核酸栄養学(脳における核酸の生理機能)

核酸の消化・吸収・体内循環
世界的に乳幼児用調整粉乳にNT(ヌクレオチド、核酸の分解されたもの)が添加されて10年近くが経過(日本では4年前、いずれも論文執筆時)しています。これは核酸の安全性と経口的摂取の有為性をしめすものですが、はじめに核酸の消化・吸収・体内循環について簡単にお話ししておきましょう。
食事などから摂取された核酸は、膵液中の酵素によって分解されて、NT(ヌクレオチド)やNS(ヌクレオシド)とよばれるものになります。核酸を動物に経口的に与えて、どのように体内に吸収され、利用されるかが実験で調べられています。それによると核酸(DNA及びRNA)のほぼ全量が投与後4時間以内にNTやNSの形で腸管吸収されていることがわかっています。

脳における核酸の生理機能
すでに骨髄機能の改善にDNAが必要であること(1)脳脊髄系神経栄養剤としてRNAが重要であること(2)、は特許で認められています。脳脊髄系神経栄養剤としてのRNAは、てんかん発作の軽減、パーキンソン病の軽減に効果があった。

核酸と記憶力の関係ではいくつかの注目すべき研究があるのでご紹介します。

@核酸(NT)添加食と無添加を摂取させたラット(実験用のねずみ)に迷路を覚えさせる記憶学習能試験を行ったところ、核酸を摂取したラットの方が迷路を間違える回数が少なかった(3)。その原因として、核酸が脳神経細胞の成長を促した、あるいは毛細血管の増殖が考えられるが、研究者は別の要因を示唆しています。それは核酸添加食を摂取したラットの大脳皮質におけるレシチン濃度が、無添加食のラットに比べて高く、しかもレシチン中のDHA濃度も高くなることから、脂質代謝の改善が記憶学習能力を改善させたのではないかとしています。

A
記憶力の減退した高齢マウス(実験用のねずみ)と記憶力の劣る若いマウスに核酸を与えたところ記憶力が改善した。しかし、正常マウスには変化が無かったことから、記憶力の劣るマウスは脳の核酸成分生産力が弱いため、食事など外部からの摂った核酸に依存する割合が高いので、記憶力の改善に寄与したとしています(4)

B遺伝子栄養学研究所の研究でも、鮭白子抽出DNAおよび酵母抽出RNA含有食品を用いて老人性痴呆症が改善した症例を少なからず経験(未発表)しており、核酸の経口摂取は記憶学習力の向上と痴呆の改善に深いかかわりがあると考えられる。その原因として脳神経細胞の成長促進、脂質代謝の改善、脳の毛細血管細胞の増殖などが考えられる。

健脳食としての核酸応用食品
@栄養補助・健康食品
錠剤やソフトカプセル、顆粒などの栄養補助・健康食品が数多く販売されており、原料としては鮭白子核たんぱくと酵母RNAを含有した商品が最も普及しています。鮭白子DNAを利用した商品もあるが、DNA複製(細胞分裂=新陳代謝)にはアミノ酸(アルギニン)が必要であり、しかもこのアミノ酸は鮭白子たんぱく質(プロタミン、ヒストン)に豊富に含まれていることから、鮭白子DNAよりも鮭白子たんぱく質が主に使えわれています。生活習慣病の予防と改善、美容と痩身を目的にしたものがほとんどであるが、健脳食を意識して酵母RNAの含有量を高めた商品も出回っています。

A飲料
他の機能性食品素材と混合したものを含めて、核酸入りの飲料は数多く販売されています。鮭白子たんぱく質は水に溶けないので、鮭白子DNAと酵母RNAを含有した商品が主流です。商品目的は栄養補助・健康食品と変わらず、健脳食を謳った商品も販売されている。最近、水溶性鮭白子たんぱくの開発が成功されたので今後はこちらを含有した飲料も多くなると思われます。

B一般食品
市場に出ているものは余り多くは無い。当面は核酸添加食品が主体になると考えられるが、今後は水溶 性鮭白子たんぱくが素材の中心になっていくと考えられる。例えば、DNAは水に溶けるが牛乳に添加 すると固まってしまうが、水溶性鮭白子たんぱくは、牛乳にきれいに溶け匂いも無いことから今後期待 されている。

C乳児用調整粉乳、離乳食
我が国では、酵母RNAを分解して得られる核酸成分を母乳の成分に合わせて添加した商品が乳児用調整粉乳として多数販売されています。乳児用調整粉乳への核酸成分添加の意義は免疫力の向上、脂質代謝の改善、アレルギーの軽減、腸内ビフィズス菌の増加などいろいろあるが、もちろん健脳もひとつの目的になっている。

まとめとして
核酸は高分子化合物であり、消化吸収されたあとには数十の様々な低分子化合物(成分)に代謝され、それぞれが特有の機能を発揮します。そのため、核酸は健脳食としての意味を持つばかりでなく、栄養因子としての様々な機能を併せ持ちます。今後、核酸の拡散のよりきめ細かい研究をすることにより、核酸の栄養学を一層発展させる必要がある。

(1)       特開昭60-252421 

(2)       特開昭62-129219 

(3)       Sato N.,et al,Effects of dietary nucleotides on lipid metabolism and learning ability on rats.,59,1267-1271(1995)

(4)       Tzu-Hsiu Chen, et al, Effects of dietary nucleosiden-nucleotide mixture on memory in aged and young memory deficient mice,Life Sciences,59,PL 325-330(1996)

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