四柱推命の実占 ~ 欧陽玠命書命例


はじめに

 このページは『八字命学計量真機』(李銘城著)の下篇、「解析欧陽玠命書命例」の例について、“hiroto的”にアプローチしたものです。命式や事実は本書から引用していますが、本書の翻訳、解釈、考え方の紹介はしていません。どちらかというと私自身の勉強のために書いたものです。本書の内容を知りたい方は、本書や『神秘命理学』(欧陽先生の本)を買って読んでみてください。(果たして今売られているのかはよく知りません)
 ところで、欧陽玠先生の姓は欧陽、名は玠になります。彼は台湾人ですが、二字姓は中国や台湾では珍しいです。日本で活躍した欧陽菲菲も台湾人です。欧陽菲菲を知らない人はネットで調べて下さい。「雨の御堂筋」とか。すぐにわかる人は、まあ私より上の人ですね(笑)。
 なお生年月日、大運、月令は私が独自に計算したもので、本書とは異なります。

- 内 容 -



範例1 男命


1904年9月18日酉刻 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木水金土、火はなし
 従旺格  喜神:木水  忌神:金土火
 辰酉合、卯酉冲


【命式】
 乙木日主で秋生まれなので季節的には弱いといえます。しかし甲乙木は3干あり辰卯に通根しているので、最も強い五行といえます。癸水は辰に通根しており次に強く、金土は地支にしかありません。また火は全くありません。天干に殺や財がありませんから、一応従旺格とします。忌神は木水、金土火が忌神です。土は忌神ですが、この命式は浮木の恐れがあり、それを救うには土が必要です。また季節的には丙火が必要でしょう。
 地支については、卯酉の冲は辰によって解かれそうですが、卯が時支の酉と冲であり、結構複雑な関係になっています。この場合は地支は生きるにしてもそれぞれ通根の作用は弱いといえそうです。

【行運】
 書によると、大学を卒業後農政関係の役人となったのですが、戊寅運丙申年辛丑月に汚職で入獄するとあります。それまでの行運をみてみませしょう。
 大学卒業と思われる亥運は、亥が水木の根ですので喜神運となります。とくに偏印が強くなるということは試験に強いといえます。
 丙運は五行的には忌神でしょうが、秋の酉金を抑えまた暖の作用で、喜神的です。乙木の成長を育てる感じでしょうか。
 子は卯との刑が気になりますが、辰との半会で水を強め喜神といえましょう。丁は地支に火がないのでさほど強くなりません。忌神といってもあまり影響はないものと思います。
 丑は酉との半会で金が強くなります。この丑運の最後の庚午年はあまり良くない年だったろうと思いますが、記載がないのでわかりません。
 戊運ですが、喜神の癸を合して明らかな忌神運となります。印を失うということは名利を失うことであります。とくに月干は自分の属する社会や組織を示すので、役人には非常に良くないです。寅運は木の根となるため悪くはないはずですが、甲木が強くなり、しかも甲木は乙木とは離れており癸水に近貼しているので劫財奪印の象意が出てくると思います。これもまた名利が奪われることを意味します。
 丙申年についていうと、丙は前にいったように悪くありませんが、申は水の根でもありますが、庚金を含み、辛丑月には非常に金、すなわち官殺が強くなります。また大運寅と申は冲であり、命式行運が合冲会刑入り乱れる行運となります。こういう行運のときは失職、刑獄、災難などが起こりやすいものです。
 だから、この月から四年入獄したという話となりそうですが、これはちょっと結果論という気がします。この程度のことは普通の人にも起こることです。私には、この命式をみて、戊寅運丙申年は災いがあるとまでは言えますが、刑獄と断定することはちょっと無理です。


範例2 女命


1930年12月30日申刻 女命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水木金土火
 印綬格  喜神:火土  忌神:金水木
 子午冲、寅申冲


【命式】
 甲日主の冬生まれですから季節的には強いといえますが、寒すぎに注意が必要です。寅に坐しているので比較的強いとはいえます。壬水は季節的に強くまた申子に通根しています。戊土は通根しておらず甲木の剋を受けます。庚金は申に通根していて戊土の生を受けます。ただし地支は4支とも冲の関係にあり通根の作用は弱いと判断します。
 こういう場合に喜忌はどうとればいいでしょうか?“hiroto的”に考えると、飛びぬけて強い五行はありませんから、五行的に均衡を図ります。すなわち火土が喜神となり、金水は忌神となります。木は微妙ですが、日主ですからやや強めの方がよいと考えますと極端に木が強くならない限りは喜神的と考えていいでしょう。

【判断】
 この女性は小学校の教員ということですが、偏印および財生七殺のおかげでしょう。生まれつきの頭の良さはそこそこというところですが、もし丙があれば非常に聡明といえます。18歳から丙運ですので、この時期に就職すれば頭脳を生かせる仕事に就けるといえます。
 行運を見ますと、戌運は庚戊と強めて閑神的、乙運は庚を合して喜神、酉運は庚を強めて忌神、甲運は日主を強め戊を弱めますので忌神ですが、前に言ったとおり日主は強めの方がいいので、それほど悪くはありません。申運は子と合して子午の冲を解きますが、申子が金水の根となりますので忌神です。ただ午が火となり命式の寒さを和らげますから、全く悪いとも言い難いです。
 問題は次の癸運です。癸は戊を合して取り去ります。戊がなくなると庚金の日主の剋作用が強まり、日主は弱くなります。水はともかく金は忌神となります。癸運の年干支は、戊午、己未、庚申、辛酉、壬戌で、己未年まではいいとしても、庚申年からは悪いです。官殺忌神で官殺が強まりますので職業に関する災い、刑獄の災い、場合によっては生命の危険が考えられます。
 で、書には「流年辛酉官殺混雑、因任教員兼総務貪汚、而判刑牢獄七年」とあります。まあ占断どおりということになるでしょう。この例は比較的わかりやすいと思います。


範例3 男命


1902年2月7日酉刻 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金火水木、土はなし
 財帛格  喜神:火木  忌神:金土水
 酉自刑


【命式】
 辛日主で春生まれですので季節的には弱いといえます。しかし酉に坐していて2支ありますから弱いというほどではありません。丁火は寅に通根しています。壬水は2干ありますが通根していません。よって五行の強さとしては金火水木の順で土はありません。よって喜神は火木、忌神は金土水となります。なお命式中の壬水は辛金を漏らして喜神です。ただ辛金は基本的に弱い干なので、他干からの作用をよく見極める必要があります。

【判断】
 この命式で目につくのは辛酉日主で丁火の剋を受ける形になっていることと壬水が辛金を淘洗していることです。
 書によると、甲辰運に妻を娶り、乙巳運で亡くし、続けて妻を娶って、己酉運で妻を亡くすとあります。これは甲が財で喜神であり、また辰は酉と合して酉の自刑を緩和するので妻を娶ることはうなづけます。続いて乙巳運で妻を亡くしまた再婚するのも、巳酉の合や年運なども考えるとまあわからないこともありませんし、己酉運で妻を亡くすというのは、酉の自刑がはなはだしいですし、年齢も年齢ですからまあわかります。
 また書には貧農で長寿とあります。日主が比較的強いので病気しにくく、辛を極端に強める運が庚運まで回ってきませんから、長寿なのはわかります。しかし財が喜神なのになぜ貧農なのでしょうか?
 1902年生まれという時代背景もあるのでしょうが、辛金自体の持つ性質にもよります。それはこういうことです。春月で年支にも寅がありますから、甲乙木が行運でめぐってくると甲乙木が非常に強くなります。辛金は強い甲乙木に対して制剋できません。逆に辛日主が剋されるほどです。つまりは春生まれの辛金にとっては、甲乙木は財というより官殺的な作用が表れやすいといえます。また財があっても自由に使うことができない状態です。
 辛酉日生まれというのは、結構見るのが難しいというか単純ではないと感じています。


範例4 男命


1927年4月11日辰刻 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木金火水土
 月刃格  喜神:金土  忌神:木火土
 乙庚干合


【命式】
 乙木日主で春生まれですから季節的には強いといえます。甲木が貼身しており地支に卯辰亥辰と4支ありますからきわめて強いといえます。庚金は乙木と干合し日干に影響を与えますが、強さとしてはそれほど強くありません。丁火も地支に火がありませんから比較的弱いです。水土は地支にしかありません。よって

【判断】
 この命式を見て気がつくところは、乙庚の干合と春生まれで地支に木が多いことです。
 まずは木が非常に強いといえますが、庚が干合しているので、従旺格とはならないと思います。よって金土すなわち財官は喜神、木水は忌神といえます。年干の丁火は甲木を洩らして喜神といえますが、地支に根がなく弱いので火支の行運は庚を弱める作用がなければ良いでしょう。行運の丙丁火は庚金を弱めるので忌神といえましょう。
 実は、私のこの見方は、欧陽先生とは意見を異にしています。どう違うかは原書を見ていただくとして、以下は私の判断をもとにこの命式を読み解きます。
 初運は癸卯で丁を弱め日主および劫財を強めるので明らかに忌神です。また次の壬運は丁を合去しますから明らかに忌神です。年干月干は先祖、親の位ですから、喜神である丁を弱め忌神である甲を強めることは、先祖や家に何らかの影響が出ることを示します。こういう場合は祖父母や両親を亡くしたり、家が没落したりするのですが、実際に8歳までに祖父と両親を喪っています。
 次の寅運は亥と合して、地支亥の作用がやや減じられます。また寅は丁の根ともなりますから、壬運よりはましになります。書によると、寅運丙戌年に結婚とあります。私には、必ずしも結婚という感じはしませんが、辰戌の冲は土支を開くと解釈すればまあわからないではないです。ただ、これは研究課題ですね。
 ところが己丑年には別れています。これは大運が壬寅から辛丑に変わる時、いわゆる転角にあたります。このじきは良いにつけ悪いにつけ、身辺の変動が起こることが多いものです。必ずしも悪いとはいえません。己は甲を合去し、丑は庚の根となりますから、この年は喜神年です。離婚は必ずしも忌神年に起きるわけではありません。人生の再出発となることもあります。
 その後ずいぶんたった庚子運丁未年に再婚しています。子は木の咸池桃花ですから、まあこの運に再婚というのはわからないでもないです。ただ丁未年は甲乙木が強まるのを食神が洩らす形で吉凶半ばという感じです。食神は生財しますので、結婚と結びつかないこともないですが、これは私には明確にこの年とはわかりません。
 子女については、原書では非常に特殊な計算方法をして二人の男子を得るとしていますが、通常は男命の場合官殺を子供とします。この命式の場合、時干が庚で一応辰土の生を受けるので子供があると判断しますが、二人かどうかは難しいところです。干合ですので結びつきは強いといえます。
 この命は日主が強く辛運からは喜神運が続きますので、健康で長寿だと思われます。


範例5 朱元璋命


1328年10月29日未刻 男命
(グレゴリオ暦として計算)

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:土火水金木
 傷官格  喜神:火木  忌神:水土金
 辰戌冲、丑未冲、丑戌未刑


【命式】
 丁火日主で秋土用生まれですから季節的には弱いといえます。しかし2干あり戌未に通根していますからそう弱いわけでもなさそうです。壬水は日主と干合しており辰丑に通根しています。戊土は地支が土支で土用生まれですから強いといえます。五行の強弱からいえば土火水金木の順でしょうか。この命式の場合は日主を強めたほうがいいと判断して、火木喜神、水土金忌神と判断します。
 なお、辰戌、丑未の冲があり、地支は全冲です。通根の作用は土のみ強くあとの五行にはあまりきかないと思います。

【判断】
 明の初代皇帝朱元璋(洪武帝)の命とされるものです。
 欧陽先生は、この命式は生時が誤っており正しくは丙午時である、丁未時ならば普通の人だ、と断じています。この項では、果たしてそうか?を考えてみようと思います。欧陽先生は独自の命式の点数化でそう判断しているのですが、その計算方法がよくわからないので、ここで先生の意見は解説できません。
 なお、朱元璋の命式についてはさまざまな説があり、いずれの場合でもない可能性があります。『三命通会』には、「考国史戊辰年九月十八丙子日己丑時」の記載があり、これだと上の命式とは全然異なります。ここではその命式については検討せず、あくまで丁未時と丙午時ではどちらがよい命式か、という議論にとどめます。なお、朱元璋の命式の分析については、ネットでもいろいろと話題が出ていますので参考にして下さい。ここではそれらのサイトの紹介はしません。
 呼び方ですが、原命(式)というのは丁未時生まれ、改命(式)は丙午時生まれのことを指すことにします。
 時支の差について手っ取り早いのは『三命通会 巻八』でしょう。その中の丁丑日丁未時断を見てみますと「丑未刑衝不得善終、年月辰戌四庫全貴当極品」とあります。意味は何となくわかると思いますが、年月が辰戌の場合は非常に位が高いということです。また丁丑日丙午時断を見てみると「平、寅卯戌未年月貴、酉丑用財最吉」と書かれています。これは、丙午時は普通の命であるが、寅卯戌未年月なら貴、酉丑年月で財があれば最も良い、ということです。これだけ読むとやはり原命の方が良いように見えます。
 しかし、これは朱元璋の命が辰戌丑未だったということに引っ張られている可能性があるように思います。すなわち朱元璋がそういう命だから丁未時で辰戌年月は大貴であるに違いない、というような論の進め方ではないかと。欧陽先生は『三命通会』を知らなかったはずはありませんから、この論に対しては否定的な見解を持っていたと考えられます。同様に、土支の四位純全格(年月日時支が辰戌丑未で構成されている格)についても『三命通会』には記載がありますが、欧陽先生は大貴だとは思っていなかったでしょう。
 よって、古書をひもとくのはやめて、五行や干支関係で考えてみることにします。
 原命だと、辰戌丑未と土支が並び年月、日時が支冲になっています。したがって支の根としての作用は弱くなります。とはいえ四支とも土で季節も土用ですから土が強いといえます。月干壬は丁と合して、丑辰の根がありますから、丁を剋します。ただし戊の剋を受けるので強さは減じられます。日主丁は2干あり未戌の根がありますが、壬の剋を受けます。よって、日主は2干あるといっても相対的には弱く支える必要があるので、木火が喜神、水土金は忌神といえます。
 改命の方をみてみますと、時干支は丙午ですので、丑未の冲はなく、丑午は地支の根の作用を発揮します。五行的には火水の強さが拮抗して両神成象格に近いです。この場合は火水の均衡を図るとして、通関として土を喜神にするにしても、その他は五行的な喜忌は干支別によって違うので、一言ではいえません。
 命式だけみると、壬正官が忌神である原命よりは、両神成象で年干戊が喜神である改命の方がよさそうに見えます。後者はいわゆる官星帯刃です。(ここでいう刃は劫財のことです。また午は火の陽刃でもあります)よって、貴であるのは改命の方のように見えます。
 しかし、行運まで考えてみますと、初運こそ癸亥運ですが、あとは木火東南方運が続くので、行運は原命の方がよいように思います。一般には命よりも運と言われますので、原命の方が良い命式といえるでしょう。
 ここでの私の暫定結論は、欧陽先生は命式の良さに注目した結果丙午時と判断したと思われるが、行運まで考えると丁未時の方が良いように思われる、ということです。
 行運の良さについては、歴史書やネットで朱元璋の事跡をたどっていけばわかると思います。これはみなさんで考えてみてください。ただし、この日が朱元璋の誕生日だという確証はありませんので、念のため。


範例6 少将師長命


1904年10月15日戌刻 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:金木水土火
 印綬格  喜神:水金  忌神:木土(火)
 辰戌冲、午戌半会


【命式】
 壬日主の秋生まれですから季節的には強いといえます。しかし辰にしか通根しておらずしかも辰は戌と冲になっています。庚金は秋生まれで強く戌に通根しています。甲は2干あり辰に通根しています。よって五行の強さは金木水土火の順でしょう。原則としては金水を喜神として、木土を忌神とします。火は忌神ですが丙は喜神と考えていいでしょう。

【判断】
 この命式をみてすぐに気になるところは、辰戌の冲、午戌の半会でしょう。また戌土→庚金→壬水→甲木と五行(この場合四行)周流になっています。
 喜忌ですが、ちょっとややこしいです。金が強いので従強格とみえないこともないですが、従強というほど強くはないと感じますので、普通の印綬格とします。日主が弱いので木土は忌神、水が喜神はいいとして、金は水を生じて良さそうですが、命式中の庚金はいいとして、行運で金がくると強すぎでむしろ忌神的です。五行の強さの平均化、五行周流および調候の点からかえって火(とくに丙)の方が良いと思います。
 寅運己丑年に師長に昇進とあります。寅は午戌と火局となります。己土は忌神のようですが、甲を合して取り去りますから喜神といえます。丑は金水の根となりますから吉凶半ばのようですが、日主を強めると木火土が強まっても恐れませんから、吉作用の方が大きいでしょう。
 己卯運にさらに出世するとありますが、おそらく己運でしょう。
 辛運癸丑年辛酉月に病没します。これは金水が強くなりすぎです。金水の病(腸、泌尿器など)もしくは火が弱くなることによる病(心臓や循環器系)が考えられます。


範例7 孤貧女命


1895年12月26日午刻 女命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:火土木水、金はなし
 七殺格  喜神:水土金  忌神:木火
 午未合、子未害


【命式】
 丁日で冬生まれですから季節的には弱いです。しかし午未が合ではありますが、3支に通根しており丙もあります。月干戊土は未に通根しています。年干乙木も未が未に通根しています。火土木が強く、金水は命式には子水しかありません。よって水土喜神、木火は忌神です。金は火の財なので喜神でしょう。

【判断】
 この命式には喜神である財がありません。よって財の行運には財を得る可能性があります。しかしよくみると、庚は乙に合して取り去られますし、辛は丙に合してやはり取り去られます。したがって庚辛運でも財を得ることは難しいです。しかも大運は東南方運で木火が強くなります。すなわち劫財が強いため少々の財運が巡ってきても財は壊されます。
 では夫運はどうでしょうか?官殺は喜神で、月支蔵干にあるのですが、月干傷官が強くなかなか喜神の力が出ません。
 ただし日主が強く、喜神の戊が貼身していますので、若いうちは比較的丈夫です。ただし54歳以降は木火が強くなるため、身体の調子はあまりよくないと思いますが、結果的には未運丙午年(71歳)に亡くなっています。
 この命は、財や官殺が喜神にもかかわらずそれが働かないという、比較的わかりやすい例です。


範例8 屠夫命


1918年12月22日辰刻 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:水木土火、金はなし
 建禄格  喜神:木火土  忌神:水金
 子午冲、子卯刑


【命式】
 癸日で冬生まれなので季節的には強い日主です。辰と子に通根していますのでやはり強いといえます。ただし子は午と冲になっています。丙火は午に通根、甲木は卯辰に通根、戊土は辰に通根しています。通根の数や配置から考えると、五行の強さは水木土火の順になります。この命式の格局ですが、傷官が強く財があるので、従児格に近い命といえます。ただ従児格にしては日主が強いので、従児格ととるのは無理でしょう。喜神は木火土、忌神は水金となります。
 正官戊と傷官甲が隣接している傷官見官の命です。

【判断】
 戊正官は喜神ですが、辰に通根しているとはいえ、時支でその作用はやや弱く、さらに丙財の生も時干で遠いので受けられません。また甲傷官の剋を受ける典型的な傷官見官であり、仮に役人や勤め人になっても高い地位は望めません。
 書には妻妾同居とあります。これは寅丁卯運のいずれかでそうなったと思いますが、時期については明示されていないのでわかりません。卯は年支午の咸池であり子卯の刑がありますから、女性関係はやや複雑になりそうです。
 原書には己巳運丙午年49歳(満48歳)に亡くなるとあります。己は甲を合して取り去ります。そうなると戊土は抑えるものがなくなるので、癸を直接剋します。また丙午年となると、丙が2干で午の根がありますので、強弱の勢力図が大きく変わり、火が最強となりまた土が火の生を受けて強く、日主は弱くなります。ではなぜ丙午年でしょうか。
 己運に入った年は癸卯年です。癸は戊と合して取り去ります。続いて甲辰、乙巳年と続くため、戊の強さを抑えることができたわけです。しかし次の丙午年になると、戊を抑えるどころか逆に生じることになるため、亡くなったわけです。亡くなった原因はわかりませんが、日主がやられるので病死の可能性が高いと思われます。

 この命式再度検討してみました。基本的な考え方は変わっていませんが少々違った考え方はありうるかもしれないと思い補足します。
 水木の強弱は季節が冬な分だけ強いと考えましたが、子は午と冲であり作用は減じられます。すると水木の強弱はあまり変わらないとも考えられます。すると両神成生格ですがこの場合だと水木の強さの均衡を図ることが重要となります。そうすると己運は文句なく忌神運です。甲乙年はいいとして、それを過ぎると完全に破格となりますから、生命を落とすかどうかは別として明らかに忌神年となります。


範例9 貧窮人命


1904年11月12日戌刻 男命

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【"hiroto"的審査】
 五行強弱:木火金土水
 食神格  喜神:金土  忌神:木水火
 乙庚干合


【命式】
 庚日で冬生まれなので季節的には弱いといえます。戌に通根しているので弱くはありませんが、丙火の剋を受けます。丙火は戌に通根、甲乙木は辰亥に通根しています。よって五行の強弱は木火金土水の順です。これは内格として、金土を忌神、木水火を忌神とします。冬生まれなので丙は調候的にはいいのですが、弱い庚金を傷めます。

【判断】
 この場合財が多いにもかかわらず、なぜ貧窮の命となるのでしょうか?もちろん木財は忌神なので、ないほうがいいのは当然ですが、忌神でもないよりはあったほうがいいことが多いです。(最悪は喜神の財がない場合)
 残念ながら日主は乙との干合であり、財というよりも女性の意味が強くなります。庚にとって金銭的な財は甲となるのですが、庚は乙との干合により甲財との関係は薄くなっています。この命は財多身弱でも富というよりは指向が女性に向くことになります。
 この命では大運に着目してみましょう。
 丁は単純に庚を弱めますので忌神です。
 丑は金の墓ですから一応喜神といえるでしょうが、戌との刑であり、異性運はあまりよくありません。
 戊は辰戌の根を得るので非常に強くなります。戊は庚を生じるというよりはこの場合は埋金の作用の方が強くなり、喜神とは言い難く、かえって庚は弱くなります。また甲も弱める作用があるので金銭的な良さはあまりないでしょう。
 寅は亥と合ですので、財を弱めることになり喜神といえます。寅運は比較的良い運といえるでしょう。
 己は甲を合去するので喜神です。これは異性的な面で良くなると考えられるため、この時期に結婚することは十分考えられます。(己卯運乙酉年結婚)
 卯は戌と合なので喜忌半ばです。
 庚は喜神といいたいところですが、乙との争合となり、また庚どうしでは庚はあまり強くなりません。
 辰は戌と冲です。官庫との冲であり、この場合は忌神といえるでしょう。
 辛は丙を合します。この命式では冬生まれなので丙辛は水化するという考え方もありますし、水はさほど強くなく単に丙を合去するという考え方もあります。水化すれば庚は極端に弱くなるので忌神ですし、丙を合去すれば庚の七殺はなくなるものの、調候的には寒くなりすぎて命式全体の調和としては良くありません。いずれにしても辛運は良い運とはいえません。
 巳は亥を冲して喜神です。この運は比較的良いと思いますが、年齢が年齢だけにあまり良さは実感できないでしょう。
 壬は庚を弱め木を強めて忌神です。
 午は戌と半会であり丙が非常に強くなります。よって忌神です。
 壬午運戊午年に病気で亡くなっています。時代を考えると長生きの方といえるでしょう。


さらに範例は続きますが、続きはまた後日、手元に資料があるときに追加します。



作成 2015年 7月 5日
改訂 2021年 1月31日  HTML5への対応、一部見直し