ガン治療後の後遺症の治療対策

 作家の中島みちさんは、35年前の自らの乳がん体験や、姉の皮膚がんの誤診がきっかけでノンフィクションを書き始めた。病理診断や看護の充実、脳死での臓器移植……。取り上げるテーマはいずれも自分や家族に起きた出来事に発しており、患者の視点に徹した切り口が身上だった。それでも、自らががん治療の後遺症に苦しんできたことは、今まで積極的に語ることはなかった。「社会を変えたいという思いが、ものを書く動機。がんの 後遺症を治す方法はないと思いこんでいたので、単なる愚痴になるのが怖かった」と中島さん。がんで亡くなった姉や夫の苦しみを目の当たりにしただけに、生きているだけでもありがたいという思いも強かった。後遺症を、現代医療では治せない「見捨てられた病」と自ら呼び、あきらめていた。 ところが、昨年12月、腹部の大網を使った胸壁再建術を受け、放射線治療で焼け焦げた胸部の痛みから解放された。手術した杏林大形成外科教授の波利井清紀 さんに、この再建術が1960年代からある手術と聞かされ、絶句した。「治療法がないのではない。治療の情報が患者に届かないのだ」 中島さんは職業柄、多くのがん専門医に会い、自分の後遺症の話もしてきた。だが、この治療法を示されたのは今回が初めてで、がん専門医といえども、がんの後遺症については専門外と言わざるを得なかった。「残念ながら、今の日本ではそれが当たり前の状況ではないでしょうか」 がん治療の進歩で、がん は必ずしも不治の病ではなくなった。だが、がん治療後に長生きする人が増えるにつれ、治療の後遺症に悩む人も増えてきた。手術後のリンパ浮腫、排尿・排便障害、痛みなどのほか、抗がん剤の種類や放射線照射の部位によっては、心不全や脳の機能障害が起きることがある。治療後、何年もたって突然症状が出て、どこにかかればよいかわからず、病院を転々とする人も多い。米国では、患者の強い要望で 1996年に国立がん研究所に「がん生存者対策局」が設置された。(いきいき健康ニュースNo.31参照)患者や生存者に役立つ情報は順次公開されている 。「がんの治療だけでなく、後遺症対策でも何ができるか。適切な情報が提供され、患者が苦しまない仕組みが必要です」。「見捨てられた病」と孤独な闘いを続けてきた中島さんの切実な思いだ。 参照:読売新聞 医療ルネッサンス No.3619

中島みち 1994年菊池寛賞受賞。主な著書に「脳死と臓器>移植法」 「がんと闘う・がんから学ぶ・がんと生きる」 「がん・奇跡のごとく」 (以上文芸春秋)、「患者革命−納得の医療・納得の死」 (岩波書店)など。

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(2005/10 追加)
東京新宿の社会保険中央病院で大腸がんの手術を受けたAさんは、幸い肛門を残すことが出来ましたが、排便傷害に悩まされてきました。直腸の一部が無いため、水のような下痢が一日に何回も起き、便意を感じたときに我慢するのが難しいのも困ります。通勤電車の中で時に、水のような便が漏れ、においのため周りの人が自分から離れたりして「人間性まで否定されたような気がして、とてもつらかった」と振り返ります。同じことを感じておられるひとや、思い当たる人もおられるかと思います。そんなAさんの支えとなったのが、同病院にある排便傷害の専門外来です。医師や看護師らが、執刀した主治医と連携し、食事や、薬、運動などの相談にのってくれました。中でも看護師からは、皮膚のケアの方法、便を整える食物繊維の多い食品の紹介など、様々な助言を貰ったそうです。この看護師は、日本看護協会の「WOC認定看護師」の資格を持っています。WOCとは「創傷、オストミー、失禁」の英語の頭文字で、床ずれや傷、人工肛門や人工膀胱、尿失禁や便失禁の看護をする専門家です。 同病院大腸肛門病センター医長の山名さんは「がん治療後の患者に対して、医師が最も心配するのは再発や転移。排便傷害のケアをしたくても医師だけでは手が回らないので、こうした専門家の役割は大きい」といいます。これは大腸がんに限ったことでjはありません。胃がん、乳がん、子宮がんと、がんの種類によって異なる後遺症をケアする専門家を育て、病院に配置する必要があるのでないしょうか。
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