2017.5.28 美保基地航空祭
 何度か訪れた美保基地も、航空祭まではいいカナ、という程度の温度でいたのだったが、先々月の「航空情報」で、今年の美保基地航空祭は国産輸送機が揃い踏みする最初で最後の機会カモ、 などと煽るものだから一気に沸騰してしまい(笑)、速攻飛行機を押さえにかかっ・・・・・これがまた誘うように 1席だけ空いてるし・・・・・たのだったが、その後実際に C-2 が配備され、 そして 1152 は航空祭で引退セレモニー、翌日には小牧へ発つというニュースが・・・・・最早是非に及ばづ。

 前乗りである・・・・・日帰りでは勿体ない。ANA381便は予約後機材変更があったものの窓際席には変わりなく、これも関係するのか羽田は沖止めでウハウハのバス旅行。Dラン飛び越え 16L 離陸、富士山もしっかり見えてご満悦、 雪を頂く南アルプスを眺めながら寝てしまってもよかったが、もしやと見続けていると、木曽を越え、あれは犬山橋! 犬山城! となればお次は岐阜基地! エプロン逆サイに目を凝らせば、 あれかな、かかみがはら航空宇宙科学博物館! トリトンブルーの YS-11 と、隣の US-1A が・・・・・写真には撮ったが、平面性のよくない窓越しでグズグズ、そうと知っていないと判らないが、そこはそれ。

 結局琵琶湖だのなんだのずっと眺めつつ、米子 RW25 へ着陸。まず最初に目に止まるは、滑走路南側にいる C-1 の廃機体(涙)。減速しきってくるりと回ると、YS-11P が見える。今回の主役の 1152。 さらにプロペラのない 1153・・・・・先に退役したこちらが残って、昨年の体験搭乗まで飛んでた 1156 の姿が、見えぬが・・・・・もしや、1153 も基地内に保存か、とも期待してしまうが、 合造車・・・もとい貨客混載形の 1156 より、同じ VIP仕様の方を、部品取りに残していた可能性も、ある・・・。で早くもブルーインパルスの列線、そして C-2、でけえ。

 ブルーは今日も予行で飛ぶらしく、送迎デッキには人だかり、露天まで展開してる。ただ、美保基地のエプロンに新しい建物が出来つつあり、丁度こちらから窺おうとするのを遮る格好。あらそう、そうですか。 飛行機と一緒にレンタカーも押さえていたが、ブルー予行は頭になかったので、思いつくままに出雲までドライブ・・・・・ちょっと走った道の駅で一息入れると、中海越しにスモークが見える。 おおっとここで始まったかと、ぱちりぱちり・・・・・コークスクリューを横から見たの、初めてカモ。その後は一畑電鉄撮ったり銅鐸見たり出雲大社参ったり大社駅行ったり、〆にサンセットの中のサンライズ出雲を見送ったりな鉄三昧。

 明けて今日。

 開門 1時間程前に現着。既に行列は出来ているが、入間と比べれば平和なもので・・・・・ただキャパが小さいから油断は出来ない。ほぼ恒例らしいのだが少し前倒しで開門、荷物チェックなど受けて、 中へ進む。エプロンへ出るとまずはブルーの列線、向こうに KC-767 と、C-2・・・・・ウハウハである。振り返ればハンガーの中に C-1 と C-2。ウハウハ。肝心の YS-11P はというと、エプロンのずーっと奥にいる。 気になるところだが、今はオープニング・フライトに備えて場所の確保が先決。ブルーを絡めてタキシングや離着陸を狙わんという思惑。

 と、C-1、C-2、そして YS がタキシング。早速ブルーを絡めて離陸を・・・・・と YS だけ上がるタイミング早く、結構無理矢理な絡め。

 いよいよ開催の時間である。偉いさんのスピーチが聞こえ、東の空に機影が・・・・・ををを、見よ! YS-11P、C-1、C-2、T-400の編隊を。日本航空機製造 YS-11、日航製の開発から川崎重工へ引き継がれた C-1、 川重の二代目 C-2 ・・・・・これが最初で最後の、戦後国産輸送機の揃い踏み・・・・・まさにこれを、見に来たのである。マジで。ブルーなどただのオマケである。(ぉ

 続いて美保所属機のデモが入れ替わり立ち代り続く。「入間インパルス」に負けじとぐるぐる回る C-1、第一空挺団の前に物資投下デモまで見せてくれる。昨年の観閲式以来、配備後は初お披露目となる C-2 も、大きな図体でこれもぐるぐる。 そして YS-11P、背中も見せながら右に左にと旋回、正面がほぼ逆光な中で、ぐるぐると順光でも見せてくれるのが有り難い。既に飛び姿だけでウルウルなところへ、派手な機動こそないがゴーアラだのなんだのと、サービスしてくれる。

 これらが降りたところで、会場をウロウロ、C-1 と C-2 のいるハンガーでは色々 PR のブースがあって、うみまるもいたりする・・・・・潜水服着てるのだけどキミ、アザラシなんだから素潜りで良いんじゃないの?、といつも思う。

 と。

 ママチャリ。

 これがまた凝ったハリボテのママチャリ。「高尾山レッドクラブ」というらしい。何故か F-22 らしい。ブルーJr. のライバルなのか、もっと斜め上なのか・・・・・高尾山とは基地の北に位置する山で、レーダーサイトがあり、 確かに遠くレドームが見える。で、聞けばあとで”飛ぶ”らしい。

 飛来した F-2 のヴェイパーにハァハァしつつ、一仕事終えた YS-11P は地上展示の並びには加わらず、遠く陽炎の向こうでぽつねんとしている。その手前を、やけにずんぐりした YS-11P が・・・・・花電車、と称するそれは、 巧いこと YS-11P なカブセモノをしたトラクターが、トロッコを牽いて走り回ってる。走ると向い風でプロペラが回る小技も利いて、YS のレジは「29-0528」・・・・・ああ、今日か。しかしグッと来る出来映えである。 乗り場には家族連れが結構行列作ってる。

 乗らずに後悔するか、乗って後悔するか・・・。

 KC-767 の前で「高尾山レッドクラブ」のデモ飛行が始まった。これはブルーJr. にも手強い相手の予感。ブルーJr. も 3輪になってから見たことないのだけど。

 そうこうするうち、ブルーインパルスの時間。航空祭的にはメインイベントだが、YS がお目当ての身には、これとてまだまだ、前座。

 ほぼピーカン、ほぼ無風という絶好のコンディションの中、まずは C-2 を絡めて離陸をぱちり。ぱちりぱちりと演技を楽しむ・・・・・昨日の予行で見た「さくら」はキャンセルの様子。

 ブルーの一通りが終わって、会場の空気が心なしか、緩んだ。多くの人にとってはこれ見ればお開きかもしれないが、こちとらここからが本番。セレモニーは、セレモニーはどこでやるのだ。

 エプロン出口の近くにずっと消防車がいたが、放水しそうなのはあれしか見当たらないので、ブルーのいるエプロンの一角を陣取る。ブルーが終わると帰ってしまう人が多く、割と楽なポジション確保。 これから YS-11 引退セレモニーがあると放送で繰り返し呼びかけるが、そんなものなのか・・・・・と、消防車が 2台、やって来た。えっ、アレじゃなかったのか。続けてパイプ椅子が運び込まれ、 報道陣がドヤドヤと入ってくる・・・・・おいおい前に来るのかよ。水がかかるのかからないの言ってる。えっマジ?

 と。

 302飛行隊のマークの入ったキャップを被った人物・・・・・不肖・宮嶋でわないか(笑)。生不肖はやっぱ凄みがあるな。来週の文春あたりに載るだろうか。

 ポジションどうしようかと逡巡しているうちに、報道陣は移動してしまい、どうやらここで行けそう・・・・・と今度は、迷彩服の隊員が正面に来た。なになに? 警備? どうかウロチョロしないでくれよ・・・。

 タキシー開始の放送が入った。しかしここからは見えず、またポジション確保で狙うことも叶わづ。首を捻ってどうにか視界に捉えたが、朝と違って風向きは東、つまり正面をタキシングで通過することもなく、 そのまま離陸してしまう・・・・・ここは、諦めるしかない。

 地上展示機越しに、あのRRダートの唸りだけが聞こえ、やがて舞い上がる姿が現われた。午前のフライトとは打って変わって、ゆっくり、ゆっくりと、感触を噛み締めるように上がって行く。 場内放送からは「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ音楽、泣かせようったってそうはいか・・・・・うー。

 機は大きく右へ旋回、豆粒になった白い機体が、大山に見守られるようにして、その前をゆったりと横切る。やがてこちらへ向きを変え、左右にバンクを振りながら頭上を航過。 そして着陸・・・・・機は滑走路を逸れ、こちらのエプロンへ曲がって来る・・・・・目の前で警備と思った人は、マーシャラーだった。両腕を振って合図を送り続ける。 ということは・・・・・消防車が放水を開始、水のアーチを潜って、真っ直ぐこちらへ向かう。既に第2エンジンは止めてる様子だったが、マーシャラーが両腕を上げた前で、機体は停止、第1エンジンも火を落とした。

 ひゅるるるるるる・・・・・RRダートの音が、消え入る。この音を耳にするのは、或いはこれが最後になるかもしれない。この音を奏でる YS-11 は、入間の FC の 1機・・・・・しかし昨年の航空祭ではまさかの飛行展示なし、 既に後釜も決まっていて、今年か来年あたりの航空祭で見納め確定。他は、エアロラボ機と、能登の日本航空学園の教材機しか、もういない。同じく入間の電子戦機はエンジンが換装されていて、 その役目故かそもそも人前に出てこない。

 静寂。皆固唾を呑むように、YS-11P に見入っている。その中でエアステアが出る音だけが聞こえ、まるで異星人とのファーストコンタクトのシーンのような、奇妙な空気が漂う。やがて乗員達が降りて来た。 機長以下、皆この機齢より若そうに見える。そして上官へテストフライト・・・・・名目上はそういうことらしい・・・・・の報告を行い、労いの言葉が返され、飛行の全てを終えた。誰ともなく拍手が沸き起こる。

 その後は報道向けの記念撮影、セレモニーの招待客には随分高齢の人がいて、ここの OB なのか、或いは開発サイドの関係者なのか。

 一通り終わっても尚、ギャラリーはなかなか去ろうとせず、それぞれに YS-11P との名残を惜しんでいる。閉場時間が迫る。どうやらもう動きもなさそうだと見切りを付け、ブルーの列線の正面へ回り込んで、YS と絡める。 ちょっと無理無理だが、恐らくは最後の機会、とにかく撮る。さらに、地上展示の C-2 とも絡め・・・・・細身の、戦後初の国産輸送機と、でっぷりと大きな最新鋭の国産輸送機。僅か 2ヶ月の同居だった。 しかし確かにそういう時間があったのだと、後々この写真が語ってくれるに違いない。

 ロープを持って追い出しにかかる入間と違って、呼びかけるだけでなかなか人が帰らない様子だったが、潮時と見て会場を後にし、空港のターミナル逆サイのお立ち台で KC-767 など見送って、 今度は空港東側の干拓地・・・・・日中はギャラリーで賑わっただろうが既に人気なく・・・・・から、西日に遠く 1153 と、セレモニーの場所から戻った 1152 を、ぱちり。これで本当に、見納め。 1152 は明日には小牧へ飛び、これが本当のラストフライトとなり、そのまま秋に公開予定の「あいち航空ミュージアム」へ収まる。

 小牧でも放水で出迎えられるという。さすがにそこまで追いかけることは叶わずだが、しかしまた、会える。しかも、YS-11 の保存機の中で唯一、空へ連れてくれたことのある機体として。