜になってますます目を輝かせ、独りニンマリ。どう見ても怪しい。 今回用意は万全なのである。毎度お世話になる海上保安庁のページで、月の出を調べておいた。のみならづ、月齢を元に旅程を組んだ。 何がそうさせたのか? 前回の月をからめた写真が、駄目駄目だったからである。そういう思いをすると、ずっと引きずるタチだったりする。 我ながら粘着質である。そのための三脚であった。そのためのクイックシューであった。そのための、単体露出計なのであった。 我バルブ撮影ニ成功セリ! 電文を早まった気持ちも、今やよく解る。そんなヤカラを乗せて、バスは空港へとひた走る。

 鹿児島空港着。えっちらおっちらと荷物を引きずり、月の出を待つ。霧島連山越しに現れるので、その分少し時間がかかるハズである。 で、滑走路の向きがこうだから・・・・・ハタと気付いた。海保のページで調べて方位まで押さえておきながら、前回との方位の違いまで考えてなかった。 なーんか厳しい予感・・・・・素人の悲しさよ。お、見えた。YS達の止め場所をそれに合わせてくれるハズもなく、苦しいながらもどうにかバルブ。 しおしおしおしお・・・・・やや萎え。でも、負けないもん。今回の宿は空港の前のホテル。ネット予約の値段からいつも泊まるようなあっさりしたBHかと思いきや、 これがレストランに結婚式場まであったりするホテル。おやま。やや浮きつつチェックイン。しかしここ、 市内とのバスの往復にかかる時間と運賃を考えればかーなーり安上がりで、定宿の予感。レストランがもうラストオーダーになると聞かされるも、 何か買えば良いやと気楽に考えたらこれが中にも周りにも何も無く。不覚。ぐぅぅ。仕方が無いので部屋の冷蔵庫からカップの焼酎とつまみを引き出して、 ちびちびやって寝る。