前立腺がん 増える治療法 

前立腺がんは、男性の高齢者に多いがんです。前立腺は、膀胱の下方にあり、前立腺液を分泌するなど男性機能を支えています。欧米人に多いが、日本でも高齢化や食生活の洋風化などを背景に増えています。年間死者数は、8,400人余り(2003年)で、10年前20,000人足らずだった新規患者は、2020年には78,000人に達するとの予測もあり、男性では胃がんを抜き、肺がんに次いで2位になると見られています。

●血液検査で早期発見

前立腺がんは、自覚症状が出にくく、かつては進行して骨などに転移して見つかる患者が4割を占めていました。しかし血液で調べるPSA(前立腺特異抗原)検診の普及によって、早期で見つかるケースが急増しました。早期なら10年後の生存率は90%以上とされ、手術でも放射線治療でも良好な治療成績をあげています。手術は開腹のほかに、腹部に開けた数か所の穴からカメラなどを差し込んで行う小切開手術もあります。放射線では、通常の照射のほか、前立腺に針を刺して放射線を出すカプセルを埋め込む小線源治療が一昨年から始まりました。さらに、重粒子線や陽子線といった特殊な放射線治療や、超音波の熱を用いた試験的な治療も一部で行われています。

●注射や飲み薬でも、焦らず経過観察という手段も

欧米では早期がんなら、手術や放射線治療を行うのが標準的な考え方ですが、日本では、男性ホルモンを抑える注射や飲み薬による治療が広く行われています。前立腺がんの治療は、排尿障害や性機能の低下といった後遺症を伴うことがあり、このため、早期で、がん細胞の中でも悪性度が低いタイプでは、定期検査を続けながら、経過観察するのも有力な選択肢のひとつです。

泌尿器科医の国立がんセンー総長、垣添忠生さんは、「多様な選択肢の中で何を選ぶかは、最終的には患者さん自身人生観による」と話しています。前立腺がんと言われても、焦る必要は少ない。セカンドオピニオン(別の専門医の意見)聞き、じっくりと自分に合った治療を選びたいものです。

治療法の選択肢

1.手術
前立腺がんの手術は、前立腺と周囲のリンパ節を切除し、切断した尿道を膀胱とつなぎ合わせます。細かな静脈が集まる部分なので、一定の出血は避けられないため、あらかじめ自分の血液を採っておく自己血輸血を行います。
手術の後遺症で問題になるのは、尿漏れと性機能障害です。神経を温存する方法も試みられていますが、がんの取り残しを避けるのが大前提なので、がんの場所や悪性度にも左右されます。慎重に手術をしても、手術直後は、膀胱の出口の括約筋を傷めることなどから尿漏れを起こしやすく、ある患者さんは「3か月は、市販のパッドを使い、外出時は予備を持ち歩いた。一時的でも、尿が漏れるのは思った以上にやっかいでした。」
一般には手術後3か月ぐらいで尿漏れは収まりますが、5〜10%の患者では続くケースもあります。手術の技量は、患者の生活の質にもかかわってくるので、病院の実績をよく聞き判断することが大切になります。

2.広がる小線源治療
映像装置で映し出された前立腺の画像を基に、コンピューターで計算した位置に、長さ4.5ミリの放射線カプセルを60〜100個埋め込みます。腰椎(ようつい)麻酔で、治療時間は約2時間、入院は3泊4日で、手術(2〜3週間の入院)に比べて短い。カプセルは前立腺に残りますが、放射線は1年ほどで出なくなります。手術を望まない患者さんには、有力な選択肢だが、この治療の有効性が証明されているのは、早期のがんに限られています。〈1〉がんが前立腺内にとどまる〈2〉PSAが10以下〈3〉がんの悪性度を2〜10の9段階で示すグリーソン値が6以下、が一般的な治療対象です。PSAが10以上、またはグリーソン値7以上と基準を超えると医療機関により対応が異なるので病院でよく相談したい。 治療後の合併症では、前立腺が腫れて尿が出にくくなる排尿障害が最も多く、まれに直腸や膀胱で障害が起きることもあります。性機能障害は手術に比べ少ないとされています。

3.負担軽い小切開手術
前立腺がんの通常の手術は、下腹部に20cm程度の切開が必要で、2〜3週間程度の入院が必要です。内視鏡を用いた小切開手術は5cm程度の切開で、挿しいれたカメラを見ながら器具で前立腺と周囲のリンパ節を摘出する手術です。切開が小さいので痛みも小さく、入院期間も短くて済みますが、最新治療ということで実施機関も治療件数も少ないので、その施設の実績を確認するのが「重要です。

4.ホルモン治療にも副作用
前立腺がんを増殖させる男性ホルモンの働きを抑え込むホルモン療法は、手術、放射線治療と並び、広く用いられています。毎月または3か月に1度の注射に毎日の飲み薬を組み合わせる方法です。前立腺がんの指標になるPSA(前立腺特異抗原)の数値は、注射で速やかに低下するので、患者も医師も安心できます。(放射線治療では、数値が完全に下がるまで2、3年かかる場合もあります。)ただし、この治療は、薬による去勢です。手術よりも抵抗感は少なくても、性機能を失い、活力低下や、のぼせなどの更年期症状が副作用として表れます。ホルモン療法は、手術などでの根治が望めない進んだがんでは、進行を遅らせるために古くから使われてきました。前立腺からやや広がった中期のがんでも、手術の前後に用いたり、放射線治療と併用されたりと、様々な使い方がされます。しかし、手術や放射線治療で根治できる早期がんへのホルモン単独治療は、欧米では標準治療とされていないのに対し、日本では多く用いられています。ホルモン治療を受けているうちに根治できるガンが進行してしまう可能性もあります。

5.悪性度低ければ待機療法
前立腺がんは、もともと進行が遅く、生検でがんの「たち」の良し悪しも診断できます。おとなしいタイプならほとんど進行しない場合があります。待機療法はスウェーデンをはじめ北欧などでは手術、放射線とならぶ治療の選択肢でです。高齢の患者ならそのまま天寿をまっとう出来る可能性もあります。ただ、ホルモン療法はどこの病院でも可能ですが、待機療法はがんの悪性度を見極める高度な病理診断ができることが不可欠で、より高度な診断能力が医療機関に求められます。

参照:読売新聞 医療ルネッサンス(2005/08)のシリーズから抜粋http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/jitsuryoku/

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