個性の見方


はじめに

 簡単に個性と書きましたが、個性という表現が適当かどうかわかりません。ここでは、性格傾向や体質など、個人の外面、内面の総体という意味で使っています。
 昔の四柱推命では、貴賎、貧富が重視されていました。すなわち財官殺が第一の着眼点であったわけです。中国の功利的な面が反映されていたといってもいいでしょう。ところが、現代においては、衣食の心配はほとんどなく、また職業も昔とは比較にならないほど多岐にわたっています。このような社会において、昔のように財官を重んじるのは、時代錯誤のような気がしますし、こういう考えは、私だけでなく、最近の四柱推命の術者には共通しています。それで、最近はまず性格、才能といった個性をまず見るのが重要だとされています。
 ここでは、とくに性格傾向、体質、あるいは一部家庭環境なども含めて、その人の個性というものに焦点をあててみたいと思います。



1.性格分類あれこれ

 「人間は誰一人として同じ人はいない。」と言われることがあります。それはそのとおりで、だからこそ個性といわれるわけです。しかし、人は思ったほどてんでばらばらではなく、似たような考え方を持つ人が結構いることは、誰でも経験することです。
 古来から、似たような思考や性格などを整理して分類がなされてきました。ここでは、それらの論に少しばかり触れてみましょう。
 以下は、多くをウェブサイトに依りました。とくに”Wikipedia”の”性格”をかなり参考にしています。

クレッチマーの体格気質分類
 ・そううつ気質 - 太目の体型。社交的、明るい、感情の起伏が激しい
 ・分裂気質 - 細めの体型。きまじめ、神経質、お人よし
 ・粘着気質 - 筋骨質の体型。几帳面、堅い、熱中する、まわりくどい

ユングの性格類型
 ・外向性 - 他者や環境に順応する / 内向性:自分の感情、思考に従う
 ・思考型 - 論理的に考える / 感情型:感情的に考える
 ・直覚的 - ひらめきによる / 感覚的:外部からの刺激による
 ・以上の3分類の組み合わせで、8つの性格類型ができる。
 ”ユング””性格類型”で検索すれば、山ほどサイトがあります。

エニアグラムの分類
 ・批評家 - 剛直。完全主義者。鑑識力が高い。曲がった事が大嫌い。
 ・援助者 - 人当たりが良い。八方美人。天気屋。
 ・遂行者 - 柔軟。行動的。価値や目標に拘る。
 ・芸術家 - 我道を行く。孤高の志士。センスや芸術性が高い。
 ・観察者 - 默考・分析・調査が得意。内向的。皮肉屋。有益性を重んじる。
 ・忠実家 - 安定性を望む。寄らば大樹主義者。趨勢に流されやすい。
 ・情熱家 - 冒険的で楽天的。好奇心が強い。ピーターパン。
 ・挑戦者 - 独裁者根性。武闘派。破壊主義者。他人に操られるのを嫌う。
 ・調停者 - 葛藤を嫌う。平和主義者。

血液型の性格分類
 ・A型 - まじめ、慎重、気配り、理屈
 ・B型 - ゆったり、純真、ひとりよがり、気分屋
 ・O型 - 親分肌、社交的、精神力、勝負
 ・AB型 - 二面性、才能豊か、自然体、かくしごと
 以上は適当なキーワードを選んだだけです。あまり深い意味はありません。

シュプランガーの性格分類
 ・経済型 - 資本、購買力で判断、実用性重視、実際的
 ・理論型 - 知識の体系に価値、実際的でない、冷静
 ・審美型 - 感覚的事実に価値、現実無視、美的感覚重視
 ・宗教型 - 苦行、聖なるものの救いと恵み、生命肯定
 ・権力型 - 権力の獲得、支配、命令
 ・社会型 - 社会福祉、博愛、他人の進歩を喜ぶ 

YG性格検査の分類
 ・平均型
 ・情緒不安定積極型 - 激情
 ・情緒安定消極型 - 地味、落ち着き
 ・情緒安定積極型 - 健康、優等生、リーダー
 ・情緒不安定消極型 - ノイローゼ、悩み
 企業の採用、人事に使われているらしいが、むしろ欠点を自覚して行動を修正するために使う方が有益だろう。

 最後に、最近の本から。

『天命の暗号』(出口光著)による分類
 ・達成族 - 成し遂げることに価値、行動的、変革、挑戦
 ・親和族 - 集団の和を重視、役割認識、調和、保守
 ・献身族 - 相手を尊重、1対1、感情的、愛情
 ・評価族 - 自分の基準に価値、分析的、合理性、真理探究

 以上、いろいろな性格分類を挙げてみました。もちろんそれぞれの分類は極端な場合であり、多くの場合はその中間型に属するでしょう。中間型というのは、例えば、ユングの場合でいえば、純粋な直覚的思考の人間というのは少なく、感覚的な面も多少は含んでいるもので、直覚的と感覚的の間にあるので、中間型と言ったわけです。
 古来より多くの学者や研究者、愛好家たちが、性格分類に取り組んでいることがわかります。ここにはあげませんでしたが、動物占いなども広義の性格分類といえるかもしれません。このように多くの人が性格分類に取り組むというのは、それが非常に魅力的なものなのだからでしょう。そして、そこにあるのは人間を知りたいという欲求なのだろうと思います。


2.四柱推命の着眼点

 1.においては、四柱推命については全く触れませんでした。この項では、四柱推命の何をみて性格を判断するかについて述べてみます。
 本人の個性をみる視点には次のようなものがあります。(順不同)

 (1)命式の五行 : 命式全体、日干支、月支等の五行の強さでみる
 (2)日干 : 日干の十干でみる
 (3)月支、月支蔵干 : 月支の十二支または月支蔵干、変通星でみる
 (4)日支 : 日支の十二支または十二運でみる
 (5)変通星 : 命式、用神の変通星でみる
 (6)十二運 : 命式の十二運や納音十二運でみる
 (7)納音、神殺 : 納音や神殺でみる (納音と神殺が同種のものと言っているわけではありません)
 (8)合冲刑 : 干合や六合、三合、冲や刑といった相互作用でみる
 (9)年干支 : 年の干や支でみる

 (3)~(6)については、重複している部分もありますが、私の知る限り、ざっとこの9つの視点が性格を判断するときに使われていると思います。
 このうち、(9)については、四柱推命ではほとんど使いませんが、世の中ではよく使われています。曰く「亥年生まれは猪突猛進」とか「巳年生まれは執念深い」とか。
 また(7)は、納音自体は体系的なものでありますが、神殺は数が多くまたその裏付けの乏しいものもあります。例えば「羊刃があれば残忍」とか「桃花殺があれば淫乱」とか。これはこれで有用で、神殺の意義を深く追求すると見えてくるものもありますが、煩瑣で膨大なので、このページでは割愛して別に論じます。
 (8)もこの章ではあげません。個性をみる補助とはなると思いますが、メインストリームではないと思いますので。
 さて、ほとんどの書は、まず五行的な見方からつぎに月支元命、というふうに記述しているのですが、以降は、私が重要だと思う視点から順に述べていくことにします。


3.変通星による個性の見方

 まずは、変通星による個性をみます。私は、これがもっとも使えると思っています。
 個性、性格というのは、自我もさることながら、他人との関係において認識されることがほとんどです。例えばやさしい性格というのは、相手との関わりにおいて認識されるものです。一人ぽっちのときにはやさしいも何もあったものではありません。
 さて、「命式雑論」において、日干を自分としました。変通星とは、日干との関係を示すものです。すなわち、変通星の示す関係が性格と大きくかかわるということは、おのずと推測されます。
 ここで、変通星(六親)の示す基本的な特性について表にしてみます。

六親変通星基本的特性
兄弟比肩・劫財他者と同じになろうとする作用
他者を助ける能力
官鬼正官・七殺他者から制御される作用
他者に合わす能力
妻財正財・偏財他者を制御しようとする作用
他者を理解する能力
父母印綬・偏印他者を利用しようとする作用
他者に頼る能力
子孫食神・傷官他者に関与しようとする作用
他者を扶助する能力

 ちょっと食傷が苦しい表現ですが(笑)。
 では、上の表であげた他者とは何でしょうか。これについては、「命式雑論」で述べたことから推測しましょう。
 「命式雑論」では、月柱は家庭であり、とくに月支は母である、という説を紹介しました。持って生まれた自我を除けば、性格形成には幼年期における父母や家庭内での人間関係、とくに母親との関係がもっとも影響するということは誰しも認めるところでしょう。この点から、月支蔵干の変通星が本人の性格、個性を示すという見方が、四柱推命の理論構成からみて正しいものに思われるのですがどうでしょうか。
 また、月干は家庭環境のうち外面に表れる部分だと考えると、おろそかにはできません。時干の変通星も子女、目下との関係と考えられるでしょう。天干どうしの関係は外面的に表れる傾向、地支蔵干の変通星は内面的な性格などと、「命式雑論」で述べたような命式の示す意味との組み合わせで、いろいろと応用ができると思います。
 さて、ここで各変通星の特徴を書こうかと思いましたが、それらはどのサイトにもあるので、それは省略して、ここでは、『水花集』の八格論を紹介しましょう。
 そこには、変通星と精神分析学による性格分類とが対照されています。その表をかかげますと、

精神分析学命学基本的特性
思想派外向正官 思考先行、言語明瞭、正邪重視、
固執、不服従
内向七殺
感覚派外向傷官理知不足、情感豊富、好悪重視
処世ベタ、奔放、傲慢
内向食神
直覚派 外向正印 精神重視、内面性、神秘的、
実行力不足、孤独にたえる
内向梟神
知覚派外向正財物質偏重、刺激追求、
趣味か情欲か
内向偏財

 先にあげた、ユングの性格分類とは若干違いますが、ほぼそれにそっています。ただ、比肩劫財については、この分類にはありません。
 これは一つの例ですが、このように変通星といろいろな性格分類を対応させて考えてみるのもなかなか面白いし、変通星の理解がよりいっそう進み勉強になるかと思います。
 さて、いざ実際に使う場合ですが、実際の命式においては、いろいろな変通星が出てきます。それらの変通星、すなわち関係のうち、どの特性がキーポイントとなるのかを判断する必要があります。キーポイントを具体的にいえば、強弱、喜忌、順悖、真仮などです。
 強弱と喜忌についていうと、
  ・喜神で強ければ、その特徴の良い面が出ます。
  ・忌神で強ければ、その特徴の悪い面が出ます。
  ・喜神で弱ければ、その特徴に欠けているということになります。
  ・忌神で弱ければ、その特徴はないといえます。
 順悖についていえば、順ならばその特徴が素直に出ますが、悖ならば屈折した形で出ます。
 真仮についていえば、真ならばよくわかる形ですが、仮ならばはっきりしません。また、真仮とも関係しますが、干関係よっても特徴の表れ方が異なります。例えば、同じ比肩でも、甲と甲の関係はいい意味での協力関係となりますが、庚と庚では敵対した感じの競争心というふうに、同じ変通星でも少しずつ意味が異なります。
 なお、以上は、透派の考え方を参考にしています。
 私は、次のような表を使っています。

変通基本喜神で弱い忌神で強い
日主自我、落ち着き消極的、
引っ込み思案
孤軍奮闘、
独断専行
比劫実行力、競争、独立実行力不足、
独立心不足
わがまま、
気が強い
食傷表現力、奉仕、功名無愛想、
無関心
自己犠牲、
出しゃばり、お節介
活動力、統率力、
干渉、経済観念
活動力不足、
統率力不足
差し出がましい、
強欲
官殺素直、正直、忍耐、
自制
忍耐力不足、
傲慢、仕事が下手
人のいいなり、小心、
慎重
依頼心、器用さ、
吸収力
要領が悪い、
くそまじめ
虫がいい、
依頼心が強い

 他者との関係における性格、個性というものを判断していくのが、変通星による見方の基本となります。


4.日干による個性の見方

 変通星というのは、他者との関係において認識されるものでした。人はそれだけではなく、持って生まれた自我というものがあります。四柱推命ではそれは日干にあたります。
 ただ、自我というのは社会においてはあまり意識されません。社会における個人のありようは他者との関係において規定されてしまいますし、他人には関係性しか認識されません。その人の自我がどうであるかということは、他人にとってはあまり意味のあることではないし、そもそも関心がありません。
 ところが、本人にしてみれば、他者とのかかわりのない部分、例えば好みや体質といった問題は非常に重要な問題です。ですから、体質などを含んだ広い意味での個性を考えると、日干をみることが必要となってきます。
 日干でみるのは、五行と十干です。その特徴については、多くの本に書かれていますので、ここでは割愛します。が、何度もいうように、日干でみることは、他者との関わりのない部分に限ります。例えば、日干だけをみてやさしいとかという他人との関わりに関する判断はあまり当てになりません。甘いものが好きというような他者と関係ない部分は日干支で見ることができます。(体質や好き嫌いについていえば命式全体の五行の強さも影響しますが)
 ただし、自我は日干だけみればいいというわけではなく、親との関係は自我の形成に大きく影響しますから、自我の判断にはやはり変通星も見る必要があるわけです。
 では、そのポイントですが、やはり強弱、喜忌というものが重要になってきます。日干が強い場合を身強、弱い場合を身弱といったりしますが、まさに日干の強さは身体の強さに符合することが多いものです。また、日干が強い場合は、自分というものを強烈に意識しますが、弱い場合は、自分に対する意識が低い場合が多いものです。(格による例外はありますが)日干が強すぎても弱すぎても問題が多いものです。中庸の徳とでもいうべきでしょうかね。
 あと、剛柔というのも個性を考える上では有用です。剛柔はほぼ陽陰に対応すると考えていいでしょう。例えば、甲は剛で乙は柔です。剛は剛強、外向、積極、柔は柔弱、内向、消極とおおざっぱにいえます。ただしこれも強弱によります。
 日干に関しては、古典でもいろいろと語られています。それらはおいおい訳していくことにします。


5.十二運による個性の見方

 十二運というのは、地支のエネルギーを示すものだと言われます。「命式雑論」にもそのようなことを書きました。また、十二運をバイオリズム的に使って占う術者はたくさんいますし、態度類型学を打ち立てた長谷川博一氏、それを引き継いでいる佐奈由紀子氏(最近著書を何冊も出しています)やその嚆矢となった増永篤彦師の『新推命学』などは、まさに十二運で性格分類を行っています。もちろんその他にも研究している人は多いです。詳細については参考文献を参照してください。
 では、十二運で個性をどのように判断すればいいのでしょうか。十二運はエネルギーの状態というかありようだと考えますと、そのヒントとなります。それは次のような考え方です。ある性格傾向があったとして、それがどのように表れてくるかということを、エネルギーのありようから探るというのが、十二運の使い方の基本となります。よって、判断は直接的ではありません。間接的な見方だといえます。
 生旺墓をみてみましょう。私は、陽生陰死という考え方はとりませんので、五行における十二運と十干における十二運がほぼ一致するのですが、とりあえず五行における十二運でみてみましょう。さらに生旺墓の十二支、すなわち孟仲季の十二支によって十二運を分類してみます。

五行十二運分類
長生、建禄、病、絶
沐浴、帝旺、死、胎
養、冠帯、衰、墓

 おそらく、このような表は、皆さんあまり見たことがないのではないかと思います。通常、十二運の分類は、強いものと弱いものに分けるのが一般的ですから。果たしてこのような分類が何の役に立つのでしょうか。
 孟の十二支というのは季節の初めです。ですから、そのエネルギーのありようは、これから始まろうとする活動力です。建禄というのはその活動力が表面に出てきた姿でありますし、神殺でいう駅馬の性質がまさしくそのエネルギーを示しているように思います。
 仲の十二支は季節が最も盛んな時期です。窮まるときでもあります。エネルギーは強いのですが、活動的というよりは強烈という感じです。またそのエネルギーは強いために他に向おうとする傾向があります。
 季の十二支は季節の終息であり、落ち着いたものとなります。やや内向きのエネルギーといったところでしょうか。
 では、十二運を順にみていきましょう。
 長生は活動力がまだ十分ではない状態です。もちろんエネルギーはありますが、その出方が激しくなく、温和とかおっとりした状態といえます。
 沐浴は強烈なエネルギーが出きらずもてあましている状態です。それで迷いの星とかと言われます。また他に向おうとするエネルギーが異性的な方面になることが多いとされます。
 冠帯は落ち着いたエネルギーで、内的な充実があります。人からはそれがよく見えるものです。
 建禄は十分な活動力を発揮して、エネルギー状態は十分です。たぶんに積極的となります。
 帝旺はエネルギーが強烈すぎて、がむしゃら、人のいうことを聞かないなどということになりがちです。
 衰は強烈なエネルギーが終息して、安定的なエネルギーとなります。よくいえば冷静、悪くいえば冷淡で、たぶんに内向きです。
 病はさらにエネルギーが落ち着いてくる状態です。ただ、活動性を内包しているので、おせっかいなところも出てくることがあります。
 死はエネルギーが窮まった状態。死ぬにもエネルギーが必要なのです。状況としては、エネルギーが窮まって動きのとれない状況。
 墓はエネルギーがいよいよ内向きになり、堅固とか固定とかというニュアンスになります。
 絶は活動力がいったん尽きるのですが、またそこから出発しようという動きになります。絶という言葉の響きは、活動がやんでしまったような感じがしますが、活動性エネルギーの再生のときでもあり、言葉とはうらはらに活発な星であります。
 胎は強烈なエネルギーが形になろうとするところで、外向的です。外部のものにエネルギーをむけようとする傾向にあります。そこから好奇心旺盛という意味も出てきます。
 養は自己の基礎固め的なエネルギーの使い方になります。派手さはありません。
 以上で十二運のエネルギーの状態やありようについては終わりです。ただ、古来より十二運については、その文字から類推されるいろいろな意味が付与されてきました。例えば、墓があれば墓を作ったり墓を守ったりするとか、病があれば病人の世話をするといった類です。これらは、本来の四柱推命の考え方からは出てこないものですが、意外と当たったりします。(”風が吹けば”的にたどれば、導き出せないことはないのかもしれないが)


6.実例による説明2例

 ここまで原理原則を述べてきましたが、やはり実例によって説明した方が具体的でわかりやすいと思います。実際には、原理原則から、諸状況をにらみながら、いろいろな応用、類推を必要とします。実はこのあたりは私はあまり得意ではありません。ですが、まあここは勇気を出して、2つの実例をあげながら説明しようと思います。
 なお、ここであげた例題はとくに何らかの意図をもって選んだわけではなく、手近にある本から適当にページを広げて無作為に選んだものです。


例題1

1968年3月4日午時生 女命 (『当代八字実務編』より)

時柱日柱月柱年柱
正官-傷官正官
沐浴
-傷官月令

 さて、彼女の個性をみるために、まずは強弱、喜忌等をみてみましょう。
  ・寅申の冲が年月支にあり、作用は薄い。
  ・よって日主、傷官、正官とも強くなく従格とはいえない。
  ・季節的には傷官が強いが、戊は午に支えられ、しかも日干と合であり、正官がより強い身弱の命。
  ・日主が弱いので金水を喜び、木火土を忌む。
 変通星からみてみます。
  ・月支蔵干と月柱は傷官。性格形成にあたっては、表現がひとつの鍵となる。
  ・傷官であるから外向的な表現であり、感情的である。
  ・正官は他者からの制御を受けることである。それは社会からあるいは子女からのものとなりがち。
  ・自己表現と他者に合わせるという矛盾した面をもつ。二つとも忌神なので、この二面性には悩まされる。
  ・印が喜神で弱いので、他を利用する気がない。要領の悪さがある。
 変通星からわかることは、個性の二面性であります。傷官というのは外向的な表現力であり、だいたいにおいておしゃべりという形で出ます。しかし、正官もあり最も強いので、理性が働き自己を押し殺す傾向が強いでしょう。傷官見官とはもちろん悪いのですが、個性の面から見ても二重性というか矛盾した感情を持つことになります。そしてそれは心理的にいい影響はほとんどないでしょう。この人の場合は、内弁慶といえるかもしれませんが、時干が正官で強いので、子女には弱いでしょう。ただ弱いながらも縁が切れないというところですか。
 日干は癸ですから、弱い水です。水は知であり水系の器官(泌尿器、生殖器、分泌系)ですから、知的な面や腎臓、婦人科系統に弱点があるといえます。性的には弱いでしょう。陰干で弱いので個性の強い方ではありません。
 十二運をみてみますと、日支は沐浴です。エネルギーは他者、とくに日支ですから男女間の方に向かいがちです。親しくない間はおしとやかそうな印象を与えますが、親しくなれば世話焼きになるタイプ(ちょっとうるさいでしょうが)で、ま、男好きのするタイプといえるでしょうか。日支は金で金生水と日干を生じているので、一応日干にエネルギーを与える形であり、このエネルギーが自己を動かすことになります。年支月支は冲であり日干のエネルギーとはなりにくいですし、時支は日干を強める作用はなく影響はほとんどありません。


例題2

1957年7月5日申時生 男命 (『当代八字実務編』より)

時柱日柱月柱年柱
食神-偏印印綬
-偏印月令

 無作為に選んだつもりなのですが、なぜか寅申の冲があり、しかも地支が午と酉というふうに、地支は例1と似たようなものになりました。ほんとに無作為に選んだのですが、、、。
 まずは強弱、喜忌をみてみましょう。
  ・印が強く日主を生じている形。食神も年支に根がありそれなりの強さだが、身強といえる。
  ・喜神は金水、忌神は木火土。木は日干を剋すが印を生ずるので忌神である。
  ・寅申の冲があり、時支の通根の作用はあまり期待できない。
 次に変通星をみてみますと、これまた例1と同じく月干と月支が同じです。すなわち性格形成の場である家庭においては、印の悪い面、すなわち依頼心の強さが作られたとみます。以下箇条書きをしますと、
  ・印が強く忌神であるため、依頼心の強さ、他人を利用しようとするところがある。
  ・食神が喜神であるため献身的な面がある。食神の場合は、内面の表現であるため奉仕の精神という感じか。
  ・偏印は倒食といわれるように、食神のよさを壊しかねない。
  ・食神が時柱にあるので子女や目下によくすると考えられる。
  ・財が喜神なのに弱い。これは他者を理解しようとする面に欠ける。
  ・喜神の食神が強く財が弱いので、考え方として物質と精神のバランスが悪い。現実的でない。
 この例でも、食神と倒食があるという傷官見官と似たような二面性、矛盾したところがあります。  日干は戊で強いのですが、これは日干としての強さではなく印による強さですから、リーダーシップのあるタイプではないといえます。戊の豪快さは命式の上からはあまり感じられません。ただ、本質的にはあると思うし、行運次第ではそういう面も出てくるでしょう。
 身強ですので、体質的な弱点はあまりないと思われます。
 十二運はどうでしょうか。残念ながら、日時の冲ですので、日時支のエネルギーは日干には作用しにくいといえます。月支は帝旺で日干を生じていますから、非常に強烈です。しかしこれはエネルギーの与えすぎです。エネルギッシュなゆえに失敗するパターンか、ひとりよがりで失敗するパターンといえます。


例題3

女命

時柱日柱月柱年柱
食神-食神比肩
建禄建禄
-七殺月令

 最後に、私の最近の実占例から個性について占ったものをあげます。おそらく参考になると思います。
 この例の依頼内容は、これから会う予定の人がどういう人かが知りたいというものでした。なお生年月日は省略します。
 まずは強弱、喜忌をみてみましょう。
  ・冬生まれの癸水で亥丑と地支に根があり身強である。
  ・乙木は食神であり、亥卯に通根しておりやはり強い。その他の五行は天干になく弱い。
  ・食神は強いが従旺格と判断。喜神は金水(火)、忌神は木土。
  ・火は日主を弱めるが調候的に必要。とくに丙。
 次に変通星をみてみますと、比肩食神が強く、月支蔵干の七殺己は忌神ですがさほど強くありません。
  ・日干が日支に通根しているので自我がはっきりしている。
  ・比肩が強く喜神なので落ち着いている。確固たる自己を持っている。
  ・印は喜神だが弱く、他人をうまく利用できず、生き方が不器用である。
  ・食神が強く聡明であるが、忌神なのでややお節介やきである。やや自己主張が強く意見されると反発する。
  ・財が喜神なのに弱い。これは他者を理解しようとする面に欠ける。
  ・喜神の食神が強く財が弱いので、考え方として物質と精神のバランスが悪い。現実的でない。
  ・五行的に偏りがあるので病気がちである。
  ・癸亥日生まれの人はマイペースの人が多い。
 総じていえば、女性としては性格がはっきりしており、姉御肌の感じです。実占では行運もみて健康や異性運まで見ましたが、このページではここまでにしておきましょう。



あとがき

 以上、個性とくに性格について論じてきました。その基本は変通星にあると考えます。最初に性格分類をいろいろと挙げましたが、そのタイプにどの変通星が当てはまるかを考えると、なかなか面白いです。皆さんもぜひトライしてみることをお薦めします。ちなみに私は、「天命の暗号」と変通星や十二運とのコラボレーションを考えています。まあそれほど単純ではないとは思いますが。
 顔形とか体質とかも個性の一部といえますが、それらについては本章では説明しませんでした。それらは体質、疾病の見方という章を設けて説明したいと思います。
 また、神殺や刑、冲などといった特別な関係による個性の見方については、それぞれのトピックのところで説明することになると思います。(いつになるかはわかりませんが)


   作成  2010年 1月16日
   改訂  2020年 7月25日  HTML5への対応、例3の追加