「六親篇」新解 - hiroto流解釈


はじめに

 「六親篇」にいう「六親」とは、いわゆる変通星のことで、変通星自体の象意というよりは、変通星の相互関係について述べています。
 以前「六親篇抄訳」と称して載せていましたが、解釈の間違いを訂正し、その後いろいろと勉強したり考えたりしたことを補足して、さらに実例を加えて解説したのが、この「六親篇新解」です。
 ここでは台湾の宏業書局発行の『星平会海』をベースに、私流の新解釈を加えています。原註との解釈上の違いはもとより誤訳もあるかもしれませんが、そこは皆さんの判断で補ってください。
 なお、「六親篇」の和訳のまとまったものはなかったと思っていたのですが、中村文聡師訳の『新命理探原』(昭和44年発行)に和訳があります。




五行妙用難逃一理之中。進退存亡要識変通之道。
 五行の妙用は一つの理論では説明できない。進退や存亡は、変通星の理論を知らなくてはいけない。

 「六親篇」では、以下変通星の関係について述べています。ただし順序はばらばらで統一感がなく、細かい理論の寄せ集めという感じです。


正官佩印、不如乗馬。七殺用財、豈宜得禄。
 正官に印があるのは馬に乗ずるのには及ばない。七殺が財を喜ぶなら、どうして禄を得るのがよいだろうか。

 ここでいう馬とは財のことで、禄とは建禄のことのようです。しかし禄は正官ととっても意味は成立するように思います。
 ここからは私流の解釈です。
 正官佩印がよい場合というのは、弱い日主で正官がある場合です。強い日主であれば印は不要です。財があってよい場合というのは、強い日主で正官が弱い場合に財が正官を生じるときです。すなわちどちらがよいかといえば強い日主の方がいいわけです。
 七殺が財を用神とするという場合もやはり七殺が弱いわけで、日主が強くなる建禄ではよくないというわけですが、禄を正官ととると官殺混合となりやはりよくありません。
 原註によれば、この句は棄命従財のことであると説明されています。棄命従財とは財が旺じ過ぎるため日主が弱い方がいい命式です。やはり建禄はよくありません。


印逢財而罷職、財逢印而遷官。
 喜神の印が財に逢うと、職を辞すことになる。財が強く喜神の印が来れば、転職出世する。

 財は印を剋します。逆に財が旺じて日主が弱い場合には印が日主を助けるために出世するというわけです。ただ、今は印や財が職業に結びつくことは少なく、むしろ印財の象意をそのままとり、金銭面での損失と考えた方がよさそうです。

印逢財而罷職の例  1903年4月21日 男命 『命理一得』

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 日主己は月支に通根しており丙の生を受けており、水の強さに対抗できています。寅運は申を冲して水を弱めるのでいいのですが、癸運となります丙を弱めます。いわゆる黒雲遮日です。財によって印が壊され、日主は財旺に堪えられなくなります。この期間財産を食いつぶしてしましました。


命当夭折、食神孑立逢梟。
 夭折の命とは、命式中の唯一の喜神である食神が、若いうちに偏印の運に逢った場合である。

 梟とは偏印のことです。食神は寿星、偏印は倒食とも呼ばれ、偏印は食神を強く剋することが多いです。

食神孑立逢梟の例  1969年9月2日

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 この命は生時不明の命ですが、三柱だけでみてみますと、庚が申酉に通根しており強く壬がそれを洩らす形で喜神です。己が壬を剋すのですが、壬を剋す力は戊の方が大きいです。戊運戊子年末(2009年初頭)に39歳の若さでなくなります。


運至凶危、羊刃重逢破局。
 行運で凶危に至るのは、命式に羊刃がありさらに行運で羊刃が巡ってきて局を破る場合である。

 註によれば財が喜神の場合を言っているようです。羊刃は劫財であり身を強めますが、羊刃劫財が多い場合奪財といって財を極端に弱めます。財というのは財産だけではなく生命にも影響があります。すなわち凶危に至る、危険な目に遇うということです。

羊刃重逢破局の例  1970年11月18日

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 壬日主で身強です。丁は壬と合していますが化しません。丁も寅戌に通根しており弱くはありませんが、壬の方が季節に旺じて印もありますから強いです。したがって丁正財は喜神です。1996年丑運丙子年に軍隊の訓練中に大ケガをしました。丙は財で喜神ですが、丑は方局をなし子は羊刃で水が溢れることになります。


争正官不可無傷。帰七殺最嫌有制。
 比劫が多く正官を弱めるのは、無傷というわけにはいかない。七殺に帰するのを食傷で抑えるのは最もよくない。

 註によれば、争うというのは比劫が多いことを指します。次の句の七殺に帰すというのは時上一位貴格(七殺格)のことを指すと思います。いずれも正官、七殺が喜神の場合です。つまり正官喜神の場合は比劫を嫌い、七殺が一つで喜神の場合は食傷を嫌うということです。


官居殺地、難守其官。殺在官郷、豈能変殺。
 正官の地支が七殺であるのは、かえって正官が弱くなることがある。七殺の地支が正官であるからといって、七殺であることに変わりはない。

 官居殺地とは辛日主の丙午、庚日主の丁巳、丙日主の癸亥、丁日主の壬子ですが、いずれも正官の根となるため、正官は強められます。しいていえば庚日主の場合の巳は庚の根ともなりますから、状況次第では正官が弱くなることもあるでしょうが、あまり意味がありません。
 ここでは官殺混合の悪さのことを述べているのだと思います。原註の説明も、殺は凶暴で官は礼義あり、というような説明で、あまり意味がないように思います。


貪財壊印、擢高科、印分軽重。遇比用財、纏万貫、比得資扶。
 官殺、財、印がバランスすれば出世するが、印の強さによる。財が用神で比劫に逢うのは財に恵まれるが、比劫が日主を助けるからである。

 財を貪るとは官殺が財を弱めることであり、印を壊すとは財が印を抑える作用を示すものと思います。これらがうまくバランスすれば貴命です。次の句は身財両停のことでしょう。

遇比用財の例  1893年11月7日 『命理通鑑』

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 戊日主は月令に旺じていて、季節的には弱い日主ではないのですが、水は3干あり地支にも申子の半会があるため非常に強くなっています。30歳から比劫運に入り、地支も南方運で日主を強めますから、行運により身財両停の命となります。これはマレーシアの大富豪の命です。


運到旺郷、身反弱。財逢劫処、禍猶軽。
 身弱の命で身旺運に到っても、かえって身が弱くなる場合がある。財がありさらに劫財の行運が巡ってきても、かえって災いが小さくなることもある。

 前の句は註によると棄命従格のこととしています。すなわち日主が弱い方がよいということです。私はちょっと別の解釈をしており、これは比劫の凶作用のことを示しているのではないかと思います。次の句は財が強いには劫財にあっても悪くないということで、これは前の例と同じことでしょう。


財不有傷、還忌陰謀之賊。殺無明制、当尋伏敵之兵。
 財に傷がなければ、地支に劫財があるのは悪い。強すぎる七殺は、それを抑える食神が地支にあるのがよい。

 喜忌のいずれでも、地支にある場合にはその効果はいずれ顕れるということです。「滴天髄」にいう「凶物深蔵、成養虎之患」、あるいは「天戦猶自可、地戦急如火」ということでしょうか。


貴人頭上戴財官、門充駟馬。生旺宮中蔵劫殺、勇奪三軍。
 貴人があり、財と正官が天干にあり強ければ、出世する。地支に長生、建禄、帝旺、劫財、七殺があれば、勇猛果敢である。

 註には貴人歳日互換とあります。すなわち年干からみて日支が貴人であり、また日干からみて年支が貴人である場合をいいます。この干が財官となっていれば高位に昇るというわけですが、この理屈はよくわかりません。
 実際に私の手元の命式を見る限り貴命となっている例はごく少ないです。で、ためしに年月支貴人で年月に財官がある命式を捜しましたが、貴命はやはりわずかでした。よってこの句は成立しないと判断します。
 次の句は、劫殺亡神が長生建禄帝旺につけば勇猛果敢ということでしょう。これは劫殺亡神が四孟支であることから想像できます。四孟支は活動的な支だからです。実占的にどうかは場合の数が多くて検証できていません。他の六親から判断して、さらにこの条件があれば、断を下してもいいかもしれません。


為跨馬以亡身、因得禄而避位。印解両賢之厄、財勾六國之争。
 財が強すぎる場合は身を滅ぼす。官が得ることによって職を辞すこともある。印は七殺の強すぎるのを和らげることができる。財は比劫の争いを引き起こす。

 註によれば、これらの句は順に、①比劫が強い場合財の行運が巡ってくると争財となり身を亡ぼす。②官が喜神のとき比劫運が巡ってくると職を失う。③印は殺が強いときには食神よりもよい。④比劫が多いときには財がない方がよい。というような意味のようですが、それよりも文字通りの方がいいように思います。

財勾六國之争の例  1859年5月20日 『子平命学弁証』

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 子運(または癸運)の癸丑年に非業の死をとげます。命中に比劫が多く財がないため、財が巡ってくると争財を引き起こします。財は一見喜神のようですが、争財の場合は凶意が強くなります。また子は午と冲、卯と刑、丑は未と冲であり冲刑が多いためやはり凶意があります。


衆殺混行、一仁可化、一殺倡乱、独力可擒。
 七殺が多い場合、食神で抑えるのではなく、印で洩らすのがよい。七殺が一つの場合には、食神で抑えることはできる。

 以前は違う訳をしていたのですが、ここは註に従って化を洩の意味にとることにしました。その方が次の句とも考えるとしっくり行きそうです。


印居殺地、化之以德、殺居印地、齊之以刑。
 印の地支が七殺の場合、印の作用で七殺の悪さが弱められる。逆に七殺の地支が印の場合は、冲によって取り去った方がよい。

 以下の解釈は註とは違います。というか、註を読んでも意味やよしあしがよくわかりません。
 印が殺地に居るとは、甲日壬申、乙日癸酉、丙日乙亥、丁日甲子、戊日丙寅、己日丁卯、庚日己巳、辛日戊午、壬日庚戌(辰)、癸日辛丑(未)ということになりますが、殺が印を生じ、印が日干を生じる関係になりますから、悪さが弱められます。
 殺が印地に居るとは、甲日庚子、乙日辛亥、丙日壬寅、丁日癸卯、戊日甲午、己日乙巳、庚日丙戌(辰)、辛日丁丑(未)、壬日戊申、癸日己酉ということになります。これらも、私は別に冲によって取り去った方がいいとは思いません。


兄弟破財、財得用、殺官欺主、主須従。
 比肩劫財は財を壊すものだが、財を利用することができる。七殺正官は日主を壊すものだが、強ければ従格になればよい。

 訳文以上の解説は不要でしょう。


一馬在厩、人不敢逐。一馬在野、人共逐之。
 財が天干に出て通根し、護財があれば、比肩劫財が巡ってきても大丈夫である。財が地支にあるのは、天干に比肩劫財があっても壊すことができないが、財があらわれると争財となる。

 註は全く違う解釈をしているのですが、私は訳文のように解釈します。註によれば、天干に財が一つだけあって遮るものがないのを厩にあるといい、皆が見ているのであえて追わないということなのですが、財が一つだけならば、奪財を受けやすいはずで、この註については私は納得できません。註を尊重して上のように訳したのですが、私のイメージとしては、地支にあるのが厩であり、天干にあるのが野にあるという感じがします。


財臨生庫破生宮、兼奉両家宗嗣。
 財がその長生、墓をみて長生を破るというのは、兼ねて両家の跡継ぎを奉ずる、すなわち元の家とは別の家の跡継ぎ、いわば養子となる。

 この生庫が何の生庫なのか、生宮は何の生宮なのかが、註を読んでもわかりません。が、註と詩訣をよく考えると、生庫とは財の長生、墓で、生宮とは財の長生であるとみます。財とは父親であり、財の長生には財の印を含みまず。すなわち財の長生とは財の生まれた家であり、財の長生が破られるとは父親の家との縁が絶たれる、すなわち養子になるということでなります。ちょっとこじつけくさい気がします。
 長生と墓のうち長生が破られ墓が残るわけですから、ちなみに偏財の墓をとってみましょう。甲日の偏財戊の墓は戌で養、丙日の偏財庚の墓は丑で養、戊日の偏財壬の墓は辰で冠帯、庚日の偏財甲の墓は未で冠帯、壬日の偏財丙の墓は戌で冠帯にあたります。すなわち、偏財の墓は養か冠帯かのいずれかですが、これは増永篤彦師の「新推命学」の後天的養子相にあたります。(冠帯は准養子相)彼はあくまで統計的に割り出したと言っています。これは奇妙に一致しますが、例をみると必ずしも財の墓というわけではないので、単なる偶然でしょう。


身坐比肩成比局、当為幾度新郎。
 日支に(忌神の)比肩があり、比肩が局をなせば、妻を剋し何度も結婚することになる。

 この解釈はとくに問題ないでしょう。通常比肩が局をなすということは日主が強いわけですから、比劫は忌神となります。身が比肩に坐して比局をなす場合というのは、厳密にいえば、甲寅(卯辰)、乙卯(亥未、寅辰)、庚申(酉戌)、辛酉(巳丑、申戌)しかありません。土日干の場合は局がありません。

身坐比肩成比局の例  1942年1月8日

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 某元首相の命です。地支が比肩で見事に金局となっています。酉運36歳で結婚、38歳で離婚したあとは、結婚に懲りたのか運命を自覚したのか、独身を通しています。


父母一離一合、須知印綬臨財。
 父母の離合については、印と財の関係に表れる。

 この解釈もとくに問題ないでしょう。父は財、母は印という考え方は古いとされますが、私はこれを支持しています。詳細は「父母の見方」を参照してください。

印綬臨財の例  2000年8月4日  『八字批論選集』

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 月干に印綬があり月支は正財です。日主が強いので財官が喜神、印は忌神となります。印は日干に貼身していますが、忌神ですので、本人はちょっと煩わしさを感じます。幸い喜神の土が水を剋すので、父親が本人の助けになります。印財とも強からず弱からずで、父母の関係は比較的良好です。年柱に喜神の官財がありますので、富家あるいは名家の出身でしょう。


夫妻隨娶隨傷、蓋為比肩伏馬。
 夫婦が結婚して傷つけるのは、蓋し比肩が財を押さえつけている場合である。

 原註にあるように、ここでいう比肩は劫財、羊刃を含むと考えてよいでしょう。普通の六親の関係です。


子位子填孤嗟伯道。
 子女の位は生時で生時干支ともに(忌神の)食傷があれば子女はおらず、老いて孤独である。

 伯道というのは子供がいないことを意味します。
 訳はとくに問題がないと思います。註には子は官殺であり、それはそうなのですが、この場合は子は食傷であると考えています。経験的には男命の方が食傷太過では子供が少ないかいない場合が多く、女命はあまり当てはまらないように思います。なお食傷は忌神でなければなりません。喜神であればかえって子沢山になります。
 子位子填という命は厳密には次の場合でしょう。丙日己丑時、戊日庚申時、戊日辛酉時、癸日甲寅時、癸日乙卯時。ただ、時柱の蔵干も含めて食傷が多ければいいかと思います。

子位子填孤嗟伯道の例  1962年7月27日  『八字応用学宝典』

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 丙は年月日の3支に通根しています。丁壬は合して作用があまりありません。己傷官は土用生まれで未と丑に通根しています。火土の強さは微妙ですが、土の方が強いでしょう。よって時柱の食傷は忌神です。64歳以前は忌神運でありいいことがありません。子供は娘が二人いますが男の子はいません。娘には面倒を見てもらえず、孤独の命でしょう。


妻宮妻守賢齊孟光。
 日支に喜神の財があれば、孟光のような賢い妻を得る。

 孟光というのは女性の名前で美人で賢かったといわれます。それ以外の解説は必要ないでしょう。

妻宮妻守の例  1909年9月27日  『星命術語宝鑑』

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 庚日主が強く寅は喜神の財です。ところが午が沐浴桃花で寅と会していますので、賢妻を持つと言うより艶福家です。妻と妾が一人ずついて、その他にも隠れて妾をもっていたという命です。それで離婚しなかったのですから、賢妻というべきでしょう。ちょっとうらやましいですね(苦笑)。


入庫傷官陰生陽殺。幇身羊刃喜合嫌冲。
 墓があって傷官があるのは、陰干であれば生だが陽干では殺である。身を助ける羊刃は合がよく冲は好ましくない。

 「三命通会」などでは「陰生陽死」となっていますが、原文は「星平会海」に従いました。「入庫傷官」は「傷官入墓」ともいいます。傷官が墓の行運にめぐるのは、陰はよく陽は悪いということでしょう。、日干と傷官を並べてみると、甲丁、乙丙、丙己、丁戊、戊辛、己庚、庚癸、辛壬、壬乙、癸甲、となり、日干が陰の場合は比較的よい関係であり、日干が陽の場合はあまりよくない関係です。「三命通会」には身旺で食傷があるときに墓運に行けば災いがある、とあります。

入庫傷官の例  1983年7月17日  『八字応用学宝典』

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 丙日主で身旺で、月干に傷官があります。金水喜神で傷官見官の命で喜神の癸が己に抑えられています。午運甲戌年は忌神運年で墓になります。この年11歳、脳傷で死亡しました。


権刃復行権刃、刀薬亡身。
 偏官羊刃がともに命式にあって、さらに行運に偏官羊刃が巡ってくるのは、羊刃が身を助けるといっても、かえって身を滅ぼす結果となる。

 註では刃薬を刀剣や薬食の意味、すなわち災禍や病気で亡くなるとしていますが、その方がいいかもしれません。

権刃復行権刃の例  1858年3月19日  『命理通鑑』

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 康有為の命式。日主と傷官が強く傷官が七殺に抑えられている命式です。。典型的な聡明の命。庚運まではいいのですが、申運以降は忌神運です。壬運戊辰年に病死しました。


財官再遇財官、貪汚罷職。
 財官があって、さらに行運に財官が巡ってくるのは、汚職で罷免されることになる。

 とくに説明の要はないと思います。

財官再遇財官の例  1875年3月19日  『命理一得』

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 張作霖の命です。1926年丙寅年に安国軍司令となりましたが、これが権力失墜、1928年の爆殺事件へとつながります。1927年丁卯年にソ連大使館捜索により大国の不興を買うことになります。


禄到長生原有印、清任加官。
 正官が長生の行運に到り、命式に印があれば、昇進することになる。

 「禄到長生」の長生は官の長生のことだと解します。長生は活動的な支ですから、官が地を得て昇進するというわけです。

禄到長生原有印の例  1964年12月8日  『実証占星論命』

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 丙辛が化水しそうですが、戊があり化水しないとみます。日主と官は相対的に弱いのですが、それぞれ戊、甲の生を受けます。寅運は丙の長生ですが、若くして不動産関係の会社で経理(部長クラス)にまで出世しました。


馬行帝旺旧無傷、宦途進爵。
 財があり帝旺の運に行くのは、命式に傷がなければ、職をえて昇進する。

 「馬行帝旺」の帝旺は前と同様は財の帝旺や建禄のことだと解します。

馬行帝旺旧無傷の例  1785年5月9日(?)  『滴天髄闡微』

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 庚日主が強く、財官が喜神ですが、財は根がなく官は天干にありません。丁運戊寅年己卯年に連続して科挙試験に上位で合格し役人となりました。辛劫財は財にとっての傷ですが、丁運では丁が辛を抑えます。病薬用神といってよいでしょう。


財旺身衰、逢生即死。刃強財薄、見殺生官。
 財が旺じて身が衰える場合、長生の行運では死にいたる。羊刃が強く財が弱い場合、七殺の運に到れば正官となる。

 以前の訳を修正し、「逢生」とは註に従って財の長生と解することにしました。すなわち財旺身衰の命で、さらに財が強くなった場合は命を落とすということです。
 しかし、以前の解釈も私は棄てがたく思っています。以前の解釈とは、財旺身衰は従財格のことであり、従財格で日主の長生が来たときは死にいたるという解釈です。解釈は別として、このこと自体は間違っていないと今でも思っています。
 次の句は、身旺で羊刃、財がある場合、七殺があれば正官的な働きをするということでしょう。七殺が純ならば正官と見るというのは、昔から言われていることです。

財旺身衰逢生即死の例  1950年10月14日  『鵲橋命理』

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 壬日主で月令は印綬なのですが、地支に水がなく弱い命式です。財は地支に全部通根しており、しかも寅午戌の火局もありますので非常に強いといえます。この命式では従財格かどうか迷いますが、金水運で発達しましたので、通常の財多身弱の命としていいのでしょう。若くして立法委員になりましたが、寅運丙子年に落命しました。寅は財の長生であり財はますます強くなります。流年支子は午と冲して壬の根とならず、流年太歳は日柱との天剋地冲となります。


茲法玄玄之妙、今頗習而成章、少助愚蒙、開明万一。
 以上の論は非常に玄妙なもので、今かなり思い出しながら文章にしてみたが、初心者には少しは役立ち、(変通の理論が)明らかになるのではないかと思う。

 ここにあるように「六親篇」は六親(変通星)や十二運の相互関係について述べたものです。



あとがき

 あらためて細かく読み返してみると、以前の訳がいかにやっつけ仕事だったかがわかりました。他の詩賦もおいおい見直していく予定です。
 今回はいろいろな書から多くの実例を選んで加えました。実例だけでも参考になるかと思いますので、じっくり取り組んでみてください。自分なりの「六親篇」新解を作るのもいいかもしれません。



   作成  2009年 3月15日
   改訂  2017年 5月11日  レイアウト変更、HTML5への対応