"hiroto的"金玉賦 原文と訳


■ はじめに

 「金玉賦」は『淵海子平』をはじめ多くの古書に引用されており、四柱推命では重要な文献とされています。原文は検索すれば多くのウェブサイトが見つかります。ここではサイト上の原文の他、手元にある『命理通鑑』も参考に、原文と訳および私なりの解説を加えています。

■ 本文


数体洪範、法遵子平。
命天地之奧妙、聴空谷之傳聲。
一気流行、則冬寒而暑。
三陽生発、自春長以秋成。
竊聞既生有滅、若虧有盈。
造化帰源、盡返寅申巳亥。
五行蔵蓄、各居四季丘陵。
生長有時、自春夏秋冬之属。
旺衰有数、察貧賤富貴之機。

数は洪範に示され、法は子平に遵う。
推命の世界の奥深さは、空谷の伝声を聴くようなものである。
一気は流れて行き、冬は寒くそしてまた暑くなる。
三陽が発生して、春より時が過ぎで秋となる。
人知れず聞く、生ずるは滅し、欠ければまた満つる。
人の帰源は、ことごとく寅申巳亥に返る。
五行の蔵蓄は、それぞれ四季丘陵にある。
生長に時あり、春夏秋冬の季節よりはじまる。
旺衰に数あり、貧賎富貴の時期を察する。

 「洪範」とは『書経』の章の名称で天下の大法について述べたものですが、その冒頭に五行が出てきます。おそらく五行のことを指しているものと思います。
 空谷の伝声とは「千字文」にある言葉です。
 そのあとを直訳しているものの意味がよくわかりませんが、私は次のようにとらえています。
「四柱推命の原理というのは五行に基づいており、季節の流れと同じようなものである。季節は循環するもので生長と消滅を繰り返す。季節は生に始まり旺墓とつづく。この旺衰の流れによって貧賎富貴を推察する。」
 なお「四季丘陵」とは「辰戌丑未」のことでしょう。土支は庫と言われます。



搜尋八字、專論財官、次究五行、須詳気候。
論財官之軽重,察気候之浅深。
推向背財官之得失,論當生格局之高低。
他来剋我為官鬼,身旺當權。
我去剋他為妻財,官強則富。
年傷身主,乃父與子而不親。
時剋日辰,是子不遵於父命。
年剋日兮,下去犯上。
若得有物制日干,則可化悪為詳。
更要本主逢喜神,則将凶而変吉。

八字を捜し尋ねれば、専ら財官を論じ、次に五行を究め、須らく気候を詳らかにする。
財官の軽重を見るには、気候の深浅を察する。
財官の得失の成り行きを推すには、まさに格局の高低が生じるのを論ずる。
我を剋するものは官鬼とし、身旺ならばまさに権をもつ。
我が剋するものは妻財とし、官強ければすなわち富である。
年が身主を傷つけるのは、父と子が親しまず。
時が日辰を剋するのは、子が父の命に従わない。
年が日を剋すのは、将来上に楯突く。
もし日干を制するものがあれば、悪となるか細かくみる。
更に日主が喜神に逢うなら、まさに凶は吉に変じる。

 昔は出世といえば政治か官僚になること、あるいは金持ちになることでしたから、財官というのが非常に重要であったというのは当然といえます。財官と日主の関係は書いてあるとおりですが、財と官との関係は財生官であり、まあ言ってみれば金が地位を生むみたいな感じでしょうか。
 後半の記述は訳を見ればわかると思います。財官日主がともに強ければ富貴の命といえます。



喜神慶會,當知資産豊隆。
四柱無情,定見禍端並作。
或見本主相衝,三刑重畳,歳運欺凌,必招横事。
純粋五行入格,臺閣風清。
身強七殺降伏,藩垣鎮守。
無財官而有格局,青雲得路。
無格局而有財官,黄門成名。
財官格局俱損,不貧寒而功名蹭蹬之人。
日干月令俱強,非窮困必草茅永逸之士。

喜神が慶会すれば、まさに資産が豊かであると知る。
四柱が無情ならば、おそらく災いの端緒が多い。
本主が冲となる場合、三刑が重ねており、行運にも傷められれば、必ず横事を招く。
純粋な五行が入格すれば、高位につき清廉である。
身強で七殺が抑えられれば、城を治める。
財官がなく格局があるのは、青雲得路である。
格局がなく財官があるのは、黄門成名である。
財官格局ともに損なうのは、貧寒でなくとも功名なく挫折する人である。
日干月令ともに強いのは、困窮することはなく在野にいても幸福な人物である。

 無情というのは少々難しい概念ですが、まあ力不足といえばいいでしょうか。
 私の実占経験からは支の冲、刑が重ねてあり、またそれに行運が絡んでくると確かに事故やケガなどをしやすいように思います。
 「青雲得路」とは青雲に路を得る、富貴というよりは高位で超然とした感じでしょうか。また「黄門成名」とは黄門に名を成す、政官界、現代では財界も含んでいいかもしれませんが、そこで名声を得るということでしょう。



丙丁坐南離而無制,是不遵禮法兇暴之徒。
壬癸遇戊己之相應,乃懐徳抱才聡慧之士。
辛逢乙木於南墓,雖富而不仁。
丙逢辛金於北鎮,縦貧而有徳。
年時月令有偏印,凶吉未明。
大運歳君逢壽星,災殃立至。
幼年缺乳,食神遭刑剋之宮。
壮歳崢嶸,乃財官居純粋之位。
陽日食神得地無衝損,則暗合官星。
陰日食神無破虧,雖契合則自親。

丙丁が南離に坐して制がなければ、礼法に従わない凶暴の徒である。
壬癸が戊己に相応じていれば、徳を持った聡明な人物である。
辛が乙木と南墓(未)であえば、富があっても仁ではない。
丙が辛金と北鎮(丑)であえば、たとえ貧であっても徳がある。
年時月令に偏印があっても、吉凶は明らかではない。
大運歳君に寿星(食神)があれば、災いが起こる。
幼年に乳に事欠くのは、食神が刑剋に遭うからである。
壮年に頭角を顕すのは、財官が純粋な位置にあるからである。
陽日で食神が地を得て冲剋を受けないのは、すなわち官星と暗合する。
陰日で食神が破損しなければ、合とするのは自らの親である。

 丙丁が南離に坐するとは丙午、丁巳ということで、丙丁が強くなります。火は五常でいえば礼にあたりますから、凶暴というか自制心に欠けるということになります。次の水土の関係も五常で説明できます。
 南墓は未、北鎮は丑ということでしょう。
 偏印というのは倒食というぐらいですから、食神に遭うのは一般的によくありません。
 陽日の食神は陽干となります。例えば甲木の食神は丙火ですが甲木の正官は辛金で丙火と干合します。陰日の食神は陰干となります。例えば乙木の食神は丁火ですが、丁火の合は壬水であり印綬ですから親ということになります。



印綬偏財,能益壽延年。
羊刃七煞,善奪財化鬼。
財星有破,費祖風別立他郷。
印綬披傷,失宗業抛離故里。
人命以貴神為福,遭剋陷則凶禍不詳。
五行會凶曜為災,喜令殺并食神為貴。
命虧殺旺,要天赦二徳呈詳。
身弱財豊,喜羊刃兄弟為助。
月令値食神健旺,喜飲食而姿質豊満。
四柱有吉曜相扶,堆金積玉。
五行無凶殺侵犯,名顕聲揚。
寅申巳亥畳犯,有聡明生発之心。
子午卯酉重逢,害酒色荒淫之志。

印綬と偏財があれば、長生きすることができる。
羊刃七煞は財を奪って鬼と化する。
財星に破があれば、先祖の財を費やし他郷で身を立てる。
印綬に傷があれば、祖業を喪い故郷から離れる。
命に貴神があれば福とし、剋陥に遇っても凶禍になるかはわからない。
五行が凶曜に会えば災いとするが、七殺が食神とあって喜であれば貴とする。
命が弱く殺が旺ならば、天赦二徳を詳しく見る必要がある。
身弱で財が豊かなのは、羊刃を喜び兄弟を助となす。
月令が食神で健旺なのは、飲食を喜び容姿体質は豊満である。
四柱に吉曜があり相扶であれば、金を堆し玉を積む。
五行に凶殺が侵犯することなければ、名声が上がる。
寅申巳亥は重ねて犯せば、聡明で行動的である。
子午卯酉が重ねて逢えば、酒色の害や淫にふける。

 この部分だけではありませんが、命式の干支関係をよくよく見てバランスを考える必要があります。
 財というのは養命の源ですが身が強い必要があります。羊刃はすなわち劫財ですから財を奪うのは当然です。
 財や印についてはその象意から推察できることです。
 凶曜ははっきりわかりませんが、いわゆる七殺、傷官、倒食(偏印)、劫財羊刃を指すものと思います。逆に吉曜とは財、正官、印綬、食神でしょう。これらの関係が重要だと述べているわけです。
 寅申巳亥の四孟支は長生であり駅馬にもなりますので聡明で行動的という象意が生まれます。子午卯酉の四仲支は沐浴桃花になりますので酒色や淫という象意があります。



女人無殺,一貴何妨。
喜逢天月徳神,忌見殺官混雑。
貴衆則舞裙歌扇,合多則暗約偸期。
五行健旺,不遵禮法而行。
官殺互逢,定是風聲之配。
迴眸倒插,泛水桃花,沐浴裸形,螟蛉重見、多為奴妾娼妓,少有三貞九烈。
雙魚雙女號淫星,不宜多犯。
官星七殺曰夫主,忌見重逢。
寅申互見性荒淫,巳亥相逢心不已。
或有傷官之位,不遠嫁定主剋夫。
臨衝梟印之神,非孤離終須死別。
四柱有官鬼入墓,使夫星久入黃泉。
歳運臨夭絶之宮,俾鴛配分飛異路。
要知女命難婚,運入背夫之位。

女性に殺がなければ、一つの貴があればよい。
天月徳神に逢うのを喜び、官殺混雑を忌む。
貴が多いのは芸妓となり、合が多いのは秘密裏に約束をする。
五行が健旺なのは、礼法に従わずともうまくいく。
官殺が互いに逢うのは、風評が交錯するであろう。
迴眸倒插,泛水桃花,沐浴裸形,螟蛉を重ねて見るのは、多くは妾や娼妓となり、貞女は少ない。
双魚双女は淫星といい、多く犯すのはよくない。
官星七殺は夫とし、重ねて逢い見るのを忌む。
寅申の冲は性が荒淫、巳亥の冲は心が落ち着かない。
傷官があれば、嫁ぐことがあっても夫を剋す。
偏印との衝に臨めば、孤独にならなくても最後は死別する。
四柱に官鬼があって墓に入れば、夫星は長く黄泉に入る。
歳運が夭絶の宮に臨めば、仲がよくても別々の道を歩む。
女命の離婚を知るには、行運が夫に背く干支に入るときである。

 ここは女命についての論です。
 最初の句の貴というのは正官のことだと思います。女命には正官が一つだけあるのがよい、すなわち夫星は一つで貞節を尽くすということでしょうが、今どきの女性にはふさわしくない論でしょうね。
 上の中ほどの桃花については別のページで論ずるつもりですが、ここでの「螟蛉」がよくわかりません。もともとは蛾やジガバチの幼虫のことであり、転じて養子という意味ですが、私の考えではこれは陽錯陰差のことではないかと思います。
 双魚、双女とはうお座おとめ座のことであり十二宮では亥巳を示します。ただここでは後に寅申巳亥が出てきますので、もしかすると建月である卯酉のことを指しているかもしれません。
 傷官は正官の七殺ですから夫を剋すのは容易にわかりますが、偏印との衝とはどういうことでしょうか。例えば乙日主の場合、正官は庚、傷官は丙、偏印は癸となります。この場合癸は丙を剋すので正官庚は丙の害を軽減できますが、癸は庚を洩らしますので弱くなります。
 夭絶というのは絶滅の意味であり、夫星正官が極端に弱くなる行運のことを指していると思います。
 ここは女命の話ですが、結局よい結婚が女性の最大の幸福だという往時の観念に基づいているので、現代においては全く参考にならないとまではいいませんが、割り引いてよむ必要があるでしょう。



欲識男児早娶,定是運入財郷。
子剋重重,殺没官衰傷食重。
傷妻畳畳,財軽身旺弟兄多。
若不如斯,定是刑衝妻妾位。
暗合財星妻妾衆,虚朝財位主妻多。
財星入墓,必定刑妻。
支下伏神,偏房寵妾。
妻星明朗,喬木相求。
大運流年,三合財郷,必主紅鸞吉兆。
或臨財敗之宮,家貲凌替。
傷妻損妾,婚配難成。
妻星失位在何宮、要求端的官禄天厨、
居其位須察根源有格局純雑忽遇悪物相衝亦主死亡。

男性の結婚は、まずは行運が財に入るのをみる。
子を剋するのは、殺が没し官が衰え食傷が重なるときである。
妻を傷つけるのは、財が軽く身が旺じ比劫が多いときである。
もしこのようなことが見られなければ、まず妻妾の位が刑衝になっていないかをみる。
財星と暗合すれば妻妾が集まり、財位に向かうものがなければ妻が多いものである。
財星が墓に入れば、必ず妻を刑する。
支下が伏神であれば、妾を囲う。
妻星が明朗であれば、背の高い樹木を相求める。
大運流年が財で三合であれば、必ず婚姻の吉兆がある。
また財敗が臨めば、家の財産は減っていき、
妻を傷め妾を損ない、婚姻は成りがたい。
妻星がどこの宮で位を失うか、官禄や天厨をみて、
その位の場所やその根源を推察して格局の純雑をみてたちまち悪物や相衝に遇するのは死亡となる。

 男性にとって財星は妻妾であり、また妻妾の位とは日支です。さらに男性にとって子供は官殺です。要は、財や官殺、日支の強弱をみることがそれらを知ることが婚姻などの吉凶を示すというわけです。



無財禄或逢財禄旺相、亦當驟発。
日求升合、食神旺処劫財多。
或逢偏印剋食神,非貧夭寿。
須知乞化、要審栄枯得失、當究軽重浅深。
官禄殺強、無制則夭。
日衰財重、党殺則窮。
更看歳運何凶何吉;
身宮衝破無依倚、不離祖必出他郷。
乾坤艮巽互換朝、好馳騁則心無定主。
柱中若逢華蓋、犯二德清貴之人。
官星七殺落空亡、在九流任虚閒之職。

財禄がなくとも財禄旺相の行運になれば、まさにすみやかに発展する。
毎日の食事にも事欠くのは食神が旺じて劫財が多い場合である。
あるいは偏印が食神を剋せば、貧乏でなければ夭折する。
貧乏となるのを知るには、栄枯得失を明らかにして、軽重深浅を究めなければならない。
官禄殺強は制がなければ夭折する。
日主が衰え財が重いのは、殺を強めて困窮する。
さらに大運流年の吉凶をみる。
身宮が衝や破で頼るのものがなければ、祖(家系)を離れずとも必ず他の土地に出る。
亥申寅巳が互いに向き合うと、動きまわることを好み落ち着くことがない。
命式に華蓋があり、二徳を犯せば清貴の人である。
官星七殺が空亡であれば、学者であっても閑職にしか任じられない。

 ここでは財官と成敗について述べています。  日求升合というのは毎日一升一合の米を求めるということで食事にも事欠くというような意味です。



五行剋戦,非傷日主不為災。
歳運併臨,若損用神皆有禍。
木逢金剋,定主腰肋之災。
火被水傷,必是眼目之疾。
三合火神旺盛剋庚辛,損頭面及膿血之疾。
如傷日干,及財官太盛,折肢體眷恋之災。
心肺喘満,亦本金木相刑。
脾胃損傷,蓋因土木戦剋。
支水干頭有火遭水剋,必主腹心朦。
支火干頭有水遇火旺,則内障睛盲。
火土煩焦蒸四曜,則髮禿眼昏。
潤下純潤充気,返神清骨秀。
熒惑乗旺臨離巽,風中失音。
太白堅利合兌坤,兵箭落魄。

五行の剋戦は、日主を傷つけなければ災いとはならない。
流年大運が併せて臨むとき、用神を損なえばみな禍となる。
木が金の剋に逢えば、おそらくは腰や背腹の災いがある。
火が水に傷められれば、必ず目の病となる。
火の三合があり庚辛を剋すれば、頭や顔を傷つけ、膿などの病となる。
もし日干が傷つき、財官が強すぎる場合は、手足を折ったり思い悩んだりする。
心肺機能低下には、もともと金木相刑がある。
消化機能低下には、もともと土木戦剋がある。
地支に水があり天干に火があって水の剋に遭えば、必ず心臓や身体の働きが悪くなる。
地支に火があり天干に水があって火の旺に遇えば、すなわち視覚障害が起きる。
火土が多く四曜を焦がし蒸してしまえば、すなわち頭は禿げ目は悪くなる。
純粋な潤下で潤いで気を充たすのは、かえって見た目も性格もよいものである。
火が旺じて巳午に臨むのは、急に言葉が出なくなる。
金が堅く鋭く申酉に合うのは、矢を射られて落ちぶれる。

 ここでは健康や病気について述べています。ここで注意すべきは、始めに「五行の剋戦」という語があるように、健康や疾病というのは五行関係をみるということです。変通星ではありません。また日主が傷つかなければ健康には問題ないと最初に述べています。



財星入墓,少許刑衝必発。
傷官傷盡,或見官星則凶。
十有八格,当従善悪推求。
総繫五行,各取旺衰消息。
身旺何労印綬,身衰喜不喜財官。
中和為福,偏党為災。
但見貴神朝拱,禄馬飛天。
遙合虛邀,不得衝格。
逢合皆忌,七殺官星。
各嫌羈絆,填實則凶。
忽然運到官郷,當以退身避職。
馬瘦官破,困守窮途。
禄旺財豊,崢嶸仕路。
如臨喜処以得禍,是三合而隠凶星。
或逢凶処而返祥,乃九宮而露吉曜。
要知職品高低,当求運神向背。
清奇則早歳成名,玷缺則晚年得地。
運行則一宮十載,流年乃逐歳推移。
津路通享,権高爵顯。
程途偃蹇,禄薄官卑。

財星が入墓すれば、少しの刑冲でも必ず発する。
傷官が傷じ尽くすのは、さらに官星をみれば凶となる。
格局の8割は、良いか悪いかを推求しなければならない。
五行の全体の関係をみて、それぞれの五行の強弱の状況をみる。
身旺なら印綬を労することなく、身衰なら印綬を喜び財官を喜ばず。
中和は福となし、偏りや集まりは災いとする。
ただ貴神をみて朝拱するのは禄馬飛天である。
遙合は虚を求めるもので、衝を得ない格である。
合に逢って忌むのは、七殺官星である。
それぞれ合を嫌い、填実は凶である。
官殺の行運に行けば、身を退き職を避する。
馬が痩せ官が破れ、困窮することになる。
禄が旺じ財が豊かなら、官職は高いものになる。
もし喜神が臨んでいても禍を得るのは、三合にあたり凶星が隠れているからである。
また凶神に逢っても反って吉祥なのは、九宮に吉曜が顕れるからである。
職位の高低を知るには、まさに行運の向背を求める必要がある。
清で奇であるのは若くして名をなし、欠点があるのは晩年に地を得る。
大運は一宮で十年であり、流年は各年のうつりかわりをみる。
行運が良いのは、権力をもち地位が高くなる。
行運が良くないのは、禄が少なく地位も低い。

 ここでは成敗について述べています。昔の中国は科挙に合格して役人になり出世するのが男にとっての成功であり、「崢嶸仕路」とか「権高爵顯」などという言葉で立身出世を重んじているわけです。もちろんお金も大事ですが、お金はだいたいは地位についてくるので、高位につけば「禄旺財豊」になるというわけです。
 途中に「九宮」という言葉が出てきますが、これは奇門遁甲でいう九宮ではなく命式や命宮、身宮、行運などをひっくるめた言い方をしているのだろうと思います。



推尋子位,先看妻宮。
死絶者嫡庶難存,太旺者別門求覓。
妻星顕露,子息必多。
刑害嗣宮,男女罕得。
若問兄弟多寡,細検四柱干支。
月令雖強,更看運神向背。
死絶刑傷,雁行失序。
相生喜慶,棣萼聯栄。
兄弟身旺,父命有虧。
財帛旺多,母年早剋。
若見官鬼出,母反長年。
如逢脱気排運,父還有壽。

子の位を推し尋ねるには、まず妻宮をみよ。
死絶ならば子供は得難く、強すぎるならば別門を求める。
妻星が顕れれば、子息は必ず多い。
子女宮が刑害にあえば、男女とも得難い。
もし兄弟の多寡を問えば、四柱干支を細かくみるべきである。
月令が強いといっても、行運の向背を見なければならない。
死絶刑傷があるのは、兄弟と死別することがあるものである。
相生であれば喜びごとがあり、兄弟ともに栄える。
兄弟身旺なら、父命を損なうことがある。
財帛が多く強ければ、母を早くに剋する。
もし官鬼があれば、母はかえって長生きである。
もし脱気排運に逢えば、父はかえって長生きである。

 ここでの論は五行関係(男性にとって)に沿ったものになっています。すなわち財は妻であり父親、印は母親、官殺は子女、比劫は兄弟で、これらの五行(あるいは変通星)の関係をみれば自ずと導ける論です。



壬臨午位,癸坐巳宮,稟中和兮。
禄馬同郷,遇休囚也。
胎元絶地:
丙臨申位,庚坐寅宮,巳入巽方,
乙臨雙女,金乘火位,甲坐坤宮。
名曰休囚,最嫌剋制。
七殺忌逢言喪魄,寿星欣遇曰還魂。
天命能施智力,難出網羅。
造化幽微,乃除功妙。
貧寒将盡,能令白屋出公卿。
奢侈太過,反使朱門生餓殍。
家貲将廃,定生不肖之男児。
婚媾多刑,必娶無寿之妻。
四宮背禄,不可妄求。
官将不成,財當見廃。
八字無財,須求本分。
越外若貪,必招凶事。

壬が午位に臨むか、癸が巳宮に坐すのは中和の気を受ける。
禄馬同郷というのは休囚に遇うのである。
胎元絶地は、丙が申位に臨む、庚が寅宮に坐す、己が巽方に入る、乙が双女に臨む、金が火位に乗ずる、甲が坤宮に坐す。名付けて休囚といい、最も剋制を嫌う。
七殺忌に遇うのを喪魄といい、寿星欣に遇うのを還魂という。
天命はよく知力を施すも、網羅より出るのは難しい。
造化は幽微であり、すなわち功妙を除する。
貧寒がまさに尽くせば、貧しい家から公卿が出る。
贅沢が過ぎれば、富貴の家でも餓死する。
財産が廃れるのは、きっと不肖の男児を生ずる。
婚姻に刑が多いのは、必ず短命の妻をめとる。
四宮が背禄なら、みだりに求めてはいけない。
官が不成なのは、財がまさに廃れる場合である。
八字に財がないのは、須らく本分を求めるべきである。
分を過ぎてむさぼるならば、必ず凶事を招く。

 壬午、癸巳日は禄馬同郷格で地支に財官を含むため休囚の地にあると言えますので、身旺を喜び地支が冲されるのを忌みます。
 胎元絶地は胎元が絶ということですが、その後を見ると必ずしも絶ではありませんが、干が弱くなる関係である(休囚)支といえますので、干は剋制を嫌うというのはそのとおりです。なお巽は辰巳、双女は双子座で申であり、坤は未申です。
 喪魄や還魂は神殺ですが、ここでは七殺忌神を喪魄、食神喜神を還魂と言っていると思います。
 次の「天命能施智力…」と続く2句は『命理通鑑』からは省かれていますし、『三命通会』では「天命能施、知力難出、綱維造化、陰功可奪」となっています。どう解釈すればいいかよくわかりませんが、私思うに、天命というものは人知では推し量れず、無理に変えようとしても結局うまくいかない、ということではないかと思います。ちょっと無理矢理という感じの訳ですが。
 次からの句は一般論のようですが、六神の作用のことだと思います。官殺と印と財の関係を示していると思います。すなわち地位や子女、福徳、財産の喜忌や強弱の関係を述べているものと思います。また背禄という言葉が出てきますが、傷官ともとれますし喜神である建禄が壊されるという意味にもとれます。



噫、甘貧養拙,非原憲之不才。
鼓腹吹簫,使伍員之挫志。
順則行,逆則棄。
知命楽天,困窮合義。
洪範数終,淵源骨髓。

ああ、貧に甘んじ拙を養うは、原憲の不才にあらず。
鼓腹吹簫は、伍員の志を挫かせる。
順ならば行い、逆ならば棄てる。
命を知り天を楽しむ、困窮も義に合う。
洪範の数を終われば、淵源骨髄となる。

 この部分はいわゆる頌という部分ですが、古典に依拠したものとなっています。大胆に意訳をすれば、次のようになります。
 貧に甘んじ生まれ持った命を守るのは才能がないというわけではない(子思の故事)。乞食となって志を挫かれても最後には果たす(伍子胥の故事)。順調であれば行い逆境ならばやめる。命を知り天を楽しみ、困窮もまた意味のあることである。五行の働きを知り尽くせば、天命の根本まで深く知ることができるのである。
 推命してどのような結果を得るにせよ、それに則した生きるのも一つの生き方であるし、一方伍子胥のように雌伏していずれ志を遂げるということもまたある、ということでしょうか。私はこれまでの経験からは、ある程度諦観して生きる方が楽のように思います。ちょっと偉そうな言い方ですが。



   作成 :  2024年10月23日  

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