「金不換骨髄歌断」原文および訳と解説


はじめに

  「金不換骨髄歌断」は、『命理正宗』の中に収められています。これは、日干対月支で分類したときの大運の喜忌を表したものです。
  「金不換」とはお金には代えられないというぐらい貴重という意味で、やはり作者の意気込みを感じますが、私もこの文は、張楠の考えの凝縮だろうと思います。
 本ページには原文と訳、そして解説を加えます。原文は主として武陵出版の本をもとにしていますが、海外のウェブサイトの原文も参考にしました。訳は直訳を基本にしていますが、一部は意訳しています。解説については、『金不換大運詳解』(梁湘潤著)を多く参考にしています。ただし、私の考えも述べています。




「金不換骨髄歌断」


【甲日主 大運】

甲日子提為印綬、順行不似逆行高、
官多殺盛東為美、午未相逢総徒労。
陽木天元値丑提、分明大運喜東西、
発財発福多栄達、午未之中亦不宜。
甲木生東値孟春、財多殺重定超群、
順行火地多難顕、逆走終為富貴人。
甲木春生値卯提、柱中有殺最為奇、
不拘順逆東南地、申酉相逢反不宜。
甲木辰提喜有官、逆行東地弗為歓、
順行南地多顛倒、除是根深富貴看。
陽木根深有巳月、柱中財殺喜相逢、
逆行早歳声名顕、順運須防夭寿終。
甲木日干居午月、傷官木火喜生財、
順行怕入西方運、東北行来更妙哉。
甲木有根生六月、財官有気福非常、
逆行最喜東方運、惟恐初生寿不長。
甲木無根値孟秋、財多殺旺恨身柔、
運行順地遅方好、逆順須防夭更休。
甲木酉提用正官、順行坎地必成歓、
逆転南離官被制、須知禄尽見閻王。
甲木戌提用財官、順運東南福更寛、
若得柱中逢亥未、逆行名姓達金鸞。
甲木生元値亥提、柱中有殺更為奇、
中年最喜東方運、午未之中数不斉。
 甲日子月生まれは月は印綬であり、順運よりは逆運の方がよい。官が多く殺が強い命式では東方運に行くのがよい。午未ともに逢うのは総じて苦労する。
 甲日丑月生まれは、大運が木金運のどちらを喜神をするかを明らかにすべきである。そのときは発財発福し栄達多い。しかし、午未の間はよくない。
 甲日寅月生まれは、財多く殺が重いのはきっと群をぬく。順運の場合は火運になれば名が顕れるのは難しくなり、逆運の場合はついには富貴の人になる。
 甲日卯月生まれは、命式に七殺があって、順運逆運にかかわらず東南の行運が最もすばらしく、申酉があるのはかえってよくない。
 甲日辰月生まれは、正官があるのを喜び、その場合逆運で東に行くのは喜ばず、順運で南方運に行くのも多くはよくない。それを除き根が深ければ富貴となる。
 甲日巳月生まれで根が深いのは、命式に財と殺があるのを喜ぶ。逆運であれば東方運になるので早くから名声があがり、順運では夭折、寿命が尽きるのを注意しなければならない。
 甲日午月生まれは、木火傷官で火が財(土)を生じるのを喜ぶ。順運で西方運に入るのを怕れ、逆運で東方運から北方運に行くのはいっそうすばらしい。
 甲日未月生まれで根が有れば、財官に気があれば福はすばらしく、逆運は東方運に入るのがよく、ただ順運で初めに生があるのは寿命は長くないのを恐れる。
 甲日申月生まれで根がないのは、財が多く殺が旺じている場合は日主が弱いのをうらみ、順運では好運は遅くなり、順運逆運とも夭折したり運が悪くならないようにしなければならない。
 甲日酉月生まれは正官用神であり、順運で水運に行くのを喜び、逆運で火運に行き官が制せられるのは、禄が尽き夭折することを知らなくてはいけない。
 甲日戌月生まれは財と官が用神になるが、順運で東方運南方運に行くと福がさらに広がり、もし命式に亥未があれば、逆運であっても名は非常にあがる。
 甲日亥月生まれは、命式に殺があれば、中年で東方運に行くのはさらにすばらしく、午未運の間は運命はまちまちである。(非常によくない意)

 子月の場合印綬ですから、概して日主が強いと判断でき、若年から中年にかけて官殺運である西方運に入った方がいいというわけです。しかし、命式中に官殺が多い場合は、順運がいいというのは、強弱の面から当然です。
 丑月の場合は、甲日子月も同様ですが、午未運はよくないと言っています。午未は月支の冲と害にあたるわけですが、それだけで果たしてよくないといえるかどうかは正直いってよくわかりません。 寅月の場合、解説によると、財殺が必要かどうかをまず検討せねばならないとあります。財殺が必要な場合にはこの句が生きてきます。次の卯月も同様です。
 辰月の場合は、訳がちょっとまずいのですが、根が深いことが条件で、その場合は正官があるのがよい、東南運は喜ばないというふうに考えた方がいいでしょう。
 巳月の場合、東方運はいいが午未運はよくないと言っているわけです。
 午月の場合、木火傷官なら甲が強いことが望まれます。
 未月において、初生というのがよくわかりませんが、この部分の本意は、財官がある場合、逆運なら寅卯運がよく、申酉運はよくないということを言っていると解説にはあります。
 申月の句では、午未も酉戌もよくないと言っていると思います。
 巳月生まれから酉月生まれまで、午月を除けば夭折することに言及しています。
 亥月の場合には、七殺が無条件にいいわけではなく、まず七殺を喜ぶ状況かを見極める必要があります。
 以上、甲日全体に言えることですが、官殺喜神の場合は、官よりも殺の方がより活躍する(いわゆる「奇」)可能性が高いといえるでしょう。


【乙日主 大運】

乙日生月居子中、更無官殺喜匆匆、
順行大運非常美、無殺無官逆運通。
乙木提綱値丑宮、南方第一次西東、
縦然名不登金榜、豪富終須比石崇。
乙木寅月木傷官、財殺相逢更有歓、
順運連行多福禄、無財無殺亦貧寒。
乙月提綱値仲春、財官有気亦超群、
火金大運皆為美、白手興家邁等倫。
乙木辰提為雑気、西方大運亦為高、
若行戌運多顛倒、刑併人財寿不牢。
乙木相逢孟夏時、運行東北始為奇、
柱若更植無根裔、順運終防寿不斉。
乙木如逢午月天、食神有気怕身軽、
柱中有是根基薄、大運提防喜逆行。
未月生逢乙日主、柱中官殺亦為歓、
順行西北傷寿元、逆行東南福更寛。
乙木生来値孟秋、財官印綬忌身柔、
中年不許行西北、順行無如逆運通。
乙木酉月殺多強、大運功名佐廟廊、
若是多根尤更妙、南行火運貴非常。
乙生戌月多財殺、唯恐初生疾病重、
若到中年多発達、不拘順逆総宜行。
乙木居亥印生身、逆走西南富貴真、
有殺有官猶喜順、到頭大限怕逢辰。
 乙日子月生まれは、官殺がなければ喜びはあわただしい。順運であれば非常によく、官殺がなければ逆運でもまずまずである。
 乙日丑月生まれは、南方に行くのが第一でその次が西か東、たとえ科挙に合格しなくても、豪富となり石崇(伝説的な富者)にも比すようになるであろう。
 乙日寅月生まれは、木の傷官である。財と殺があればさらに喜びがあり、順運であれば福禄が多く続くが、もし財も殺もなければ貧寒である。
 乙日卯月生まれは、財官に気があればまた群を抜き、火金の大運は皆よく、徒手空拳で家を興し、同輩を越えていく
 乙日辰月生まれは、辰が雑気であって、西方の大運に行けばいい運となる。もし戌運にいけば(西方運といっても)多くは逆になり、刑があれば、財や寿命は確かではない。
 乙日巳月生まれは、東方運か北方運に行って始めてよくなる。もし命式にさらに乙があっても根がないのは、順運では根のなさを防げず寿命がまちまちとなってしまう。
 乙日午月生まれは、食神に気があるため身が軽いのを恐れる。命式中に乙があっても根がなければ、大運によって根のなさを防ぐために逆行を喜ぶ。
 乙日未月生まれは、命式中に官殺があるのを喜ぶが、しかし順運では西北方運で寿命を傷つけ、逆運ならば東南方運に至ってさらに福が広がる。
 乙日申月生まれは、財官印綬を含み身が弱いのを忌む。中年で西北運に行くのは許さず、順運は逆運のよいのには及ばない。
 乙日酉月生まれで殺が多く強いのは、大運がよければ朝廷を助けるほどになる。もし日主に根が多ければさらに妙であり、南方火運に至れば非常な貴命となる。
 乙日戌月生まれで財殺が多いのは、ただ子供のときに病気が重いのを恐れる。もし中年に至れば多くは運が発達し、順逆にかかわらず総じてよい。
 乙日亥月生まれで印が身を生じるのは、逆運なら西方南方を通じて富貴が真のものとなり、もし殺や官があれば順運の方を喜ぶ。さらに大運が辰に行くのを恐れる。

 子月の場合、解説によると、まずは官殺がないほうがいいのかどうかを決定してから、大運をみるということで、特別な大運の見方があるわけではないとあります。”匆匆”とはあわただしいという意味ですが、中国人でない私にはニュアンスがよくわかりません。
 寅月においては、乙の傷官は丙で、寅は丙を蔵干にもちます。これが”木傷官”の意味でしょう。乙日寅月ですから、基本的には日主が強いので、財と官殺を喜びます。解説には、”殺”は官も含むとありますが、それは?です。
 卯月も蔵干に木を持つので、原則としては日主は強くなります。よって財と官殺があるのがよいのですが、寅月の場合は殺がよいとあり、卯月の場合は官がよいと区別されているところに注意です。
 巳月生まれの場合、通根しないと順運であれば夭折する可能性が高いということです。
 午月の場合、根がなく逆運の場合は、巳運は悪いのですが、それを過ぎれば、寿命は大丈夫だと解説にはあります。
 未月の後半の句は命式中に官殺のある場合と解釈します。
 申月は基本的には官ですから、身強の方がいいことは原則どおりです。よって、中年期に東方運の方がよく、逆運の方がよいということになります。
 酉月の場合、解説によれば、全文とも乙が通根して身強の場合のことであるとあります。すると、火運は食傷ですから、殺が多ければそれを抑える、すなわち食傷制殺ということになります。
 戌月の場合には、天干に財殺すなわち辛や戊己が出ていると、幼年期は病が多いとされます。が、東南方運に行けばまずまずの運になってくるとします。
 亥月の最後の一句「怕逢辰」は、難解です。梁湘潤師の解説によると、辰は広義の墓庫運を指すと書いてありますが、それにしてもピンときません。辰と亥は特別な関係にありませんし、乙の根となりますからそれほど悪い支とは思えないのですが…。辰は水を含むので弱い乙木は腐木となり、ますます弱くなるとは考えられます。


【丙日主 大運】

丙火冬生値子綱、有印生身大吉昌、
運入東南多発達、逆行難保寿年長。
丙火如逢丑月看、土多格局作傷官、
印多運入西方美、根浅東南福不全。
丙多官殺値寅提、運入南方分外奇、
若是官軽尤喜北、総然大運要行西。
丙火日干卯提綱、干弱如逢喜火郷、
若是無官尤不利、却行身旺亦平常。
丙日辰提戊己多、傷官火土更如何、
逢財逢印多通達、南北相逢総不宜。
丙火建禄日干強、官殺相逢大吉昌、
順逆行運多発達、若行戌運有災殃。
丙火午月作傷官、有殺当為貴命看、
金水運行多吉利、如行木地不為歓。
丙逢未月傷官顕、官殺相逢未足奇、
如得独官為貴気、運行西北利名馳。
丙火申提日主柔、得従得化始為優、
若従水位傷元寿、逆去東南福禄週。
丙逢酉月火衰微、比劫扶身寿不斉、
逆去東南為背禄、順行水地始為奇。
丙逢戌月土重重、有殺無官迴不同、
大運順行多富貴、若無官殺亦中中。
丙火亥月為殺印、分明大運喜東南、
中年富貴非常美、運若西方寿不斉。
 丙日子月生まれは、印があって身を生じていれば大吉昌である。行運が東南にいたれば多くは発達し、逆運であれば長寿を保つのは難しい。
 丙日丑月生まれは、土が多く傷官格となる。印が多い場合は西方運がよく、根が浅い場合は東南運でも福が完全とは言えない。
 丙日寅月生まれで官殺が多い場合は、運が南方に至れば意外とよく、もし官が軽いのであれば北方運を喜ぶ。総じて大運は西方に行くのがよい。
 丙日卯月生まれは、干が弱く火運に行けばよく、もし官がなければもっとも不利で、かえって身旺の行運であれば普通である。
 丙日辰月生まれで戊己が多いのは、火土傷官であるが、どうであろうか。財があって印があれば多くは発達し、南北の行運は総じてよくない。
 丙日巳月生まれは日干が強く、官殺に逢うのは非常に吉である。行運はどちらに行っても運は発達するが、戌運に行くのは災いがある。
 丙日午月生まれは傷官となり、殺があれば貴命としてみる。金水の行運は多くは吉で利があり、木運に行くのはあまりよくない。
 丙日未月生まれは傷官が顕れ、官殺に逢うのはすごくいいというほどではない。ただ一位の官があれば貴気とし、西北運にいけば利を得て名をあげる。
 丙日申月生まれは日主は弱くなり、従格や化格になって初めて優れた命といえる。もし水が強すぎれば寿命を傷つけることになる。逆運で東南の地に行けば福禄がめぐってくる。
 丙日酉月生まれは火が衰微すれば、比劫で身を助けるのは寿命はまちまちである。逆運で東南運に行くのは背禄でよくなく、順運で水運にいけばはじめてよい運となる。
 丙日戌月生まれで土が多ければ、七殺があって正官がないのは運は同じでない。大運が順行すれば多くは富貴となる。もし官殺ともなければ、平凡な命である。
 丙日亥月生まれは亥が殺印となり、大運は東南運を喜ぶことがわかる。中年は富貴となり非常によいが、運が西方に行けば寿命はまちまちである。

 子月については私には少々異論があり、印が丙を生ずるためというよりも、木が水の剋を調整するために木があった方がよい、というふうに考えています。
 寅月の場合、寅自体に火木がありますから、官殺が強い方がよく、財の行運はだいたいOKです。
 卯月の場合には、貴命になるためには官殺がなければならないというわけです。
 辰月は火土傷官です。傷官が強い場合はだいたい財が必要ですが、丙日の場合はとくにそうです。場合によっては印で傷官を抑えるというのもアリです。
 午月の場合、午の蔵干に己があるという考えから傷官をもつとしていますが、私は傷官としては見ません。午は羊刃ですから殺がある場合は羊刃帯殺で貴命となる場合があります。また、日主が強いのですから、一般論として官殺、財を喜び、印を忌みます。
 未月の場合、癸が一つだけあるのがよいとはっきり書かれています。
 申月の句の解釈がむずかしいのですが、従格や化格でなく、単に水が強い場合には逆運でないと福は得られないということなのではないかと思います。
 酉月の句は、これは通常の考え方と逆のようですが、おそらくは従財または従殺格の場合を述べているのだろうと思います。丙日酉月の場合は、従財、従殺の方が貴命といえるでしょう。
 戌月の場合、秋といっても蔵干に火があり丙は通根しますから、従財や従殺格にはなりません。したがって、官殺があったほうがいいのですが、丙には壬の方がいいです。癸は若干凶意があります。
 亥月の逆運の場合は夭折する可能性ありということです。


【丁日主 大運】

丁火如逢子月提、柱中有殺更無虧、
平生最喜東方運、若到西方寿不斉。
丁火丑月事如何、四柱分明怕土多、
運入東方倶発達、南方火地不相宜。
丁火逢寅印綬明、柱中有水喜南行、
運行北地尤通達、西方財郷禍患生。
丁火卯月有印星、南北応多遂利名、
独殺若與官混雑、金章紫綬至公卿。
丁逢辰月本傷官、運入南方福更寛、
逆運初年多蹇剥、更逢戌亥寿相干。
丁逢巳月本剛郷、大運何愁入水郷、
運入順行初不利、中年最喜入西方。
丁逢建禄本身堅、無水須防寿不全、
若得運中逢七殺、姓名遠達九重天。
未見逢丁要見財、無財到底命多乖、
若逢財殺方為美、西方大運更奇哉。
丁逢申月日干強、大運南方喜逆行、
若是根深尤喜順、中年発達更崢嶸。
丁逢酉月用偏財、官殺相逢更妙哉、
大運逆行多遂意、功名両字称心懐。
丁逢戌月傷官旺、官殺雖多却不妨、
南與東方多順遂、栄華富貴福無彊。
丁生亥月用官星、順逆東南福不軽、
若是殺星多混雑、寿年尤恐半凋零。

 丁日子月生まれは、命式中に七殺があればさらに欠点はない。一生のうち最もよいのは東方運であり、もし西方運になれば、寿命はまちまちである。
 丁日丑月生まれは、土が多いのを恐れる。東方運に入れば発達するが、南方火運に行くのはよくない。
 丁日寅月生まれは、印綬があり、命式に水があれば南運がよく、運が北方に行けば命は発達する。西方の財運は災いや問題が発生する。
 丁日卯月生まれは、印星があり、南方でも北方でも名をあげる。ただ七殺が一つだけで正官と混雑すれば、非常に高い地位につくことになる。
 丁日辰月生まれは、傷官であって、南方運に入れば福はさらに広がる。逆運は初年はうまくいかないことが多く、戌亥まで行くのは寿命にかかわる。
 丁日巳月生まれは、火が非常に強くなる。よって大運で水運に行っても問題はない。順運は始めは火運で不利であるが、中年に西方運に行くのを最も喜ぶ。
 丁日午月生まれは、建禄で日主が強く、水がなければ寿命を全うするのは難しい。もし運に七殺に逢えば、名声は遠くまでとどろくことになる。
 丁日未月生まれは、財が必要である。財がないのはまずよい運とならない。もし財があり殺の行運にいけば非常によい運となる。西方の大運はさらにすばらしい。
 丁日申月生まれは日干が強いのがよく大運が南方に行く、すなわち逆運を喜ぶ。もし根が深ければ順運をもっとも喜び、中年になればさらに運気があがる。
 丁日酉月生まれは偏財が用神であり、官殺があればさらによい。大運が逆行すれば多くは思い通りになり、成功と名声が両方とも得られることになる。
 丁日戌月生まれは傷官が強く、官殺多くともかえってさまたげることはない。南方と東方では多く順運で思うようになり、栄華、富貴を得て福はこのうえもない。
 丁日亥月生まれは官星が用神で、順運逆運とも東南運で福は軽くない。(非常によいという意味)もし殺星が多く混雑すれば、長寿でないし凋落するのを恐れる。

 丁は木の印の作用が根よりも大きいと考えていいでしょう。七殺があれば、木の印を喜び、金財の水を生じる作用を忌むというわけです。
 寅月の場合は、財が官殺を生じるということではなく、印を壊すことを恐れると考えるべきでしょう。
 官殺混雑は一般的に悪いので、卯月のこの解釈はどうすればいいのか迷いますが、命式中には癸のみで、行運で壬、亥がめぐれば、と私は解釈しています。
 丁には印はよさそうなのですが、辰月の場合は湿土なので印の作用が働きにくいというところでしょう。この場合は通根した方がいいということだと思います。
 巳午月においては、火が強くなりがちです。火と水はバランスよく命式中になければ夭折の命であることは、よく言われることです。
 未月の場合は財が不可欠だと言い切っています。未があれば、丁は十分強いというわけでしょう。
 申月生まれの場合は、印よりも通根する方がよいと言っています。
 酉月は火の死にあたり基本的に丁は弱いのですが、命式中に根がなくとも、大運で通根すればよいと解釈できます。
 戌月も酉月と同様、官殺混雑を忌むことはなく、行運で通根、印により身が強くなれば発達すると解釈できます。
 ところが亥月の場合は、官殺混雑するのを忌むと断言しています。亥中には印がありますが、それよりも水の強さが際立ち、丁は火が消えてしまうということでしょう。


【戊日主 大運】

戊土日干生子月、坐支辰戌最為奇、
支虚更値財神位、運怕東兮又怕西。
戊土丑月日干堅、更有財官福寿全、
逆順運行倶得地、若無財殺亦徒然。
戊土寅月日干軽、殺印相生格局明、
運入火郷尤発達、逆行水地総平平。
戊土卯月用官星、有印相生格局清、
南運発財強北運、如逢酉地寿元傾。
戊土辰月日干強、更有財星福禄昌、
順運西南応発達、財官軽処亦非良。
戊土巳提為建禄、柱中財殺更為奇、
逆行大運宜東北、順走西南事不斉。
戊土五月印当権、大運分明喜殺官、
官殺重時宜順運、官軽逆運妙無端。
戊土生来季夏天、若無財殺未週全、
逆行更喜東方運、順逆財多亦不然。
戊土生申月食神、有財有殺貴堪倫、
逆行火地必通達、水地行来反受迍。
戊土生来値酉提、怕行坎水喜炎離、
除非四柱元辰旺、卯運相逢最不宜。
戊土戌月日干強、財殺重逢更吉祥、
運気不拘行順逆、若無財殺亦平常。
戊土亥提財殺真、身強有火更超群、
逆行早歳須防酉、順運中年忌卯辰。
 戊日子月生まれは、日支が辰戌である場合がもっともよい。支が弱くさらに財であった場合には、東方運を恐れまた西方運を恐れる。
 戊日丑月生まれは日干が強く、さらに財官があれば福寿ともにまっとうし、逆運だろうが順運だろうが支を得ても、財や殺がなければさびしい一生となる。
 戊日寅月生まれは日干が弱く、殺印相生格であることがはっきりすれば、運が火運に入れば最も運が発達する。逆行で水運の場合は総じて平凡な運である。
 戊日卯月生まれは用神が官星であり、有印相生で格局が純粋であれば、南運では発し財は北運で強い。もし酉の行運にいたれば寿命は危ない。
 戊日辰月生まれは日干が強く、更に財星があれば福禄はさかえる。順運で西南運では運が発達し、財官が軽いところではあまりよくない。
 戊日巳月生まれは用神は建禄であり、命中に財殺があればさらによい。逆行の場合大運は東北がよく、順運で西南に行くのは事は安定しない。
 戊日午月生まれは印が強く、大運は殺官を喜ぶかどうかを明らかにすべきである。官殺が多い場合は順運がよく、官が軽い場合は逆運がなかなかすばらしい。
 戊日未月生まれはまだ夏であって、もし財殺がなければ、完全ではない。逆行して東方運に行くのを喜び、順運でも逆運でも財が多いのはうまくない。
 戊日申月生まれは食神が用神で、財があり殺があれば貴であり高潔である。逆行して火運に行けば必ず運がよくなり、水運に行けば運は停滞する。
 戊日酉月生まれは、水運に行くのを恐れ火運を喜ぶ。命式で辰が旺じていなければ、卯運に逢うのは最もよくない。
 戊日戌月生まれは日干が強く、財殺が多ければ吉祥である。運気の順逆にかかわらず、もし財殺がなければ平凡な命である。
 戊日亥月生まれは財殺が真であれば、身強で火があれば群をぬいてすばらしい。逆行は早く酉がめぐるのでそのときに運が落ちるので注意が必要だし、順運では中年に卯辰にめぐりよくない。

 子月の場合、辰戌が良くてなぜ丑未ではないのか?丑未は陰であり、丑は合、未は害の関係となりますが、だめな理由はよくわかりません。通根していればいいような気もしますが…。
 丑月の場合、財官と財殺という言い方をしていますが、この言い回しだと、殺よりは官がよく、財も殺もなければつまらないということでしょう。
 寅月の場合、月支が殺と印を有しますが、火がやや強い方が日主を生じるのでよいといえるでしょう。
 卯月の場合に酉が月支を冲することが、この場合は最も悪いと言っています。
 辰月の場合は身強ですから、食傷、財官がよいことは言うまでもありません。
 巳月は戊の建禄であり火土が強くなりがちです。この句では財と殺と言っています。官でもいいような気はします。
 戊日午月というのは羊刃に当たりますが、『四言独歩』には羊刃と見ないとあります。むしろ印と見るべきであり、官殺が印を生じて身強になった方がよいと徐楽吾は『子平一得』の中で述べています。
 未月は土用ですが、夏で印でもあるので、午月に近いものがあります。
 酉月の場合、卯は酉と冲ですので酉を壊します。が、辰があれば辰酉の合が冲を解くことになります。
 亥月生まれの場合は、身強で財殺が良いということになります。卯辰酉が良くない理由はよくわかりません。


【己日主 大運】

己土子月用財星、有殺無官格局清、
大怕柱中身太弱、順行寅卯早凋零。
己土丑月日干堅、四柱分明忌比肩、
若有財官併有殺、逆行大運福無辺。
己土寅月値身柔、若是身柔命不週、
身旺更行南運美、逆行運気寿休囚。
己土卯月殺当権、逆運須知寿不堅、
順逆火郷無極妙、官星相会不週全。
己土辰提雑気真、財官有気定超群、
順行運気尤当妙、逆運行時不十分。
己土巳月身尤旺、印綬傷官格局清、
身旺最宜財運遇、無財逆運亦相応。
己土午月本身強、建禄分明理更長、
官殺軽時宜順運、官軽逆運亦栄昌。
己土未月欣逢殺、刃殺相逢更妙哉、
運気中年多発達、不拘順逆称心懐。
己土申月用傷官、若是身軽必不安、
所喜須宜行逆運、怕逢寅卯殺相干。
己土八月辛金旺、若是身軽命不牢、
旺喜順行衰喜逆、無財無殺不為高。
己土如逢九月天、財官両旺福無辺、
運行順逆皆平穏、発達之時在壮年。
亥提己土用財官、身旺財官総是歓、
若是身柔欣順運、東方難保寿平安。
 己日子月生まれは用神が財であり、殺があって官がないのは格局が清である。日主が弱すぎるのをおそれる。順行は寅卯が早年に来て凋落する。
 己日丑月生まれは日干が堅固で、比肩を忌むかどうかを見極める必要がある。もし財官があってあわせて殺があるときは、大運が逆行すれば、福は限りがない。
 己日寅月生まれは日主が弱い可能性があり、もしほんとに日主が弱ければ命は永らえない。日主が強くさらに南運に行くのはよく、逆行するのは運気や寿命は弱い。
 己日卯月生まれは殺が力を得る。逆運は寿命が長いとは言い切れないと思わなければならない。順運逆運でも火運はあまりすばらしいとはいえない。官星に会うのは助けにならない。
 己日辰月は雑気であり、財官に気があれば群を抜くだろう。順運はもっともすばらしく、逆運の場合は全くいいとは言い切れない。
 己日巳月は日主が最も旺じ、印綬、傷官の格局は清である。身旺は財運に遇うのが最もよく、財がなく逆運でもまたそれなりである。
 己日午月はもとより身強であり、建禄でありその理はいっそう明確である。官殺が重なる時は順運がよく、官が軽いときは逆運でもまた栄える。
 己日未月は七殺に逢うのを喜び、羊刃と七殺が逢うのはいっそうすばらしい。運気は中年にて多く発達する。これは運の順逆にこだわらないことを覚えておくとよい。
 己日申月は傷官を用神とし、若し身が軽ければ必ず不安である。逆運に行くのがよろしく、寅卯の殺や官殺に逢うのを恐れる。
 己日八月は辛金が旺じ、もし身が軽ければ命はあまり堅固ではない。もし身が強ければ順運がよく、弱ければ逆運を喜ぶ。財がなくまた殺もなければすばらしいとはいえない。
 己日が九月に生まれるのは、財官が両方とも旺ならば福は限りなく、順運でも逆運でも皆平穏である。壮年期に発達する。
 亥月生まれの己日は財官を用神とする。身旺ならば財官は総じて喜ぶが、もし身が弱ければ逆運を喜ぶ。東方運は長寿平安は保ち難い。

 丑月生まれで財官と殺が併せてあるというのは、年干から順に書けば、癸乙己甲というパターンしかありません。(地支蔵干まで考えればパターンは多いが)この場合は官殺混雑になりそうですが、丑月生まれなので甲と己が合して土化するので官殺混雑にはなりません。
 卯月の場合、南運が悪いのは木生火の五行の作用を考えたものだと思います。
 巳月の場合、月支の蔵干を庚丙戊と見ていますので、日主が最も強いとみています。私は巳には己に対する通根の作用はなく、単に相(印)の作用があるだけだと思っていますので、この句を単純に考えるのは危ないと思っています。
 午月の場合、解説によると、官殺の強さにだけ着目すればよい、とあります。  未月の場合も財殺がよく、ちょうど中年期がそれに当たります。  財と官が透干すれば、吉命といえます。


【庚日主 大運】

子月如逢庚日干、有財有殺始平安、
西方不似東方運、午運如逢寿数完。
庚金丑月有財官、格局分明雑気看、
木火柱無終不美、東南運気遇為歓。
庚金寅月日干微、土透天干命愈奇、
逆運初年嫌子丑、順行大運怕逢離。
庚金生値仲春時、官殺如逢命始奇、
但嫌四柱元神弱、順運三旬恐殞危。
庚金三月土重重、更有財官福禄豊、
逆運固知強順運、中逢子地有災凶。
庚金四月殺星強、有制方知殺伏降、
若是無根又無制、其人多有少年亡。
五月庚金喜有根、有根有水貴堪言、
逆行大運宜東地、子字相逢総不然。
庚金未月土旺地、戊己土重命無過、
若是土軽行逆運、康寧福寿沐恩波。
七月庚金金太剛、坐支若実亦平常、
財官両旺宜行順、財殺軽時逆運強。
八月庚金用刃星、柱中有殺最相応、
有財無殺純金局、従革尤当顕姓名。
庚金九月喜逢財、殺透天干亦妙哉、
順命初年嫌子地、逆行離巽有凶災。
庚金十月日干衰、有土相逢亦妙哉、
順運必然強逆運、中年惟恐有厄災。
 子月がもし庚日干に逢えば、財と殺があれば始めは平安である。西方運は東方運とは全く違い、午運に逢えば寿命は終わる。
 庚日丑月生まれは財官があり、格局は雑気を見て明らかにすべきである。木火が命式になければ全く良くない。東南運では喜びごとがある。
 庚日寅月生まれは日干が弱く、土が天干に透るのがよい。逆運の場合は初年が子丑になるがそれを嫌い、順運ならば火(離)に逢うのを恐れる。
 庚日卯月生まれは、官殺に逢えば命は初めはすばらしい。ただしもともと日主が弱くなるのを嫌うので、順運の場合午運で夭折する恐れがある。
 庚日三月生まれで土が重ねてあり、更に財官があれば福録は豊かである。逆運はもとより順運でも強い。中年で子に逢うと災凶あり。
 庚日四月生まれは殺星が強く、制があればまさに殺が降伏する。もし根も制もなければ、多くは若くして夭折する。
 五月生まれの庚日は根があるのを喜ぶ。根があり水があれば喜であることは言うまでもない。逆運は東方がよく、その後子に逢うのは良くない。
 庚日未月生まれは土が旺じており、戊己土が重なれば問題なし。もし土が軽く逆運ならば、安寧で福寿の恩恵を受ける。
 七月の庚日生まれは金が剛にすぎ、支が実ならば普通の命である。財官ともに旺じれば順運がよく、財殺が軽いときは逆運がよい。
 八月の庚日は羊刃となる。殺があれば最もよろしく、財有って殺がなく金局をなせば、従革格として最も名を表す。
 庚日九月生まれは財に逢うのを喜び、殺が天干に透ればまたすばらしい。順運は子を嫌い、逆運は火木運で凶災に逢う。
 庚日十月生まれは日干が衰であり、土があればまたよい。順運は逆運よりもよく、ただし中年にはおそらく災厄がある。

 子月生まれの場合、午運がよくない理由がはっきりしませんが、傷官見官ということなのかもしれませんし、月支を冲するからかもしれません。いずれにしても、ある条件下での話だとは思います。
 丑の蔵干には土金水がありますから、日主は強いといえます。よって木火を喜び、金水を忌むということになります。
 寅月生まれの場合、解説によれば、戊土が透干した方がよいということです。
 卯月の後半の句は、日主が弱い場合は辰巳午運を忌むということでしょう。
 辰月の「逆運固知強順運」がよくわかりませんが、財官のうち財の方がいいということでしょうか。すなわち逆運ならすぐに木運で土を抑えるためです。
 巳月では、要するに水が必要ということです。
 午月の場合、子月生まれの逆で、子午の冲を恐れるということでしょう。
 未月生まれは、とくに埋金を恐れるということでしょう。
 申月の訳文中、平凡な命と書きましたが、金が強すぎる命式は一般にあまりよくありません。
 酉月の場合、前半は羊刃駕殺、後半は従革格で、この場合以外、単に金が強い場合はあまりよくありません。
 戌月生まれは、解説によれば、木がなければ好命になるのは難しいとのことです。
 亥月生まれの後半の句は、土が命式中にあり、日主がある程度強いという前提での話だと思います。土が命式中になければ、子運はよくなく、また辰運も水局をなしますから、よくないでしょう。中年というのは辰運だと解説では述べています。


【辛日主 大運】

子月辛金喜丙丁、若然無火亦平平、
運行木火多通達、財殺多時喜逆行。
辛金丑月宜丁火、戊己重重亦不妨、
無火土多防夭寿、縦然不夭也平常。
辛金寅月財官旺、大運不須喜逆行、
若是無財行順運、中年惟恐喪残生。
卯月辛金如有殺、坐支有土更為奇、
順行逆転名多顕、若到西方反不斉。
辛金生於辰月中、有財有殺更和同、
順行逆運多通達、富貴栄華福寿崇。
辛金巳月官星旺、傷食全無亦不過、
逆運但防官字否、順行一路総蹉跎。
辛金午月殺当権、四柱根深逆順堅、
若是無根堪棄命、如行西運大災迍。
未月辛金殺印全、印多尤似有虧偏、
逆行水運多通達、順運初年略不然。
申月辛金金水清、傷官有殺最相応、
坐支無西方為妙、運入東南顕姓名。
辛金酉月日干強、財殺相逢更異常、
逆運到頭多発達、順行水地未為良。
戌月辛金殺印全、柱中有制福無辺、
逆行順去倶無阻、巳地相逢総不然。
辛金亥月若無官、水冷応知金大寒、
若有官星尤有殺、定応名姓到金鸞。
 子月辛日生まれは丙丁を喜ぶ。もし火がなければ普通である。木火運に行けば多くは発達し、財殺が多いときは逆運を喜ぶ。
 辛日丑月生まれは丁火がよく、戊己が重ねてあるのもまた問題ない。火土がなければ多くは夭折に注意が必要で、もし夭折しなければ普通である。
 辛日寅月生まれは財官が旺じており、大運は逆行を必ずしも喜ばず。もし財がなく順運に行けば中年で寿命を終わる恐れがある。
 卯月辛日生まれでもし殺があり土支に坐していればよい。順運でも逆運でも名をあげる。もし西方運に行けばかえってうまくいかない。
 辛日で辰月に生まれれば、財殺印があるため、順運でも逆運でも名をあげ、富貴栄華福寿は高い。
 辛日巳月生まれは官星が旺じ、食傷が全くなければまた問題なし。ただし逆運は官の強弱に注意が必要である。順運は総じて挫折を味わう。
 辛日午月生まれは殺が強く、命式で根が深ければ順運逆運とも堅調。もし根がなければ却って棄命格になるのがよく、もし棄命格で西方運にいけば大きな災いに逢う。
 未月辛日生まれは殺印があり、印多ければ欠けたり偏ったりするのと似たようなものである。逆運で水運に行けば発達し、順運の初年はたいていよくない。
 申月辛日生まれは金水が清く、傷官に殺があればもっともふさわしい。西方の支に坐さなければよく、運が東南に入れば名をあげる。
 辛日酉月は日干が強く、財殺があればいっそう常人を超える。逆運の始めに多く発達し、順運は水地に行くのであまりよくない。
 戌月辛日生まれは殺印があり、命式に制があれば福は限りなし。逆運でも順運でもともに障害はなし。巳運は総じてよくない。
 辛日亥月で官がなければ、水は冷たく金は寒すぎると知るべきである。もし官星や殺があれば、おそらく名をあげて高い地位につく。

 寅月の場合、財官が強ければ、順逆どちらでもいいということでしょうか。庚日と同じで水があったほうがよく、逆運の方がいいと思います。中年とは巳午のことでしょう。
 巳月の場合、順運では金水運を忌むということでしょうか。しかし調候的には水があった方がよいと私は思います。
 未月の場合、辛は土(とくに己)が多いと埋金あるいは汚玉となりよくありません。逆運の場合木運で土を抑えるのもいいのですが、水運の方がよりよいと思います。ただ水運は晩年になってしまいます。土が多い場合は、辛に根があってもよくありません。
 申月の場合は酉がない方がいいとはっきり書かれています。酉があると日主が強すぎるということでしょうか?
 戌月の場合でいう制とは、制殺で壬のことだと思います。巳運が悪い理由がよくわかりませんが、参考書によると、建禄と墓は官と殺の如く相逢うことを忌むということだそうです。すなわちこの場合は火の墓(戌)は火の建禄(巳)とは一緒にない方がよいということです。
 亥月生まれでは、いわゆる金寒水冷の命であり、火が必要です。この場合は五行の強弱よりも調候が優先するということでしょう。官殺混雑となりますが、この場合は官殺混雑の例外ということになるでしょうか?


【壬日主 大運】

壬水生逢子月天、無財無殺未週全、
終身困苦多流落、縦到財郷亦枉然。
壬水丑月喜逢財、財旺身強更妙哉、
運気順行経水火、堪為万事称君懐。
壬水如逢寅月生、食神相左亦相応、
南方運気増財帛、有殺終当播姓名。
壬逢卯月傷官格、逆運無如順運高、
殺透更加身旺処、功名富貴寿称高。
壬水辰月殺星強、甲乙相逢殺伏降、
更得財星並印綬、不拘順逆亦相当。
壬水生逢夏月天、財星官殺旺堂前、
無根只怕初年失、若到中年福愈堅。
壬生午月財星旺、亥水相逢更異常、
若是無根多棄命、平生白手置田庄。
壬水生逢季夏時、分明雑気異為奇、
順行逆転皆通達、卯地相逢総不宜。
壬水生申為殺印、有財有用亦相当、
運行南地強如壮、卯地相逢命不長。
壬水相逢八月天、分明印綬格当権、
無官怕入財郷運、有殺須応福愈堅。
壬水生来値季秋、財多身旺忌身柔、
財居大地倶通達、併木之郷辺不週。
壬水亥提為建禄、柱中有火運之東、
南方運気倶為美、若是無財亦不通。
 壬日子月生まれで、財なく殺がないのは全く助けにならない。終身困苦で多くは流落する。もし財の支に至っても徒労に終わる。
 壬日丑月生まれは財に逢うのを喜ぶ。財旺身強はいっそうすばらしい。順運ならば水火を経て万事思いのままである。
 壬日が寅月に生まれれば、食神があることになり、南方運では財が増し、殺があればついには名をあげることになる。
 壬日卯月生まれは傷官格で、逆運よりは順運の方がよく、殺が透干して身旺の運に行けば、功名富貴寿命は高いとする。
 壬日辰月生まれは殺星が強く、甲乙に逢えば殺を抑える。さらに財星と印綬があれば順運逆運にかかわらずよい。
 壬日夏月(巳月)に生まれれば、財星官殺が旺じることになり、根がなければ早いうちに夭折することを恐れる。もし中年に至れば福はますます堅固となる。
 壬日午月生まれは財星が旺じ、亥に逢えばさらに常人と異なる。もし根がなければ多くは棄命となり、無一文から財を成すことになる。
 壬日未月生まれは雑気であり良し悪しを判別する。順運でも逆運でもみな発達するが、卯運は総じてよくない。
 壬日申月生まれは殺と印として、財あり有用であればまたよく、運が南方に行けば強壮であり、卯運に逢えば命は長からず。
 壬日八月生まれは印綬格に当たるかどうかを明らかにする。官がなければ財運を怕。殺があればまさに福がいよいよ堅固である。
 壬日戌月生まれは財多身旺がよく身柔を忌む。財が地にありともに発達する。あわせて木があればあまりうまくない。
 壬日亥月は建禄格として、命式中に火があり東方運や南方運に行けばよい。もし財がなければ発達しない。

 子月の場合、強すぎる壬には戊が必要です。
 寅月の場合は壬が通根していた方がよいと思います。
 辰月の場合、壬は辰に通根しているので、日主は適当に強いといえます。後半は五行がすべてそろうことになります。
 巳月の場合はとにかく日主が通根しなければなりません。
 午月の場合の棄命格は従殺格または従財格ということでしょう。
 未月の「分明雑気異為奇」というのが判然としません。雑気格でないとすると従殺格あるいは従財格ということになるかと思います。すると午月生まれと同じように考えられるでしょう。卯運がよくないというのは、傷官が強くなり、傷官見官になるからという、この詩の特有の見方からだと思います。
 申月には戊を含むとこの賦では考えています。壬は通根し、印もあるので強くなります。この場合は財を喜びます。卯運が悪いのは前と同様の考え方でしょう。
 酉月の場合は官または殺があった方がいいということでしょう。
 戌月の場合は通根していることを必要とします。

 
【癸日主 大運】

癸水冬生値子提、財官重見最為奇、
順行喜到東南運、逆走西方亦不宜。
癸水丑提為雑気、無財無印不堪推、
順行木火倶為妙、逆運西南寿不斉。
癸水寅月木傷官、官殺重逢禍百端、
北運不如南運好、若到申宮寿有干。
癸水生来卯月中、無官無殺喜同和、
順行南地多清貴、恐入西方寿早終。
癸水辰月喜逢財、雑気分明格美哉、
若是無根身太弱、順行南運必多災。
癸水巳提財更旺、官多不與殺相同、
有根逆運多財足、順入西方早見凶。
癸水生逢午月中、分明財殺格相同、
無根運不行申地、棄水従財反有功。
癸水未月殺星強、有刃無官禄位昌、
運入東方経制伏、定看名姓列朝堂。
癸水生来値孟秋、有財終不忌身柔、
順行北運尤為妙、若是無財反不週。
癸水酉月印生身、有殺方為格局真、
逆運須知強順運、功名富貴又超群。
戌月如逢癸日干、分明雑気用財官、
運行木火多財禄、逆運初年寿有干。
癸日生来亥月中、傷官水木総相同、
逆行最妙南方運、順走須知忌卯凶。
 癸日子月生まれで財官を重ねて見れば最もよい。順運で東南運に行くのを喜び、逆運で西方運に行くのはよくない。
 癸日丑月生まれは雑気格とし、財なく印なければ推命しても意味がない。順運で木火がともにあればすばらしく、逆運で西南運は寿命が長くない。
 癸日寅月は木が傷官で、官殺重ねて逢えば災いが絶えない。北方運は南方運の好さに如かず、もし申運に行けば寿命は干による。
 癸日卯月生まれは、官なく殺なければ同和(財のこと)を喜ぶ。順運で南方に行けば多くは清貴である。西方運に行けばおそらく寿は早く終わる。
 癸日辰月生まれは財に逢うのを喜び、雑気は格のよさを明らかにする必要がある。もし根がなければ身は非常に弱く、順運で南方に行けば必ず災いが多い。
 癸日巳月は財がさらに旺じる。官が多いのは殺と同じではない。根があれば逆運では多くは財を得る。順運で西方に早く入るのは凶を見る。
 癸日午月生まれは、財殺格と同じようなものであることを明らかにする。根がなく申運に行くことがなければ、棄命従財格の方がかえって功あり。
 癸日未月生まれは殺星が強く、羊刃があり官がなければ地位は上がる。東方運に入れば制伏を受けて、おそらく名は朝堂に並ぶことになるだろう。(高位につく意味)
 癸日申月生まれは、財あれば身柔を心配することはない。順運で北方に行けば最もよく、もし財なければ全く助けにならない。
 癸日酉月生まれは身を生じ、殺あれば格局は真となす。逆運は順運よりも強く、功名富貴はまた群を抜く。
 戌月癸日生まれは、雑気を財官が用神かを明らかにする。運が木火に行けば多くは財禄があり、逆運の初年の寿は干による。
 癸日亥月生まれは、水木傷官と総じて考えればよく、逆運で南方運にいけば最もよい。順運の場合は卯運を凶として忌むことを知るべし。

 寅月の場合は、申は寅を冲して、傷官と財を失うからでしょう。
 卯月の場合、解説には申運が悪いとあるのですが、酉運の方がより悪いように思います。
 辰月の場合、財多身弱は富屋の貧人と言われますが、順運ならば夭折するでしょう。
 巳月生まれの「官多不與殺相同」とは、官(戊)よりは殺(己)の方がよいということです。官が多すぎるのは凶です。
 午月生まれで申運が悪いというのは棄命格の場合で、まさに比印は忌神です。
 未月の場合、羊刃駕殺ということで、官殺混雑は凶です。
 申月ですから、通根しているわけで、全くの身弱にはなりにくいです。
 戌月の場合、雑気財官格になるためには、庚辛が透干しないか、ごく弱いことが条件です。金が強いと夭折する場合があります。
 亥月の場合、傷官を含みます。傷官格で傷官が強すぎるのは凶であるのが一般的ですが、とくに卯運が悪くなるかどうかは命式の条件によるように思います。




あとがき

 以上で訳は終わりです。表にまとめるとわかりやすくなるのでしょうが、そこまではやりませんので、みなさんでまとめてみてください。
 この賦の特徴は、大運での喜忌を述べていることで、順運の場合は~、逆運の場合は~、というように、単に命式の良し悪しだけを述べていることです。その喜忌の判断には干支五行だけではなく、月令や冲合会、調候など多くの要素を盛り込んでいます。しかしながら、日干と月支で分類しているため、年柱や時柱などの影響にはあまり触れていません。(ゼロではないが)よって、この賦を機械的に適用するのは間違いのもとです。しかし、命式の良し悪しのとっかかりとしては有用であると思います。書かれていることが当てはまるのか、当てはまらないのかを見極めることができれば、中級者から上級者だといえます。私はまだその域には達していませんが…。
 参考書である『金不換大運詳解』(梁湘潤著)では、『窮通宝鑑』の調候用神との比較も行っています。ご存知のように、調候用神とは十干の喜忌であり、この「金不換骨髄歌断」は地支、とくに東西南北運に言及しているという違いがありますが、「金不換骨髄歌断」でもところどころ調候に着目したり、また好命の条件として十干(六親、変通星)をとりあげている場合もあります。比較検討してみるのもまた有用かと思います。
 訳者の現在の力量では、ところどころ不明な点があり、申し訳ないと重いってます。今後も研鑽を続けて、できるだけ解明していきたいと思います。



   作成 :  2009年12月 6日
   改訂 :  2016年11月19日

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