2016.10.10 フライトシミュレータに挑戦@小松
 「ついでの用」をスタンプラリーの如く押し込んだ中、早朝より鉄ネタをいくつか織り交ぜつつ、小松へやってきた。

 石川県立航空プラザ。

 とその前に、まだ早いので小松空港寄って、ちょっと珍しいIBEX機なんぞを、ぱちり。空自の方は何も見えず残念。

 それでも開館時間に早く、入口の前のベンチでボケーっと待つ・・・・・何をそう急ぐものがあるでもなかったのだが、ここには、アレがあるのだ。

 YS−11フライト・シミュレータ。

 これが鉄博の運転シミュレータだったら、それ目当ての人で大行列となるところなのだが、開けましたよー、と声をかけられるまで、結局他に誰もおらづ・・・・・カウンターへ直行して、 シミュレータがあーだこーだ告げると、整理券兼領収書を渡される。整理番号1番。イチバン。どこかを呼び出しながら、シミュレータの前で待つよう言われたので、中へ進む。

 これか・・・・・ANAで実際に稼動していたフライトシミュレータ。ホンモノである。さすがに油圧でぐいぐい動くようなシロモノではないが、実際の機首部分まんまの形のモノがそこにあり、 かつてはその正面のスクリーンの映像を使ったのだろうが、4枚の窓の1枚1枚にピッタリ嵌め込むように液晶モニターが配置されていて、リアルな眺めの予感。

 そこへ教官(?)のおじさんが現れ、中へと案内される。内側はほぼ完全に実機のコクピットのまま、左が機長席だからと促されるも、緊張してて座席の前へ足を入れていくところから覚束づ。 どうにか席に収まると、操作の説明から始まった。ラダー・ペダルにブレーキ・ペダルがある、とは言葉では解っていたが、ナルホド踵を乗せると、爪先で踏む形のペダルになっていて、 飛ぶ時はラダー・ペダルに爪先だけ乗せるようにして、踵を床で滑らせながら操作するものらしい・・・・・コクピットには何度か座ったことがあったが、今の今までさっぱり、知らなんだ(汗)。 続いてエルロンとエレベータ、スロットル・・・・・まあこのへんは解ってる方だが、フラップ操作は最近のクルマのATのような、クランク状の溝を通すのが、案外難しい。 あれだ、電気機関車のシリース段を進めるのにも、ちょっと似てる気もする。ギアのレバーは遠いからこっちでやりますよ、と言われたが、既に知恵熱が出そうな状態で、そこまで頭回らないこと必至。

 用語の言葉遣いやらが、えらく手馴れた風なので、パイロットでらしたのですかと聞いてみると、なんとファイター・パイロットだった由。ハチロクやマルヨンに乗っていたそうで、 マルヨンに憧れて入ったのだとも。その後救難ヘリ・・・・・だったかな・・・・・に移り、教官などを経てリタイヤされたそう。ふと「F転」という言葉が頭を過ぎったが、 そんな言葉をましてや部外者が口にするは無礼というもの・・・・・そういえば「よみがえる空」は小松基地が舞台だったな。シビアな状況での救出劇の話など訊いてみたかったが、 それではシミュレーションが始まらない。

 画面には小松の滑走路が見えている。自衛隊と共用で、関東の人だと茨城空港がこんな感じですねー、などと言ってくれるが、まあそこは解ってる。空中に浮かぶ四角い枠の中を通るつもりで、 云々という一通りの説明の後、フラップちょっと出して、うんちゃらかんちゃらと教官はどこかと交信している様子で、くりあーどふぉーていくおふ、って出ましたんで飛びましょう!・・・・・えっ、えっ、 V1とかV2とかどうすんの? スロットル開ける時ブレーキ踏んでおくの? 待ったなしな状況に舞い上がりながら、何も考えず言われたことだけするしかない、と観念して、 ままよとスロットル全開。びぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・ダート・サウンドが上がる(涙)。さあゆっくり操縦桿引いて、と言われ、 口に出すのは恥ずかしい・・・・・メーター見てないし・・・・・ので脳内で「ぶいあーる!」「ぶいつー!」とコールしつつ、機を空へ向かわせる。 スロットルまだ絞らなくていいのか? と気にしていたら、横で教官がぎああーっぷとコールしてギア操作・・・・・案の定、ギアのことなどすっかり忘れてた。フラップは? フラップは?

 空中の四角を通らねば通らねばと凝視してしまい、頭ン中は殆ど真っ白、景色もメーターも目に入らない。操縦桿の感触にはそれらしい重さがあって、ただ教官の話では、実際はもう少し重いらしい。 そして修正に入ろうとすると、横からクイっと先にやられてしまう。横向いて「あいはぶこんとろーる!」と睨み付けたくもなったが、操縦桿を伝う手応えが、重みのせいなのか、 教官の介入なのかすらよく判らなくなって、殆ど受身な状態に。手ぇ放すと流れちゃうでしょ、こういう時トリムを使うんだよ、と説明されたが、 巡航の時に使うもんだと思い込んでたので、頭の中「?」になりながら、左脇のダイヤルを回し、トリムを取る。ナルホド。

 周回を終えて、着陸のアプローチ。ギアダウン、ワタワタとフラップ出して、かなり危なっかしい調子で・・・・・恐らく多分に教官の手助けが入って・・・・・滑走路へ下ろしたが、 そこで横から教官、「今日はまだ次の予約無いみたいだから、このままタッチ・アンド・ゴーねー」・・・・・えーっ! えっ、えっ、ど、ど、ど、どうすんの、スロットル開けて?、 ああああとフラップ? 速度どうなってる? と舞い上がってるうちに、操縦桿引いてーと言われ、言われるままに再び空へ。2周目ともなれば勝手も分か・・・・・んねーわとテンパりつつ、 内心ヘトヘトになりながら、それでも多少は景色を見る余裕が出てきて、あー丸一日借り切って練習すれば、と割と真面目に思い始める。とにかくここへ来るまでに、準備が無さ過ぎた。

 さすがに3周目はなかったが、着陸滑走で言われる前にブレーキを踏んでしまい、あらら止めちゃったのみたいな感じで、終了。あ゛ー、立ち上がれない・・・。 写真撮ってもらったりしつつ、素朴な疑問で、トリムは操縦桿やラダーペダルと操縦索の間でアジャストしてるのかと訊いてみたら、タブを動かしてるという。 私の顔がポカーンとしてたのだろう、こっちへおいでと展示機の方へ連れて行かれ、いいからこっち入っておいで、いいから乗ってごらん、トリム回しながら見てごらん、 などと、良いのかなーとこちらが不安になる程、現物で説明してくれた。油圧だと違うんだけどねー、とか、固定タブは1機毎に違うんだよ、とか、 予約がなくて暇・・・・・普段はもっと来るらしいのだが・・・・・なのもあったのだろうけど、単に教えたがりというより、こちらが受け止めきれない程の、ヒコーキへの思いが、感じられて。

 教官にお礼を言って別れた後、やや火照った心地のまま、展示を見て回る。エントランスにはエアロックのピッツ、メインの展示場には、マルヨンやT−2ブルー、T−33といったところから、 なにげに本命だったのは、南極帰りのピラタス・ターボポーター。むふふ。

 その後ちょい鉄しつつ帰途に就いたが、若干詰め込み過ぎながらも、思いの外有意義な2日間であった。実際のところもう少しゆっくりしたかったが・・・・・うーむ再訪フラグかこれ。