「子平挙要歌」「子平撮要歌」「子平百章歌」原文と訳


はじめに

 『星平会海』には巻六にこの3つの歌が並んで載っており、子平の基礎として取り上げられている形になっています。順に訳していくことにします。




「子平挙要歌」


造化先須詳日主、坐官坐印衰旺取。
天時月令号提綱、元有元無旺重挙。
大抵官星要純粋、正偏雑乱反無情。
露官蔵殺方為福、露殺蔵官是禍胎。
殺官倶露将何擬、混雑財官取財議。
官旺怕官忌刑衝、官軽見財為福利。
人の運をみるにはまずすべからく日主を詳しくみる。官や印に坐しているかで衰旺をとる。
季節を示す月令を提綱といい、その五行の有無をみて旺重を挙げる。
だいたい官星は純粋なのがよく、正偏が乱雑なのは反って無情である。
官が表れて殺を蔵しているのは福として、殺が表れて官を蔵するのは災いを宿していることになる。
殺官がともに表れているのは何となすか。財官が混雑しているのは財の議を取る。
官旺は官を恐れ刑衝を忌む。官が軽く財を見るのは福利となす。

 「混雑財官取財議」というのは少し意味がわかりにくいと思います。次の「官軽見財為福利」とも関係しますが、日主が強く正官喜神の場合、財が正官を生ずれば財は喜神となりますので、いわゆる富貴双全ということになります。ここでいう「議」は意味とか作用と解するのがよいと思います。
 「年上傷官を嫌う」とは、注によれば、祖先や祖業を傷つけることになり、さらに月時に傷官があるのは悪いとのことです。


年上傷官最可嫌、重怕傷官不可触。
傷官用財乃為福、財絶官衰禍亦然。
年上傷官を最も嫌い、重ねて傷官を恐れるのは触れるべからず。
傷官が財を用とするのは福となし、財が絶で官が衰なのは災いがあるのは当然である。

 「年上傷官を嫌う」とは、原注によれば、祖先や祖業を傷つけることになり、さらに月時に傷官があるのは悪いとのことです。


貪合忘官栄不足、貪合忘殺為已福。
堪嗟身弱怕財多、更厲官郷禍相逢。
財多身弱食神来、食神会殺必為災。
会天合地有刑剋、更宜達士細推裁。
合を貪り官を忘れるのは栄誉が足りず、合を貪り殺を忘れるのは既に福となす。
身弱のなげきに堪える命では財が多いのを恐れ、さらに官が強い行運にいけば災いに遭遇する。
財多身弱で食神が来れば、食神が殺に会えば必ず災いとなる。
天地の会合や刑剋の有無まで、いっそう細かく判断するのが達人である。





「子平撮要歌」

 「子平撮要歌」では変通星の相互関係について述べています。


用之為官不可傷。用之為財不可劫。用之為印不可破。用之為食不可奪。用之為禄不可冲。
正官用神は傷つけるべからず。財星用神は劫するべからず。印綬用神は破るべからず。食神用神は奪うべからず。比肩用神は冲するべからず。

 古い四柱推命ですと財官印食を四吉神といいますが、それぞれ恐れる変通星があります。正官は傷官、財は劫財、印は財、食神は偏印、比肩は七殺です。


若有七殺須要制、制伏太過反為凶。
若用傷官須要尽、此是子平萬法宗。
傷官最怕為官運、傷官尤喜見財星。
もし七殺に制が必要であっても、制伏が過ぎれば反って凶である。
もし傷官が用神であれば尽くすのを必要とするのは、子平の法の神髄である。
傷官は官運を最も恐れ、財星を見るのを最も喜ぶ。

 七殺を制するのはたいてい食神ですが、食神が多いというのは日主が弱くなりますので凶となります。
 「傷官要尽」とはよく「傷官傷尽」と言われますが、これは傷官が喜神で強く官殺がなく財がある場合を指します。


印綬好殺嫌財旺、羊刃怕沖宜合迎。
比肩要逢七殺制。七殺喜見食神刑。
有禄怕見官星到。食神最喜偏財臨。
此是子平撮要法、江湖術者仔細明。
印は殺を好み財が旺じるのを嫌う。羊刃は冲を恐れ合を歓迎する。
比肩が強すぎるならばは七殺の制を要する。七殺が強すぎれば食神の刑を喜ぶ。
禄(正官)があれば官星の行運を恐れる。食神は偏財の行運を最も喜ぶ。
これが子平撮要法であり、世の術者は子細を明らかにすべきである。

 ここでいう「禄」は正官のことだと思います。正官の場合は正官が強くなりすぎるので日主を弱め良くないという説明です。しかし「禄」が食神(食禄という言葉もあります)でも意味はとれなくありません。例えば甲日の食神は丙ですが、食神が喜神の場合には、正官である辛が行運に来れば丙を取り去りますので、辛は忌神ということになります。




「子平百章歌」


天地人元分五音、陰陽妙訣果其真、
去留舒配還参透、不若先知禍福因、
六格陰陽成造化、天機此事莫軽伝、
只知古聖元知妙、静裏乾坤不可言。
三元休失中和気、定看栄枯意転深、
識得子平軽重法、方知此訣値千金。
立法先定生和死、次分貴賎吉和凶。
術経妙理無多説、漫把間言作正中、
妙法只須三両句、無師伝授枉労心、
其間有個真消息、須要令人仔細尋、
設経説透天機事、算尽虚言総是空、
除却子平真妙訣、閑文千巻只為風。
引用支干妙似神、納音空自失天真、
自従悟得玄中理、笑殺江湖売卜人。
術有多門三命祖、五行天地聚還拘、
子平正合陰陽道、外有閑文総是虚。
天地人元を五行に分け、陰陽の妙で真実がわかる。さらに去留舒配還参透で、まず禍福の原因を知るのがよい。さらに六格陰陽で人の運命を見る。天機とはこのことで軽々しく伝えてはならない。ただ古の聖人は初めからこの妙を知っているが、天地は黙っていて語ることはない。
三元の中和の気の休失で、栄枯の変化を見ることができるはずである。子平の軽重の法を知るには、まさにこの訣は値千金である。
法を立ててまず生と死を定め、次に貴賤と吉凶を分ける。
術経の妙理は多く説く必要はなく、行間にあることがまさに真ん中である。
妙法はただ二言三言にあり、師なく伝授するのは無駄な努力であり、その真の意味は人に詳しく尋ねるのがよい。天機に通じることだといろいろな説を立てるのは単に虚言を弄するだけでだいたいは無駄であり、却って子平の本当の妙訣を除くことになる。すなわち何もない空疎な文書を数多く並べただけである。
干支の作用を解き明かすことで神の如き判断ができる。納音や空亡は自ずから真実を失う。
このような精妙な理論を自ずから悟れば、世の占い師は笑うべきである。
術には多くの流派や開祖があるが、五行、天地の関わりを集め、子平と陰陽道を合わせれば、その他は無駄な文書でだいたいは無意味である。

 3句目の「去留舒配還参透」がよくわかりませんが、生剋や合冲刑、通根、透干など干支の作用を言っていると思います。すなわち干支の相互作用で禍福の原因を分析するということでしょう。
 本項の後半は直訳ではなく、かなり意訳しています。で、いろいろと述べていますが、つまるところ、四柱推命は干支五行の作用を見て判断するものであり贅言は要しない、世の術者がいろいろな説を出しているがほとんど虚説である、というようなことを言わんとしているのだと思います。


日干為主論根苗、月令休囚祖不招、
更有生時冲剋破、終当孤苦度昏朝。
一官二印三財位、四殺五食六傷官、
六格局中分造化、高低貴賎幾千般。
甲乙従乾兮水方、庚辛秋旺土生金、
丙丁見戌蔵神火、壬癸逢猪会在申。
日干を主として根苗を論じる。月令が休囚すれば祖は招かず。 (祖業を継がないということ?) さらに生時が冲剋破であれば、晩年は孤独で暗い日を過ごす。
一に正官、二に印、三に財、四に七殺、五に食神、六に傷官、この六つの格局に命式を分類するが、高低貴賎は何通りもある。
甲乙は水の方で乾に従い、庚辛は秋に旺じて土は金を生じる。丙丁は戌が神火を蔵しているのをみる。壬癸が亥に逢い申において会う。

 乾とは亥で水生木であることを指します。庚辛金、丙丁火は訳文で意味がわかると思います。壬癸水において亥は建禄で、申は金水を含むので金生水で強くなるということでしょう。


春木夏火逢時旺、秋金冬水一般向。
不宜羊刃天干透、運到重逢事有凶。
年冲月令須離祖、日破提綱定損妻、
時日暗冲妻子剋、無情多破一生低。
年看祖宗興廃事、月推父母定留存、
日宮専論夫妻局、時上高低定子孫、
年上裁根勝月提、月中生旺日食微、
日辰旺処生百刻、時上根軽八刻推、
春は木、夏は火が時にあって旺じ、秋は金、冬は水は一つの気に向かう。
羊刃が天干に透るのはよくなく、行運で重ねて逢えば事は凶あり。
年が月令を冲すれば故郷を離れ、日が提綱を破れがおそらく妻を損ない、時が日と暗冲すれば妻子を剋し、情なく破が多いのは一生うだつがあがらない。
年は先祖や家の興廃のことをみる。月は父母が生きているかどうかを推し、日宮は専ら夫妻の局を論じ、時は(自分の)運の高低や子孫のことを定める。
年上で根を裁けば月提に勝り、月中生旺ならば日食は微か、日辰が旺ならば百刻に生まれるところ、時上で根が軽いのは八刻を推せ。

 終わりの4句は意味がよくわからないのですが、月令や通根のついての論でしょうか?年柱の通根よりも月令の方が強く、月令に生旺であれば日主はほとんど弱くならず、どの時刻に生まれても日主は旺といえる。もし通根が弱い場合は時柱が重要というような意味ではないかと思います。ちなみに1刻は約15分で百刻は1日に当たり、八刻は2時間ですから一つの時支に当たります。


富貴天干須食奇、地支拱夾少人知、
両干不雑須還貴、一気生人造化希、
富貴は天干にすばらしい食神があり、地支に拱夾があるということを知る人はわずかである。両干不雑はすべからくまだ貴であるが、(天元)一気の人の命式はまれである。

 この部分で唐突に格局のことが入っているのですが、後世で混入したものでしょうか?
 拱夾というのは拱禄格とか拱貴格のことであり、両干不雑というのは天干に2干しかない場合であり、天元一気というのは天干が一つの干で構成されている格ですが、貴命かどうかは条件によります。それは他のページ(例えば『命理正宗』等)を参照してください。


年月支中定祖因、更看日主浅和深、
傷官旺処須妨母、比劫重重損父親。
年月支中に先祖の因を定め、さらに日主の深浅をみる。傷官が旺じれば母をさまたげ、比劫が多いのは父親を損なう。

 比劫が父親を損なうのはわかりますが、傷官はどうしてでしょうか。普通母親は印で、印を壊すのは財です。しかし偏財は父親であり、両親が不仲というのはちょっと変です。傷官は自分の祖母であり、母親の姑です。嫁姑の仲の悪さということを指しているのでしょうか?ただし実占的にはありそうな感じがします。




あとがき

はじめにも言ったように、これらは基礎的なことではありますが、体系的とは言い難いですね。「子平挙要歌」はもっぱら初心者向け、「子平撮要歌」は六親関係のメモ書きみたいなもの、「子平百章歌」はその後につづく、「論科甲歌」や「論否運歌」などの前ふりみたいなものといえましょう。むしろ後に続く「論科甲歌」などが重要ですが、それはまた別のページで。




   全面改訂 :  2016年11月5日  HTML5への対応

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