父母の見方


はじめに

 四柱推命においては、父母というのはあくまで生みの親のことであります。場合によっては養父母ととるべき例も見受けられますが、原則としては生父母のことです。この項でも生父母との関係を述べることにしています。まずはこのことを確認しておきます。
 父母の見方といっても、他の六親(配偶、祖父母、兄弟、子女など)の見方と同様であり、まず父母の見方をマスターすれば他の六親の見方にも応用できます。

 


1.父母の星と宮位

 母親の星は印星であることには、ほとんど異論がありません。一方父親の星については異論があります。
 まず母親の星についていえば、母親の星が印星であるといっても、正印(印綬のことですが偏印とあえて区別するためにここでは正印を使っています)を母とし偏印を継母とするとか、陰の印を母とするとかなど、細かいところでは違いがあります。また正印が命式中になければ偏印を母とする、という人もいます。
 父親の星については、大きくは二つの説があります。一つは偏財(または財)とする説、もう一つは母親と同様印星とする説です。いわゆる古典では、大半が偏財を父としています。しかし最近の書においては、印を父母とみるものも少なくありません。これについては後述します。
 また父親については、本人の命式から父親を見ることは難しいとする術者もいます。これは接する時間が少ないということと関係があるかもしれません。
 宮位については、月柱を父母の柱とする人、年柱を父母の柱とする人いろいろですが、主流は月柱を父母とし、年柱を祖先(家)とみます。また月干を父、月支(蔵干)を母とみる人も少なくありません。

 さて、以下は私の考え方です。
 実占例をひもとく限りは、正偏を問わず、印を母親とみる方がいいように思います。まれに偏印が継母とみるとよく合う場合もありますが、いつもそうだともいえず、たまたまということだろうと思います。念のために付け加えると、地支蔵干いわゆる暗干も見ます。例えば甲日干の場合、丑は土で、原則は妻財としますが、丑の中の癸水を印星とみる場合もありえます。
 父親についてですが、父親は原則として財をみた方がいいように思います。ただ、小山内薫師なども述べていますが、印というのは身の回りの世話をする人を指すということで、母親だけでなく姉とか祖母とかを表す場合もあり、その伝でいけば印が父親を表す場合もありえます。とくに伝統的な家族制度が希薄になっている今日では、母親的な父親も大いにありえるため、印を父親とみた場合がいい例も増えてきているのではないかと想像しています。もっとも実占例ではあまり見たことがありませんが。
 次に宮位については、私の感じでは、月柱を主にみて、年柱も参考にするという程度でいいように思います。ただ、月支蔵干は、性格傾向を示すのですが、同時に母親を示すことが多いように感じています。(命式雑論を参照してください)
 以上は男命の場合なのですが、女命でもさして違いはありません。若干異なる説を唱える人もいます。例えば男命では正印、女命では偏印を母とするという術者もいます。しかし、あまり厳密に分けるよりは、状況に応じて判断するのを勧めます。印と月柱、さらに年柱ということで十分でしょう。
 印星や財星がうまいこと月柱にあればいいのですが、それらが年月柱にない場合、宮位と星とではどちらを重視するかということになると、星を重視する方が確率が高いと感じます。ただ宮位を重視した方がよい命式もあり、往々にしてそういう命式は父母との関係がわかりにくくなっています。
 なお、時柱の印や財は父母を表さないとする術者もいますが、私は見てもいいと思います。
 印星や財星がない場合は宮位を見ます。さらに行運の星を見ることになります。


2.父母の見方の原則と例外

 六親の見方は、父母にしろ夫妻にしろ子女にしろ、原則としては同じ見方をします。
 原則にしたがった母親の見方は、
   (1)印が喜神で命式にある場合は力になる、縁が深い。
   (2)印が忌神で命式にない場合は問題なし。
   (3)印が喜神で命式にない場合は力にならない、縁が薄い。
   (4)印が忌神で命式にある場合は縁が薄いか、障害になる。
   (5)印が喜神で傷つけられれば力にならない、縁が薄い。
   (6)印が忌神で抑えられれば力になる、縁が深い。
 財星(父親)や宮位の場合も基本的には同じで、その宮位の喜忌によります。すなわち月柱や年柱の喜忌をみます。
 しかしながら、母親の場合には実は例外があります。それは、「印が命式にないからといって母親の影響がないとはいえない」ということです。母親というのは原則として子供の面倒をみるものです。したがって、基本的には母親とは縁があるものであり、上の(2)や(3)はやや修正を要します。印が忌神で命式にない場合はむしろ力になる、縁が深いとみた方がいいようです。また印が喜神で命式にない場合は、力にはならないかもしれませんが、縁は薄いとは必ずしもいえません。
 さらに、印がない場合でも印を抑える財(これは父親でもありますが)や比劫(これは兄弟)、強すぎる場合には母親との関係に影響することもあります。いわゆる財壊印や比劫奪印といわれる関係です。
 財(父親)の場合も同様で、比劫が強い場合は群劫奪財、官殺が強い場合は財を弱めるため、それによる影響もあります。
 地支に関していえば、冲や刑は(仮にその支が忌神であっても)凶意を含む場合が往々にしてあります。私が意外と影響があると思っているのが六害(穿)です。六害は本人の命運にはさして影響がないということには賛成ですが、なぜか六親との関係についていえば、六害の影響が大きいように思います。私の研究課題の一つです。
 さらに地支に関して、空亡を重視する術者も少なくありません。一方で全く無視している術者もこれまた少なくありません。私自身は空亡の影響については、まだ何とも判断できずにいます。ただ六壬(推命)では非常に重視するため、私も全く使わないというわけではありませんが、みなさんも興味があれば研究してみてください。
 印と月柱(月支)の示す場合が相反する場合はどうでしょうか。これは行運をみてどちらの影響がより大きいかを判断するのが適当かと思います。まあ、時と場合による、というわけです。


3.実例

 ここで実例をあげますが、巷の本の例はわかりやすい例が主に挙げられていますが、ここでは判断に苦しむ例も挙げています。



(例1)1941年4月23日生 男命 「八字応用学宝典」

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 比較的見やすい例です。
 正印が月支蔵干にあり、これが母親を示すとします。この命式では土金が強く印は忌神です。よって母親とは縁が薄いまたは邪魔になると判断します。財は喜神ですが、命中になく、やはり縁が薄いと判断します。
 また月支辰、年支卯は空亡であり、これによっても家や家族と縁が薄いと判断することもできます。



(例2)1924年12月4日生 男命 「八字応用学宝典」

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 丁火日冬生まれで地支の巳が冲されていますので、弱い日主です。よって印は喜神、財は忌神となります。16歳丑運庚辰年に月柱の偏印が合によって取り去られ、また年月支と運歳で水局をなし、年月支が忌神で溢れます。この年に母親を病気で亡くしました。
 なおこの命は子丑空亡の命です。  これは比較的見やすい命式です。



(例3)1987年3月11日生 男命 「当代八字実務編」

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 己は未に根を持っており強い日主です。ですから印は忌神です。月支をみると卯木であり、強い日主を抑える喜神です。すなわち宮位は喜神です。印は忌神で宮位が喜神なので、吉凶相反します。ところが行運をみてみますと、大運壬では丁と合します。月令は甲木ですし、卯未は木局半会ですから、丁壬は木化し強い日主を抑え喜神となります。したがって、月支卯の喜神をとって母親と縁が深いとみます。
 辛運壬午年に父母は離婚しますが、母親と同居しました。癸偏財が父親で喜神なのですが、根がなく力がありません。すなわち縁が薄いと判断します。
 この例は比較的わかりにくい例だと思います。



(例4)1922年2月11日生 女命 「星命術語宝鑑」

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 この命式で母親を判断するのは、私には難しいです。
 庚日主で戌に通根していますが、卯戌の合、寅戌の会があり、根としての作用は弱いです。己も同様です。壬は二つあるものの地支には根がありません。したがって、相対的な強さでいえば、金土が強く水が弱いということになります。この場合印は忌神です。月柱は喜神となります。
 この命は丑運で母親を亡くしました。丑は土金水の根となります。閑神とも判断できますが、命中に根がない壬の根となるので喜神に近いと思います。丑は正印でありますが、年支戌と刑します。丑運の流年をみますと、戊辰、己巳、庚午、辛未、壬申となります。戊辰は年柱との天剋地冲、己巳は月柱との天剋地刑、辛未は丑戌未の三刑、壬申は月支の冲と、よくない流年が続きます。おそらくは己巳年、あるいは辛未年が母親を亡くしたでしょう。具体的に何年かは本に記載がないのでわかりません。
 なお月支寅は空亡であり、これによって母親を早く亡くすと判断する術者もいるでしょう。
 母親以外のこと、例えば苦命であるとか晩年がよいとかいうことは比較的見やすいです。



(例5)1947年3月28日生 男命 「中国実用四柱預測学」

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 最近(2009年2月)買った本から採りました。
 丙が午に坐して火が3干ありますから、かなり強い日主です。ですから財官喜神で、印は忌神となります。庚子運までは喜神運でしたが、己運に入り、いわゆる傷官見官の運になり、月干喜神を剋します。1989年は己巳年で癸を剋しさらに亥を冲して水の根を取り去ります。月支蔵干は正印で忌神ですが、火が強すぎて卯木は焚滅してしまいます。よって母を亡くしたと判断したのですが、これは後知恵であり、この命式で己運己巳年に何かあっただろうと予測はできますが、母親を喪うと判断するのは、私にはちょっと無理です。私なら失職(正官を剋するので)などと判断しそうです。
 なお、年支卯は空亡ですので、縁が薄いとも判断できますが、42歳で母親を亡くすのが縁が薄いとは必ずしもいえないでしょう。



(例6)1975年2月27日生 女命 「当代八字実務編」

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 地支が木局であり強い日主です。正官が時干にありますが弱く、これは従旺格と判断します。偏財が月干にあり、この財は従旺格では喜神です。ただし行運の財は辛官を生じ忌神となります。
 17歳は庚辰運壬申年です。庚運は乙木を奪い忌神、辰運は木の根となり喜神です。ただ日支と自刑となります。壬申年は喜神の月柱と天剋地冲(反吟)です。この年に父親を亡くしました。
 なお、この命式においても年月支は空亡です。



あとがき

 六親のうち比較的見やすいのは配偶者、次に母親、父親、子女の順でしょう。これは本人との関わる時間が長い順です。祖父母や岳父母まで看ることができると説く研究者もいますが、一般的には本人と接する時間が短いため難しいと思います。もちろん祖父母に育てられれば、それは命式に出てくるでしょうが。
 父親が財か印かという議論については、今のところ私は偏財を父とする方を採っていますが、本文に述べたように、これも時代の移り変わりによって変わってこざるをえないかもしれません。
 あと、私は四柱推命においては空亡をあまり重視しないのですが、親と縁が薄い命式では意外と年月柱に空亡があることが多いように思います。これも統計をとってみないとなんともいえません。  統計といえば、増永篤彦師の「新推命学」の父母論(両親縁の鑑定法)は、父母を亡くした高校生のデータをとって論じておりかなりユニークですが、伝統的な方法とは異なるので、この章では全く触れませんでした。興味のある方は読んでみてください。