「命理正宗」格局解説 抄訳その10

一行得気格


はじめに

 その10ということで、一行得気格を訳します。



曲直仁寿格

 楠曰く、
 曲直仁寿格は、甲日干の場合、地支に寅卯辰がともにそろえば、すなわち東方仁寿の気を得て、ゆえにまた仁寿という。この格ははっきりしており、大いに庚申辛酉を忌み、東方の秀気を冲破すれば、貴といっても夭である。命式は清純である。私がこの格をみたときは、寅卯辰が多すぎることも、壬癸が木を生じることも問題はない。ただ、申酉庚辛が格を破るのを恐れる。ただ寅卯辰の3つがそろってこの格が成立するわけで、もし申酉の一字でもあってこれを破れば吉ではない。
 格解にいう、
 この格は日干甲乙木で、地支に寅卯辰を要するか、あるいは亥卯未がそろうことが必要で、庚辛の気がなく、行運は東北方を喜び、西方運を恐れる。さらに刑冲を恐れる。
(命式例があるが省略)
曲直というのは、木がまっすぐだったり曲がったりしているところからきています。木の性は仁であり、そこで仁寿格といわれます。曲直格は吉格であることが多いものです。



稼穡格

 楠曰く、
 稼穡格というのは、すべて戊己日干で、辰戌丑未をみるか、巳午未の多いものをいう。もし官殺がなければこの格を用いる。ただ丑辰戌月で四柱が純土で木の剋がない場合、多くこの格にしたがう。行運は南方火土の地を喜び、および西方で金が木を制する行運を喜ぶ。多くは富貴であり、木運になれば稼穡を破り、必死となる。その妙は稼穡であればはっきりとしている。戊己日で未月の生まれで土が強くてもこの格には入れない。ただ辰戌丑月で土が弱くてもこの格に入れることがある。
 格解にいう、
 この格は日干戊己で、地支に辰戌丑未がそろい、木の剋制がないことが必要である。水があっても用神として、この格になる。西南の行運を喜び、東北の行運を忌む。
(命式例は省略)
稼穡というのは、作物の植え付けと収穫であり、農事のことです。土の性は信です。



炎上格

 楠曰く、
 炎上格は、丙丁生まれで寅卯月生まれで、寅午戌がそろえばすなわち火は虚しく炎有りとして、水が格を破るのを恐れる。また火の気が強すぎの場合、火は虚ろでなく、金水が火を破り木を破るのを恐れる。この格もだいたいはっきりしている。
 格解にいう、
 丙丁日生まれで寅午戌がそろい、あるいは巳午未がそろえばこの格とし、水金の行運を忌み、東方運を喜ぶが、冲を恐れる。身旺でなければならず、歳運もまた同じ。
(命式例は省略)
 碧淵賦にいう、
 寅午戌が丙丁に遇うのは、栄華の日がある。また曰く、火が巳午未の場所に臨めば、名声が広まる人である。
 火の性は礼です。ここで、張楠は、寅卯月生まれで寅午戌がそろう場合(火虚有焔)を別に考えています。この場合は水を恐れ金を恐れないと言っているのですが、この説は他書では見られません。



潤下格

 格解にいう、
 壬癸日生まれで、申子辰、あるいは亥子丑がそろうことを要する。辰戌丑未の官の行運を恐れ、西方運を喜ぶ。東南はよくない。冲剋を恐れる。歳運も同じ。
 詩に曰く、
 天干壬癸が冬に臨むのを喜び、さらに申子辰会局がなるか、あるいはすべて亥子丑である場合は、のどかに青雲の上を歩む。
 碧淵賦にいう、
 壬癸格が申子辰を得れば、福は優れ財は足りる。水が亥子丑の源に帰すれば栄華の客。
 潤下というのは、水が湿った方、くぼんだ方に流れることをいいます。水の性は知です。



従革格

 格解にいう、
 庚辛日生まれで、巳酉丑がそろうか、申酉戌がそろうことを要する。南方運を忌み、もし庚辛運が来れば吉である。
 詩に曰く、
 金が従革に折れば貴人として尊敬をうけ、性格は清く高潔で福禄は深い。命式に火が混じれば、仏門に入ったり技術で身をたてたりでとりとめがない。
 碧淵賦にいう、
 庚辛で巳酉丑の局がそろえば、位は重く権威が高い。またいう、金が申酉戌の地を備えれば、富貴に欠けたところはない。
 従革というのは、形が改まって器をなすことをいいます。革というのは改革の革です。金の性は義です。



総論

 楠曰く、
 従革格というのは、庚辛日干で申酉戌や巳酉丑がそろう場合をいうが、これは多くは剥雑であり、純粋であるものを見たことがない。壬癸の潤下格もまた理屈は同じで、この二格は私は多くの命式を見たが、いまだかつて富貴であるものをみたことがない。ただこれは別の理屈で推測せねばならないだろう。しかし、曲直、稼穡の二格は多くは富貴である。火で巳午未がそろう格についてもまたすばらしい命はみたことがない。ここに自分の経験から上の論を訂正して、その誤りを開示する。
 一行得気格については、曲直、稼穡のみが富貴であり、炎上格においては巳午未格、潤下、従革格はすべてよくないとしています。一行得気格だけに限らず、火や水がない命式は良くないですし、火や水が多すぎる命式もやはりよくありません。(富貴は別として、少なくとも身体的には)また、金というのは互いに傷つけあい助けにならないので、従革格にしろ、従旺格にせよ、あまりよくありません。庚と辛は強めあうことはまずないと考えていいでしょう。



訳者のあとがき

 一行得気格の解説を終わりますが、この格についても、張楠は存在こそ認めているものの、必ずしも富貴とはいえないと断じています。命式例については、別のページで紹介しています。

 さらに翻訳は続きます。


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