画像=3K VOYAGE ヴォヤージュ〜船上の謝肉祭〜 '00.10.17(Tue)
                       シアターコクーン
(Update '00.10.21)


  「セツアンの善人」「オケピ!」に続き、またまた松たか子さん出演の舞台です。
 『日本演劇史上の残る不朽の傑作音楽劇「上海バンスキング」の作=斎藤憐・演出=串田和美の
 コンビによる新作』だそうで、興味津々だったのですが。
 チラシでは串田さんは『場所や時代の異なる別々の物語が”船上の旅”というキーワードで
 繋がっていく舞台で、いろいろな演劇表現を使ってみたい。』と語っている作品です。

  場内に入るとホール内の周囲に大きな布がかかり、既に演劇小屋というような気分。
 布の後ろの席の人にもちゃんと舞台が見えるように、布の所々に穴が開いています。
 2階席から見えるのは普段は1階客席部分の中央に楕円のセンターステージ。
 隅のフタが開いていて、その下の演奏者たちが薄くらい照明の中にぼんやり見えます。

  まずは串田さんが役者として登場。これから始まる世界の導入を話します。
 それは今のことなのか、過去のことなのか、未来のことなのか、船上の話しということは
 確かなようですが。
  そのフタの所やステージ脇の下から次々と役者が登場。
  まずは南洋の島へ向かう途中、舵がきかなかくなった船の場面へ。
  盲目の女性を演ずる松たか子嬢が登場すると、華やかな気分が広がる感じです。
  せりふ回しの声はしっかりと通り、黒い衣装も高貴なお嬢さん役にピッタリ。
  そこに「結婚詐欺、特に未亡人は得意(?)」という男が近づき、何やら先へと興味をつなげます。
  状況説明のための看板を持った役者が、時々舞台上に現れ時に笑いを誘ったりも。

  そうこうしていると、いつのまにか別の話しに変わっています。
  今度は島の権力性のある女=松たか子嬢が、7人の男達を使って、島を食いちぎる大きな魚を
 あの手この手の懐柔作戦を練り、その魚を退治するファンタジー(?)。
  「白雪姫と7人の小人」みたいな感じもしてきます。
  15分の休憩の後は、また別の話し。船上結婚式に参列する夫婦と周りの人々との不毛な会話が
 続く不条理劇風味のセリフ主体の、いちおう一まとまり感のあるパート。
  この後に前半の続きが挿入されてきて、何やら終末観が漂い、「そして舟は行く」という
 テーマ性が出て来る感じで幕。ステージ下の演奏者もステージ上に登場し、フィナーレへ。

  と書くとどこも面白みが感じられないのですが、生身の人間を自由にあやつり、それぞれの
 役者の演じどころを手堅く押さえた串田氏の手腕は、観客の大きな拍手を呼び出しました。
  パンフによると台本が遅れて、他の作家の作品を集めてコラージュしたようなものにしたとか。
 それはやはり演劇には素人の私にもちょっとギクシャクした感じがして、トータルに一つの世界に
 まとまっていたかというと、もう少しかな??と思えてきます。
  でもでもそれでも、伝わってくる躍動感、何が起きるか分からないワクワク感にあふれているのは
 やはり素晴らしい作品ということになるのでしょう。全員で歌い踊る場面は正にミュージカル調だし。
  他の役者でなじみがあったのは「釣りバカ日誌」での、スーさんお付きの運転手役の
 笹野高史さんくらい。
  今度はストーリー性がはっきした分かり易いものを観たいと思いました。(汗)