「金不換看命縄尺」原文と訳


はじめに

 「金不換看命縄尺」は『命理正宗』の中に収められています。「金不換」とはどういう意味かといえば、お金には代えられないというぐらい貴重という意味だそうです。作者の意気込みみたいなものを感じます。
 一句一句について、詳しく解説を添えるといいのかもしれませんが大変なので、みなさんの方でそれぞれの句の由来を考えてみていただければ幸いです。




財官旺而日主弱、運行身旺最為奇。
日主旺而財官弱、運行財郷名利馳。
 財と官が旺じて日主が弱い場合、身旺の行運に行けば非常によい運となる。
 日主が旺じて財官が弱い場合、財の行運にいけば名利があがる。

 とくに問題はないと思います。要は日主と財官の調和が大事です。財は官を生じますから、財の行運にいけば名利ともにあがるということです。


身旺比劫重、損財又傷妻。
比劫逢梟食、妻遭産裏危。
逢官官入墓、父死他郷土。
支干官鬼衆、兄弟最難為。
傷官四柱見、伯道老無児。

 身旺の上比肩劫財があれば、財を損ない妻を傷つける。
 比劫が倒食(偏印)にあえば、妻は難産の危険がある。
 正官があってもその正官が墓に逢えば、父はよその国で死ぬことになる。
 命中に官殺が多いと、兄弟はいないか役に立たない。
 命中に傷官が多いと、子を捨てまた老いて児がない。

 変通星の関係で書かれていることは素直に理解できると思います。単純にそのとおりにはなりませんが。
 当初、伯道の意味がわからなかったのですが、占術研究家のとーめいさんのご好意で意味がわかりました。『晋書 良吏伝』に載っている鄧攸(字が伯道)のことです。ちなみに、漢詩では普通に使われる語句だそうです。



地支純財局、大富大貴不須疑、若行官旺運、納粟奏名賢。
去官留殺者、威顕在辺夷。
財旺暗生官、用賄求名利。
棄印就財者、孑立整根基。

 地支が喜神の財局をなせば、大富大貴必ず疑いなく、もし官が旺じる行運にめぐれば、非常に金持ちになり名声もあがる。
 (喜神の)官殺のうち官が取り去られ殺が残る場合は、辺地で大いに権威を持つ。
 財が旺じ暗に官を生ずるのは、賄賂で名誉を得ようとするものである。
 印を棄てて財に就くのは、独立して生活する。

 また納粟とは買官、すなわち金で地位を買うことのようで、単なる金持ちというわけではなく、そういうニュアンスがあるということをここでは付け加えておきます。
 「暗生官」とは、暗冲暗合や地支拱夾のことだと思われますが、それよりも命式中に正官がないか弱い場合に行運で官が巡ってくる場合と考えた方がいいと思います。
 印を棄てて財に就くというのは、印が弱くなり財が強くなることでしょうが、頼りにするものがない状態ということになります。


偏印及傷官、女人最須忌、刑夫併害子、独自守孤幃。
傷官見官者、運喜入財地、名標龍虎榜、身到鳳凰池。
 偏印と傷官は、女命にとって最も忌むべきものである。夫を刑しそのうえ子を害すれば、独身をつらぬくことになる。
 傷官見官ならば、行運で財が巡ってくるのをよろこぶ。名は龍虎榜に表れ、身は鳳凰池に至る。

女命にとって夫星は正官で夫の位は日支、子星は食神で子の位は時柱です。すなわち正官と食神を壊す偏印と傷官は良くなく、また日支や時柱を壊せば、家庭は持ちにくいということでしょう。もちろん単純にはそうは言えないのでありますが。
 刑害とは刑と害ではなく、剋刑冲破害全般のことでしょう。
 鳳凰池とは天元一気格のことですが、天元一気のことを示すのではなく、一般的な名詞で宮中の池と解するのが良いと思います。すなわち試験で上位に合格し、高い地位に上るという意味です。


比劫偏印格、傷官受剋制、姪男為親嗣、義女為偏妻。
 比劫偏印格で、傷官が剋制を受ければ、おいを跡継ぎにし、義理の娘を妾とする。

 比劫は兄弟もしくは息子の妻であり、偏印は継母または母親の兄弟です。傷官は子供を剋すものですが、妻の母親でもあります。変通星の象意から「おいを跡継ぎにし、義理の娘を妾とする」とは導けませんが、こういう事例があったのかもしれません。


偏官制伏過、僧道守閑居。
財多身弱者、溺水及漂死。
 偏官の制伏が強すぎれば、宗教の道に入り独身を守る。
 財多身弱は水におぼれたり野垂れ死にしたりする。

 殺が強い場合は日主、財ともに弱めるので、上のような判断となるのでしょう。
 財多身弱は変通星の象意からは出てこないのですが、古書には横死すると書かれていますし、実占上もそういう例が多いように思います。


身旺而敵殺、衣紫及穿緋。
虚邀併暗拱、早歳歩雲梯。
夾貴併六合、陶朱堪足擬。
 身旺で七殺に対抗できるなら、高い地位に上る。
 虚邀が暗拱と併せれば、若くして出世する。
 貴人をはさみその支の六合があれば、陶朱もかなわぬほどの才覚の持ち主となる。(陶朱は人名)

 身強殺旺の命は、中央よりは地方で高位に昇るイメージが私にはあります。
 「邀」というのは迎えるとか求めて得るとかいう意味があります。「虚邀併暗拱」とはいわゆる拱禄格のことかと思います。また「夾貴」は拱貴格です。これらの格については、別のページを参照してください。


得一分三格、前賢皆掩蔽。
此術莫軽伝、泄漏天之機。
 得一分三格は、以前の賢者は皆覆い隠してしまう。
 この術は軽々しく伝えてはならない。天の秘密を洩らすことになる。


 よくわかりませんが、得一分三格とは雑気財官印綬格ではないかと思います。というのは土支(雑気)というのは3つの蔵干を持っているためです。条件によっては富貴の命となります。




あとがき

 ここでは、変通星(六親)が実際にどう表れるかを記述していますが、極端であり、また現代にはそぐわない面もありますので、この文をそのまま適用することは適当ではありません。それなりにアレンジが必要でしょう。四柱推命の古典を読むとよくあることではあります。



   作成  2009年 1月 4日
   改訂  2017年 4月23日  HTML5への対応と若干の修正