四柱推命の実占 ~ 疾病編


はじめに

 "hiroto的"四柱推命の実占~疾病編 と称して、疾病の実例をとりあげます。
 疾病というのは、外傷や伝染病を除けば、基本的には本人の持つ体質や遺伝、また場合によっては性格から生じるものですから、四柱推命で最も見やすい(当たりやすい)占的の一つのはずです。逆に言えば、疾病が見られないようでは四柱推命は使えない占術といえるかもしれません。(ちょっと言い過ぎか) しかし、実際に占ってみると、なかなか難しいもので、人の身体はそう簡単にはいかないものではあります。そういう例もここにはあげています。
 当然というべきか、四柱推命の当てはまらない人はいるわけで、すべてを四柱推命で判断するのは危険ですし、そもそも病気は医者の判断することでありますから、占い師がどうこういうべきではないのでしょうが…。(ごくたまに医者よりも的確に判断できることもあるとは思いますが)
 本項では、症状や部位別に実例を整理してみました。少しはわかりやすくなったでしょうか?最終的には五行や干支等で整理できればいいと思いますが、今のところはまだ例しか挙げていません。五行や干支との関係については「疾病の見方」を参考にしてください。
 今後も随時例を追加していく予定です。

- 内 容 -

  1. 肝臓、胆のう等(木性)に関する疾病
  2. 心臓、血管、循環器等(火性)に関する疾病
  3. 胃、腸、消化器等(土性)に関する疾病
  4. 肺、呼吸器等(金性)に関する疾病
  5. 腎臓、泌尿器、性病、婦人科(水性)に関する疾病
  6. 脳、神経系に関する疾病(精神病、心身症等を含む)
  7. 失明、目に関する疾病
  8. 耳、鼻、咽喉に関する疾病
  9. 皮膚、骨、筋肉等に関する疾病
  10. その他(未熟児、感染症等)



例1-1 肝臓がん

『四柱博観』

1931年12月31日申時生 男命

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月令-.



【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金木水土火
 傷官格  喜神:木水(火)  忌神:金土
 申子半会、子未害



【命式】
 庚日主冬生まれで天干に庚辛があり地支に申が二つありますので強い日主といえます。従旺格に近いですが未に火があり甲木の根ともなりますので、従旺格にはなりきらないと思います。冬生まれの庚金ですから金は凍ります。このような命の場合は身体的な不調が生じやすいといえます。火は木を弱めるので基本的には忌神ですが、調候的には丙丁が欲しいところです。ただし丙は辛と合するため金を弱める効果はありますが、調候的な良さは出てきません。

【判断】
 48歳に検査で肝臓がんの末期だと診断された男性の命です。もとより甲木が庚金に強く剋されるので木系の異常が出やすい命式といえます。おそらくは酉運のころから肝臓は悪かったものと思います。申運はもちろん金が強くなります。乙運は乙庚が合します。この乙庚が金化するかは判断が難しいですが、従旺格でなくとも命式全体が金が強いため金化すると私は考えます。すなわちさらに甲木を強く剋するため肝臓がんの進行は免れないものと判断します。
 この命式は、金剋木で喜神である甲木が弱くなることで肝臓に障害が出るという例です。


例2-1 心臓病

『八字応用学宝典』

1964年10月14日午時生 男命

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月令-.



【"hiroto的"審査】
 五行強弱:木水火金土
 財帛格  喜神:木火  忌神:水金土
 辰戌冲、申辰半会(欠子)




【命式】
 丙日秋生まれですから、季節的には弱いといえます。また地支は戌に通根していますが、残念ながら辰戌の冲で戌は根としての作用がほとんどありません。壬は申辰に通根しており、また申辰が水の半会ですから強いといえます。甲木は辰に通根しており、また二干あるので強いです。
 ですから、原則としては木火が喜神、水金土が忌神ということになるのですが、この命式は少し曲者です。十干体象に、丙火は多すぎる甲木だとかえって害になる、とあります。丙が強い場合はまだいいのですが、丙は地支に根がないとからっきし弱くなり、甲が丙を害するという典型的な命式です。一方、乙木はむしろ壬を洩らすだけで丙や甲に対してはあまり作用がありません。五行的には喜神ですが、しいていえば忌神ではないという程度です。この命式では地支に火がくることが必要な命式です。

【判断】
 この命式は日主丙火が極端に弱いということを書きました。火は心臓、目、脳、血圧など、丙は小腸や歯です。水剋火は目を患うと古書によく書かれていますが、目ではなく心臓が弱いことは比較的多いものです。そしてこの例もまさに心臓病です。
 この命式だと生まれつき心臓が弱いと思われます。生まれて数年は南方の年ですからいいでしょう。乙運は水の剋を緩和するのでまだ大丈夫でしょう。亥運になりますと水が強くなりますから、丙はますます弱くなります。それでも亥運の始めは南方の流年ですからまだいいのですが、庚申年、辛酉年と金の重なる年が来ますと危なくなります。
 とくに辛酉年は、辛が丙と合して丙はますます弱くなります。幸い酉年で辰酉の合で冲を解きますから、地支に戌が出て丙は強くなります。ただ申酉戌の方がそろうので金が強くまた水も強くなります。ですから辛酉年は丙を弱めるので心臓の発作が出ましたが、この年は死ぬようなことはありませんでした。
 その後のことはわかりませんが、2年後の癸亥年は甚だ危険ですが、大運が丙運に入っているので何とか持ちこたえるでしょう。続く子運、丑運もやはり危ないです。細かくは年運もあわせてみる必要があります。


例2-2 心拍異常

『四柱博観』

1948年12月5日子時生 男命

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月令-.



【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木水土、火金はなし
 従旺格  喜神:木水(火土)  忌神:金
 戊癸干合、亥子水方



【命式】
 甲木が冬生まれで亥に通根しています。また甲木がありますので強い日主です。戊と癸は干合して他干への作用はほとんどありません。地支は亥子と水支ばかりです。よって従旺格といえますが、甲木は漂流している状態です。いわゆる木多水漂、浮木の状態です。また冬生まれですので凍木ともいえます。
 火土は本来忌神といえますが、この場合は甲木の凍木、浮木を解消するため喜神的な働きをすると考えられる。

【判断】
 従旺格であっても印の強い従旺格の場合は身体的不調が出るものです。この命式はその典型例といえます。甲木は水の生を受けていますが正常に働きません。すなわち肝臓病や神経の異常が出やすくなります。実際本人は肝炎を患っています。また火は調候用神ですが、地支に火がなく水が多いため火の行運、とくに丁の行運ではかえって心臓を傷めるあるいは循環器系統の不調が出てきます。そのうえ甲も浮木であるため火を生ずることができません。心筋や心拍を司る神経に異常が出てくることになります。この命式では火がありませんが、浮木であり水が多いため心臓に変調をきたすことになるという命式の例となります。このあたりは、私ももっと勉強が必要だと思っています。


例2-3 高血圧症

『四柱博観』

1960年7月3日子時生 男命

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月令-.



【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水金火土木
 従旺格  喜神:水金木  忌神:火土水
 子午冲、子辰半会



【命式】
 壬日主で夏生まれですが地支に水が多く、庚金も2干ありますから強い日主です。月支午は子に冲されるため火の作用はごく弱いです。したがって従旺格であり、喜神は金水、忌神は火土です。木は時と場合によります。夏生まれなので、きれいな従旺格とはいえません。

【判断】
 喜忌は別として、剋関係の五行が強く対立するときは体調を壊しやすいものです。この命式の場合は月支が午で月令が丁であり、この命式の傷といえます。すなわち丙丁が巡ってくると水火交戦となりますが、水の方が強く火が弱い状況です。この場合は眼や循環器の異常が顕れます。水を溜め込みやすい体質であり、循環器系に弱点があるとすると、一応高血圧が疑われます。もちろん断定はしかねますが、少なくとも30代からはそのような病気に注意が必要ということはいえますので、若い時からの節制が必要とのアドバイスはできるでしょう。


例2-4 狭心症手術

『四柱博観』

1961年11月18日午時生 女命

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月令-.



【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水木金土火
 印綬格  喜神:火土  忌神:木水金
 亥卯半会



【命式】
 乙木日主の冬生まれで亥卯に通根していますから比較的強い日主です。壬水は亥丑に通根して冬生まれですから水は最も強いといえます。己土と辛金は丑に通根していますが、比較すると弱いです。火は午にしかありません。
 印が強いですが七殺もあるため普通の内格であり、喜神は火土、忌神は水木金です。日主を剋する金は印である水を生じますからこの命式では忌神です。

【判断】
 この命は丑運甲子年に狭心症で緊急手術を受けた命です。甲は己と合して喜神を取り去り、子は丑と六合というより亥子丑の方合となって壬水が極端に強くなります。また丑は午と六害となります。四柱推命では六害はあまり重要視しませんが、意外と身体の不調が出やすいものです。その他にも子午は冲、子卯は刑であり、刑冲害が入り乱れます。これも私の経験からなのですが、こういうときには凶災に遭うことが多いものです。
 『四柱博観』には「午中の丁が必ず傷を受ける、丁は心臓であり病因となる」とあります。前の例も午火が極端に弱くなる例でしたが、午火が傷を受けるときは心臓に注意ということなのでしょう。


例2-5 突発性心臓病

『四柱博観』

1954年10月1日午時生 女命

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月令-.



【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金水木火土
 月刃格  喜神:水木  忌神:土金火
 寅午半会



【命式】
 庚日主で秋生まれですので季節的には強い日主です。日主には壬癸水が貼身しており庚金を洩らします。水は2干ありますが地支にはありません。甲木は寅に通根しており、中程度の強さとします。五行的には金が最も強く、次いで水木となります。格は普通の月刃格といえますので、木水を喜神、金土火を忌神とします。
 庚金が強いので火が喜神という考えるのが普通でしょうが、火はこの命式での喜神である木を弱め、また水火の剋が甚だしく成敗的には吉でも心身的には凶意の方が大きいでしょう。
 地支を見てみますと寅午の火の半会があり、年支にも午がありますので、行運で丙丁がめぐってきますと火が強くなります。また天干には壬癸があり行運で水支がめぐってきますと水が強くなります。すなわち行運で水火の剋関係が強調されます。

【判断】
 この命は戊運辛巳年に突然の心臓病で入院した命です。
 『四柱博観』には「烈火焼金」で心臓病になったとあります。この判断は私は微妙(?)と考えます。
 巳は寅と刑(害)であり、また巳酉は金の半会となります。戊は癸を合して取り去りますので甲木が庚金の剋を受け弱くなります。こう考えるとこの場合は普通脳神経や肝臓障害を考えるべきだと思います。ただ中国医学においては肝は血を通じて心と密接な関係にあり、病症として心臓病(この心臓病というのがはっきりしていないわけですが)に顕れることがあります。この肝と心の関係は私もよくわかっていないところがありますので勉強します。


例3-1 胃病手術

『実証占星論命』

1973年7月25日寅時生 女命

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月令.



【"hiroto"的審査】
 五行強弱:土水火木金
 正官格  喜神:水金  忌神:木火土
 丑未冲、丑未戌刑、寅戌半会



【命式】
 壬日主で土用生まれなので季節的に弱い日主ですが、天干に壬癸が3干あり強い日主です。丑に通根するのですが、丑未の冲で水としての根は強くありません。
 己土は土用生まれで戌に通根するので強いです。また地支の寅戌の半会で火生土と土を生じますから、さらに強くなります。五行の強さは、土水火の順で強く、木金は弱いといえます。したがって喜忌は金水が喜神、木土火が忌神といえます。しかし、土水の強さは微妙であり、金水行運では強さが逆転、とくに水支の場合は水が極端に強くなります。
 年月日支は丑未戌の三刑になっています。

【判断】
 この命は、1993年癸酉年(20歳)に胃病で入院、手術を受けた女性です。
 20歳は酉運癸酉年です。酉は丑と会して丑未の冲を解きますから、水の根が出てきて、水が強くなります。さらに、癸酉年は癸が壬を助けて水が強くなるので喜神年といえるでしょうが、結果としては水が強くなりすぎ、土水交戦という状態になります。土水交戦では、土の示す消化器系統か、水の示す泌尿器生殖器系統を患うことが多いです。どちらかといえば水が大過して土が弱くなり、消化器が悪くなる方が強いでしょう。基本的には喜神年ですから、入院、手術といってもたいしたことはないと思われます。喜神といっても五行が偏る場合には身体的に故障がおきることがあるものです。
 さて胃病だと判断されたとして、手術というのはどうみるべきでしょうか?実際に手術をするかどうかを判断するのは医師ですから、四柱推命でみるのはかなり無理があると私は考えます。(他人の判断を四柱推命で判断することはできないという意味)
 『命学大辞淵』によれば、神殺で血刃の年は災難や傷害、交通事故、難産等にあいやすいとあります。酉年はまさに血刃の年(年支、月支両方から)です。さらに白虎でもあります。白虎もまた手術を示唆するものです。
 もう一つは大運酉と年運酉が刑となっていることです。これは私の感覚的なものですが、この組み合わせは怪我とかを引き起こすように私は感じています。


例3-2 胃腸炎からの回復

『四柱博観』

1948年9月10日申時生 男命

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月令.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金土水火、木はなし
 食神格  喜神:火土  忌神:木火水
 申酉戌金方



【命式】
 戊土が秋生まれで季節的には強くはありませんが、戌に坐しておりまた3干ありますので強い日主といえます。辛金は季節的に強く申にも通根しており強いといえます。申酉戌がそろっており、強弱としては金が強く、土がその次、以下水火となり、木は命式中にはありません。内格の食神格と判断します。よって喜忌をいえば火土が喜神、木水金が忌神です。

 以前は土の強い従旺格と見ていたのですが、申酉戌の金方局を成し土生金もあるので金の方が強いと判断し直しました。従児格としては日主が強すぎるので内格とします。ただし格が変わっても喜忌は以前と変わりません。五行強弱が変わっても喜忌が変わらないというのは少々変ですが、命式の構造でそうなってしまうのです。
 

【判断】
 この命は癸亥運の間は胃腸炎に悩まされたが甲運以降は徐々に回復、乙丑運では完全に胃腸が治ったということです。基本的には日主が強いので、基本的に健康であり、病気になっても軽く済むことが多いものです。
 癸は戊と合して日干に対する癸水の作用が強まります。また亥は子と方合します。申亥は六害でもあります。これは金水が強くなり、金が強く水を生じること、さらに干合で水の作用が強まるため、日主喜神である土が弱められることになります。
 甲子運の間はまだやはり胃腸の調子は悪いと思いますが、癸運に比較すればだいぶましでしょう。乙丑運では乙木は戊土を弱める力はありませんし、また辛金が乙木を弱めます。丑は酉と合して金の半会ですが子との合や戌との刑でもあります。しかし丑自体は土支ですから基本的には喜神であり、土は強められます。ただし刑合会が入り乱れますので、成敗的に良いかは別でしょう。


例4-1 傷肺

『星命術語宝鑑』

1924年7月16日亥時生 男命

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月令.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木火金土水
 月刃格  喜神:土金(水)  忌神:木火
 丙辛干合、申亥害、子未害



【命式】
 月令は丁で、季節的には強い日主です。しかし、未以外の支はみな水を持っていて、通根は未のみとなりますので、さほど強いわけではありません。辛金は申に通根していますが、さほど強くはありません。丙辛の合のため甲木を剋する作用はあまりなく、むしろ甲木の逆剋を受けて弱くなります。己は未に通根しており、甲は未と亥に通根しています。
 以上を総合すると、甲木が最も強く、季節は夏ですから丙火は強く辛金は弱いです。一応形としては己土や未中の己土が辛金を生じることになるのですが、あまり効果は期待できません。五行の強弱としては木火金土の順で、木火を忌神、土金を喜神とします。水は微妙です。

 以前は土水を喜神、金を微妙としていました。水は火を弱めますが、木を強める作用もあり、むしろ水が微妙で金ははっきり喜神と考えた方がいいと思いなおしました。判断はさほど変わりません。

【判断】
 年柱を頭、月柱を胸、日柱を腹、時柱を下半身をみて判断する方法が盲派命理にありますが、月干辛が剋を受けるのはまさに肺の疾病を示します。
 酉運までは金水運で辛金が剋を受けるのを緩和してきましたが、甲運から肺の発作で苦しむようになります。甲は己を合して取り去り、続く戌運は丙の根となり、辛は弱くなります。ですが、戌は辛の根でもありますし、一応土生金の形ですから、命を落とすほどではありません。本格的に危ないのは丁運でしょう。
 もともと肺は強い方ではないので、このような命式の持ち主は激しい運動はしない方が無難です。ちなみにこの命式の持ち主はマラソンを行っていて肺を痛めたとのことです。


例5-1 腎臓、膀胱疾病、透析

『四柱博観』

1958年10月25日卯時生 男命

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月令.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:土木水火金
 財帛格  喜神:木水  忌神:土火金
 亥卯半会



【命式】
 乙木が土用生まれですが、亥卯に通根していますから比較的強い日主です。戊己土は2干あり季節的にも旺じて、さらに2支に通根していますから、この命式では最も強いです。壬水は亥に通根していますが、比較すると弱い日主です。よってこの命式は財格ととり、木水が喜神、土火金が忌神となります。
 喜神の壬水は乙木に洩らされ、戌に坐し戊土の剋を強く受けます。

【判断】
 病占としては比較的見やすい命式だと思います。喜神である壬亥が土の剋を受け、木に洩らされるので、壬亥の示す腎臓や膀胱の疾病になりやすいことは容易に判断できます。
 発病の時期はわかりませんが、丑運以降はいつでも発病の可能性があります。丁年は壬を合し、また巳年は亥を沖します。また未年は木土が強くなり、水を枯らせる恐れがあります。また命式で水自体が弱いので、生まれつき腎臓、泌尿器に欠陥があるとも考えられます。


例5-2 腎虚症

『四柱博観』

1968年6月18日寅時生 女命

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月令.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:火木土金水
 傷官格  喜神:木水  忌神:土火(金)
 寅午半会



【命式】
 甲木が夏に生まれていますが、寅に坐しており比較的強い日主といえます。丙火は季節にも旺じてさらに寅午の半会がありますから最も強いといえます。戊土も2干あり火の生を受けて強いです。金水については年支申にしかなく、しかも夏生まれですから相当に弱いです。食神が強く財もあるので従児格といってもよいかもしれませんが、それにしては日主が強いため、普通の食神傷官格ととるべきでしょう。

【判断】
 長期にわたり腎虚症を患っている命です。女性の腎虚というのがよくわかりませんが、腎機能あるいは生殖機能が弱いということだろうと思います。
 金水が弱く、大運でも初運から木火運が続くため、身体的には金水の示す部分が弱いといえます。金は肺、水は腎であり、金生水の作用がなく、病症としては喜神で水がほとんどないので、水の示す腎臓や泌尿器、ホルモン異常が考えられますが、元々腎臓が弱いというのが最も蓋然性が高いでしょう。


例6-1 精神病

『星命術語宝鑑』

1945年9月22日酉時生 男命

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月令.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木水金火、土はなし
 従旺格  喜神:木水  忌神:火土金
 寅午半会



【命式】
 日主は甲木で秋生まれですので、季節的には弱い日主です。癸水の生を受けますが、乙木の助は受けず、逆に劫財奪印となり、甲木はかえって弱くなります。天干に劫財と印しかないので従旺格といえそうですが、仮の従旺でしょう。喜神は木火とします。
 秋生まれで地支に金が多いので、行運で金がめぐってくると日主は強く傷つけられます。天干は木水、地支は火金であり、非常にバランスの悪い命式といえます。

【判断】
 五行的にみると、木行は一般に肝臓、胆のうと脳や神経、目を表すとされます。この場合は木が金に剋されるため、肝臓あるいは神経が壊されると想像できます。
 この本にはいつ精神病を発病したかは書いていないのですが、辛庚の大運の可能性が高いと思います。とくに庚は乙と合しますが、この場合は合去ではなく金化すると私は思います(諸説あり)。すると金が非常に強くなり、命式のバランスを大きく損ねます。これがが精神異常を起こしたといってもいいかもしれません。
 肝臓が悪くなかったのかといえば、そこまではこの本には書いてませんでした。しかし肝臓病は精神異常を引き起こすことも少なくありません。肝臓は脳に影響を与えるのです。これは私の経験からも言えますし(もちろん私自身の話ではありません)、アル中による肝障害から認知症を引き起こすことはよく知られています。


例6-2 弱智症

『子平命学弁証』

1996年12月9日午時生 女命

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月令.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水火金土木
 食神格  喜神:金土(火)  忌神:水木
 子辰半会



【命式】
 日主庚は通根してませんが、比肩があるので弱すぎとはいえません。丙は午に通根しています。壬は子と辰に通根しておりしかも冬生まれですから、もっとも強い干といえます。強すぎるといってよいでしょう。なお子と辰は水の半会となります。
 従児格ともいえそうですが財が極端に弱いので、水の強い金水食傷の命とします。喜神は土金、忌神は水木となります。丙火は冬生まれの庚にとっては調候用神となりますが、子に坐しておりまた午からも遠く、喜神の作用は非常に弱いといえます。

【判断】
 食神傷官というのは他人を助けることであり、干渉することでもあります。コミュニケーション力をあらわすこともあります。これが強すぎる、しかも日干が弱いのですから、他人との交渉等に何らかの欠陥があると推測されます。
 この命式ではとくに脳神経を破壊するような暗示はありませんから、むしろ生まれつきコミュニケーション力が不足していると判断すべきでしょう。智は水に属しますので、知恵に何らかの欠陥があるともいえるかもしれません。ただし、この命式だけみてただちに弱智症だと判断することはできません。病症の診断はあくまで医者がやることで、占いで決めることではありません。
 亥の大運では、食神がますます強くなるので、まず症状の改善は難しいでしょう。12歳戊の大運になれば、土生金で日干を強め壬を抑えますので、症状は少し改善するでしょう。しかし、弱智が生まれながらのものであれば、常識的に言って完全に治るのは無理だと思います。


例6-3 極度の神経衰弱

『四柱博観』

1946年11月18日子時生 男命

.6757473727177
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月令-.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:火金土水木
 七殺格  喜神:土(水)(金)  忌神:木火
 申子半会、申亥害



【命式】
 丙日主で冬生まれですから季節的に弱いですが、2干あり戌に通根しています。庚は申戌に通根しています。己は戌に通根しています。よって火が最強と判断します。しかし、地支に水が多く壬癸があると火の方が強くなってしまいます。命式中の五行の強さをいえば、火金土の順であり、格局は普通の七殺格ととれば喜神は水土、忌神は火木ということになります。金は閑神ではないですが微妙です。
 しかし、火の強さは戌に支えられているのみであり(己土も同様)、あまり強いものではありません。一方地支に水が多いので、とくに壬癸運では水と火の強弱が逆転します。その場合は水火交戦という状態であり、吉凶はともかく身体的には変調をきたす可能性が高くなります。
 以上はこの命式が正であるという前提なのですが、この命式は夜子時です。夜子時を認めないとすると(私はその立場をとっています)、この命式は、丙戌年己亥月丁酉日庚子時となります。丙申日よりも多少水は弱くなりますが、基本的には同じような構成です。ひとまずは原著を尊重して丙申日で話を進めます。

【判断】
 常に神経衰弱を生じており、甲辰大運時に幻覚を見るようになって亡くなったと書にはあります。亡くなった年齢がわからないのですが、甲運の壬申年か癸酉年、あるいは辰運の庚辰年か辛巳年ではないかと思います。
 27歳から壬癸大運が続き、水火交戦状態です。が、己土が水を抑える形となり、亡くなるまではいかなかったと思いますが、甲運になると甲が己を合去して水を抑えるものがなく、癸は丙と剋関係が強いので、心身のアンバランスがひどくなります。火は循環系統であり心臓です。心は神であり、精神活動を表します。神経は五行では木ですが、火もまた神経や精神活動を表す五行です。火が弱くなると、不眠や判断力の低下、知覚異常などが表れます。
 もう一つの疑いは土の制がきかず水が多いことです。腎機能の障害でむくみやすく、ひどくなると尿毒症を発症する可能性があります。尿毒症は幻覚などの精神症状を引き起こすことがあります。これも疑われますが、元の書には記述がないので、そのあたりはわかりません。


例7-1 盲目残疾

『命理通鑑』

1866年2月4日午時生 男命

.70605040302010
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月令-.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:火金木土、水はなし
 財帛格  喜神:土金  忌神:木火(水)
 寅戌半会(午欠)



【命式】
 庚日春生まれで季節的には弱く戌に通根していますが、解説にもあるように火が強すぎます。よって格局は財帛格にはしていますが七殺格というべきでしょう。喜神は金水土、忌神は火木とします。
 この命式ですぐに目につくのは、極端に火が強く、水が全くないということです。
 行運を見ると、幸い早年は辛壬癸運でありますので、金水があり喜神運なのですが、甲運から忌神運に入ります。午運は寅午戌と火局が成立し火が極端に強くなります。

【判断】
 目というのは一般には木火で、とくに火日主のときに水の剋が多いときに目を患うとされます。ところが、古書をひもとくと、盲目になる場合というのが実に多く、そのいくつかを挙げますと、次のような場合があります。
 ①火が剋を受ける場合  ②木が剋を受ける場合  ③水が非常に弱い場合
 ④水が乾燥してしまう場合  ⑤傷官七殺が多く官殺の行運に行く場合
 ⑥一殺三財双火がある場合  ⑦七殺が強すぎる場合  ⑧土旺じて火をみる場合
 ⑨羊刃が多すぎる場合  ⑩羊刃に七殺がある場合
こうしてみると、昔は目の悪い人が多かったんでしょうね。一方失明の原因ということで調べてみると、眼球自体の原因もありますが、他の疾患や老化によって白内障や緑内障を引き起こすこともあったり、糖尿病で失明したりと単純ではありません。
 この命式の場合は、上の③④⑤⑦が当てはまりますが、命式だけを見て失明すると判断することはまず無理でしょう。当てずっぽうで言えば時折うまくいくかもしれませんが。
 書によると午運で盲目となったとあります。上で述べたように午運は極端に火が強くなります。水が全くないので腎機能や水分代謝の低下、精力減退、また火が強いので循環器系統の異常、例えば高血圧、また火剋金による肺機能の異常、などが考えられます。失明はそれらの原因のどれかが症状として表面化したものだろうと思います。これあたりはもっと私も研究しようと思っています。


例7-2 両目失明

『四柱博観』

1968年11月12日午時生 男命

.6959493929199
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月令-.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:土火水金木
 七殺格  喜神:火木(金)  忌神:水土
 申亥害



【命式】
 冬生まれの丙日主ですから、季節的には日主はそう強くありません。戌に通根していますので、そう弱いというわけではありません。癸は戊と合しており、その作用は丙には向かいませんが、地支には水が多く、壬癸の行運では水が非常に強くなります。戊は戌に通根していますので普通の強さです。
 五行的には火土が同じぐらいの強さで次に水ということになりますが、前にも述べたように壬癸の行運では強さは逆転します。土がやや強いとみて、喜神は火木、忌神は水土とします。金は通関用神でどちらかといえば喜神ですが、水の行運では忌神とみます。

 ところで、この命式は『四柱博観』からとったものですが、これと同じ四柱が『命理通鑑』にもありそれは星命家の命なのですが、やはり盲目の人です。非常に不思議です。

【判断】
 前の盲目になる条件からいえば、壬癸の行運の場合は①であり、土の強い行運では⑧ということになります。戊申年生まれということは、4歳で壬子年を迎えることになります。この年は①⑦になります。すなわち幼時に失明しやすいといえるでしょう。また14歳では子運壬戌年ですから、この年もまた①⑦⑧の条件を満たすことになります。
 火日主で水が強くさらに土がある場合には一応失明を考えてみてもいいかもしれません。


例8-1 咽喉ガン

『四柱推命鑑定術』

1944年9月25日子時生 男命

.6555453525155
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月令-.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水木金土火
 印綬格  喜神:木土(火)  忌神:金水
 辰酉合、申酉金方



【命式】
  秋生まれの壬日で癸の助もあり、強い日主といえます。甲乙木は辰に通根していますが、辰酉の合で通根の作用は弱められます。天干には水木しかなく、水が最強ですが、地支には申酉巳が金を含み、また月令も辛金と強いです。行運で庚辛が巡ってくると金が非常に強くなります。場合によっては水以上に強くなります。
 しかしこれは従旺格ではなく内格です。日主を弱める木が喜神であり、金水が忌神となります。火土は微妙ですが、日主が強く食傷がそれに次ぐ場合には喜神となる場合が多いです。

【判断】
 この命式は米国の某俳優の命です。果たして米国俳優に四柱推命が適用できるかは疑問のあるところでしょうが、まあ見てみましょう。
 大運をみると64歳までは木火土と喜神の天干運が続き、65歳に大運庚と急に悪い大運に入ります。乙と庚は干合しますが、これは金化する干合で日主を非常に強めると同時に喜神である甲木を強く剋します。実際には66歳庚寅年に咽喉ガンを患い、67歳辛卯年に亡くなっています。辛金は忌神ですし、卯は辰酉の合を解き、金水が強められますのでやはり忌神です。67歳で亡くなるという判断自体はとくに難しくはありません。
 ではなぜ咽喉ガンになったのか?これは難しい問題です。
 そもそも咽喉というのはどの五行に分類するのかが難しい部位です。四柱推命書によっても違いがあります。火に分類するものあり、金に分類するものあり、土に分類するものあり。それは咽喉を舌とつながるとするのか、鼻や気管とつながるとするのか、食道とつながるとするのかで属する五行が異なるからだと思われます。
 この命式の五行の関係はどうなっているのか?水が最強であることは辰酉は合して通根の作用が弱くなっていますが、辰は甲乙木の通根となっています。また甲乙木は一応水を洩らして喜神なのですが、辰が弱く浮木の傾向ありです。また秋生まれで全般として金水が強いため、金寒水冷に近いです。これを救うのは巳火ですが弱いです。この命式で庚辛がめぐってくると、金生水で水が強くなり、また庚辛金が甲乙木を剋します。よって金水の亢進もしくは喜神である巳火や甲乙木の部位に病を生じると判断されます。 巳火は舌につながる扁桃や咽喉を示しますので、これをとらえると咽喉ガンという判断はできなくもないですが、私なら金水氾濫木漂浮として、循環系統の出血症とか神経性の疾患を予想するところです。
 もちろんまた別の見方もできますが、私は東洋医学の専門家ではないのでこれ以上の言及はしません。あとは専門書をご覧ください。
 疾病の判断というのは一筋縄ではいかないものです。


例9-1 皮膚病

『四柱博観』

1960年8月16日子時生 女命

.6353433323133
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月令-.




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金土火木水
 財帛格  喜神:木火  忌神:土金水
 申子半会



【命式】
 秋生まれの丙日主であり季節的には弱く、通根もしていませんから弱い日主です。戊土甲木も通根していませんから弱いです。庚金は季節に旺じていますので、天干の中では最も強いです。水は天干にはありませんが、地支はすべて水を含み、また申子の半会もあるので、壬癸運は水が非常に強くなります。
 日主が弱いので従財格となりそうですが、甲木の印があり、これは内格の偏財格ということになります。よって火木が喜神、金水土が忌神となります。

【判断】
 『四柱博観』の解説によれば、土が弱く水に浸されるため皮膚病になりやすい、との説明があります。皮膚は金に属するのですが、中国医学的な見方では説明のつく話です。すなわち土の示す脾が弱まることで身体の水分(津液)調整が異常となり、それによって皮膚に影響を受けるというものです。詳しくはここでは述べません。中国医学の考え方については、そのうち解説を試みたいと思います。
 ただ、この解説は私には納得しかねるものです。私の説明は以下のようなものです。
 この命式は地支に水が多く、五行的に非常にバランスの悪い命式です。壬癸の行運で水溢れることとなります。そうなると、火は剋され、木は漂浮し、金は沈み冷えて、土は流されることになります。強すぎる水は他の五行に害を与えます。しかしこれは一般論であり、注意深く見る必要があります。
 大運は癸に始まります。癸は幸い戊と合して命式にたいした影響を与えません。壬は丙を弱めますが、凶作用はあまりありません。むしろこの場合は庚を洩らして弱めるのである意味では五行的なバランスをとることになります。しかし基本は忌神であり、沈金の悪い作用があります。次の辛庚運は当然忌神であり、庚辛を強めるというよりは傷つけあう関係です。命を落とすことはないと思いますが、金の病気、気管支や肺、大腸、皮膚に疾病が起こりやすいといえるでしょう。ただし、皮膚病と特定するのは私には今のところできません。


例10-1 小嬰児残疾

『実証占星論命』

1992年7月21日23時生 男女不明

月令-




【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木土水火金
 正官格  喜神:土火  忌神:木金水
 甲己干合、丁壬干合、亥未半会、亥子北方



【命式】
 生時が22時59分という微妙な時間ですが、生地は東経121度30分とありますので、生まれた時刻は子としました。夜子時というわけですが、私は夜子時をとらないので、翌日(己亥日)とします。性別がわからないので大運は省略しています。
 己日主で土用生まれですから、季節的には強い日主です。甲己は干合で土用生まれで合化しそうですが、地支中に火土は少なく、月干の丁も干合で力がありません。したがって、この命では化しないとみます。甲は亥未に通根しており、亥未の半会もあります。地支に水が多く強いといえます。また干合ですから、己に対する作用は大きいです。
 丁と壬も干合します。この場合は合去であり日主に対する作用はほとんどありません。ですから、五行の強さは木土水火金の順で、木が極端に強い命式です。
 ただし、これだけ木が強いと丁壬が木化すると考える術者もいるでしょう。もし木化すれば、ますます木が強いことになります。
 いずれにしても、土火が喜神、木金水が忌神となります。とくに木は非常は土を非常に剋します。

【判断】
 この命は、生まれる前から胎児の位置が不正常で、緊急に帝王切開で生まれたため病弱で、さらに生まれた年に腹部の長瘤のために手術を行って、一生障害が残った嬰児の命です。
 忌神が極めて強く日主を剋しますから、夭命あるいは苦命です。また丁は喜神なのですが、壬に合されて力がありません。いわゆる印被財損壊ですから、やはり夭命といえます。生まれつき病弱というのも当然という感じです。
 日主土が強く剋されますから、腹部の異常が考えられます。また甲の強すぎは肝疾患も考えられます。
 火土が喜神なのですが、命式中にはわずかに未にあるのみです。火土喜神で非常に弱いのは身体的成長が遅いといえるかもしれません。



作成 2016年 5月 8日  構成の見直し
改訂 2020年 9月27日  HTML5向け構文の書き換え、一部修正