2004.10.9-11 福岡
 初めて鹿児島空港を訪れた昨年の9月、立ち寄った福岡空港で、滑走路北端の先に咲くコスモスを見付けた。まだ時期が早過ぎたが、 こんなところでまたコスモスに巡り合う縁を想いつつ、咲き頃の再訪を独り、誓うのであった。

 あれから1年・・・・・再びコスモスの季節が、巡ってきた。先月の今月とカツカツなインターバルってのもまた厳しいものがあるのだったが、 もう来年のチャンスは無いかも知れず、背に腹は変えられぬ・・・。超割期間から外れつつ、超割料金+¥3K程度の安い設定のある便があるのが、 幸い。往路初便復路最終便、空港アクセスと寝起きがなかなか厳しいが、羽田に近い地の利を活かさぬ手は無い。

 軽井沢と横川の咲き頃なら大体覚えているのだったが、さて福岡となるとこれが、いつ頃なのか・・・・・カチカチと調べるも、 今ひとつよく分からづ・・・・・ましてや昨年と大分夏の加減が違ったし、どうも決め手になるものが無い。あとは直感で、まあこのあたりだろう、 と昨年の訪問より1ヶ月弱後を狙ってみる。ピークにドンピシャリは無理にしても、まあまあの咲き頃なら結構。それと同じ咲き具合でも、 散った後の花と蕾とではまた大分見栄えが違うので、どちらかというと前倒し気味の方が無難・・・・・後は風向き次第だが、 3連休張り込んで到着便は都合9便、RW16でアプローチも、1便くらいあるだろう・・・・・あるよな、きっとあるさ。

 んが。

 いよいよ今週末かという日の夜、TVでお天気キャスターが台風の発生を告げた。22号。あー、またですか・・・・・まだまだ南の海の遠くにいて、 小さい渦巻きでしかなかったそれ、もう秋だし太平洋高気圧もヘタってきて、こっちまで北上しないんじゃないか、 などとタカを括っていたのも最初のうちで、日を追うごとにその渦巻きは見る見る大きくなっていき、そしてモロにこちらへ突っ込んでくる気配。 最初は控えめに注意を促していたお天気キャスターも、そのうち「過去50年で最強」「外出は控えて」などと脅かし始める・・・・・ なんすかそれ(汗)。今年は幾度と無く週末を雨に台無しにされたが、まさに出発しようとする、その日の来襲。今度の敵は手強い。

 ふん、望むところである・・・・・自分は災害と無縁だろうという慢心と不謹慎100%をちょっとは恥じたりもするのだけれど・・・・・ 今回の往路は羽田0630発ANA981便。時間との闘い。叩かれる前に離陸しなくてはならぬ。ギリギリの直前横断、その際どさにある意味ソソるものを抱きつつ、 覗いたANAでは午前中なら大丈夫そうなコメントを出している。頼もしい。まあ飛べるのは飛べるのだろう。うまくすれば渦巻きを成層圏から高見の見物かと、密かに。

 今回お目当ては絞られているので、ISO400専用機、機内持ち込み専用機などといった欲張りをやめ、いつもからすればもう軽装。 やれやれ。しかしこんな空模様だから雨の備えをしなくてはならず、自宅を出るところからもう、大降り。まだ風が出てないのが救いではあったが、 最初の駅までであとは帰るまで使わないだろうと折り畳み傘にしていたものだから、これが結構濡れてしまい。

 はさておき、羽田空港に着いて、チェックインから淡々と進む。それが頼もしいやら、罠へ誘われるような不安があるやら。ANA981便は16Rへ向かい、 そして雲へと突っ込んで行った。今回も「あんだびーろくかよ!」なわけで、いつものように左舷窓側、今回も翼の後を陣取る。 雲の上へ出て、射し込む朝日が眩しい。さすがに富士山は拝めづ。延々と続く雲海は時に崖のように落ち込み、或いは複雑に湧き上がり、 その下はどうなっているのだろうとちょっと怖い想像をしたりするのだったが、衛星写真から想像するような台風の姿らしきものは、結局よく判らづ。まだ遠かったか。

 そうこうするうち、福岡着。海からではなく、コクピットからの案内によれば佐賀の辺りをぐるりと回り込む由。つまりRW34からアプローチなのだったが、 コスモスが咲いてる筈の一帯は北端だから、着陸間際に観察することは叶わづ。あとの楽しみにするか・・・。とりあえず脚立と三脚をロッカーに放り込み、 リュックひとつの身軽さ。さすがに午前中の徳島便は欠航とのことだったので、ちょっくら門司港まで、九州鉄道記念館を訪問。

 博多〜小倉はなにげに安い新幹線を利用。その復路、小倉のホームに入って来たのは0系「こだま」。既に東海道からは身を引いた0系であったが、 まだまだここでは現役。今走っているのは最終ロット近くだろうから、YSの最終号機よりも大分若い筈なのだけれど、博多までの僅かな間、 久しぶりにその風情を楽しむ。0系も行く先はそう長くない筈で、恐らくはJACのYSと前後するように、舞台から退くこととなるのではなかろか。 奇しくも同時代に生まれた、YSと0系。40余年の、共に働き続けた歴史。そして奇しくもまた、共に幕を迎えようとしている・・・・・ この国にあって、合わせてひとつの存在であるかのように。

 再び空港に戻って来て、さてコスモス・・・・・風向き的に今は逆っぽいが、ともかくまずは、現場を見なくては・・・・・止みそうで止まない雨の中、 えっちら、おっちら、ええと確かこの辺ではなかったっけか・・・・・

 え゛。

 トラクターだかなんだか、ソレと思しき辺りを何やらかき回してる。まさか・・・・・辺りを見回してみるが、昨年コスモスを見たのは、 やっぱりここだった気が・・・・・横ちょへ回り込んで、その刈られた草の山のようなモンを見ると・・・・・ああっ、ピンク色がチラホラ混じっている。

 うう・・・。

 まさか・・・まさか刈られているとわ。それを目の当たりにするとわ。先週なら間に合ったのか・・・・・なんという皮肉であろう。 雨なら我慢のしようもあった。多少濡れることなど厭わぬ覚悟であった。しかし、だがしかし、刈られてしまったのではどうにもならなぬ。 急所一突き。なにも咲き頃に刈るこた、ないじゃんか・・・・・公園整備事業とかなんとか看板にあるようだったけれど、所詮は他所ん家の都合。 解っちゃいるがつくづく、口惜しや。

 初日にしていきなし、終了。

 ああ、何にすがって生きて行こう・・・・・ともかくターミナルへ戻ることにする。近くの高台から俯瞰はどうかなどと、他のネタも色々考えてはいたのだが、 この空模様・・・・・あー、せからしか! 今日はもーしまうったい。国際線ターミナルとの連絡バスが丁度いたので、こいつに飛び乗る。 国際線ターミナルは昨年ちょっと前を通りかかったが、中は見ていない。次の機会もそうそうなさげなので、見物してみるかと。ついでに、 写真が撮れそうなら雨模様でも撮るとして・・・。

 送迎デッキへ出てみると、ここでもまたガラスが。福岡のデッキはどこもガラス、ガラス、ガラス。しかもここ、屋根が無かったりするものだから、 雨には降られる、視界は水滴だらけ、とどちらも裏目とゆー。本日最初の、鹿児島からの便は移動中に着いてしまったようだったが、 ガラスに張り付くようにして、頭上の梁のような構造物で雨を避けつつ、次の徳島からの便を、まずはぱちり。ターミナル前で2機並んだ所を、ぱちり。 NALの機を、ぱちり。どこか判らぬが外国からJALのDC−10が帰ってきて、ぱちり。鹿児島便と徳島便の出発を、ぱちり。 水滴だらけのガラス越し、しかも保護シートが貼ってあるのか心なしかボヤボヤな風味で、もうただただ、とりあえず撮りました的な。

 三脚を持って来たのは、ついでに鉄でもという魂胆で、こういう掛け持ちはある意味リスク分散にもなるものなのだったが、 台風直撃なものだからお目当ての「さくら」「はやぶさ」は運休・・・。昨夜は天候調査やらで結局徹夜、とっとと寝る。



 翌10/10。「なは」や「あかつき」は走っているので、朝も早よからこいつの到着を狙いに行く。「あかつき」にバルブかましていると、 横でカメラバッグを持った人が物欲しそうにしてる。おっとご同輩かなと場所を譲ろうとすると、鉄ではなくヒコーキの人らしく、今降りて来たのだという。 しかも聞けばYSがお目当てと。あらま。昨日の顛末を話そうとしたが、これからレンタカーで鹿児島へ行くのだがどうたらこうたらエトセトラ ・・・・・結局話しそびれ。大阪の方らしく、ならばと気になるJA8717のことを訊ねてみると、知ってるよぉこの間の台風で・・・・・ いやあの、まだ伊丹にいるのかなーって、そこが訊きたいんですケド・・・。最近与論へ行ったそうな。おや奇遇ですねえ。 取り出された写真を見せてもらう・・・・・うー、大島と区別がつかなんだ(爆)。滑走路脇ってのは、なかなか難しい・・・。 やはり送迎デッキへは上がれなかったらしく、一緒にぶーたれる(笑)。なんでも以前ANKのYSのクルーからハンカチにサインを貰って、 それが「エアライン」誌に載ったことがある由。わお。帰ったらチェックしてみよう・・・。

 今回、YS的にはもう、投げてしまった。止みそうな雨は予報をどんどん覆し一向に止まず、萎えた気分は回復することなく、 博多近辺をウロウロするかー、くらいのすっかりお気楽モードに。まずは香椎線に乗って、海の中道へ。 渡船に乗って戻ろうかとすると時間が早過ぎ、また来た道を引き返すしかなかったのだが、福岡空港16へアプローチする飛行機が、 雨に煙る博多湾を渡って行くのが見え。あ、なんか良い感じ・・・。昨年鹿児島から飛んで来た時の記憶が蘇る。写真的には、どうだろな・・・。

 午後は大宰府へ。四半世紀ぶりの(汗)天満宮の後、都府楼跡へ向かう。そろそろ止むかと思えば、そう思ったでしょとばかりにざざーっと降る中、 西鉄の駅からトボトボ歩いていると、背後からなにやら気配が。ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・ややっ、振り仰げば、YS! 鹿児島行きか!  あれま。ぶーん・・・。

 急に、呼び戻された心地・・・そうか。悪かった。よし。都府楼跡の開けた場所で、まだ徳島便が来るハズと、カメラを取り出す。 投げてはいたが、こうなれば撮るのである。次々とジェット機が上がってくる。福岡空港のRW16から、真っ直ぐ延長上であるらしく、 高度もあまり上がっていないところを見ると、意外と近いらしい。電車で20分やそこいらでは、そんなものなんだろか。iモードで情報を取ると、 既に出発した由。タキシングして、離陸して・・・・・そろそろか、そろそろか、と待っていると、ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・おっ、 来た来た。ただ雲に霞んだ機体を撮るだけなのだったが、かしゃかしゃ。ぶーん・・・・・。徳島へ向けてどこで曲がるんだか、真っ直ぐ、真っ直ぐ、 雲の中へと消えて行く・・・。



 翌10/11。大分へオプショナル・ツアー。ホーバークラフトに乗るんである。その昔宇高航路で国鉄の船を見たきりだったが、 ホーバークラフト、YSがらみで幾度か九州へ来るうちの、一度くらい絡めておきたいとは思っていたのである。しかし大分というのもなかなか微妙な場所で、 大分から九州入りして鹿児島へ移動というと、超割+九遊きっぷの組合せ技やらがあるにしても、これまで2度行った熊本からの場合と違ってこれが結構、 道程があったりする。さらにただ片道乗るだけで納得するハズも無く、乗ったり撮ったりウハウハしまくってから大分を発つことになるだろうから、尚更・・・。

 無論、出費は嵩む。んがしかし、今回メインであるハズのYS撮影は流れてしまい・・・・・その分フィルム代+現像代が浮くのだ、 浮いた分を大分への往復へ振り向けるだけなのだ、これでいいのだ・・・・・という独自の理論に基き、昨日思い立ってバスを予約。 バスなら「ソニックにちりん」の半額、往復で僅か、先のフィルム換算なら数本分に過ぎない。無論、ホーバークラフトをウハウハ撮りまくる本数など、 勘定に入れちゃいないのだが・・・・・いずれは来るハズなのだし。バスは都市高速に乗り、夜明け前の福岡空港を横目に進む。目を凝らしてみるも、 ここに泊まるYSは、いないんだっけか・・・。

 大分ホーバー基地へやって来た。ようやくにして、しかもピーカンの晴れ。こうなるとYSに未練が無いではなかったが、 ホーバーとの出会いを一発でキメる、良い舞台となりそう。まずは1便見送ることにして・・・・・ばぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・ををを、 まさしくプロペラの音! 乗り場へ横付けするところのようだった。動力こそ違えど、船でこそあれど、まさしくプロペラ機・・・・・待てよ、 ひょっとして、レシプロ・エンジンのプロペラ機に、初めて乗るのか?? ををを。やがて出発。それを海岸で見守る。スロープを滑り降り、 水飛沫を上げて海面を駆け出す。飛沫に虹が差す。くぅぅぅ・・・・・

 ホーバークラフト虹の中ぁ〜♪

 大昔のCMソングを、思わず口ずさむ。学研の図鑑に食い入った、幼き日が甦り・・・。

 大分空港ではSNA機が訓練しているようだったが、結局ヒコーキには目もくれづ。夕暮れ、帰りのバスを天神で降りる。界隈へ出ると、 頭上をジェット機が過ぎた。車輪は出ていないようだったが、ちょっと危なっかしく思う程に近い。しばらくするともう1機。もしやこれ、当たり前に飛んでいるの?  RW34へ回り込むのだろうけど・・・。中州方向へ歩きながら、音に振り返れば、深まりゆくグラデーションの中を、ジェット機がまた過ぎる。 YSならどう見えるだろう、そういえば福岡タワーからはどうだろう、などと考えつつぼんやり眺めるも、夕暮れの博多の空を飛ぶ便は、もう無いのだった。