核酸が乳酸菌を生きたまま腸に送りこむ('03/03発行)

【はじめに】

DNA(核酸)はサケの白子に豊富に含まれ、人間の体には不可欠な栄養成分である。澱粉や蛋白質などの栄養物質と異なり、DNAは人間の消化系では胃液では分解されず、腸管までに移送されてから、腸内のヌクレアーゼ、ホスホジエステラーゼ、ヌクレオチダーゼなどの酵素で分解される特性がある。この消化特性に着目して、鮭白子から抽出されたDNA(核酸)を主な素材とし、消化器内で薬効成分を目的に応じて安定的に保持できる機能を持つ薬効成分経口送達システムの研究が行なわれている。この研究に乳酸菌を対象に選んだ。乳酸菌は腸内菌叢バランスを整え、免疫機能を高める効果を持ち、ヨーグルトなどの商品に応用されているが、ほとんどの乳酸菌が胃液の殺菌効果により、わずかの量

しか腸まで生きて届かないことが知られている。より多くの乳酸菌を生きた状態で腸まで送達できれば健康増進に貢献できるため、さまざまな試みがなされている。さらに、花粉症アレルゲン蛋白質を本研究のもう一つの対象に選んだ。多くの人々が苦しんでいる花粉アレルギーを軽減する一つの方法として、あらかじめ抗原を繰り返し患者の体内に投与し、免疫力をつける減感作療法が行われているが、この方法は長期間にわたり、繰り返し注射をするため、患者の負担が大きい。アレルゲン蛋白質を口から投与できれば、アレルギー軽減にとり画期的な方法になる。しかし、アレルゲン蛋白質は酸性でペプシンを含む胃液で完全に分解され、そのままの経口投与が不可能である。このように薬効成分を失なわさせずに腸まで送達する技術が確立されると、その他の多くの不安定な薬効成分にも応用が可能である。本研究では、サケ白子からのDNA(核酸)にコラーゲン、キトサン、などからなる経口送達システムの作成方法および得られたDNA複合体素材の乳酸菌とアレルゲン蛋自質に対する保護特性についての検討結果を報告します。

【実験と結果】

まず、DNA(サケ白子由来)とキトサン(カニ甲殻由来)およびコラーゲンの反応性について調べた。O.8%キトサンの2%酢酸水溶液と1.5%DNA水溶液と混合すると、白色沈殿が得られた。遠心分離、乾燥した後、IRスペクトル分析結果からこの沈殿はDNAとキトサンの複合体であることが確かめられた。同様に、5%DNA水溶液と1O%コラーゲン水溶液を各pH下で混合すると、図1に示すように、DNAとコラーゲンの混合物はpH4以下の酸性領域で不溶性のDNA−コラ−ゲン複合体を形成することがわかった。

次に、胃液がpHl〜2の酸性であることを考えて、DNA−キトサン、DNA−コラーゲンからなるDNA複合体の耐酸性を調べた。まず、DNA−キトサン複合体の白色沈殿O.O1gを100m1 HC1水溶液に分散し、振動しながら、DNA濃度を1時間ごとに測定した。

その結果、図2に示すように、人工胃液中でDNAとキトサンのコンプレックスが完全に分解するまでlO時間以上かかることが確認された。次に、DNAとコラーゲンの複合体として、5%DNA,1O%コラーゲンおよび0.3%カラギナンの水溶液を80に加熱した後、室温までに冷却して24時間放置し、混合ゲルを作製した。混合ゲルに含有させたメチルオレンジの人工胃液中への放出挙動を調べた緒果、図3に示されたように、混合ゲルが人工胃液中で2時間以上維持できることが確かめられた。一方、DNAを含まないコラーゲン−カラギナン系では、約30分で、すべての色素が遊離される。

以上の結果はいずれも、DNA含有複合体はpH1程度の酸性に対して満足できる耐酸性を示し、乳酸菌や花粉症アレルゲン蛋白質などの酸に弱い薬効成分の胃液からの保護に利用できる可能性を示唆した。

 

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