抗がん剤の効き目を遺伝子レベルで予測 2004/10/15更新)

慢性骨髄性白血病の治療薬グリベックが第1

 慢性骨髄性白血病の治療にもちいる抗がん剤「グリベック(一般名イマチニブ)」の効果が、使用前に遺伝子レベルで予測できるようになり、東京大学医科学研究所附属病院(東京・白金台)で、希望者に対して外来診療を実施しています。
 「グリベックの効果予測についての研究は、平成144月から始まっており、多くの医療機関や患者さんの協力によって、すでに60例以上を解析しています」と同医科研ヒトゲノム解析センター助教授の片桐豊雅氏。同センター長中村祐輔氏、同研究拠点形成ゲノム医療プロジェクト推進特認教授古川洋一氏とともに、日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)と協力し、研究を続けてきました。
グリベックの効果予測の対象となるのは、慢性骨髄性白血病でグリベック未治療の患者さんです。
 「完全予約制で、外来を受診し、この研究についての説明を受けて、内容を理解していただくことが前提となります」(古川氏)
受診者が同意した場合は、解析にもちいるサンプルとして、血液を採取。それを解析し、受診からおよそ3週間後に、外来で検査結果を説明する。
 「検査結果は、効きやすさの目安となるスコアとしてでてきます。数値が高ければ効く可能性が高い、逆に低ければ効きにくい可能性が高いことになります。ただし、検査結果は100%ではないので、あらかじめ、そのことも患者さんに説明しています」(古川氏)
 検査にかかる費用は東大医科研が全額負担するため、検査を受ける人は、一般診療費のみを保険の種類に応じて負担する。また、検査後の治療は、主治医のところにもどって受けることも、東大医科研附属病院で継続して受けることもできます。
 同医科研では、肺がんの治療にもちいる抗がん剤「イレッサ(一般名ゲフィチニブ)」についても研究を重ね、倫理委員会に申請中で、承認を受ければ、外来診療による効果予測が実施される予定です。

一人一人に合う治療が選択できる時代へ
 こうした流れは、患者一人ひとりの遺伝子に着目し、その性質に合った治療法を選択・実施する「オーダーメード医療」の第一歩として期待されています。
 「抗がん剤の効果予測の解析を、グリベックやイレッサから始めたのは、これらのくすりが単剤でもちいられ、使用量もおおよそ決まっているため」と片桐氏。
 多剤を併用したり、投与方法が医療機関や医師によって大きく異なる抗がん剤だと、効き目の予測が困難になるからです。
「がんは同じ部位にできたものであっても、すべて違う顔をもっています。今後は、さまざまなくすりについて、効く人と効かない人の遺伝子やたんぱく質(1)の性質を明らかにしていくことで、その人の体質やがんの性質に合った適切な治療が可能になっていくものと考えます。最近の抗がん剤は、特定の遺伝子やたんぱく質に有効に作用するタイプのものが多いため、今後、オーダーメード医療は、ますます重要になっていきます」(古川氏)
 近々、効果予測の外来診療を実施する予定のイレッサは、効く人にはエックス線などの画像に写らなくなるほど、がんが縮小するなど、劇的な効果があるという。ただし、有効な人は3割ほど。しかも間質性肺炎(2)という重篤な副作用を発症することがある。
 「現段階では、副作用の発症の有無までは予測できないものの、遺伝子レベルの効果予測を続けていくことで、近い将来、イレッサのより効果的なもちい方も明らかになっていくものと考えます」(古川氏)
 ちなみに、イレッサの場合は、血液ではなく、肺がんの組織かリンパ節の組織(リンパ節に転移がある場合)を内視鏡を使って採取し、調べることになる。

1たんぱく質は、核酸という物質からできている遺伝子からつくられる。体内の組織の大半はたんぱく質で構成されているため、遺伝子だけでなく、たんぱく質を調べることによっても、抗がん剤の効果などが予測できる。
2なんらかの原因で気管支の末端にある肺胞の壁(間質)に炎症がおこり、肺胞の壁が線維化してかたくなる病気。悪化すると、呼吸が維持できなくなり、命にかかわる。

グリベックの効果予測 外来診療の流れ

[1]

インターネットの東大医科学研究所附属病院のホームページ「新着情報」のコーナーで、内容を確認する。
東大医科学研究所附属病院 http://www.transrec.jp/

 

 

[2]

電話で受診に関する説明を受け、外来の予約をとる。

 

 

[3]

説明を聞き、同意したら、採血する。

 

 

[4]

採血した血液を解析する。

 

 〈およそ3週間後〉

[5]

外来で、検査結果についての説明を受ける。

記事提供:保健同人社

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