大六壬古今占例集


はじめに

 このページは、大六壬の古典から当代の著作まで、(よい意味でも悪い意味でも)これはと思う占例を集め、紹介しようというものです。しかしながら、実は、人に紹介することよりも、私自身の勉強のため、というのがこのページの真の目的なのであります。
 真の目的はこれだけでなく、さらなる問題の解明という目的もあります。それは、術者による課式の立て方の違いの解明です。違いというとどんなことがあるかというと、ひとつに、貴人の決め方の古法と新法との差があります。古法と新法の昼貴人と夜貴人は戊庚を除くと全く逆です。その他にも、渉害法も諸説あって、三伝のとり方が術者によって違います。これら違った課式に対して、標準的な立課をすればどうなるのか、というのも大きな目的の一つであります。
 いま手元にある本での占例は、大小あわせるとおそらく300例(ひょっとして720課すべて)を超えるのではないかと思います。それらから、いろいろな分野の占例を選抜して紹介するとなると、私が生きているうちには完結しないかもしれません。地道に続けていくつもりです。
 なお、原文には遁干や十二天将が付いていないものがありますが、私の方で適当と思われるものを付しています。

  疾病を占う
  婚姻、恋愛を占う
  求財、願望を占う
  官職、試験を占う
  失物を占う
  天候を占う
  選挙を占う
  射覆応候



疾病を占う


六壬占卜講義 占験憶譚

辛亥日 亥時 申将 空亡寅卯

螣蛇螣蛇太陰朱雀天后
勾陳
白虎

占日は1933年5月24日である。

謝君占妻病。
余曰:食神乗空、必為胸隔阻塞、不能飲食之症。日鬼発用、禄臨死地、夫占妻而財爻値空、皆不祥之兆也。今雖末伝亥水制鬼、苟延残喘而已。五月丙午、火勢更旺、必不治矣。
上星期謝君又来寓、嘱為合婚、蓋前妻已故、擬続膠焉。詢其死於何時、謂因滴水不入、請西医打針亦罔効、延至四月三十日、終於宝隆医院。
余査此日為丙寅、已交芒種、木火狂熾、鬼力弥張、信哉、数之不可逃也。

 謝君の妻の病気を占う。
 私は次のように言った。
 食神に天空がついているので、かならず胸が詰まって飲食ができない状態だろう。日鬼が発用で、禄は死地である。夫は妻を占う場合は財爻を使うがそれは空亡であり、みな不吉の兆しである。
いま末伝亥が官鬼を制するといっても、やっと命をつないでいる状態(苟延残喘)であるばかりである。五月丙午においては、火の勢いが強く、病はまず治らない。  先週謝君がまた家に来て、合婚を頼んだ。前妻が亡くなったために後妻をとろう(続膠)かと考えている。前妻はいつ亡くなったのかを尋ねると、一滴の水も飲めず、医者に注射をしてもらったのだが効なく、四月三十日に宝隆医院で亡くなったとのことである。
 私がその日を調べてみるとその日は丙寅であり、すでに芒種を過ぎている。木火が盛んで、官鬼の力は目一杯である。運命というのは逃れられないものであるというのはまさしくそのとおりである。

 日禄は酉で酉の地盤は子です。確かに子は金の死なのですが、このこと自体はあまり重要だとは私は思いません。
 私なりにこの例を考えて見ますと、まず日支、占時、末伝が亥ですし、発用が官鬼ですから、いくら干上が土で支上が金でも、日干は弱いといえましょう。さて病症ですが、文章からは極度の脱水症状が伺えます。病気を示す日支は亥ですから一応腎臓病が疑えます。発用、四課亥は辛金を剋しますし、また亥を冲します。さらに白虎もついていますから、そのように考えるわけです。初伝巳で、旧暦の四月十五日はおおむね巳月ですから、巳月のうちに亡くなると判断できますが、芒種を過ぎたところですから、亡くなったのは午月ということになります。ここはうまく当たりませんね。


天文易学六壬神課 善心堂風水顧問例参

甲子日巳時卯将 空亡戌亥 占疾病

玄武天后玄武玄武白虎
天后
螣蛇

(注)この占日は1987年11月11日であろう。

客問病情。
占時巳火為洩干之甲木、以地盤之卯為陰神、勾陳丁神乗卯、丁神為動、勾陳受卯木剋、為神剋将而勾陳起動気、可知此病已危旦之時、蓋勾陳為勾魂死者也、客担然応是。
初伝玄武乗戌臨子、旬空並見、新病見旬空不為凶、而旧病見旬空、大凶之兆。玄武為干之才爻、受乗神戌土剋動、盗洩干之元神、並剋動干上神之白虎、其病已拡散而引致其他五臓矣。
第二、三課上神戌土見旬空、課称折腰、日辰子刑戦太歳卯木並月将、子臨干上神、白虎乗之、白虎為病神、性凶急而烈、並為日干敗気、生向日干甲木。病気已然凶不可制。
第三課上神為玄武乗戌臨子、戌土為薬以制白虎子水、欲制敗気生子、但又為玄武所乗、可知医者以丸薬、水剤、並針薬並用矣、蓋戌上再見申金、上乗天后也。可惜陽神、陰神均不利於日干甲木。
由初伝玄武與末伝天后之鬼論、病在腎臓引発。中伝午火、見螣蛇。
  (注)著者は中伝と末伝を逆に考えているようです。
其症候転凶、水火相戦、引発虚性火毒、螣蛇乗午、其毒越熾、干上神子水為白虎、白虎敗気受火毒引発、第二課戌会寄宮之寅成三合会局、癌病類火毒也。初伝旬空、填実則危、戌臨地盤之子、年内当死矣、歳君、月将在卯、卯為棺木、告客曰年内仲冬不能幸免矣。客言病人腎病多年、近日引発為肝癌、医者曰只三月之寿。後見客於次年告知病人卒於子月矣。

 客、病状を問う。
 占時の巳火は甲木を洩らす。巳を地盤として卯を陰神とする。卯は勾陳、丁神がつく。丁神は動であり、勾陳は卯木の剋を受ける。神が将を剋する勾陳は気を動かす。よってこの病気は危なく命をなくそうかという時であるといえる。だいたい勾陳は勾魂、死者である。客はそうだといった。
 初伝は玄武が戌につき地盤は子で、空亡でもある。新たに患った病気ならば凶ではないが、古い病気ならば大凶である。玄武は財爻である。戌土に乗ずるものは剋を受けて動き、干の元神を盗み洩らし、さらに干上神の白虎を剋する。その病気はすでに拡散しており他の五臓にも広がっているとみる。
 第二、三課の上の戌土は空亡であり、このような課を折腰というが、日支子は太歳および月将の卯と刑し、子は干上神にあり、白虎がついている。白虎は病神であり、性質は凶急で激しく、日干の敗気とし、甲木を生じるのである。病気はまだ凶で制することはできない。
 第三課上神は玄武で子に臨む。戌土は薬で白虎の子水を制する。敗気を制し子を生じる。ただしまた玄武がつくと、医者が丸薬、水剤、針薬および併用しても、戌上に申金がきて、さらに天后がいる。残念ながら陽神陰神とも日干甲木には不利である。
 初伝玄武と中伝天后が官鬼であるため、病気は腎臓に起きている。末伝は午火で螣蛇をみる。(原文を修正)その症候は凶に転じ、水火があい戦い、虚性の火毒を引き起こしている。螣蛇が午にあるので、その毒は徐々にさかんになる。干上神は子水で白虎であり、白虎は敗気で火毒を引き起こす。第二課は戌で寄宮の寅と三合会局をなしている。癌は火毒である。初伝が旬空であるが、充実すれば危ない。戌が地盤の子に臨むので、年内に死ぬ。歳君、月将は卯にあり、卯は棺桶の木である。客には年内仲冬(子月)には亡くなると告げた。客が言うには病人は腎臓を長患いしていたが、最近肝臓がんになったため医者はあと三月だといったとのこと。翌年客にあって聞いたところでは、病人は子月に亡くなったとのことであった。

 わかりにくい文ですが、初伝の戌は甲に剋されて、それについている玄武を動かし、玄武は甲を洩らします。戌土は干上神の子水を剋して白虎を動かして、白虎は甲を剋します。剋動とはあまり聞かない言葉ですが、剋を受けると動揺してかえって動くということはあります。このように剋したり洩らしたりする関係になっているため、あちらこちらに病気が移っているといっているわけです。
 第三課の戌を薬としていますが、医者や薬は第二課の戌と考えた方が適当でしょう。
 大雑把に言えば、玄武、天后は水で申子も合して水、[トウ]蛇は火で寅午戌は合して火であり、占時巳も火、月将太歳卯の遁干は丁で、水火交戦の状態です。ただ火は土に洩らされ水に剋され金に分けられますので火は痛めつけられている状態だといっているわけです。土が空亡であるうちはいいが、充実すれば危ないとは、戌月を過ぎ、亥子月に行けば水が盛んになるため火はますます傷つくということだろうと思います。
 卯と子の関係がいまいちわかりません。まあ卯年や卯将の間に亡くなるということでしょうか。1987年の子月は壬子月であって、水が旺じますから亡くなると判断したものでしょう。ただこの応期の判断は難しいですね。
 課式をみれば、著者の指摘するように水火交戦であり、干上に白虎、発用が玄武、末伝が螣蛇ですから、死は免れないという判断は比較的容易に導き出せると思います。


大六壬断案 例166

庚寅日辰将丑時 空亡午未
戊申年 本命庚戌 占病

螣蛇螣蛇太陰白虎勾陳
勾陳
白虎

これは求財の例(後述)と全く同じ日時です

邵先生曰、此課大凶、上下倶脱、其病恐是泄瀉上得之、自後寒熱往来、必五労七傷、又兼翻胃吐食。況日上生水、金去生水、多主冷涎。支上見巳、木生虚火、必心下不寧、遂至此病、兼之白濁、死在二十八日、不然再歴二十八日難過矣。蓋此課始終見凶神、上下盗気、巳亥倶四数、申数七、四七二十八、両処皆見、五十六日也。

 邵先生曰く、この課は大凶、干支上神がいずれも洩気であり、この病気はおそらく泄瀉性のものであろう。その後は寒と熱が交互にやってきて、必ず内臓がやられることになる。そのうえ吐気や嘔吐をともなう。日主は干上水を生じ、初伝申金もまた水を生じるのは多くは冷たさや水分である。支上の巳は木が生じ(虚火とは季節的に弱いということ)、必ず心は落ち着かず、兼ねて白濁(淋病)となる。二十八日後に死ぬか、そうでなければさらに二十八日は過ぎるのは難しい。だいたいこの課は三伝とも凶神であり、洩気である。巳亥はともに4で申は7。4×7=28で、これが二つ見えるから、56日とする。

 病占でもっともよくないのが、日干を剋したり洩らしたりすることです。干上神は洩らし支上神は剋、さらに三伝が凶将ばかりで、末伝が絶ですから、病占の課としては最悪です。これぐらい悪いと病死と判断するのも当然です。
 干上神(中伝)と支上神が巳亥の冲ですから寒熱往来と判断されます。白濁という判断がどこから来たのかははっきりしませんが、支上神の巳が太陰官鬼ということで性病と判断したのでしょうか?
 28日もしくは56日とは三伝の数をかけたものですが、こういうふうに数目を使って日数を断ずるのは難しく、病状から推して何日ぐらいとしか言えないのではないでしょうか。私なら、病気が重ければ初伝が甲申の旬首なので甲申旬中、もしくは初伝が太歳支申なので年内と判断するでしょう。



婚姻、恋愛を占う


天文易学六壬神課 善心堂風水顧問例参

丁卯日戌時巳将 空亡戌亥
流年戊辰 男女縁分

螣蛇太常螣蛇貴人青龍
太常
六合

(一)占時為螣蛇乗戌臨卯、本為歳破、戌為干之子孫、思想属丁干、螣蛇帯予疑心態、陰神値天空、女意已存不欲留恋心態之象。
(二)初伝亦以螣蛇発動、可知其心態存疑而問卜也。中伝化出太常、可知其男友外表尚佳、並衣着入時惟応酬多、並多異性交往、蓋巳火本為月将、陰神又見六合也。
(三)四課中交車双生、双方交往頻密、本已一段長時間之熱恋、而密運中既相生之有情、亦帯相破相害、在熱恋中主経常互有不満及意見不合、並有相眇情形。
(四)末伝六合乗子臨巳、六合受初伝戌土之制、但入旬空、女方欲控制男友在外之情縁、但本旬空、不能為力、子酉相破於干神上神。(見於二課上神)、反刑於已之寄宮未、由此可知女方有悔於此段恋情之意。
 余曰、(中略)但結果此段恋情仍不能発展至成婚階段、是汝不欲、断此情縁分、終無結果。其後果然。

(1)占時は戌に螣蛇がついて卯上にあり、これは歳破である。戌は日干の子孫であり、思いは丁干の方にある。螣蛇は疑心暗鬼を示し、陰神は天空で、女性の方はすでに恋心を留めようとは思っていないことを示している。
(2)初伝はまた螣蛇であり、その心を疑っての占いだということがわかる。中伝は太常で、その男性は外見はよく、また服装は流行にあい交際が多く、また異性とのつきあいも多い。だいたい巳火は月将であり、陰神は六合である。
(3)四課中一課は日支と助で三課は日干の生を受けるため、交際は頻繁で密であった。しかしすでに長い時間の熱烈な恋愛も、相生であっても、相破相害であり、熱烈な恋愛中も日頃から不満や意見の不一致があり、相互ににらみ合う形である。
(4)末伝は六合は子に乗じ巳に臨む。六合は戌の剋制をうけている。ただし戌は旬空であって、女性の方は男性の情を他に移らないようにしようとしているが、旬空であるため力がない。子と酉は寅において相破である。(二課の上神)巳において刑となる寄宮未もあり、これによって女性の方がここにいたって恋愛について後悔していると考えられる。
 私が彼女に言ったことは、(中略)ただこの恋愛の結果はまず発展せず結婚の段階には至らない、意に反して、この恋愛は何も結果を生まないであろう。その後そのとおりとなった。

 この占断例では日干を男性、日支を女性としています。(1)で陰神とあるのは支神のことです。女性を指します。
 (2)で陰神とあるのは地盤戌、天盤巳で太常の陰神の子を指します。
 (3)の説明ですが、子と酉が相破、巳と寅が相害となっています。
 (4)の刑の説明は少しおかしく、末伝子と支神卯が刑であるため、女性の方が後悔しているという説明になるはずです。
 ここでは箇条書きで細かく説明しているので、あえて付け加えるところはないと思いますが、少し補足を。
 占時戌が発用であり、螣蛇がついていますので、あまりよくない感じです。ただ空亡なので決定的な凶意とはいえませんが、恋愛問題に空亡ですから、結末は別れることになるというのが第一感でしょう。
 一課と三課は会の関係ですから傍目からは仲は悪くなかったはずです。ただ、一課に青龍、二課に貴人ですから、男性の方は外見、中身ともにりっぱな感じですが、女性は四課に太常ですから、まあごく普通の感じでしょう。
 末伝が旬首で六合なのでまとまりそうな気がしますが、子は卯と刑であり、日干丁を剋しますから双方にとってよくありません。もちろん初伝から剋されますから、なおさらです。六合だから即結婚と考えてはいけません。



求財、願望を占う


天文易学六壬神課 善心堂風水顧問例参

辛巳日丑将卯時 空亡申酉
流年丙寅 占生意(飲食業)

天后天后螣蛇勾陳天空
玄武
白虎

飲食業生意、首観財星、次観人客。初伝天后見丁神乗丑臨寅、丑為天厨、司食禄品質、丁神主動、此店品質未能穏定、出品売相亦不佳、天后乗丑為金墓也。
中伝玄武、日馬乗亥臨丑、亥為日干敗気、為干之子孫爻、主其店食客與員工変動頻密、均不留恋於此店、故知熟客甚少。
三伝白虎乗酉上、酉金為兄弟爻為其同業競争者、白虎乗之、対手強於己方甚多。
四課中支上神見卯財、[トウ]蛇乗之、為干之絶気、卯為店之門路、財気已然極弱、再受末伝酉金虎神之冲、可知財気弱並是非多之店。
本店除了只能有生客之光顧外、並食客多意見、消費亦低之人、由於出品不佳会経常換厨房職工、課伝均明顕可見、加上財気洩出於卯門、全皆凶象、告知此店不応再経営、以免損失更大。
結果数月後、知其店財務困難而倒閉。

 飲食業の商売は、まず財星をみて、次に人客を見る。初伝天后は丁神で丑が乗っており寅に臨んでいる。丑は天厨として食の品質をつかさどる。丁神は主に動きを示す。この店の品質はいまだに安定できず、出す品や商売の状況はよくない。天后の乗る丑は金の墓である。
 中伝は玄武で、日馬亥で丑に臨む。亥は日干の敗気で子孫である。主にその店の客や従業員は頻繁に変わり、この店をよくしようとすることもなく、ひいき客も少ないとみるべきである。
 三伝に白虎が酉に乗り、酉金は兄弟で同業者とする。白虎がついているということは、相手方は自分より強みが非常に多いということである。
 四課のうち支上が財であるが、螣蛇がついており、しかも日干の絶である。卯は店の門路とするが、財気はすでに弱く、また末伝酉の冲を受けるため、財気は弱く欠点の多い店だということになる。
 この店はただ客は立ち寄るものの、文句が多く、使う金も少ない。出す品もよくないし、従業員や調理人もよくかわる。課伝をみれば明らかなように、財は卯門からどんどん出て行く。これらは皆凶であり、この店の経営はやめたほうがいい。そうすれば損失がさらに増えることはない。
 結果だが、数ヵ月後に、この店の財務状況は困難となり倒産したと知った。

 説明の余地はないでしょう。補足すると、卯の類神は門戸であり、財が門戸にあるのでよさそうですが、螣蛇がついていて酉と冲ですし巳に臨んでいますから力がありません。またさらに言うと、日干と比和の申酉は空亡でしかも申は天空ですから、この人自身にもいいことはありません。


大六壬断案 財産例135

庚寅日辰将丑時 空亡午未
流年戊申 本命癸卯 占店業

トウ蛇螣蛇太陰白虎勾陳
勾陳
白虎

 この例は先の疾病の例と全く同じです。

邵先生曰、干支上皆盗気、其家世店業、十退五六矣。初申加巳、庚禄在申、禄来加蛇上、又蛇擾、是少人銭物。中亥加日上、脱気太重、末財在脱上、又遭虎剋、到此十分去尽矣。主四年中去一半、七年中全退、又妻生病死。占時家甚費力、至辛亥年両店皆欠、甲寅欠債狼狽、為人所訟、妻病浮腫而死也。

 邵先生がいう、干支上は皆盗気(洩気)であり、その家は店業をやっているが、十のうち五、六を失っている。初伝申は巳の上にあり、申は庚の禄で、禄は蛇の上にあるから、また蛇の騒動で、これは人銭物が少ないことをである。中伝亥は干上神で、日干の気を非常に洩らし、また末伝はさらにそれを洩らし、白虎にあって剋されるため、ここにいたって完全に去り尽くされるだろう。主は四年のうちに半分を失い、七年たてば全て失うことになる。また妻は病気で亡くなる。占えば時に家ははなはだ力を費やし、辛亥年にいたり両店ともみな欠け、甲寅年には借金で狼狽し、訴訟ごとになるし、妻の病は浮腫で死ぬことになる。

 始めの方で「蛇の騒動」と訳しましたが、これは巳火が申金を剋することを言っていると思います。
 比較的わかりやすい判断だと思います。相談者は66歳といいますから、はっきりいって長くありません。それを前提にすれば割と簡単な見方です。
 日干支上神はともに日干支を洩らしていますから、これは財を失うことです。現在はまだしも、中伝は日干を洩らし、末伝は中伝を洩らすので、徐々に弱くなります。この三伝は逓生なのですが、凶将ばかりですのでよくありません。4年と7年というのは、現在からみて、亥年、寅年ですから、三伝をそのままとったものです。ひねりがないですね。
 訴訟事は支上神の巳が官鬼で干上神と冲であることから出た判断だと思います。また妻の病気というのは庚金の妻財は木であり、ちょうど日支に寅があります。寅には白虎が付いており、これが病気や怪我との判断でしょう。ただ浮腫と判断するにはどこをどうみればよいかはちょっとわかりません。浮腫とは津液の過剰な状態ですから、金水強く木火が弱いといえるのでしょうが、甲寅年に亡くなる理由がわかりません。



官職、試験を占う


六壬占卜講義 占験憶譚

癸卯日酉時亥将 空亡辰巳
流年丁丑 占命

勾陳勾陳朱雀朱雀貴人
天空
太常

李翁服官多年、忽被参劾去職、不甘雌伏、擬再謀事於他方、占得此課。
余曰:日干上卯、日支上巳、《畢法賦》所謂:「簾幕貴人高甲第、昂蔵千里、前程必遠。」惟三伝自上生下、四課自下生上、謂之水涸其源、木断其根、翁命恐不久耳。
後聞果握重権於西省、但未満三月、卒於任次。

 李翁は多年にわたり官職にあったが、たちまちのうちに弾劾にあって職を辞した。しかし雌伏に甘えず、他の地方での再起を図り、占ってこの課を得た。
 私は次のように述べた。日干上が卯で日支上は巳であり、《畢法賦》にいうところの「簾幕貴人は試験に高位で合格する。上っていくには千里があって、前程は必ず遠い。」ただし三伝は上から下を生じ、四課は下が上を生じている。これは水はその源が涸れ、木はその根を断つということで、翁の命はおそらくは長くはないであろう、と。
 後に聞くところでは、果たして西省で重職に就いたものの、三ヶ月しないうちに任の途中で亡くなったということである。

 日干に貴人があり、日支に簾幕貴人がありますから、職に就くという判断はごく普通の判断です。本文にあるように干上神、日支は日干を洩らし、その他の課も財と剋で日干を強めることはなく、中伝酉は日干を生じますが天空ですから、その作用も減じられます。
 末伝亥は日干の助ですが、これも支上神と冲であり、凶意があります。しかも亥と卯と未は会して木局をなしますからやはり日干を洩らします。すなわち日干は弱いわけです。
 李翁というぐらいですから、もう年だったのでしょう。客観的にみても他郷での再就職はストレスとなったと思いますので、全体的にみれば、命は長くないというのはごく常識的な判断といえるのではないでしょうか。
 いつ亡くなったかがわからないので応期については何とも言えません。
 私は占断には必ず客観的な状況判断が必要だと思っています。


六壬断案 前程仕進 例51

癸亥日未将巳時 空亡子丑
流年戊申 本命戊辰41歳

太常太陰太常貴人太陰
太陰
貴人

邵先生曰、課名出戸、占試則吉、太陰乗卯作幕貴、加日干、又貴在末伝、先晦後明、准擬登科也、明年五甲無疑矣。蓋癸亥乃六甲極日、日去就支、主終身如斯而已、喜得旧家晦窒、斯道発輝而出幕貴、伝出又出而向日貴、日貴在夜貴之上、故先晦後明、且行年午上乗申、為干支長生、係文星学堂、合起日貴、寅上辰為本年、昼夜貴人拱之、故必及第也。伊乃伊知県之弟、屡試不中、今先生許其中、渠甚不信、及試果得第、次年中五甲矣。

 邵先生曰く、課名は出戸であり、試験を占えば吉である。太陰が卯に乗じて幕貴(簾幕貴人)であり、日干に加わり、また貴人が末伝にある。先暗く後で明るい、確かに科挙に登ると考えられる。翌年五甲は疑いなし。だいたい癸亥は六旬の最後である。日は支について去り、主に終身はこのようなことのみである。古い家の暗い部屋で喜びを得る。このように輝きを発するというのは、幕貴から出る。三伝は日貴に向かい、日貴は夜貴の上にある。ゆえに先に暗く後で明るいというのである。かつ行年午の上には申が乗じて、申は長生であり、文星学堂にかかわるものである。そして日貴と合している。寅の上の辰は本命であり、辰は昼夜貴人にはさまれている。ゆえに必ず及第する。
 伊すなわち伊知県の弟は、試験をみてもよくできてはおらず、今先生がそれが通るというので、かれは甚だ不信をいだいていたが、試験を受けて結果をみると合格である。次の年、五甲となったのである。

 出戸課というのは間伝課のうち丑卯巳の三伝となる場合をいいます。君子に吉といいますから、試験に臨む場合はいいのでしょう。卯はいわゆる簾幕貴人です。太常、太陰(簾幕貴人)、貴人と徐々に吉将になっていきますから、後になってよいというわけです。
 五甲というのは、合格者の中でも最も低い成績で、任官できる保証はないのですが、合格には違いありません。おそらく、邵先生も実力がないのを知りつつ合格という課式だったので、五甲と言ったのだろうと思います。
 占った年は戊申年で次年は己酉年です。酉年は末伝巳、三課丑と三合金局となり、日干を生じますから、次年と判断したのではないかと思います。



失物を占う


六壬輯要 占失物

戊辰日戌時寅将 空亡戌亥
流年壬申 占失物

青龍青龍螣蛇天空朱雀
玄武
螣蛇

鎖匙一串失去、遍尋無着求占。
鎖匙為金属、其類神為酉、今酉臨干上、又会成金局、更逢交車合、可以尋到、査丑為酉金陰神、又作金墓而乗空、乃陥於空隙之中、丑為乙丑、遁木乙乃鉤形、乃懸於空隙木器之上、丑為斗宿、可能遺在弁公卓之抽斗空隙中尋之可得。
結果、在弁公卓抽斗下方、懸掛于抽条之上。

 鍵がなくなって、探しても見つからないので占う。
 鍵は金属であり、その類神は酉である。酉は干上にあり、また金局となっている。さらに交車合であり、探せば見つかるであろう。丑は金の陰神であり、また金の墓であって天空が乗じている。すなわちこれは空隙の中にあるということである。丑の遁干は乙でこれはすなわち鉤形、これは空隙のある木器の上にかかっているということである。丑は斗宿で、事務机の引き出しの空隙の中を探せば見つかるであろう。
 結果は、事務机の下の方の、引き出しを支える棒の上にひっかかっていた。

 これは失物占いの基本的な見方ですし、この占例は私は名占といえると思います。失物の類神を決めて、その天地盤をみて判断するというのが失物占いの鉄則です。
 ちょっと補足すると、斗宿というのは、木気であり、橋梁など下の方にある木を指します。そこで引き出しということが得られたわけです。
 おそらく、この占例は、鍵のある場所はある程度事務所だということが想定された上でのことだろうと思います。しかしこれは重要なことで、まずは常識的に考えられることから推測しなければ、失物占は当たるものではありません。それなくして当たるのは、霊感とか超能力でしょう。
 さて、私なりに考えてみますと、玄武や螣蛇などがありますので、少し不安ですが、交車合、すなわち干上神と日支が合であり、日干寄宮の巳と支上神がやはり合でありますから、失物とは縁が切れない、すなわち見つかると判断します。これは本文のいうとおりです。遁干乙というのもいいでしょう。類神酉の地盤支は巳で太陰ですから、隠されたところにあり、また酉は干上神ですから身近にあるといえます。末伝が三課なので見つかるでしょうし、三伝が水局ですから、夜のうちに見つかると考えられます。


大六壬占術 六壬実験録 8紛失物

戊申日申時戌将 空亡寅卯
流年丙午 本命亥

天后天后玄武太常天空
トウ蛇
六合



 財布を紛失したが手許に戻るかどうかを尋ねられたのです。(中略)
 なくされた方は、その後よく探されたが半ばあきらめていましたが、何かの時に西側のホリゴタツを掃除されたそうで、その灰の中で財布がみつかったと5月2日に報告がありました。(占断は4月19日)

 本文は日本語ですから、中井師がどう考えたかは本を買って確認してください。ここでは、私なりの補足です。
 支上神戌に玄武がついており、これは盗難を示していそうです。しかし、戌に玄武がつくのは、玄武水を剋して賊に不利であり、さらに末伝辰が冲し、また干上神未と刑、さらに墓ですから、盗難の意味は薄そうですし、かりに盗難であっても上手くいきません。
 普通の失物占では、類神を失物としてみます。財布の類神は、どうでしょうか。財というのは十二天将では一般的には青龍です。青龍は午についており、辰に臨みます。普通の見方ですと、財布の場所は東南方向ということになります。しかしこの場合は西の方だったというわけですから、この見方は失敗です。
 初伝子は財であり戌に臨んでいます。中井師はこの発用子を財布として、その地盤戌を財布のある方角と断じています。この場合は子を財布とした方が適当なようです。天后には財物という意味もあります。
 地盤戌は土です。また天后子の陰神はトウ蛇に寅です。トウ蛇は火で寅は木ですからこれは火が燃える感じ、戌は土ですから灰を暗示しています。
 干上神は天空ですが、これは本人があきらめることを示していると思います。
 肝心の財布が出てくるかどうかですが、末伝辰が戌と冲ですが酉と合、初伝四課と会です。また日干は弱いわけではありませんから、おそらく出てくるものと思います。未は己で劫財ですが天空ですから、劫財の作用はなく、やはり出てくると判断されます。ではいつ出てくるかですが、私は申日だと判断します。申子辰で財局となり、本命亥を助けるからです。とすると、5月1日ということになります。実際は翌辛酉日で、水を生ずる日でありました。
 なお、この話の結末で灰の中から財布が見つかったというのは、私には少し不自然な気がします。


六壬実占詳解 七、占失物 例2

丙申日未時未将 空亡辰巳 流年壬申

勾陳螣蛇螣蛇勾陳勾陳
トウ蛇
白虎

判断:在家裡找看看、可以找到、結果在家裡沙発下找到。
鑑定方法:
(1)伏吟課、月将與占時相同、遺失物品不出家門、還在家内、子細尋找、必可找到。如問小偸、盗賊、還在家内、或家中之人所拿走。
(2)日干巳火與日支申金相合、干上又與支上相合、互為交叉相合、申金為日干丙火之財爻、銭包為放銭之物品、必可尋回。
(3)巳火空亡発用、主遺失、一時健忘、不小心。巳火乗勾陳空亡、勾陳為房子之類神、主在家中遺失。申財雖陥、得太歳填実、亦旺、故財不失。

判断:家を探してみれば見つかるだろう。結果は家のソファの下で見つかる。
鑑定方法:
(1)伏吟課というのは月将と占時が同じもので、遺失物は家からは出ておらず、まだ家にあるとし、よく探せば必ず探し出せる。かりに盗人とか盗賊ならば、まだ家にいるか、あるいは家の者が持って出たものとする。
(2)日干巳火と日支申金は合であり、干上と支上も合であり、互いに交叉相合となる。
申金は日干丙火の財爻であり、財布は銭を入れるものであるから、必ず見つかるだろう。
(3)巳火は空亡の発用であり、主には遺失、一時の健忘、不注意である。巳火は勾陳が乗じての空亡で、勾陳は家屋の類神であるから、主に家の中に忘れているとする。申財は陥であるが、太歳を得て填実であり、また旺である。故に財は失っていない。

 ほとんど解説の必要はないでしょう。面白いのは財布を申として、その場所を初伝の勾陳巳としていることです。失物占いにはこのように活断が要求されます。それにしても、勾陳を房子(家屋、部屋)の類神としているのですが、そこはちょっとわからないところです。


>六壬断案新編 亡盗 例193

庚辰日辰時酉将 空亡申酉

天后天后勾陳白虎貴人
天空
トウ蛇

某因親事筵会失銀而求占。
邵先生曰、寅作后加酉、為隠蔽、酉金類神也、合加支上、日上有丑墓、寅作初伝、中伝未、作墓覆其上、凡見墓則為蔵物、有類神、主其物不失、中未墓作天空、主汚穢、那更辰作玄武、伝入勾陳、勾陳在酉而敗玄武、故主尋之必得、果於厠坑之側尋見。

 某氏が結婚の宴会の席でお金を失ったので占ってほしいと言ってきた。
 邵先生曰く、寅は天后で酉に加わる、隠蔽とし、酉金は類神で支上にある。日上には丑がありこれは墓である。寅は初伝で、中伝は未で墓としてその上を覆う。およそ墓をみれば蔵物として、類神あれば、だいたいはその物は失っていないとする。中伝の未は天空で主には汚い場所、そしてさらに辰は玄武だが、勾陳があり、勾陳が酉にあって玄武は敗れる。故に尋ねるものは必ず得られる。果たして厠の穴のそばに見つかった。

 あまり解説する必要はないと思いますが、多少補足すると、干上は貴人で日干を生じていますし、支上神は酉金でやはり日干の助です。午は日干を剋しますが、末伝の子と冲ですから力はありません。末伝トウ蛇は凶神ですが、午と冲ですから作用は薄いでしょう。
 ここでは酉を類神とすると、地盤辰が玄武でこれが厠を示していると考えられます。
 なお、酉は月将で支上神にあり、これを太陽射宅といい吉の課式となりますから、お金は失わないと判断されます。


六壬占卜講義 占験憶譚

己卯日辰時辰将 空亡申酉

六合六合六合白虎白虎
貴人
天空

皖人程某、寓滬有年矣、家僅一妻一傭婦、会有同郷徐姓者借榻其処、当晩程妻忽失去首飾数件、固疑為徐所取然無佐証、擬難指斥、就決於余。
余曰、玄武乗酉、必為婢輩所竊。幸首飾之類神亦属酉、酉乃日長生、況伏吟課而支上発用、雖失可得、物尚在家、其速偵之。
後果厳詰傭婦、始慚懼不諱曰物蔵厨房煤球[ラ]内、当奉還而歇工、但祈勿声張耳。

 皖の人で程という人は、長く上海に住んでいるが、家には妻一人、下女が一人いるだけであった。たまたま同郷の徐という人が部屋を借りて同居していたのだが、その晩から程の妻の首飾りがいくつかなくなった。もとより徐を疑ったのだが、証拠がない。それでとがめだてするわけにもいかないのでと、私のところに来た。
 私がいうには、玄武が酉に乗じており、必ず下女が盗みをやったとする。幸い首飾りの類神も酉であり、酉は日の長生であり、いわんや伏吟課で支上が発用であるから、失ったといっても得ることができる。物はまだ家にあり、すぐにさがすように。
 後に果たして下女を厳しく問い詰めたところ、恥じ入ってしゃべりだしたところでは、物は台所の炭入れのかごの中にあるということで、すぐに返して仕事をやめてしまった。ただしこのことは黙っておいてくれと祈るばかりであった。

 この占断は、依頼者が盗難を前提にして聞いてきていますので、まずは盗難の類神である玄武でそれがついている酉から盗人を判断しています。これは常套です。これが盗難かどうかわからないときは、首飾りの類神を酉として、その酉に玄武がついていますから、盗難と判断することになるでしょう。
 酉は空亡ですから、盗難といっても実体がなく、また伏吟課で三課が発用ということで、身内の盗難でしかもまだ外に出ていないというのも、また自然に出てきます。ではどこにあるのか。伏吟課ですから、酉の地盤や陰神には頼れません。では発用はというと、己卯で六合がついています。木に関係するところと判断できますが、竹かごの中と断定するにはちょっと自信がありません。



天候を占う


大六壬断案 天時 例一

己卯日寅将酉時 空亡申酉
流年己酉 占降雪

玄武青龍貴人玄武勾陳
朱雀
白虎

邵先生曰:数日以来天気和暖、宛如三、九月、州縣雖然祈雪、皆無響応、今得此課、明日天色必変、巳時風起転寒、未時有雨、亥時作雪、厚有七寸。
衆官皆笑曰:今日晴暖、雪従何来?当日已晩、次早衆官在壇、待至巳時、果然風起、霎時雲合、未時微雨、衆官散後、北風大作甚冷、二更後下雪、至次日未時方止、果積七寸。
蓋此課火伏於下、水升乎上、不拘占雪占雨、皆当日有、況申為夜貴、正是権柄、日上又見天河之水、騰運乎上、必流乎下、初伝巳火、臨子被剋、上見玄武、変成大風雪、蓋巳戌卯鋳印、春夏秋必雨、冬必雪、末伝卯作白虎、與申皆是白色、申乃空亡、正是空中降下、乃造化之所生也。夫火伏於下、水騰乎上、一雨也。申子為水、加臨日辰、二雨也。三伝順行、三雨也。卯為雷、雷過西方、為虎所制、雖冬月無雷、豈深冬無雪乎!子作勾陳、占雨主連綿、主雪、主深厚。

 邵さんが言う。
「数日来天気は暖かく、まるで三月や九月のようだ。州縣が雪が降るように祈っているようだが効果はない。今この課をみると、明日は天候は変わり、巳時になれば風が吹いて寒くなり、未時は雨になり、亥時になれば雪になるだろう。七寸ぐらい積もる。」
 集まっていた役人たちは皆笑って言う。
「今日は晴れて暖かいのに、雪はどこから降るのか。」
 今日は遅いので、明日の朝から役人たちは役所に集まり、巳時を待った。すると風が起こり、瞬時に雲が集まり、未時にはわずかに雨が降った。役人たちが帰ると、北風が強くなり非常に寒くなり、4時間後には雪が降りはじめて次の日の未時にやんだ。積雪は七寸であった。
 およそこの課は火が下に伏せて、水が上に昇るもので、雪か雨かにかかわらず、あるのである。またこの場合は申が夜貴人であり、これは権柄であり、日上にはまた天河の水がある。上に運が昇りきっていて、必ず下に流れる。初伝巳火は子に剋されて、玄武が乗っているため、大風雪に変わる。そもそも巳戌卯は鋳印で、春夏秋は必ず雨、冬は必ず雪、末伝卯は白虎で、申とともに白色を示す。申は空亡で空から降ってくることを示し、すなわち自然の生ずるところである。火は下に伏せて、水は上に昇るとは、まず雨である理由の一つ。申子は水であり干上支上にあることが二番目の理由。三伝が順行であることが三番目の理由である。卯は雷であり、西方に行くとは白虎が制しているためである。冬月は雷はならないが、どうして冬に雪が降らないといえるか。子は勾陳で、雨を占えば雨は降り続き、雪を占えば厚く積もるといえる。

 すでに説明があるのですが、若干の補足を。
 三伝が巳戌卯は鋳印とありますが、普通は太常がなければ鋳印課とは言いません。鋳印課はだいたい雨が少ないと判断するものですが、ここでは雨が降るといっています。ただ、課名だけで判断するのはよくありません。
 積雪七寸の根拠が示されていませんが、五行数では申が七で子が九です。常識から判断して七という数をとったものと思います。ただ、数の取り方は非常に難しいので、こんなに単純に判断したとは思えませんが。
 私の見方では、まず、四課を見ると、申子は水局、子丑は北方合で水の意味が強いです。とくに干上神が子ですから雨か雪というのが考えられます。翌日は庚辰日であり、申子辰と水局となります。よって次の日には雨か雪になると考えられます。
 初伝は巳ですからこれは晴れですが、玄武は水神であり、全くの晴れとも言いがたいところです。中伝は朱雀がありこれは晴れですが、翌日の辰に冲されますから、すっきりと晴れません。
 久しく雨が降らない場合は、子の地盤支で雨が降るとされます。子の地盤支は未ですから、未時に雨が降るというのは、その説のとおりです。
 冬の晴れた翌日は寒くなりますから、雨が雪に変わることは常識的にもわかることでしょう。


大六壬断案 天時 例二

戊申日子将申時 空亡寅卯 占晴雨

玄武玄武螣蛇貴人勾陳
青龍
螣蛇

邵先生曰:潤下格、玄臨子作用、中伝龍又乗申、末伝又是夜青龍、若春占主水漲、今冬占必有大雪。果辛亥日雨、丙辰日大雪、戊午日晴而起風。

 邵さんが言う。
 潤下格であり、玄武が子に臨んで発用となっている。中伝には青龍が申に乗じて、末伝はまたこれは夜青龍である。もし春の占いであれば水が漲っているところだが、今冬であるから、必ず大雪になるだろう。
 はたして、辛亥日は雨で、丙辰日は大雪となった。戊午日は晴れて風が吹いた。

 三伝が水局で、玄武は水神ですから、潤下格となります。
 この課式をみると、一課二課は金局で、三課四課は水局です。金が水を生じる形です。しかも玄武は水神で、青龍は雨の象があり、まさしく「水が漲った」状態です。冬ですから大雪というのは、割と簡単に判断できます。
 翌日は己酉ですが、酉は辰と合であり、三合を崩しますので、雨は降りそうで降らない状況だったでしょう。翌日の辛亥日は金水ですからはっきり雨です。壬子日も雨だったでしょう。
 丙辰日は水局で玄武もまた水です。丙は土を生じますが、これだけ水が多いと力も薄くなるでしょう。
 ただ、水があまり多いと陰極まって陽に転じ、かえって雨が降らないものですが、丙があることにより、陰極まるところまでいかないため、大雨になったと思います。
 この日を境に天候は晴れる方向に転じて戊午日は末伝の子を冲するため、三合がくずれ、しかも土が水を抑えて晴れということになったものと思います。午には白虎が乗じますが、白虎も晴れることが多いです。


六壬指南 天時 例一

己巳日戌将丑時 空亡戌亥 占何日有雨

天空六合天空青龍太常
六合
貴人

天気亢旱、萊陽台中遅父師、因思宗祈雨、占何日有雨。
巳午之日先有狂風起。出旬甲日小雨、乙日大雨。蓋斗罡加未、為風伯、発用功曹刑殺剋日、故主有狂風。又貴登天門、龍神飛天、皆行雨之象。因中末亥申空亡、故言出旬有験。甲日小雨者、乗休気空亡也、乙日大雨者、子卯相刑也。

 天気は日照り続きである。遅芝[ライ]先生が雨乞いの祈りをしようとしているので、いつ雨が降るのかを占った。
 巳午日はまず強い風が起こる。旬を出る甲日は小雨、乙日は大雨。およそ辰が未に加わり風伯となる。発用は寅で刑殺であり、日を剋す。よって主に強い風が起こるとしたのである。また貴人が亥の上にあり、青龍が辰上にあるのは、みな雨の象である。中末伝の亥申が空亡であるから、故にこの旬を出れば、(雨乞いの)効果がある。甲日は小雨とは、休気で空亡に乗るからである。乙日が大雨とは子卯が刑であるからである。

 本文で辰が未に加わるのは風伯とありますが、これは勘違いでしょう。この占いは三月ですので、午が風伯となります。
 巳午日に狂風が起きたのは、巳午の上神は寅卯で寅は発用です。寅卯は木で風の象があります。また午は風伯ですから、風の意味が強まります。寅巳は上下で刑となっていますから、強風ということでしょう。ところが、寅の遁干は丙であり、これはいかにも晴れです。さらに天空ですから、風は吹くものの当面雨が降らないことを示します。
 三伝を見てみると、末伝に貴人がついていて亥に臨んでいます。また二課の青龍は辰に臨み、いわゆる青龍飛天ですから、いずれも雨に向かうことを示唆しています。
 中伝で空亡、末伝は落底空亡ということになります。これはこの甲子旬を抜ければ、すなわち甲戌日からは状況が変化することを示します。甲は寅で、寅上は亥で空亡ですから状況が変わるといっても力がありません。ですから小雨だと断じています。また乙は卯で卯の上は子で、上下相刑ですから、強く作用して大雨だといっています。
 私なりに見てみると、末伝が壬申で初伝と冲ですから、いずれ雨が降るのは間違いありません。ではいつかというと、やはり亥日が本線でしょう。すなわち乙亥日です。甲戌日については、旬を抜け辰を冲しますから、状況の変化が期待できるということで、雨の可能性はあります。しかし、本格的には亥日になると判断します。この占いは雨乞いをやっていつ雨が降るかという占いですから願望占だととれます。亥の上神は申で貴人ですから、貴人登天門で願望が成就するとみます。


六壬指南 天時 例二

丁酉日丑将卯時 空亡辰巳 占降雪

朱雀天空太常勾陳天空
天空
天空

江西前刑部兵長垣諱応遴曾先生、因雪後天気昏沈、自将禽数断云、明日必雪。予以六壬断。
明日無雪、且有日色。太陽発用乗朱雀、乃南方火之精也、且三伝四課純陰、陰極陽生、必有日出、至庚日未時有暴風起。酉為風殺、未為風伯、酉與未会故也。又禄乗白虎加庚、上下剋戦、故有此応。

 江西前刑部兵長垣の曽応[リン]先生が、雪のあと天気が暗くなっているので、自ら数をとって(占って)、明日は必ず雪だと断じた。私は六壬で占った。
 明日は雪はなく、日差しがある。太陽が発用で朱雀が乗っているのは、すなわち南方火の精であるからで、しかも三伝四課すべて陰であるから、陰極まって陽生ずというとおり、必ず日が出るであろう。庚日未時に至って暴風が起こる。酉は風殺、未は風伯で、酉と未が会うゆえである。また日禄に白虎が乗じて庚(申のこと)に加わり、これは上下が剋戦であり、ゆえにこう判断した。

 酉は風殺でいいのですが、風殺は風伯と冲の関係ですから、風伯は卯となり未ではありません。それ以外の判断ではとくに付け加えることはありません。
 雪が降るかとの占いで中末伝が天空で空亡ですから、これは雪は降らないと判断すべきでしょう。
 風がいつ吹くかをこの課で判断するにはかなりのインスピレーションを必要とし、その土地の気象に十分通じていなければ難しいというより無理でしょう。五行でいえば風は木ですが、六壬的には土金が空亡なら風と判断する場合があります。この課は日支が酉で初伝は酉の三合をとりますから、日支と初伝は三合です。しかも干上神は巳で見事に金局をなしています。しかし干上神は金局の空亡ですから風と判断されます。庚日は金日ですから三合に応じて風と判断できないこともないですが、これは少し牽強っぽいです。まずはこの課で雪は降らないと判断するのが、私には精一杯ですね。


六壬指南 天時 例三

甲申日子将酉時 空亡午未 占有雪

螣蛇白虎勾陳螣蛇太陰
勾陳
白虎

予往准陰、時鳳陽施揮使相召守歳、見天気昏沈、占元旦有雪否。
断曰、不但元旦有雪、今晩亦雪。因斗罡加丑、陰象也、況申為水母発用、生中伝亥水、亦乗螣蛇、乃如雪頭、湾曲之形、是以断今晩明日有雪。

 私が准陰に行ったとき、時鳳陽施揮使相が大晦日に私を呼んで、天気が暗く沈んでいるのをみて、元旦は雪かどうかを占った。
 私が判断するに、ただ元旦に雪があるだけでなく、今晩もまた雪である。辰が丑の上にあり、陰の象である。まして申金は水の印であり発用であり、中伝の亥水を生じ、また螣蛇に乗って、すなわち雪頭、湾曲の形である。これによって今晩と明日は雪ありと判断した。

 まず状況として、雪が降りそうだったことに注意してください。初伝は申で金水を含みます。中伝は亥でこれは雨、雪の象です。干上神は巳ですが太陰がついています。中伝の遁干は丁火で、初伝遁干甲木から生じられています。すなわち、水と火が並んでいます。ただし、状況は雨か雪っぽいわけですから、ここは雪と断じるのが合理的でしょう。
 さらに日支で発用が申で、応期からいえば、当日に起きることと解釈されますから、今晩中に雪が降るという断になると思います。このことは書かれていませんが。
 この課ならば、私も同じ結論を出せると思います。
 ところで、湾曲の形というのは蛇の形からの類推で螣蛇というのはわかりますが、雪頭とは?亥が冬の最初の十二支ですから、そういう言い方をしたのだと思いますが、よくわかりません。


選挙を占う


選挙予測之研究 自民党総裁選 小泉純一郎選情

甲寅日酉将戌時 空亡子丑
流年辛巳 本命癸未

天后天后貴人天后貴人
太陰
玄武

1a 朱雀卯木生太歳巳火
1b 太歳巳火洩日干甲木
2a 朱雀卯木剋幕官未土
2b 但朱雀與幕官卯未三合
3  日干甲木剋貴人丑土 老神在在
4  日支寅木比和日干甲木
5  第1、3課貴人乗丑、名升堂
6  初伝空亡、初期希望小些
7  中伝太陰與日支六合、獲得田中真紀子支持、声勢直上
8  三伝子亥戌、逆連珠格、凶則重重、吉亦累累
断曰:後勢看好。

1a 朱雀卯木は太歳巳火を生じている。
1b 太歳巳火は日干甲木を洩らす。
2a 朱雀卯木は幕官未土を剋する。
3  日干甲木は貴人丑土を剋する。老神がある。
4  日支寅木は日干甲木と比和である。
5  第一、三課は貴人が丑に乗じており、升堂という。
6  初伝空亡で、はじめは希望はごく小さくしかかなわない。
7  中伝太陰は日支と六合である。
   これは田中真紀子の支持を得ることで、勢いはすぐに上向きになる。
8  三伝子亥戌は逆連珠格で、凶ならば凶が続き、吉ならば吉が連なる。
 判断すると、のちに形勢はよくなるであろう。

 幕とは簾幕貴人のことです。未は昼貴人で官にあたります。
 だいたいは書かれているとおりでしょうが、田中真紀子はむしろ天后子が示すものと思います。亥と寅の合はむしろ中盤から女性の人気を獲得していくことを示していると判断します。
 初伝の空亡は、おそらく自民党の冷ややかな雰囲気でしょう。自民党をぶっつぶすと言って出馬したわけですから。出馬表明も結構遅かったですし。
 末伝は丑戌の刑がありますが、これは恃勢の刑です。しかし丑は空亡で勢いが足りない。つまり予備選一回目では勝負がつかないでしょう。しかし、全体に木水(比印)が強く、落選はしないと判断できるのではないでしょうか。(この辺少し自信がない)
 それにしても、台湾の人が自民党総裁選を占うとは、物好きというか勉強熱心というか…。


射覆


六壬実占詳解 占射覆 例一

甲戌日卯将申時 空亡申酉 流年己巳

青龍青龍太陰玄武朱雀
貴人
白虎

同事問我是非能猜猜看他正在想什麼?
君思之事與財有関、因干上酉金合玄武辰財、乃投機類、且発用子水父母乗青龍財神、有文書與財合財一起、三伝逓剋、青龍化白虎、有起伏很大之意、莫非與股票有関。果同事正在想股票。

 同僚が私に、今何を考えているかを当てられるか、と尋ねた。
 君が思うことは財に関係あることだろう。干上に酉金があり玄武の辰財と合している。これはすなわち投機のたぐいで、かつ発用が子水父母で青龍が乗っている。これは財神であり、文書と財があわせて一緒である。また三伝が順に剋になっており、青龍は白虎となっている。これは起伏が激しいことを意味している。このことから、株式に関係あることではないか。
 果たして同僚はまさに株式のことを考えていたのである。

 説明の必要はないと思います。
 射覆は占時、一課、三課、発用を主にみます。占時は申金で官鬼[トウ]蛇ですから、病気とかが考えられます。が、状況からして病気のことを尋ねるとは考えにくいし、空亡ですからあまり考えなくてよいでしょう。一課も空亡です。占時、一課とも空亡ですから、これは現実性がない問題でしょう。
 一課二課が合しており、辰は財、酉は朱雀でこれは文書ですから、財と文書の結びつきです。三課は太陰でこれは秘密のことがら、発用は青龍で、青龍は財を示しますから、ひょっとすると奥さんには内緒で株を買っているのかもしれません。
 末伝は寅で白虎ですし、酉から剋され、巳に刑害です。さらに占時や一課が空亡であることを考えると、この株式の相談については、儲けはなさそうです。むしろ損害を被るでしょう。


大六壬現代応用学 其他 測例一

戊戌日寅将辰時 空亡辰巳 流年庚辰

青龍青龍白虎貴人朱雀
六合
螣蛇

呉先生手捂著額頭(額頭破了)、早晨就急匆匆地来、除了只問事事由及以後是非還有事外即一言不発。
分析
1.此事来得很蹊蹺。
2.課中月将寅上螣蛇生角、為逆間伝首発、官鬼爻居上、占夢與怪異、主看陰神與螣蛇、螣蛇主驚恐怪異等事、故此事與夢有関。
3.初伝為午父母爻居上、午為第四課上神、測家宅主墓地。青龍居午、青龍主男性。
故対他説、你問的事情與父親的墳地有関。
呉某驚訝起来、也許是認為事情説得対、接著説了事情的経過。原来其父的墳剛剛遷好、昨夜他夢見一条龍困在泥中、驚醒後摔下床碰破了額頭。今早起来感覚不安、故過来詢問、擔心以後是非還会有事発生。
我説、課中末伝為螣蛇居寅、表示事物非常旺盛、以此為基相、螣蛇貪栄不禍是以為福。且寅為月将、月将入伝、為福不浅、也説明結果無事。
総結、此課的妙処在青龍見於初伝、断詞為焼身、呉在夢中也見龍、而且翻身摔下床受傷、因呉先生以後要再遷其父之墳、故未多説他事。只嘱其祭之、呉母挙行儀式祭後、無其他事情発生。

 呉さんが手で額を押さえて(額に怪我をしていた)、朝早くあわててやってきたものの、ただ質問をしたいことや今後どうなるかということ以外は一言も言わなかった。
分析
1.このことは非常にあやしげなことである。
2.課中の月将寅には螣蛇、生角がついており、一つおきに逆になっているものの最初で、官鬼爻があることから、夢占と怪異であろう。陰神と螣蛇をみれば、螣蛇は主に驚き恐れることや怪異であり、故にこれは夢に関することである。
3.初伝は午で父母爻であり、午は第四課であり、家宅や墓地と考えられる。青龍が午につくが、青龍は主に男性である。
 そこで彼には、あなたの質問したいことは、父親の墓地に関することでしょう、と言った。
 呉先生は驚いて、ひょっとして言っていることはその通りかもしれないと思ったのだろうか、その事情の経過を話した。もともと父親の墓地をちょうど移したばかりで、昨夜彼は夢に一匹の龍が泥の中にいてもがいている夢をみた、驚いて起きたところ床に落ちて額に怪我をした。けさはどうも不安で、それでやってきて尋ねたのである、以後なにか悪いことが起きないだろうか心配である、と。
 私は、課中の末伝は[トウ]蛇だが寅にいる。これは物事が非常に旺盛であるということで、これはまた相(季節は冬)であるから、[トウ]蛇は栄をむさぼり禍にはならず福となる。かつ寅は月将で三伝にあるので福は浅くない、それで結果は何事もないと説明した。
 まとめると、この課の妙は青龍が初伝にあり、これは焼身である、呉さんは夢の中で龍をみて、そのうえ身体が床に落ちて傷を受けたのである。それで呉さんはその後再び父親の墓を移したとのことで、それ以上のことはわからない。ただその祭りについては、呉さんの母親が儀式を挙行して、そのあとは特に何かおきたということはない。

 ふつう射覆の場合は、占時、月将、日干支、一課、三課、発用で判断するのが原則ですが、間伝逆行ということで、この例では末伝を手がかりにしています。射覆は活断を必要とするので、原則にとらわれることはありません。
 解説のとおりですが、いささか私流の解釈をつけて補足します。
 まず、朝早く怪我をして来るのですから、合理的に考えても、朝方あったことでしょう。すると夢判断、しかも非常に不安を呼び起こすような夢であったということは、占いでなくとも推測できそうです。もし彼が知り合いであって、最近父親の墓を建てたというようなことを知っていれば、発用が青龍で父母ですからそれに関することというのもある程度想像がつきそうです。
 四課が発用ですから内事、すなわち家のことに関することと判断したわけです。卯が干上神で官鬼ですから身を弱めますが、三伝寅午と日支戌は火局で身を生じますからさほど心配することはありません。
 しかし日支戌は戊の墓であり、支上神は寅と冲しています。このことはまた墓を移すことになることを示していると思います。
 なお、寅に螣蛇がつくのを生角、午に青龍がつくのを焼身といいます。生角は栄えがあり災いはない、焼身は身を傷つけ財物を損なうという象意があります。



応候


六壬占験指南 応候 120

丁酉日丑将戌時 空亡辰巳 流年己巳

玄武天空玄武太常天后
天空
六合

偶有扣門声、随占一課。来扣門者必因盗賊之事。及開門時、是遅王両父師相召。随往見之、坐下即云、彼郷有一挙人作乱。余抽伝一課答之、「指曰敗擒、無煩過慮。」蓋因干支上乗死墓、玄鬼臨於敗地、日上神又制之、是以不能持久、一交土旺時、自休息矣。又問、「家宅安否?」曰、「然係何命?」曰、乙亥、戊子者。余云、「亥年駅馬貴人、子年乗河魁(従魁の間違いか?)、又二貴拱夾、亥命有功名而未成、子乃科第中人、倶遷居他処矣。」曰、「亥命家兄、是秀才、子命舎弟、是挙人。」果十二月、為乱者事敗、家中安堵。

 たまたま門を叩く音がしたので、占った課である。門を叩いた者は必ずや盗賊に関することで来たのである。そして門を開けると、遅く王両父師が呼んでいるとのことで、従っていき、座るとすぐにいった。この郷ではある人が乱を起こしたとのこと。私は課を出して答えた。「この課は擒にすることを示している。心配することはない。」蓋し、干支上には死墓が乗り、玄武官鬼が敗地に臨む。日上神は之を制しており、これは長く続かない。ひとたび土旺の時になれば、自然とおさまるだろう。また問う、「家宅の安否は?」曰く、「それでは本命は何でしょうか?}曰く、乙亥、戊子とのこと。私が言うには、「亥年は駅馬貴人、子年には河魁が乗り、また二貴を挟む、亥命は功名はあるが未だ成っていない。子は科挙に合格する人である。ともに居を他所に移すであろう。」曰く、「亥命は家兄で、これは秀才である。子命は舎弟でこれは人より優れている。」果たして十二月には乱を起こしたものは失敗し、家中は安泰であった。

 応候としましたが、占験指南の分類が応候となっていたのでそうしたまでで、射覆といえましょう。射覆はまず課をみて、占時、発用、一三課等を見ます。
 この課は蒿矢課で、日に気がなければ主に盗賊陰謀のこととされます。冬ですから、日主には気がありません。また発用は玄武ですから、盗賊の意味が強まります。占時は天后で子孫ですから、別の意味、例えば女性問題なども考えられますが、だいたい夜に切羽詰って戸を叩くというのは緊急の用事でしょうから、まあ盗賊に関することと考えられます。一課三課すなわち干支上神は丁火の墓、酉金の死ですから、勢いはなく、また発用を盗賊(子は官鬼)とみると、子は酉に臨み、これは水の沐浴すなわち敗ですからこれはうまくいきません。中伝は子と刑で天空です。さらに午は子を冲します。また、子は官鬼ですが、官鬼は子孫によって制せられます。子孫は土です。まもなく丑月に入り土が強くなるのでまもなくおさまると判断します。
 夜貴人は酉で、昼貴人は亥です。子は酉に乗っています。これが二貴拱夾というわけです。貴人がつくのは出世を暗示しますから、このような話になったわけです。



   作成 :  2008年9月 7日
   改訂 :  2018年3月10日 内容一部修正およびHTML5への対応

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