「涯泉摘錦」原文と訳


はじめに

 「涯泉摘錦」は「星平会海」に納められているもので、内容は成敗(成功と失敗)に関するものです。「命理正宗」や「命理通鑑」には「崖泉男命賦」「崖泉女命賦」として所収されていますが、内容はそれぞれ若干違います。
 ここでは、「星平会海」を原文として採用しています。


「涯泉摘錦」




凡観男命専看日主之盛衰、便察財官之強弱。
日主旺財官旺、一生福禄優遊、日干衰財官衰、一世貧寒到老、日主旺而財官衰、運遇財官発福、日主衰而財官旺、運行身旺最栄華。
財旺官柔而富不貴、官旺財絶縦貴也常。
財官入庫逢衝破、富有千倉。官星正気遇刑衝、貴招多厄。官若有衝還有合、頭角崢嶸
柱如破衝再逢衝、家貧漸退。身旺柱純、不貴即当大富。
財官入墓、非損子即便傷妻。財官位臨敗絶、寡独貧寒。財官倶値於空亡、傷妻喪子。
 およそ男命においては専ら日主の盛衰をみて、さらに財官の強弱をみる。
 日主が旺で財官が旺ならば、一生福禄優遊である。日干が衰で財官が衰なら、一生貧寒で年をとる。日主が旺で財官が衰なら、行運で財官に遇えば発福する。日主が衰で財官が旺なら、行運で身旺になれば栄華は最たるものである。
 財が旺で官が柔なら富にして貴ならず。官が旺で財が絶ならたとえ貴といっても普通の人である。
 財官が墓で冲破に遇えば、富は千倉(莫大)。官星が正気で刑冲にあえば、貴になれば多く厄を招く。官にもし冲あってまた合があれば、ずばぬけて頭角をあらわす。
 四柱に破冲があってさらに冲にあえば、家は貧しく徐々に衰退する。身旺で四柱が純ならば、貴でなくても大富となる。
 財官が墓に入れば、子を損なわなければすなわち妻を傷つける。財官の位が敗絶に臨めば、孤独で貧寒となる。財官がともに空亡にあたれば、妻を傷つけ子を喪う。




印綬下空、祖業軽棄。
財星秉令、妻是豪門。
官星得禄日時、定生折桂賢郎。月令財官敗絶、妻無内助之美。時上官星無気、有子不能跨竈。
傷官羊刃日時、卜商荘子之悲。
丙辛混見酉時、他年何人掃墓。財星帯合日干衰、外春風而内奸詐。
陽木金多無火制、性剛暴而凶悪之徒。
身弱財多、聴婦言而委懦之士、官多身弱、一子伝芳。生地相逢、壮年不禄。財多殺旺、栄幹富家、学海奔波、非縣佐也只是儒官。
印旺財軽身更弱、有学寒酸之人。印被財傷、難遂青雲之志。印旺若入財郷、自然家肥屋潤。印軽若行財運、俄然夢入南柯。印綬重重財被劫、厳慈重拝北堂。印授若行身旺運、到底平常。
 印綬の下が空亡であれば、祖業は軽んじられ廃業することになる。
 財星が月令であるのは、妻は名家の出身である。
 官星が禄を日時に得るのは、おそらく科挙に合格するような賢い子どもが生まれる。月令に財官があって敗絶なのは、妻の内助の功は期待できない。時柱に官星があって気がないのは、子があっても父を超えることはない。
 傷官羊刃が日時にあるのは、卜商荘子之悲(意味不明)となる。  丙辛があって酉時生まれなのは、他年何人掃墓(意味不明)。財星が合を帯び日干が衰ならば、外面は涼しい顔をしているが、内面は奸詐で悩む。
 甲木日で金が多く火の制がないのは、性格は剛暴で凶悪な人間である。
 身弱財多は、婦女の意見を聞く軟弱な人間である。官多身弱は、一子に徳を伝える。生地に逢うのは壮年は不幸である。財多殺旺は家は富み栄える、学べば波に翻弄されて、県の役人でなければ儒官となる。
 印旺財軽で身弱ならば、学があっても苦労する。印が財に傷つけられれば、青雲の志を遂げるのは難しい。印旺で財の行運にいけば、おのずと家は栄える。印が軽く財運にいけば、それも淡い夢と消える。印綬が重なり財が劫されるのは、厳格で慈しみがあり、母親孝行である。(北堂とは主婦あるいは母のこと)。印綬がもし身旺運に行けば、普通の人である。




陽剛陰柔、兄強弟弱。陰盛陽衰、弟必強兄。
羊刃劫財畳畳、花燭重輝。
七殺印生身旺相、功名顕達。
印旺殺軽、文章科第。殺旺印軽、鎖剣成名。
七殺有制化権、定産麒麟之子。
食神制殺生財、富貴両全之人。
食多殺少身柔、子少而性無発越。
傷官入墓、要分陰陽。陽傷官、地網天羅。陰傷官、有病何妨。
金水傷官得令、魁首文章。
火明木秀日主強、状元学問。
火土水木両傷官、驕矜傲物。
傷官身旺若逢財、身到鳳凰台。
傷官身弱見傷官、平地起風波。
傷官運若見刑沖、夢入幽冥。
羊刃傷官同制殺、黄榜標名。
陽が強く陰が弱いのは、兄が強く弟が弱い。陰が盛んで陽が衰えるのは、弟が必ず兄をしのぐ。
羊刃劫財が重なるのは、何度も結婚することになる。
七殺があって印が身を生じて旺相するのは、功名が顕れる。
印旺殺軽は文章で身を立て、殺旺印軽は武芸で名をなす。
七殺に制があるのは権威となり、また立派な子供をもつ。
食神が殺を制して財を生じるのは、富貴ともにある人である。
食神が多く殺が少なく身が弱いのは、子が少なく発展して人を越すことはない。
傷官が墓に入るのは、陰陽をわける必要がある。陽傷官の場合は、よいことはない。陰傷官の場合は、欠点があっても妨げない。
金水傷官が月令を得るのは、文章がうまく人をしのぐ。
火明木秀で日主が強いのは、学問があり状元となる。
火土水木の傷官は、驕りがあり傲慢である。
傷官があって身が強く財に逢えば、高位にのぼる。
傷官があって身が弱くさらに傷官があるのは、何かと波風が起こる。
傷官運でもし刑冲をみれば、夢はあの世に入る(死ぬということか?)。
羊刃傷官が殺を制すれば、科挙に合格する。




夫年論妻災何處、看財星受克浅深。子命推母命根源、看印星受傷軽重。
癸用庚金為印星、乙庚暗合母心邪。庚用乙木作財星、重見庚辛妻内乱。戊用癸妻坐亥酉、妻主好色還好酒。已用甲官子午時、縱然生子自身危。
拱禄拱貴夾丘郷、無填実為廊廟之客。金木交差身更弱、為技芸而惹是招非之徒。
水土地戸帯魁罡、犯刑名而遭囹圄。羊刃傷官逢衝破、與人少合、而秉性凶頑。水多木少又身柔、飄蓬五湖四海。
群陽妒合一陰、楚漢争鋒之象。諸陰争合一陽、孫龐交戦之形。逢衝有合吉、妒合本然凶。
 夫の命式で妻を論ずるに災いはどこにあるかといえば、財星をみて剋の深浅をみる。子の命式で母の命の根源を推すには、印星をみて傷の軽重をみる。
 癸が庚金印星を用神とするとき、乙庚の暗合があれば、母はよこしまな人である。庚が乙木財星を用神とするとき、庚辛を重ねてみれば妻は内に乱れている。戊が癸妻を用神として亥酉に坐していれば、妻は好色で酒好きである。己が甲官を用神とし子午時生まれならば、たとえ子をもっても自身が危ない。
 拱禄拱貴は間にある支がない場合には高位の人と交わる。金木が交差して身がさらに弱くなるのは、自分の技芸によってよからぬことを招いてしまう。
 水土の地支で魁罡があるのは、刑を受けて牢獄にはいる。羊刃傷官が冲破にあうのは、人と交わることが少なく、頑固で凶暴な性格である。水が多く木が少なく日主が弱いのは、世間を漂浪する。
 多くの陽干が一つの陰干を合するのは、楚と漢の争いのようなもので、多くの陰干が一つの陽干と合するのは、孫と龐の争いのようなものである。冲がある場合合すれば吉であるが、妒合は本質的に凶である。




甲乙生逢寅卯辰、見坤兌而栄顕。
丙丁局全寅午戌、無刑害而名高。
戊已局全於四季、火運水旺始飛騰。
壬癸生逢申亥子、火土興途方発達。
甲日亥月、見離則壽促。乙日卯提、官郷而発福。
丙日寅月逢坤兌、火不西行。丁日遇艮、明無不滅。
壬日亥月提震運、子旺母衰。癸水運到坤山、土重露珠乾燥。
戊日寅月、到申酉、十死一生。己日酉提到寅宮、少全安逸。
陰木運遇巳宮、多被巽風吹折、到離位、烟滅氷消。
陽土陽金陽火、逢坎地、總入幽冥。
陰木陰金陰水、到離巽宮、安不慮危。
壬水生長北方無土制、定死溝澗。
此篇句句精金、当伝忠誠後学、莫付軽薄之人。
 甲乙日で寅卯辰がある場合、申酉を見れば栄誉が顕れる。
 丙丁日で寅午戌がそろうと、刑害がなければ名声は高まる。
 戊己日で四季がそろうと、火運で水が強ければ始めて飛躍する。
 壬癸日で申亥子があると、火土運にいけば発達する。
 甲日亥月は、火を見れば寿であり、乙日卯月は、官の行運に行けば発福する。
 丙日寅月で申酉に逢えば、さらに西方運に行かない方がよい。丁日丑月ならば明るさは減少する。
 壬日亥月で木運に行けば、子は旺して母は衰。癸日が未運に行けば、土が重なり露は乾燥する。
 戊日寅月で申酉に到れば、十死に一生を得る。己日酉月で寅の行運に行けば、僅かなもので満足する。
 陰木が巳の行運にいけば、多くは巽の風が吹いて折れる。火の行運なので、煙は出なくなり、氷も消える。
 戊庚丙が坎宮に逢うと、総じて黄泉の国へ行く。
 乙辛癸が離巽宮にいたれば、危険を心配することになる。
 壬水に申があって北方運で土の制がない場合、野垂れ死にする。
 この篇の句の一つ一つが重要であり、このとおり後学に伝えるのがよい。軽薄な人に教えてはならない。




凡観女命、身弱為奇。
官星得気、得禄得財称美。無殺混官、定配賢郎。無官便要看財星、財旺生官富貴。
食神禄旺有財、子貴夫栄。財官敗絶食神衰、夫亡子幼。財官得禄食神強、因子因夫誥紫章。
食神入墓、子必死。官星入墓、夫先亡。
食神重見在中央、早年父母先後傷。食神干支空亡内、後嗣良人命不長。
日時辰戌両相沖、寡守偏房継娶儂、雖然有子難登第、百歳光陰不善終。
金水傷官柱内逢、其人如玉更玲瓏。
有財帯印隨夫貴、淑質慈祥主饋中。
傷官太多更逢財、一対鴛鴦両拆開。

 およそ女命をみるに、身弱の方がよい。
 官星が気を得て、禄財を得ればよい。殺がなく(財と)官が混じるのは、よい夫を得る。官がない場合は財があった方がよく、財が旺じて官を生じれば富貴となる。
 食神で禄が旺じて財があれば、子は貴く夫は栄える。財官が敗絶で食神が衰ならば、夫を若くして亡くす。財官が禄を得て食神が強ければ、子や夫は高位にのぼる。
 食神が墓に入るのは子は必死。官星が墓に入るのは夫に先立たれる。
 食神が多く中央にあるのは、早年父母を傷つける。食神の干支が空亡であれば、跡継ぎや夫の命は長くない。
 日時に辰戌の冲があれば、夫を喪っても妾となっても再婚はせず、子があっても就職は難しい。長く生きても終わりはよくない。
 金水傷官が四柱にあるのは、その人は美しい人である。
 財あって印を帯びるのは貴なる夫に従い、貞淑で慈しみがある。
 傷官が多すぎて財に逢うのは、仲がよい夫婦でも別れることになる。




干頭戊己土重重、心内聡明欠主裁。
子午卯酉是桃花、官帯桃花福禄加。殺帯桃花貧且賤、為娼為妓走天涯。
柱中梟食忌傷官、子死夫亡大不端。食神傷官連帯財、許他有子不須猜。
柱内多財多印綬、非淫即賤不堪推。
癸日相逢用戊官、少年定嫁白頭郎。
若還亥酉支中見、好飲終宵幾換觴。
干支暗合貴人多、巧画娥眉笑語和。
支内暗蔵官帯合、偏房有寵楽安窩。
斯章説尽閨中事、純粋原来却不多、叮嚀学者留心好、莫作虚文軽藐羅。
 天干に戊己が多くあるのは、心は聡明でも判断力に欠ける。
 子午卯酉は桃花であり、官が桃花を帯びるのは福禄を加える。七殺が桃花を帯びるのは貧賎であり、娼妓となって一生を送る。
 四柱に偏印があるのは傷官を忌み、子は死夫は亡くし品行はよくない。食神傷官に財が連なるのは、子はあってもだましてはならない。
 四柱に財が多く印綬が多いのは、淫でなければ賎であり推命に堪えない。
 癸日で戊官の用神にあえば、若くして年老いた夫と結婚する。
 もし亥酉が支中にあれば、夜遅くまで何杯でも酒を飲む。
 干支に暗合貴人が多いのは、見た目がよく愛想もいい。
 支に暗に官を蔵して合するのは、妾となっての暮らしを楽しむ。
 以上のべたことは夫婦のことを語っている。これに純粋に当てはまる命式はかえって多くはないが、学ぶ者は何度も繰り返して心に留めておき、これらをうとんじ軽くみて間違ったことを作ってはならない。





あとがき

 最後の一句「莫作虚文軽藐羅」は私のこの訳のことを言われているようで、ちょっと耳が痛いです。
 ほんとは一句一句に注をつけて、正しいとか誤りだとかを判別し、できれば命式例を挙げながら説明できればいいのですが、それはとりあえず後回しにして、まずは原文をUPしました。
 ところどころ意味がわからないところがありますし、うまく日本語に翻訳できていないところもありますので、皆さんで原文を熟読玩味して、考えていただければと思います。



作成 2008年11月 9日
改訂 2020年 7月12日  HTML5への対応、一部見直し