2005.12.6 種子島
 段々住んでるような気分になってきたが、今回の訪問もいよいよ今日まで。さて起き出して外を窺えば、おっとこれは晴れそうだ。 今回朝日がまだお預けなのだったが、雪に月に朝日にと、夕闇の蒼を除けば、お目当て+αに恵まれたと言えまいか。右耳は相変わらずで、 周囲の気配が読めずもどかしいが、少々慣れみたいなモンも出てきて、どっちにしろ今日一日だけ、半ば諦めた。そう大事にはならんだろうと、 思うことにして・・・・・そもそもの風邪の方はというと、さすがに本調子ではないながら、3日前のへろへろぶりから見事V字回復。 休息どころか日がな一日動き回ってて、幸福感が免疫力を云々、てヤツですかな?(ぉ

 宿を引き払い、早速ターミナル逆サイへ。飛べないSKY機や、YS達が朝日を受けて輝く様を、ぱちり。手早く済ませて、クルマを空港駐車場へ ・・・・・今日は、ウハウハの種子島ツアーなのである。考えてみれば、今年はまだYSに乗っていなかった。最後の年を迎える前に、 一度は乗っておきたかった。クルマは朝一で返すテもあったが、料金は変わらんのだしまだ要ることになるかもしれないので、一応キープ。 尤ももしこの日欠航食らったらとか色々と、予め折込済なコトではあったが。でま、県営の駐車場も安いし・・・羽田とは比べたくないくらい。

 荷物置きっぱで軽装になっても良いハズだったが、種子島でもクルマを借りるので全部持って行く。荷物タグもそれだけ余計に貰える(重要)し・・・・・ にしても、今日はクルマを2台借りることになる・・・・・種子島では公共交通がアテにならないしタクシー乗るくらいならレンタカーの方が安いわけだが、 まあ、自分基準としては、これは大名旅行、大豪遊と言っていい・・・・・毎度ながら、丘珠でひたすらグルグル歩き回ってた頃が、遠い昔に思われ。

 種子島行朝イチの3761便は、YSだったのが昨日からサーブ340Bに交代している。承知の上での予約で、まあこれにも乗ってみたかったし。 ネット予約ではこの便の座席指定が出来なかった。クレジットカードをチケットレスの機械に突っ込んでみると、番号お任せの「通路側」しか選択肢が出づ。 むぅぅ・・・・・とりあえず発券しつつ、JACのカウンターで荷物を預けがてら、ダメモトで訊いてみる。しったらちゃーんとあんじゃん、 最後列と5列目にまだ残ってる由。おーし! YSの経験からして後じゃプロペラ機の実感に乏しいので、勿論5列目の方で変更。5C。 Aなら1列席だったのだが、窓側だけでも良しとするか。5列目というと思いっきり主翼にかかってそうだが、これもまあ、いいか・・・・・ときに、 アレですかね、予約で席を選べなかったのは、やっぱ小さい機種故の重量バランスがらみなんですかね?

 身軽になったところで、ターミナルを出てエプロンの見えるところまで歩く。建物の隙間から覗くYS。これを写真に収めようかとマゴついていると、 ぶぉーん・・・・・やややっ、福岡便が滑走してる音だ。よーしこの隙間から、2機からめて・・・・・ん、手ブレ補正が効かない!? シャッターが落ちない!? ・・・・・ぶーん・・・・・福岡便が過ぎて行く。こんなときに限って良い構図でやがんの。うぅぅ・・・・・パニクりながらようやく気付いたことには、 セルフタイマーに切り替わってやがった。EOS7、機内持ち込み専用機と化していてたまーに使う程度なもので、肩にある切替スイッチに気付かなんだ。 少々窮屈に扱うとすぐここを引っかけるのだが、そのことをすっかり忘れていた。そういえば前にもこんなコトあったじゃんか。ネズミ以下の学習能力。 うー、頭は依然、右半分真綿状態・・・。

 時間が逼っているのでイソイソとターミナルへ。そして、束の間の楽しいバスツアー。初乗りサーブは、JA8642。真っ先にバスを降りてパチパチと、 そして殆ど最後の方で乗り込む、いつものパターン・・・・・そもそも定員が少ない上に、平日とあってご同輩の類がおらずに浮きまくり(汗)・・・・・ 入ってみると、うわっ、これはまたタイトな。5列目の席を見つけて、スミマセンと窓側へ通してもらおうと・・・、

 ゴチッ!

 イツツツ・・・ホントにタイトな機内。

 機内が落ち着いて暫し、いよいよ出発。しょわわわわわわわわ・・・・・ををを、なんとも静かなエンジンとプロペラ。さすがに吹かせば、ぶーん、 と大きくなったが、それでもYSと比べれば静かなもの。座席は主翼の真ん中あたりで、音源からも近いのだが・・・・・ RACのダッシュ8でも感じたことだけれど、かえってYSの「煩さ」を知る心地。

 ぶぉぉぉぉぉんんんぉぉぉんんんぉぉぉんんぉぉぉんん・・・・・サーブは錦江湾を過ぎ、南を目指す。晴れてはいるものの雲が多く、 下界の様子は窺えなかったが、赤みの残る朝の光が雲を透かして機体を包み込んだかと思うと、抜けた空の濃紺と雲海とのコントラストを見せたり。 5C席からではバリ順光、露出抑えて色味を狙ってぱちり。

 CAのおねいさんが、絵葉書をくれた。子供の絵風味のタッチのイラスト、そこにはサーブとダッシュ8と、YSがニコニコ描かれている。 そして注目、いずれもしっかり最新のJALカラーですがな。サーブとダッシュ8は既に実物がいるがYS、退役まで僅かだが、果たしてこの色は登場するのか??

 眼下に海岸。いつしか種子島に差し掛かったようだったが、昨夜眺めた「YS11で空の旅」を思い起こしつつ、着陸にしては高度が高いなと思っていたら、 陸地を突っ切りまた海岸、そして左旋回に入った。空港の南側で島を横切ったらしい。種子島はとりあえず晴れてはいるも、少々雲が多いような気も。 予報では曇りっぽかった気も・・・・・前を見据えたようにサーブは真っ直ぐ高度を下げていき、商店の並ぶ道をかすめて、どすんずずずずずぶぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・。

 荷物を受け取り、丁寧にタグを剥がして(笑)、さてとお次はレンタカー。勝手知ったる大手などは支店が北の西之表にあり、 送迎だの何だのでえらいロスがありそうだったので、空港近くの地元の会社。シートの擦り切れ加減がなかなかの味わいを醸すアルトに荷物を放り込み、 いつもの旅の友、レーダー探知機(ぉをペタリ。いざ出発・・・・・まずは空港逆サイに回って、薬用植物栽培試験場、なる看板を横目に、 さっきのサーブを見送る。ここは金網が低く、脚立要らずのよゆーのよっちゃん。サーブは先程の着陸と同じくRW31での離陸、 滑走前の半逆光のギラリと、順光の後追いを、ぱちり。

 あらためて、いざ・・・・・ぶいぶいと南へ向かう。ここまで来たら、アレしかない。鉄砲伝来系も捨て難かったが方角違い、 2つの飛び道具の間に揺れるヲタクゴコロではあったが、とても島を南北縦断して巡る余裕は無く、無理に駆け足したところで散漫なだけだろうしと、 南に絞った。ジェットフォイル乗るなら自動的に西之表だろうし・・・・・左右にサトウキビ畑が広がり、次にはエメラルド色の海が見えた。ひゅー。 ヒーター全開窓全開、すっかりゴキゲンでドライブを楽しむうち、案内標識にロケットの絵が現れた。ををを。次にはロケットの形の矢印看板。 ををを。いずれもH-II(Aの前の)を模ってる。

 やがて「TNSC 種子島宇宙センター」の看板、いよいよ敷地内。ソレと思しき看板がある毎に記撮してるものだから、なかなか先へ進まづ・・・・・ 案内地図が見えて、目的地の「宇宙科学技術館」はというと・・・・・うへ、ずっと奥だ。実は見学ツアーを申し込んでおり、その集合時間が逼っていた。 やべぇ。足回りがふにゃふにゃのアルトでくねくね道を攻めつつ、どうにか駐車場に滑り込む。持って行く荷物を分けるのももどかしく、ギリギリで受付・・・・・ ツアー参加者は、他に家族連れが1組だけ。滅多に無い機会なので万全を期して1ヶ月以上前に予約をしていたのだったが、さすがに平日じゃこんなもんか。

 おねいさんの案内でワゴン車に乗せられて、いざ出発。そもそも予約をした頃は、H-IIA8号機の打ち上げ予定がペイロード都合で延びに延びている最中で、 一体いつ上げるのかが見えていなかった。ヘタに日程がかぶれば見学ツアー自体がキャンセルされかねない。その一方、 いやいやもしかすると打ち上げその日に当たったりして!?、などと能天気な期待も無いではなかったが、ともかくJAXAのメールマガジン取ったりして、 気を揉みながら今日の日をカウントダウンしていたのであった。で、おねいさんの言うことには、今回発射場の見学は割愛の由。8号機は未だ上がらづ、 要するに取り込み中ということなのだが、アレがとっくに上がってれば・・・・・とはいえつい先日9号機も搬入されてきてるから、やっぱ駄目だったか。 で、ロケットの丘で遠目に我慢することになり、こないだ燃料入れて試験した時は射点まで出してまた戻したんですかぁ?、 こんな海っぺりで塩害とかありませんかぁ?、などと訊きつつ、またワゴンに乗って、NASDAのロゴがそのままの錆び錆びな中型ロケット発射場 ・・・・・Nはこっちだったな!・・・・・を横目に、大崎第一事務所。建物の一室に通される。

 でっかい土管が、どーん、どーん、どーん。

 宇宙旅行協会か・・・。

 ああ、かなり前からやってたらしい・・・・・などと間口の狭いネタが浮かびつつ、出ましたさ、H-II7号機。「兄さん飛びたかったよぉぉ」 「弟ロケットよ、私が爆発さえしなければ」・・・・・って今度はまたギンギラネタかい。アレ、爆発しちゃったわけじゃなくて仕方なくて爆破したと思ったケド ・・・・・はさておき、思えばYS、スカイマークに、白くま、そしてH-IIと、今回ギンギラがらみのオンパレードであるな。九州ば来ん限りはしょんなかとですか。 3本見えるうちの2本が、7号機の1段目と2段目。もう1本は強度試験用だったものらしい。0号機ということか? 7号機の今後の扱いは未定らしいが、 元手がかかっているものだけに、使わないとはいえ色々難しいのかもしれない。どこぞの箱モノなんぞのように、¥1Kで売却ともいかんだろう。(ぉ  その色合いから、どこかのメーカーのスティックのりに見えて仕方が無いH-IIなのだが、これはPIFなる断熱材の色らしい。ふむ。放っておくとこうなると。 サンプルに触ると画材屋さんにある硬質ウレタンぽい。ということはあのロケット、指で押せばプスッ、といくわけだ。無論触らせてはくれないが。 一定の幅ずつぐるぐると噴きつけるそうで、あの微妙に波打ってバウムクーヘンのような風味も、これで合点。

 この組のツアー参加者が僅かというのは幸いだったかもしれない。静まり返った部屋の、抜け殻のような物体を前に佇み、その無念に想う。 このために持って来た魚眼で、ぱちり。自分撮り専用機ワイワイワイドで、ぱちり。

 お次は総合指令棟。あのコンソールの並んだ部屋。意外と小ぢんまり。おねいさんによると、ここに発射ボタンは無い由。 映画「ライトスタッフ」なんぞでは、それこそ「ポチっとな」とばかりにボタンを押していたけれど、今はそういうものではないらしく、 またここは情報を集約する場所で、発射台近くにも指令所があるらしい・・・・・そういや、爆破指令はどこから出すのか訊きそびれた。(ぉぃ

 ワゴンは宇宙科学技術館に戻って、解散。中の展示物を見学。実物やら模型やら、ロケット設計シミュレータやらがあり、 なんとなく秀逸だったのが、漏斗状の場の中へピンボールよろしく鉄球を打ち出し、軌道の大きさと周回周期の関係を見せてくれるヤツ。 玉が重く摩擦が少ないものだから結構長いこと回ってくれるのだが、ナルホド重力場の模式化そのものだなこれ多分、とか言ってるうちに、 玉はいよいよ中心の穴へ向かっていき、次にその穴をホジくるようにぐるるるるるるっと猛スピードで回って、最後に吸い込まれた。

 あ、ブラックホールだよ。

 今のはイマイチ芸が無かったので、今度は打ち出しに神経を注ぎ、長楕円を狙ってみる。ぐるっ・・・ぐるっ・・・よしよし。

 HOPEのコーナーの一角が暗くなっていて、休止の張り紙が・・・・・HOPEといえばそうそう、 あの伝説の映画「北京原人 Who are you?」で、なーんか出てなかったっけか? しかも有人のが!  たしかNASDAが協力していたような・・・・・それでアレじゃあ気の毒で気の毒で。(ぉ 外へ出て、H-IIのドンガラの前で記撮。 これまたH-IIの形の門柱の前でも記撮。三脚立てて小ネタをからめていると、さっきのツアーのおねいさんが通りかかった・・・・・あ、 どぉもぉ(恥)。次は修学旅行らしき団体の案内らしい。

 ときに。今日は朝日狙い以来、全くYS抜きでわないか。JAXAウハウハ訪問記と化しているがぁ・・・・・と、遠くに何やら、ぶーん。 むむむ?? 右耳のせいで方角が判らずキョロキョロ見回すと、西の方角を何かが北へ飛んでるのが見えた。結構低い。 丁度種子島着の便がありそうな時分ではあったが、さっき乗ったのは、こんなところからアプローチしていなかったよな・・・。

 「はやぶさ」の行方を気にしつつ宇宙センターを後に、北へ向かう。西之表は諦めているが、種子島の新空港なら近い。コスモポート・・・・・ 宇宙港ですぜ、種子島宇宙港! プロペラ機飛ばしてる場合じゃねーぞ!・・・・・そんな小っ恥ずかしさ満点の看板なんぞを期待しつつ、 クルマを走らせるのだったが、ここらと思うあたりに見当たらづ。そろそろ不安に駆られて引き返してしまったが、 あとで調べるともう少し行けばあったらしい・・・・・残念。移転前に来ることはもう無かろう。

 折角のリブレット、ネットで確認すべきであった・・・・・とはいえ、現在の種子島空港に、そういう類の案内が一切、見当たらんのである。 もうすぐジェット化しまーす、みたいな・・・・・だってもう間近よ。事業母体が違ってたりするのかな。それどころじゃないのかな・・・・・ 空港駐車場に面したレストランと思しき廃墟を眺めながら色々考える。ターミナル前にはでーんと、「歓迎 明るい未来に種子まく町 中種子町」 と入ったH-II(Aの前)と思しき物体が立っていて、ずんぐりした本体に、やたらと細いブースターがご愛嬌。新しい空港にも、 こんなの立つんだろか・・・・・中の土産物屋を覗くと、これまたずんぐりしたH-II(Aの前)にお約束の宇宙食はじめそっち系グッズが並べられ。 ただ携帯ストラップがまた、航空系や科学系のミュージアムショップで見かけるのとは違う製造元のようで、H-II(Aの前)が今なお現役・・・・・ というよりH-IIAのが何も見当たらないがぁ。定番系キーホルダーを物色、そうそうこれこれ、島の形をしたのと、 おやおやロケット打ち上げシーンのレリーフ・・・・・なーんかちょっと古そうなと思えば、裏面には「さくら2号」と。うー、たまらん。 一度造ったら変えないんだろな・・・。そして土産物には火縄銃なんかもゴロゴロ、 さすがに銃口は塞がっているとはいえ、機内持ち込み不可の断りがなんとなく笑えたが、まあ、そらそうだ。

 チェックインを済ませ、クルマを返す前に、またまた薬用植物栽培試験場のところで、その返しに乗る、JAC3775便の到着を出迎える。 モタついて進入を逃したが、滑走路の先でくるりと回るところを、ぱちり。バックには僅かだが海とその水平線が見える。 生憎西の方に雲があって夕焼けもギラリも無かったものの、少し沈み気味に、こちらを向いたところの着陸灯の輝きと、切り取ってみる。

 JAC3774便への、定刻通りであれば25分の返しの間に、クルマを返して空港ターミナルに戻り機内に収まらなければならなかったが、 滞りなく待合室まで行き着き、いよいよ呼ばれてエプロンへ出る。大きな垂直尾翼をこちらに向けて、佇むYS。あと何分かで日没というところで、 依然夕日にも夕焼けにも恵まれなかったが、迫る夕闇に蒼く沈み行く情景を、他の乗客に混じって前進しながら、ぱちり。 レジを見ればJA8766、また乗ったことある機かぁ・・・。

 Vポジ。1A。西向き。ここで一昨年の屋久島以来の、サンセット・クルーズを楽しもうという企みなのだったが、果たして上空はどんな具合か。 正面の壁には「安全のしおり」が・・・・・と何かがヘンだと思えば、その情報にあしらってあるYSの側面イラストが、思いっきし最新JALカラー。 をゐをゐ、今朝貰った絵葉書共々、実機がどうであろうとお構い無しにそのつもりでいるらしい。頂くわけにもいかないので、ぱちり・・・・・ いやパチるってコトじゃなくて。

 きゅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・。

 びぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・。

 ばおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・。

 ぶいぃぃぃぃぃぃんんぃぃんんぃぃんんぃぃんん・・・。

 さらば、種子島。

 RW31から駆け上がったJA8766は、海上へ出ると右にバンクし、機首を鹿児島へ向けた。上空に出れば遠くに夕焼けのグラデーション、 プロペラがうっすらと、円く影を描く。電動歯ブラシを噛むような振動もふっ、と消えるような静寂を覚える・・・・・眠気のせいもあったかも、しれないケド。 そもそも種子島行きを今日にしたのは、初日は午前中が潰れるのと、日曜日にはご同輩が多そうで(苦笑)嘉例川の駅弁にもちょっと未練があったのと、 月曜日では宇宙センターの見学が出来なかったことによる。帰京を控えた最終日では種子島便の遅れや欠航が即致命傷となるリスクもあったが、 嘉例川の駅弁は食べたし市内へも行けたし月も出たし雪まで降ったし、種子島でもまあまあ良い天気だったしで、 少しでも旅程が前後していればこれらは全てガラガラ崩れていたかもしれづ、これは天佑と言うべきか。写真的にどう残せたかとかいう話は別の次元だけど ・・・・・しかしこの巡り合わせの妙には、色々考えさせられたりもする。惜しむらくは、どういうわけかJA8717に会えなかったことか。

 左手前方に、桜島が見えた。錦江湾ではなく大隈半島を北上しているらしい。グラデーションの中に独特のシルエットを見せる、桜島。 翼下へ過ぎて行くところを、プロペラを交えてぱちり。やがて遠くに鹿児島と、手前に国分だか隼人だかの灯りが見え、紫色のエンジンナセルとからめて、 これまたぱちり。一昨年の屋久島帰りの時の鹿児島市内のギラギラは凄かったが、今回はまた別の、しっとりした趣。 機は高度を下げ、間もなく鹿児島空港に着陸。ぶぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・ああ、また終わっちまったか。

 バスに移り、ターミナルへと向かう途上、見慣れぬYSに釘付け。

 「ありがとう日本の翼 YS−11」

 !!!

 さよなら塗装機が運用に入るのはたしか、12/8からとアナウンスされていたように思う。全て旅程を組んだ後のことで、 今回は拝めずじまいか、ではフツーの姿の見納めのつもりで、と臨んだのだったが、最後の最後に、ギリギリで出会った。荷物を受け取るなり、 とにかく送迎デッキへ駆け上がる。果たしてさよなら塗装機、幸運にも他の機に遮られることなく、シカーモ左舷と顔をこちらに見せて佇んでいる。 超望遠で目を凝らせば・・・・・JA8717!? そうかぁ、これで留守にしていたわけかぁ! 最後の最後でもたらされた望外の「ご褒美」(?) に戦慄さえ覚えつつ、嬉々とバルブ大会に突入。ウハウハ。

 しかしクルマは返さにゃならんわ諸々で慌しく撤収、バタバタと帰り支度を全て済ませ、出発待合室からガラス越しにJA8717を眺めつつ、 搭乗時間が来るまで過ごす。前回は帰りがSKYだったから、出発時間が逼ってからフロアの端から端を走るハメになったが、 今回のJALは程近いところから出るので、慌てることは無い・・・・・A300の後方のスロープを楽しみにしつつ。はさておき、 ついに目の当たりにすることになった「さよなら仕様」、とうに解りきっていたことではあったが、いよいよ・・・いや最早「フツーに飛んでいた」日常は、 一足先に終焉を迎えたと言って良い。これからは「お別れ」の日々が残るばかりだが、その中にあっては、むしろ力を抜いて見送りたい気もする。 元々がミーハーとはいえ、敢えてミーハーに徹するというのも、アリかもしれないなと。ともあれ泣いても笑っても、長くてあと1年。 せめてその間の、残された「今」を、染み込ませておきたい。



補:
右耳の方はというと、昼飯にありつけず機嫌の悪いらしい耳鼻科医に今日はやりたくないが手術しかないと脅かされとりあえず薬だけ処方してもらったその帰り道、 ぽきゅっ、と呆気なく通った。結局薬は1粒も飲むことなく、やれやれもう1日堪えれば余計な出費も無かったかと、途端にセコくなったりもしたが、 1週間ぶりに「フツー」を取り戻した瞬間の歓びは、忘れまい。