抗がん剤の「薬事承認」拡大

抗がん剤には、治療効果が確認されているのに、がんの種類ごとに効能や使用法を定める「薬事承認」を受けていないものが多くあります。こうした薬を使う場合を「適応外使用」といいますが、正式には保険の対象ではないなどの事情から、必要な治療が行われない恐れもあります。そこで、厚生労働省は、科学的に効果が証明された治療法には、特例として効能などを認めることにしました。第一弾として、乳がんなどの15の治療法について、使用を認める報告書が先月(2004/08)まとめられました。(健康食品のなかにも、海外では薬であるにもかかわらず、国内では健康食品で販売されているもの中にはこうした事情のあるものもあるようです。)

 乳がんの手術後、再発を抑えるために行われる抗がん剤治療には、ドキソルビシン(アドリアマイシン)とシクロフォスファミドという二種類の薬を三週間おきに計四回投与する方法があります。「AC療法」と呼ばれ、海外でも効果が認められている治療法です。このうちドキソルビシンは平均的な体格の患者で、一回に90mg程度使用します。ところが、承認上の使用量は一回に2030mgとなっており、必要な量の三分の一以下でしかありません。これでは効果は期待できず、患者さんに副作用だけを強いる結果となります。また 子宮体がんの場合、ドキソルビシンとシスプラチンの併用療法が、国際的にも有効とされていますが、国内では二剤とも子宮体がんへの効能が認められていません。

 薬の効能や使い方、使用量は、がんの種類ごとに承認されます。あとで別のがんに効くとわかったり、より効果的な使用法や使用量が明らかになったりしても、承認内容は当初のままであることが多いのです。何故ならば、薬の効能などについて新たに承認を受けるには、改めて多額の費用と時間のかかる臨床試験を行う必要があるからです。医療現場では「薬事承認がなくても、患者のために必要な薬を必要な量だけ使っている」(ある専門医)とされていますが、こうした「適応外」の抗がん剤療法は、約60種類もあります。

 承認内容と治療実態が異なるため、いろいろな問題が生じています。その大きなものが、正式の保険対象ではないことです。実際には、医師の裁量による例外的な適応外使用を認めた過去の国の通知などを根拠に保険適用されることが多いのですが、がん専門病院からの保険請求でも、審査で却下され、治療費が病院側の持出しになっている場合もあります。

さらに、副作用被害などが起きた場合に「承認を受けていない薬を使った」として、患者と病院の間でトラブルになる例もあり、これを恐れて必要な治療が行われない懸念もあります。厚生労働省は今年一月、「抗がん剤併用療法に関する検討会」を発足させました。データのある療法については改めて臨床試験を行わなくても、製薬会社が申請すれば「適応拡大」を迅速に認めようという狙いです。第一弾として15療法について報告書をまとめ、早ければ申請から四ヶ月程度で承認される予定です。(下表参照してください。)

さらに、悪性リンパ腫や小児がんなど15療法程度の検討を進めています。

適応拡大に向けた報告書をまとめた抗がん剤治療

がんの種類

適応や、用法・用量が拡大、追加される抗がん剤

骨髄腫

ビンクリスチンとドキソルビシン、デキサメサゾンの併用(=VAD療法)

悪性リンパ腫

シスプラチンを含んだ併用療法(ESHAPDHAPなど)

頭けい部がん

フルオロウラシルの用法・用量の変更

大腸がん

フルオロウラシル、アイソボリン併用療法での用法・用量の変更

脳腫瘍

ビンクリスチン、プロカルバジンを含む併用療法

乳がん

ドキソルビシンの用法・用量の変更(シクロフォスファミドとの併用=AC療法)

乳がんの溶骨性骨転移

パミドロン酸の用量増加(骨折予防、痛みの軽減など)

子宮体がん

ドキソルビシンとシスプラチンの併用(=AP療法)

肉腫全般(骨・軟部肉腫)

シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシドの効能・効果追加

小児固形がん

イフォスファミド、ドキソルビシン、エトポシドの効能・効果追加

審議中にすでに承認になったもの

胚細胞腫瘍(精巣・卵巣など)

ブレオマイシンとエトポシド、シスプラチン併用(=BEP療法)

尿路上皮がん

メトトレキサート(シスプラチンなどとの併用=M-VAC療法)

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