命理正宗 格局解説 命式例集


■ はじめに

 「命理正宗格局解説」においては命式例を省略してきましたが、ここではまとめて紹介することにします。ただし、全例は紹介せず、そのうちの一部となります。
 命式についての張楠の見解を訳しますが、青字で私の見解を付すという極めて挑戦的な試みであります。
 『命理正宗』は万暦帝年間の1590年以降にまとめられたと思われますので(2007年に読んでいて初めて気がつきました)、生年月日についてはそれに近い年数で推定しています。ただし、旧暦ではなく簡便なためグレゴリオ暦で計算しています。当時の西暦はユリウス暦からグレゴリオ暦に変わる時でありますが、簡便法で計算しましたのでご了承ください。


- 命式例 -

正官格 その1

宜黄縣劉景八公、富命生生入巳格

48382818
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 1535年1月13日生と推定

楠曰、
壬生丑月水源深、重重才官共挟臨、
水入巽宮尋貴格、陶朱之富異乎人。
壬水生臨丑月、水寓根源、四柱財官七殺太旺。此造本難尋究。蓋得巳時水入巽宮、合起金局。蓋壬水能生甲乙木也、甲乙木来生丙丁火也、丙丁火来生戊己也、戊己土来生庚辛金也、庚辛金来生壬癸水也。且四柱純粋並無間隔、上下相親、正作生生不已格看。所以行東南西北倶美、宜為第一富人也。壽高五福、蓋得時上有庚金印星也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水火木土金
 月刃格  喜神:火木(土)  忌神:金水
 壬丁干合



張楠曰く、
壬が丑月に生まれ水源深く、財官重ねて共に挟み臨む、
水は辰宮に入り貴格を尋ねれば、陶朱にも匹敵する富豪の人と。
壬日丑月生まれで水は根が深く、四柱には財官七殺が強い。この命式は本来見るのに難しい。だいたい巳時で水が辰宮にあって、金局をなす。およそ壬は木を生じ、木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じる。かつ四柱は純粋で間隔がない。上下は相親しみまさに生じ生じてやまない格であるとみる。それでどの方角の運にいってもよく、第一の富豪といってもいいであろう。長寿で福多いのは時上に庚金の印があるからである。

 見るのが難しいと張楠は言っていますが、比較的見やすい命式だと思います。言うとおり、水生木、木生火、火生土(辰丑)、土生金(巳)、金生水という形の命式のようです。ただ五行周流というにはちょっと苦しい。
 月令ですが、1月13日と推定しています。すると、土用の前の生まれですから、月令は癸としています。冬生まれの壬日ですから、日主は季節的には強いといえます。また日支の辰にも通根しています。
 他の干をみてみますと、月干丁は壬と合しており、壬との相互作用は大きいといえます。また年支、時支に通根しており、強い干だといえます。さらに食神生財で、年干の甲から生じられています。
 なお、壬と丁は、地支の木が強くないので、木化はしません。(というのが私の考え)
 甲乙木は二干ありますが、辰にしか通根しておらず、強さとしては丁にややおとります。
 この命式の五行の強さをはかると、壬と丁の強さが拮抗しています。壬がやや強いか。木は弱くはないがそれらに劣ります。
 喜神は木火と判断していいと思います。 寒暖、いわゆる調候的に考えますと、冬の木は凍木となりやすいのですが、幸い丁が解凍の作用を果たしているとみることができます。解凍の作用は丙が最も強く良いのですが、丁も丙ほどはないにしろその作用があります。したがって、丁はこの命式で非常に重要な干だといえます。
 日主が強く用神で喜神の財が強いのですから、これは富命です。食神生財でもありますので、富命といってもそんじょそこらの金持ちではなく、大富豪といっていいかと思います。滴天髄でいうところの「財気門戸に通じる」の典型的な例です。
 官殺は一応忌神ですので、非常な貴命とは言いがたいですが、日主が強いので賎命ではなく、まあ人品いやしからぬ人と言っていいでしょう。
 行運で極端に悪くなる命式ではないのですが、壬癸運はあまりよくないでしょう。壬運は丁と争合となりますし、癸運は沖天奔地となりやすいですので、財が相対的に弱くなるからです。


正官格 その2

富夫女剋制夫星格

49392919
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 1543年12月10日生と推定

楠曰、
乙木逢庚便作夫、傷庚丙火気盈余、
火神未上重相見、見火傷庚壽必阻。
乙木生於子月、用巳中庚金為夫星、喜夫星得生於巳也、所以富出紅楼。原日主不弱能任夫星、不合運入丙寅、夫星剋制重重、患病死也明也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:木水火土金
 従旺格  喜神:木水  忌神:火土金
 子卯刑



張楠曰く、
乙木庚に逢うは夫となす、庚を傷つける丙火の気はあふれ、
火神未上で重ねて相見れば、火を見て庚は傷つき寿は必ず終わる。
乙木が子月に生まれ、巳中の庚金を夫星とする。夫星を喜び巳において生を受けるため、富を得たために紅楼を出たのである。もともと日主は弱くなく夫星を受けられるが、合とはならない丙寅運に入れば、夫星は重ねて剋制をうけて、病をわずらって死ぬことは明らかである。

 「命理正宗」の正官格に挙げられている命ですが、正官は表立って表れません。巳の蔵干である庚が正官だと言っているわけです。しかし正官格の例としてはふさわしくないと思います。
 木が強く水も強いので、従旺格といえます。夫星は地支正官の庚(巳の蔵干)といえますが、巳自体はこの命式にとってはほとんど作用がありません。ただ、いくぶん乙の寒すぎを救う作用はあるかもしれませんが、それほどのことはありません。よって、夫は可もなく不可もなくという関係になります。私の判断では、この命式においては、夫を剋すという意味はあまり感じられません。
 生年月日を検討すると、丙寅運は19歳からとなります。丙は非常に強くなりますから忌神です。流年をみると、23歳、24歳が丙寅、丁卯、27歳、28歳が庚午、辛未です。庚午年は月柱と天剋地冲ですし、大運丙は太歳辛未を剋します。丙運において午年の場合、午が子を冲して癸は根を失い、水が弱くなるため、木は焼き尽くされることになり、非常に悪いといえます。若いので必死とまで言えるかどうかは判断できませんが、病を患う可能性は高いと思います。


正官格 その3

 貧夭女見夫受制格

483828188
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 1421年7月15日生と推定

楠曰、
夫星子宿両星明、最是誇苗実不成、
枯木不堪金過剋、早行金運寿先傾。
戊生未月、乙木夫星透出、庚金子星透出、俗儒推其夫明子秀、不知乙木被金破之、未中乙木、被丑中辛金破之、夫星受制太過、雖有庚金子星、夫星既制、子安可生乎、大運入酉、乙木損重、自縊死矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金土木火水
 印綬格  喜神:木水  忌神:火土金
 丑未冲、丑未戌刑



張楠曰く、
夫星子宿両星明るく、最も苗を誇り実は成らず、
枯木は金の剋の過ぎるに堪えず、早く金運に行けば寿は先ず傾く。
戊日で未月に生まれ、乙木夫星が透出しており、また庚金子星も透出している。俗儒はこれを夫明子秀と推すが、乙木が金によって破られ、未中の乙木も、丑中の辛金によって破られる。夫星が制を受けすぎで、庚金子星があるといっても夫星が制せられるので、どうして子が生まれるだろうか。大運が酉に入り、乙木は損なわれて、自ら首をつって死ぬ。

 いわゆる傷官見官の命式であり、一見してあまりよくない命式だと思います。土支は3支あるのですが、丑未戌は三刑であり、また丑未は冲ですから、戊の根としてはそれほど強いわけではありません。正官が弱く食傷が強すぎるのでむしろ子どもはできにくいでしょう。いわゆる洩気太過の命式であり、酉運では申酉戌と方局をなしますので金がますます強くなります。乙丑年24歳には乙庚が金化するので災厄は免れないでしょう。


偏官格その1

 宜黄縣住廩牽猪[コ]、貧命殺重身軽

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 1535年1月13日生と推定

楠曰、
壬臨丑月殺星多、印破雖生受折磨、
再看運行財殺地、一生労碌受奔波。
壬水雖生丑月、蓋因財殺太多、雖丑中有一点辛金、蓋縁不会会局、月有丁火貼身暗破辛金壊印、作不得殺化印生、只作殺重身軽。運行東方木神制殺、衣食頗給。再行南方殺旺運、身雖不死、亦住廩牽猪[コ]度活。入未殺重而死。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水木火土金
 月刃格  喜神:木火  忌神:土金水
 壬丁干合、辰自刑、丑午害



楠曰く、
壬が丑月に臨み殺星多く、印は破り生といえども折磨を受け、
再び運が財殺の地に行くを見れば、一生労苦にして奔波を受ける。
壬水が丑月に生まれるのは、財殺が多すぎ、丑中に辛金があるといっても会局とはならず、月に丁があり辛金を破りすなわち印をこわすことになる。殺が印を生ずるということにはならず、ただ殺重身軽となるだけである。運が東方に行けば、木神が殺を制し、衣食は満ち足りる。しかし南方や殺旺運にいけば、死ぬことはないにしても米蔵に住み豚や牛を引っ張る生活を送る。未運に入り殺が重なり死ぬ。

 ”正官格その1”とほとんど同じ命式ですが、時干支だけ違っています。おそらく同日生まれだと思われます。
 日干壬は3支に通根し、しかも冬生まれですので強いといえます。甲は今度は日支と時支に通根しており、二干ありますからやはり強いといえます。強さからいえば、甲と壬の強さは五分五分といえるでしょう。丁は午にしか通根していませんから、他の二干に比べるとずっと弱くなります。
 食神が強く財もあるので従児格になりそうです。従児格にしては日主が強すぎるし、財が弱すぎです。財は前例と同様喜神と考えていいと思いますが、弱い喜神ですから貧命とまではいえませんが、富命でないことは確かです。さらに比劫運が巡ってくれば、貧命に転落してしまいます。また、火として弱すぎで、解凍の作用も期待しにくいです。
 五行的には木火が喜神、土金水が忌神といっていいでしょう。
 巳運、午運はさほど悪くないと思いますが、癸運はさらに日主を強め、未運は年支午と合、月支丑と冲で、丁にとってはあまりよくありません。通根の作用はやや弱くなるからです。このときに土の年が巡ってくると、今度は土が極端に強くなるため、食神、財とも弱くなるため、非常に悪いということがいえるでしょう。
 私の意見ですが、貧命というのはまあわかります。しかし、張楠がいう殺重身軽の命という判定には疑問を持っています。少なくとも身軽とはいえないと思います。


偏官格その2

臨川劉覚悟貴命火重水軽格

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 1532年8月5日生と推定

楠曰、
辛生未月火乗権、時殺重逢一気全、
制殺水軽宜水運、官居枢要掌銓衡。
辛金生於未月、伏制猶炎、喜年上丁壬合殺為貴。月中雖有丁火、丑中癸水去之。止用時上一点貴格。然火気旺而水気軽、雖原有壬癸之水、且四柱土重亦能去水也。所以運入亥位、擢顕官其理然也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:木金火水土
 仮従財格  喜神:水木  忌神:金火土
 壬丁干合、丑未冲、丑午害



楠曰く、
辛が未月に生まれ火は権に乗じ、時は殺あり重ねて一気全しに逢う。
殺を制し水軽く水運が宜しい、官は枢要にあり選考される。
辛金が未月生まれで、辛は剋制されている。年上の壬は丁殺を合して貴となる。月に丁があるといっても丑の癸がこれを取り去る。ただ時に一つだけなので貴格となる。しかして火気が強く水気が弱いので、もともと壬癸水があるといっても、土が重く水を取り去ってしまう。それで運が亥に入ると、官が顕れてよくなるのは当然である。

 時上偏官格であると張楠は言っているようです。
 この命式をみてみると、年干と月干は干合で丁が日主に及ぼす影響は低減されますし、月支と日支は冲でこれまた通根の作用が減じられ、また蔵干の作用も少ないと私はみます。すると、日主の強さは丑に座しているものの弱く、甲が辰に通根している分、それ自体はたいして強くはないのですが、日干よりは強いとみます。辛は弱いですから弱い従財格とします。
 従財格だとすると、水木喜神です。
 亥運はまさに水木ですので喜神です。ただ、どちらかというと壬運の方がいいと思います。というのは、一応壬は甲を生じますし、さらに壬は辛と非常によい関係ですので、辛の強さを調整する作用があるからです。
 従財格での喜神は通常富命になりますが、私の経験では壬と辛の関係の良命は貴命のことが多いように思います。傷官というのは才能の意味もありますから、職業的に成功するということなのかもしれません。ただし、壬は月干の丁と争合するため、全てOKというわけにはいかないでしょうが。
 なお、もし丁が壬に合されていなければ、丁は七殺で非常に強く辛を傷つけますから貴命というわけにはいきません。張楠もいうように、壬の合去があるから貴命となるわけです。いわゆる去殺であります。


偏官格その3

水重火軽格

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楠曰、
両火那堪六水傷、殺星制過害非常、
再行制運生難獲、死敗徒流禍幾場。
辛金生未本是火炎之域、夫何止有二火為殺、六水制之。此為七殺制過、尽法無民可不畏哉。與前貴造天淵之隔、理則然也。前則有甲午時多一重木火之気、則火重水軽、所以宜行北方。此則水重火軽、則畏行北方。此命一入亥運、問遼東三万衛軍、壬水年水又旺、非命而死。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水金土火木
 偏印格  喜神:金土  忌神:水火木
 壬丁干合、丑未冲


楠曰く、
両火はあの六水の傷に堪えるが、殺星が制過し害は非常、
さらに制する運に行けば生を獲るは難く、死敗はいたずらに流れ禍は幾たびか起こる。
辛金が未月に生まれるのは火炎の域にあり、どうして二つの火の殺を止めるかといえば、六水がこれを制するのである。このため七殺の制がいきすぎて、法を尽くして民なきを畏れることはない。前の貴命とはえらい違いであるのは当然である。前は甲午時に木火の気が一つずつあり、火が強く水が軽い命であったので、北方に行くのがよかった。この命式は水重く火が軽いので北方に行くのを恐れる。この命はひとたび亥運に入ると、遼東の三万の衛軍にあい、壬水年水がまた旺じて、命を失った。

 ”偏官格その2”の命式と時柱が違うだけですが、非常に違う命式となります。それは年月干が合であるのと、日月支が冲だからです。すなわち、時柱の日干に対する作用がそれだけ大きいことになるからです。
 丁は壬に合されて力がありませんし、未は丑に冲されてやはり作用が弱くなります。辛はかろうじて丑に根があり、地支は全部土で印です。壬は通根しているといっても土支ですから非常に強いというわけでもありません。ですからこれは内格です。五行的には水が最も強く、日主は弱いです。したがって水の洩を恐れます。ほとんど金寒水冷の命ですが、夏生まれなのでかろうじてそれを免れています。壬は辛を淘洗するのですが、あまりに強すぎるのは水に沈む金となりよくありません。こういう命はあまりいい死に方はしないような気がします。


時上一位貴格その1

東郷徐少初 貴命金火相停金重火軽格

44342414
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 1565年9月21日生と推定

楠曰、
辛金坐酉旺成行、火煉秋金大異常、
金旺火軽宜火運、少年早折桂枝香。
辛生酉月、喜得巳酉丑会成金局、喜得時上一点火神得禄、時上一位貴也、明矣!大抵金気会局、金気還勝、所以行午運、甲午流年、中郷試、聯登黄甲。有乙未年生人、少了一点金、午字運不好、所以金宜旺也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金木火土水
 建禄格  喜神:木火水  忌神:土金
 巳酉丑三合金局、巳午南方



楠曰く、
辛金が酉に坐して旺じて行運で成れば、火煉秋金は非常によい。
金旺火軽は火運がよく、若くして郷試に合格し進士となる。
辛日酉月生まれで、巳酉丑の金局を得るのを喜び、時柱に一点の火神が禄を得るのを喜ぶ。時上一位貴格であることは明らかである。たいてい金局は、金気がまだ勝るため、午運、甲午年に行けば、郷試に合格し、続けて上位の成績となった。乙未年生まれの人がいるが、金気がわずかに少なく、午運はよくない。よって金が旺じるのがよいのである。

 甲乙木が3つも透干していますが根がありません。日主辛は地支が巳酉丑と三合金局をなしています。よって五行的には金が最強で木はその次となります。甲乙木に根がないのであれば金の強い従旺格となりそうですが、だいたい木が3干もありますし、甲は潜在的に辛を剋す力があります。また辛は巳に坐しており、また巳午の火もありますから、従旺格にはなりにくいと判断します。したがって金を弱めるのが喜神となります。甲午年は財生殺の関係であり、喜神年となります。
 財が強いのは現実的でありあまり学問を好まないのですが、行運が天干は水で食傷運、地支は南方運で官殺運ですから、この早い時期は頭のよさを発揮できます。
 また甲は潜在的に辛を剋すと言いましたが(逆剋という言い方をしますが)、私の感じでは、甲辛の組み合わせは貴命になることがままあるように思います。


時上一位貴格その2

臨川舒尚書 貴命金白水清水制太過格

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 1527年12月10日生と推定

楠曰、
辛生子月水金清、留殺冲官格局明、
金冷水軽重畏水、宜行火運展経綸。
去留舒配、用殺明矣、年上七殺、壬水去之、日上正官、亥中壬水云之、惟存時上丁火、作時上一位貴格、但十一月之火、風寒之候、火気衰弱、為病、畏金水之郷、宜丙丁戊己之運、真貴人也、蓋丙丁能助起衰殺也、戊己能制壬癸水也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金火水金、土はなし
 傷官格  喜神:木火  忌神:金土水
 壬丁干合、巳酉半会、亥子北方



楠曰く、
辛日子月生まれで金水清く、殺を留め官を冲する格局は明らか。
金は冷たく水の軽重は水を恐れ、火運に行くのがよく国家の安定に寄与する。
去留舒配(取り去ったり、留めたり、並べたり、配置したり)、殺が用神なのは明らかである。年上の七殺は壬水が取り去り、日上の正官は、亥中の壬水が取り去る。ただ時上の丁火のみ残り、時上一位貴格とする。11月の火は風寒の季節で、火気は衰弱し病となす。金水の行運を恐れ、丙丁戊己の行運がよろしい。まことに貴人である。だいたい丙丁は衰えた殺を助け起こすことができ、戊己は壬癸水を制することができる。

 冬生まれで壬が丁を合しているので、丁はそれほど強くありません。巳酉は金の半会であり、辛金は命中で最も強いといえます。丁が辛を焼き尽くすということはなく、丁は解凍の役割を果たしている命式です。水についてみると、壬は干合ですから、その力は適当に弱くなっています。木火喜神ですから40歳代以降南方運に入り発展する命式です。
 私思うに、これは時上に一位の七殺だからではなく、丁壬の合により金寒水冷を免れたことが大きいと考えます。


月支正財格その1

吾郡李志富公富命身旺任財

6151413121
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 1461年9月11日生と推定

楠曰、
丙生酉月火神微、財旺如嫌火気虧。
火少金多宜火地、陶朱猗頓富堪期。
丙火雖死於酉、得火禄於巳、丙火得生於寅、又喜火陽刃透天干相扶也、但金気還勝、火気還軽、喜運行南方、以補其火、所以財発数千万緡、有丙子日干者、只作財多身弱、雖南方亦貧也、蓋原無寅宮火也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:火金木、土水なし
 偏財格  喜神:水金土  忌神:木火
 巳酉西方



楠曰く、
丙日酉月生まれは火はかすかで、財旺ならば火がなくなるのを嫌う。
火が少なく金が多いのは火の地がよく、陶朱も驚くほどの富になるだろう。
丙火の場合酉は死だが、巳建禄、寅長生をえて、また陽刃(劫財)が天干に透干している。ただし金が依然強く、火の方が弱いので、南方運を喜び、火を助ければ、それで発財して数千万のお金にはなる。私の知っている命式で丙子日の命があるが、これは財多身弱であり、南方運でも貧である。これは寅火がないことによるのである。

 財は月令に旺じ巳酉の半会もあって強いのですが、火も3干2支もあり、財と日干の強さは拮抗しています。いわゆる身強財旺の命で典型的な富命です。私はむしろ辛を剋する丁を抑える方がむしろ富になると思います。癸運からは、辰運や卯運はやや足踏みしますが、基本的に喜神運であり発財するでしょう。


月支正財格その2

蓋雲南一省富命身旺用財格

6353433323
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 1579年1月26日生と推定

楠曰、
丙火生提向二陽、喜臨財庫更身強。
丙丁身旺逢財者、号曰真金火倍常。
雖不是丙火夏生金畳畳、富有千鍾、凡丙丁火旺見金者、但可以此理論之、独有丙丁見金、為天地之真財、日干旺者、十有九富、此造喜年時丙火得生、又有乙木貼身、則為身旺、且二陽進気、又喜庚金透出、財神明白、豈不富蓋一省乎!若丙生寅月、反多作弱、丑月火反旺也、凡寅巳午未月、火返嫌弱、喜火旺、子丑亥月反怕太旺、此則正理之外見也、甲乙生寅卯辰、丙丁生巳午未、庚辛生申酉戌、壬癸生亥子丑、倶要身旺、略喜一二点剋神、剋多者多貧夭、此亦理外之見、試之屡中。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:土火木金水
 傷官格  喜神:火木  忌神:土(金水)
 寅申冲



楠曰く、丙火生まれで月支透干する二つの陽干があり、財庫に臨みさらに身旺であるのを喜ぶ。
丙丁身旺で財があるのは、真金火倍常という。
丙火で夏生まれでなく金が重ねてあるわけでもないが、富は千鍾もある。およそ丙丁が旺じて金をみるのは、ただつぎの理屈で言うことができる。ただ丙丁があって金を見て、天干地支に真の財があり、日干が旺ならば、九割方は富である。この命式は年時に丙の長生があって、乙木が貼身しており、身旺であり、さらに2つの陽干は進気である。また庚金が透干して、財神が明らかであるから、どうして省一番の富豪でないだろうか!もし丙が寅月生まれならば、かえって多すぎて弱となり、丑月であるからかえって旺である。およそ寅巳午未月は火はかえって弱を嫌い、火旺を喜ぶ。子丑亥月ならかえって旺じすぎるのを恐れる。これはすなわち正しい理屈から離れた見方である。甲が寅卯辰月に生まれ、丙が巳午未月に生まれ、庚辛が申酉戌月に生まれ、壬癸が亥子丑月に生まれるのは、ともに身旺であることを要し、一つ二つの剋ならばだいたいは喜なのだが、剋が多すぎるのは貧か夭である。これもまた理屈の外の見方であり、これを試してみるとなかなか当たるものである。

 時支寅は日支申と冲ですから、丙長生の作用は減じられます。冬土用生まれですから、丙がそれほど強いわけではありません。庚や戊は丑に通根していますから、相対的にみれば弱いということもありません。むしろ戊が強いのですが、乙木もあるのでたいした強さではありません。五行的にみると、土火木金の強さは比較的拮抗しており、喜神は火木としましたが、微妙なところです。そこで行運をみてみると、幸いあと一つの寅を冲する申は晩年にしかきませんし、その間は火は十分な強さがあります。したがって、火を弱める水や金に負けることはありません。また丑は金の墓庫ですから、未運(丙乙の根ともなる)で冲開して大発財する可能性があります。その他の運も身財両停でありますから、富命です。
 張楠の火金の身財両停は富になりやすいという指摘は、九割方はどうかは別として、私も同じように感じます。


月支正財格その3

新坪呉楚四公富命火長夏夫金畳畳格

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1446年7月3日生と推定

楠曰、
丁生五月火雖炎、火旺金多富自然、
金少火多斯有病、運行金水発轟天。
丁火禄旺於午、年月比肩火神太旺、所以祖財軽也、蓋得巳酉結成金財局、身旺用財、丙丁火旺見庚辛、乃天地之真財、凡丙丁日旺、見有金財者、十有九富、但要丙丁極旺、若丙丁弱者、反否、屡試屡効、但用庚辛金財星見子運者、多死、蓋因金死於子也。此造大運入酉財軽、喜行財旺之運、一発轟天、一入子運問死刑、富則依然也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:火木金、土水はなし
 従旺格  喜神:火木(土金)  忌神:水
 寅午半会、巳酉半会



楠曰く、
丁日五月生まれは炎盛んであるが、火旺金多は自ずから富となる。
金少火多は欠点となるが、行運で金がめぐれば大発財となる。
丁火が午で禄旺となり、年月比肩で火が非常に強くなるため、祖先からの財はたいしたことはない。ただ巳酉が財局をなして、身旺で財が喜神である。丙丁が強くて庚辛をみるのは、天地の真財である。およそ丙丁日で金の財を見るのは九割方が富である。ただし、丙丁が非常に強くなければならず、丙丁が弱ければ、かえって逆になる。例を見れば見るほど当たるようになる。ただし、庚辛金の財星が子運を見ると、多く死を迎える。これは子が金の死にあたるからである。この命式も酉に入るまで財が軽く、財旺運に行くのを喜び、大発財するが、ひとたび子運に入ると死刑に問われるが、富であることには変わりない。


 天干地支に比劫と印が多く官殺がないのでこれは従旺格です。印があるので通常財は喜ばないのですが、庚が多くても劈甲引丁となります。辛は丙を合するだけで、甲があれば大丈夫です。また戊は有薪有火有炉でよい干ですし、己は甲を合しますが、依然として木火が強いことにはかわりありません。この命はただ水を恐れるだけです。
 57歳から子運に入りますが、子は午を冲しますし、この年の癸亥年では、寅が亥に合されます。また癸は丙を剋しますから、この年が最も危険です。それを過ぎれば、壬運まではまずまず安泰です。


傷官格その1

金[ケイ]陳秀二公富命木火傷官庚金為病

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 1517年10月27日生と推定

楠曰、
乙生戌月木神軽、用火傷官作用神、
金水両般為我病、南方火運長精神。
乙木生臨戌月、本金剛而木柔也、若以旺弱而推、大運行南方、似泄気矣、蓋旺弱論命、乃愚術不精妙理、大抵当以有病而論、十有九験、故八字有病者、宜行去病之運、人多富貴、此造頂喜戌中有一点火星、透出天干、再喜戌午合成火局、作木火仮傷官看、喜月上有一点庚金為官星、為我之病神也、何以言之?蓋傷官以官星為病、書云、有病方為貴、早年己酉戊申、病神得禄、推其不美、一入南方丙午丁未、去庚金病神、所謂格中如去病、財禄両相随、興家創業、則富宜矣、乙甲運中、雖不及丙丁火、去庚金為親切、蓋亦喜甲乙以生丙丁也、所以老益精神、只畏壬癸運来破火、放起庚字、恐生不得禄、但子星不足者、蓋因日主火気中和也、若雑気財官論之、全非妙理也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金火水木土
 正財格  喜神:木水  忌神:火土金
 丑戌刑、巳午南方



楠曰く、
乙日戌月生まれで木神が軽く、火傷官を用神(喜神)とする。
金水は二つともこの命の欠点であり、南方火運にいけば精神(ここでは生気の意味か?)を長らえる。
乙木戌月生まれは、金が強く木は弱い。もし旺弱で推命すると、大運が南方に行けば木を洩らすことになりそうである。およそ旺弱で命を論ずるのは、愚かな術で微妙な理屈に通じていない。これは大いに病あっての論であり、こういう見方は九割方有効である。すなわち命式に欠点があれば、欠点を取り去る運に行くのがよく、そうなると富貴になることが多。この命も戌中に一点の火星があり、それが透干している。さらに戌午で火局になるのを喜び、木火仮傷官と見るべきである。月上の一点の庚金は官星であるが、これはこの命式の欠点である。何をもってこれを言うのか?だいたい傷官は官星を病とするのであり、書にいう、病有りてまさに貴となす、と。早年己酉戊申は、病神が禄を得て、よくないと判断するが、ひとたび南方丙午丁未に入れば、庚金の病神を取り去り、いわゆる格中の病を取り去れば、財禄は二つともついてくる、ということになる。家を興し事業をはじめ、富となるはずである。乙甲運は丙丁火には及ばなくても、庚金を去り日主を強め、また甲乙が丙丁を生じるのを喜ぶのである。それで老いてますます意気さかんということになる。ただ壬癸運が来て火を破るのを恐れ、庚が勝手に強くなり、おそらく禄を得られなくなる。ただし子星が不足しているのは、日主火気が中和しているからである。もしこれを雑気財官で論ずると、全く妙理にあわない。

 この命式は判断が難しいです。
 仮に1577年生まれだとすると、季節は秋となり、金気が強くなるので、乙庚は金化するのは確実です。それならば火水ともに喜神ということになり、土金が忌神なので旺弱での推命で判断できます。
 では、金化しない場合はどうみればいいのか。五行的な旺弱からいえば、木水が喜神、火金土が忌神で、それはそのとおりでいいと思います。しかし、命式上においての作用をみると、庚金が乙木と合してその剋する力が強く、丁火が庚金を制しているという形になっています。したがってこの命式の年柱丁火は(庚金という病を制するので)むしろ喜神といえます。ただし行運の丁は壬を合して取り去り忌神です。この場合は乙を洩らすのではなく印を取り去るので悪いわけです。丙は解寒の作用があり喜神的です。未は丑と冲するので忌神ですが、弱いながらも木の根となります。午は丁を強めて喜神的です。それ以降は木水運に入りますので、巳運(これも喜神的ですが)を除けば喜神運が続きます。
 しかしながら、命式中の丁は結構強いので癸運は大して恐れませんが、壬運は丁を合して取り去るので、庚金の力が極めて強くなるため、非常に悪い運といえます。


傷官格その2

叔祖仲器公火土傷官用印格

6656463626
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 1498年7月19日生と推定

楠曰、
戊土重重泄火精、身衰用印理分明、
早年最畏財傷印、火運来資印有情。
丙火生未月、火雖有気、然四柱土多、泄火精英、変旺為弱、頼有甲乙木結局、身弱用印明矣。早行西方、金能剋印不利、入戌見土損子、運入北方、水資印気、興創可験、入寅艮土晦火、七十四歳死矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:土火木水金
 月刃格  喜神:火木(水)  忌神:土(金)
 午未合、未戌刑



楠曰く、
戊土は重重火の精を洩らし、身は衰え印が喜神である理は明らか。
早年は財が印を傷つけるを最も恐れ、火運が来れば印を助けて印は有情。
丙火未月生まれで、蔵干は火であるが、四柱に土が多く、火の気を洩らすため、旺だったのが弱となる。よって甲乙木に頼って格局をなし、身弱には印が喜神であるのは明らかである。早年は西方運で、金が印を剋すので利はなく、戌運で土をみれば子を損なう。運が北方に行けば、水が印の気をたすけるので、運がよくなることとなる。寅運に入り艮(うしとら)土が火を暗くするため、74歳で死ぬこととなった。

 原文に「火運来」とありますが、あとの文から「火」は「水」の誤りだと思われます。
 蔵干は丁ですから月刃格ですが、午未は合となり傷官、食神が強いため、傷官格といってもよいでしょう。土が最も強く火日主を洩らしますから、土を抑え火を生じる木は喜神となります。通常食傷が強い場合は財は喜神となりやすいのですが、辛は丙と合して弱めるため忌神です。
 しかしながら、この命式の大きな特徴は火土が強いということです。水は日主を剋しますが、五行的なバランスからいえば水は是非必要で、この命式にはかろうじて時支に亥があります。
 戌運では土が強くなりすぎ、土は亥水(壬偏官)を剋しますから、子を喪うことになりがちです。その後は北方運となりますから、五行のバランスがとれ、比較的順調ということになるでしょう。ところが、寅運となると、寅は亥と合しますから、子どもへの影響というよりは、年が年ですから、むしろ本人自身火炎土燥の命となり、命を落とすことになります。
 このようにとくに火土と金水のバランスは非常に重要です。


食神格

孤貧女命土有余木火不足格

43332313
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 1529年5月29日生と推定

楠曰、
丁逢己土食神多、泄損精神定奈何、
信是孤貧応有数、子多無子豈差訛。
丁火生巳本為火之分野、殊不知四柱食神傷官太多、泄弱丁火精英、則是母胎虚耗、則子無托生之、所正謂子多無子。若得東方甲乙運、有木剋去子星、存養丁火精神、庶幾尚可生子。此造何期運入西方金、無木気神、財多身弱、一生孤苦貧寒無子。入戌再加一土、愈泄精神死矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:土火金水、木はなし
 月刃格  喜神:木火  忌神:土金水
 巳酉丑金局



楠曰く、
丁が己土に逢って食神が多く、精神を洩らして損なうのは如何。
まことに孤貧は疑いなく、子多きは子無しとなぜ違うことになろうか。
丁火が巳月に生まれるのは本来火が強いのであるが、四柱に食神傷官が多すぎるときは特別であり、丁火の気が洩らされ弱くなり、これは母胎の虚耗といえる。すなわち子無く頼ることもできない。まさに子多きは子無しとはこのことである。もし東方甲乙運に入れば、木が子星を剋去し、丁火の精神を養い、いくばくか子が生まれる可能性もある。しかしこの命は西方金に入り、木気神は全くない。財多身弱の命であり、一生孤独で苦労し貧乏で子供がない命である。戌運に入れば、なお気を洩らして死ぬことになる。

 日干は夏生まれですから強いはずですが、月支にしか通根していません。己は三干もあり、また二支に通じてますから、丁よりはるかに強いといえます。巳にも土があるという考え方もあります。
 地支は金局をなしており、この場合干に金があれば、財が極端に強くなることになります。従児格といえないこともないのかもしれませんが、天干に財があればむしろ財が強すぎることになり、従児格とは言えないでしょう。内格であれば身弱なのはあまりよくありません。
 「子多きは子無し」というのは、食神傷官が多いのは子供ができないということで、日主がもう少し強ければ子供もできるのでしょうが、行運は金水と続くため、日主は強くなる時期がありません。金の行運では財多身弱になってしまいますし、水の行運は日主を傷めます。
 食神太過で身弱は貧命というのはどの書にも書いてありますし、またとくに女命にとって財多身弱は全くよくありません。
 甲運は木運ですが、己と干合しますから丁を生じる作用があまりありません。土が強いため、むしろ土化してしまうのではないでしょうか。戌運は一応火の根となりますが、土を重ねることになりやはりよくありません。
 この命式では甲によって丁を生じるのが最もよいと考えますが、己と合化してしまうため甲が働かないということで、結局行運で発福することもなく、貧しいまま生涯を終えることとなります。


仮傷官格

吾父啓完公、仮傷官用劫

65554535
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 1476年5月20日生と推定

楠曰、
辛金生巳水重重、刑破官星水有功、
申巳両庚来作用、運行申酉楽雍容。
辛生巳月本用丙火、夫何貼身有申破丙明矣。年干丙火本為虚官可用、時有壬水破之、由是舎丙而従水也。以水為仮傷官、年月両庚類聚有情、正作金水傷官用劫也。行申酉比劫得生、安享其楽。入戊己破去仮傷官、動多悔吝。入亥生財、大運入子、六十九庚金劫神死地至矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水金火木土
 正官格  喜神:土金  忌神:木火水
 巳申合、卯辰東方



 楠曰く、
 辛金が巳月に生まれ水は重重、官星を刑破し水は功あり、
 申巳は二つの庚で作用し、申酉の行運は楽あり悠々。
 辛が巳月に生まれるのは丙火が用神となるが、日主の隣に癸があり、申もあり丙(巳)を破るのは明らかである。年干丙火も力のない官でも用神とはとえるが、時干に壬があるのでやはり力がない。これにより、丙を捨てて水に従う。水を用神として仮傷官格とする。年月の二つの庚は働き、まさに金水傷官で劫財を用とする。申酉比劫の行運では生を得て、その楽しみをうける。戊己運では仮傷官を取り去り、動きが多く後悔する。亥運に入れば財を生じるが、子運に入り69歳庚金の死地に入り死亡した。

 日干は夏生まれの辛ですから、季節的には弱いといえます。巳申は干合で刑ですが、両方ともに蔵干に金があり、とりあえず二支に通じていることになります。時干に壬、月干に癸があり、辰に通根していますから、この命式中では強い方でしょう。年干の丙は夏生まれで強いはずですが、巳申は合、刑ですから、強さも半減といったところでしょう。しかも癸が丙の隣にありますから、丙の働きを抑える形になってます。
 日主と食傷がともに強い場合は、その関係をあまり変えない方がいいですし、財があるとよくなることが多いです。まして、壬と辛は干の関係がよく、この命式においては壬が辛を調和している形ですので、壬、辛を極端に傷めないようにしなければなりません。
 この命式は、基本的には傷官見官であり濁の命式ですが、癸によってかろうじてその悪さがあまり出ないようになっています。したがって貴命というほどのことはありませんが、まあそこそこの人生でしょう。
 申酉運は壬水、辛金の根となりますから喜神といえます。なお、酉は卯と冲ですが、辰酉が合で解冲してしまうので、辰の通根を消すことにはなりません。この間は安楽な生活といえます。
 ところが、戊運では癸を取り去るので悪いですし、己運は壬辛の関係を濁らせてしまいます。私の感覚では、己運は非常に悪いと感じます。ただ大運地支の亥運は巳申の合を解き、卯と会して財(木)となるのでいいので、救われている感じです。次の庚金運は辛を弱め、水を生じるのと、また大運地支の子が辰と会してさらに水が強くなるため、日干が極端に弱くなります。若ければそれでも大丈夫でしょうが、齢七十ですので死ぬことになりました。


印綬格その1

臨川黄良三公 富命水重土軽

695949392919
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 1539年12月3日生と推定

楠曰、
水気重重在地支、木漂水泛欲何依、
最宜土運来剋水、財帛金珠楽有余。
乙木生亥、重重水気以漂之、早行癸酉壬申、木多見水不利、一入辛未庚午己巳戊辰四運、土止水流、財発万緡、正謂印綬若多、財要見也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:木金土水火
 正官格  喜神:木火  忌神:水(土金)
 亥自刑、亥丑北方



楠曰く、
水気が重ねて地支にあり、木は水に浮かんで漂い何に依らんと欲す。
最もいいのは土運が来て水を剋すことで、財産を得て楽しみは余りあり。
乙木の長生亥が重ねてあり水気が多く木は漂う。早年に癸酉壬申運なのは木にとって水を多く見て利はない。ひとたび辛未、庚午、己巳、戊辰の四運に入れば、土が水の流れを止め、発財しその金は数え切れないぐらいで、まさに印綬がもし多ければ、財は見るを要するということである。


 とくに解説の必要はないと思います。この命式は日主が弱く木の生をうけて助かっています。原則として木火喜神です。土は忌神水を抑えるので喜神とまではいきませんが、木火を助けることにはなります。最後の、印綬がもし~、という部分は木を中心にした見方で、この場合木の印綬である水が多い場合は、木の財である土が必要ということです。
 というのが最初に書いた注釈ですが、実はこの命式は難しく改訂にあたり補足、修正します。(2021年5月記載)
 基本的には日主が弱いので木火喜神はいいとして、命式中の乙木は実はあまり役に立たず、むしろ害になるという論もあります。甲木は己土と合するので印の作用はありません。また丙火は辛金と合してやはり役に立ちません。この命式で日主を強めるのは丁火と火支(巳午未寅戌)です。土は日主を洩らすよりも水を剋する作用の方が期待できるので、五行的には忌神でも護身(日主を官殺の剋から守る)という観点から喜神的です。この命式は行運で水が来ると極端に水が強くなるので、年干に己土、地支に丑があるのは幸いといえます。また辛金は命式においてはさほど強くなく、庚金は乙木を合するのみ水を生じることはありません。したがって日主を弱めるほど財が強くなることもなく、とくに巳午未運は身財両停に近い状態であり、大富豪とはいえませんが発財するでしょう。
 最後の「印綬若多、財要見」というのは、この命式で使うのは適当ではないと私は思います。これの元々の意味は「印綬(偏印を含む)が多い場合には印を剋す財があるのがよい」という意味で、丁火日主であれば甲乙木が多い場合甲乙木を剋す庚辛金で甲乙木を抑えるということです。命式の形としてはそうなっていますが、張楠の説明とは全く合っていません。


陽刃格その1

 夏閣老貴命火有余水不足格

7060504030
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 1542年7月9日生と推定
 (再度見直しの結果)


楠曰、
丙火炎光熾若炊、宜行殺運済江湖、
庚辛壬癸登黄閣、印比重逢寿必阻。
丙寅日主、歳月日上、火気炎甚、得年時冲水透出。正謂水火有既済之功、但四柱中火土之気還勝、金水之気還軽也。所以運到壬子癸丑、干支皆水、蓋為水気不足、以補其水也。所以運登黄閣。為天下之首相也。其貴蓋倶月其丁火、透出陽刃、合去壬殺、正謂刃殺相幇、威権万里、一入甲寅運、助起火気、則又火有余而水又不足也。蓋因丁火陽刃透出、正謂陽刃倒戈、必作無頭之鬼、甲寅死宜矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:火水木土、金はなし
 月刃格  喜神:水金  忌神:火木土
 壬丁干合、寅辰東方



楠曰く、
丙火の炎の光は盛んで、殺運に行くのがよく、江湖を済ます。
庚辛壬癸では閣僚に昇進し、印比が重なれば寿は必ず終わる。
丙寅日主で、年月日に火があり、火は著しく強い。年時に冲水が出ており、これはまさに水火既済の功である。ただし四柱の火土の気は依然強く、金水の気は依然弱い。それで運が壬子、癸丑に到れば、干支皆水で、水気不足の命に水を補給することになる。それで閣僚に登り、天下の首相となったのである。その貴は月に丁火があり、陽刃が透干して、壬殺を合去したためである。まさにいうところの刃殺相幇であり、権威は広く伝わる。ひとたび甲寅運に入ると、火気を助け起こし、すなわち火ありあまって水が不足することになる。けだし丁火陽刃が透干して、まさに陽刃倒戈となり、必ず頭のない鬼となり、甲寅で死ぬことになるわけである。

 陽刃格にある夏柱州の命式です。
 月令は、1542年生まれだとすれば、丁となり強い日主となります。一方、壬も辰に通根していますから、従旺格とはとれません。したがって水によって抑えるか、財によって水を強めるかが必要です。幸いにして、大運はすぐに西方運で、ほどなく金水運となりますから喜神運が続きます。身旺で七殺が強いのはもちろん福ですが、丙壬の組み合わせの場合はさらに貴命といえます。
 張楠は、丁について、「陽刃が透出し、壬殺を合去し」ているので、「刃殺相助け、権威は万里にとどく」働きをしていると述べています。ここでいう陽刃とは陽干の劫財のことです。ところが甲運になると、甲は火気を強め、すなわち「火有余って水がまた不足する」ということで、丁火陽刃が出てきて、いわゆる「陽刃は戈を倒し、必ず無頭の鬼となす」ということで、甲運に死ぬのは当然だ、と述べています。
 このことを私なりに考えてみますと、喜神の七殺が権力の源泉となっている場合、さらなる陽刃は、透干している七殺を合去し弱める、すなわち干頭をとってしまう、命式における決定的な喜神をとってしまう、という意味ではないかと考えます。「命式における決定的な喜神を取り去るということは命を危うくする」というのは、別に私の考えではなく、多くの書で言われていることです。
 なお、最初の句の江湖というのは壬であり、済ますというのは易経でいう水火既済で、完成するというふうに解釈できます。


陽刃格その2

吾都呉高一水有余貧命不足之格

6151413121
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 1542年8月8日生と推定。

楠曰、
丙丁未月火雖炎、水気重侵又不然、
火気若衰宜木運、再行水運禍連綿。
丙火雖旺、不合夏至後二陰之際、水気進気、更加丙臨申位、三合火局(水局の誤り?)、水有余而火不足也、且在丙火下旬、金水進気、火気将衰、若夏閣老生在丙火上旬、火神正旺、此命再行壬子癸丑、豈不殺重身軽乎、初行西方、尚作蹇滞寒儒、再行北方、作乞丐宜矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水火木土金
 傷官格  喜神:火土木  忌神:金水
 申辰半会



楠曰く、
丙丁日未月生まれは火は炎のようだが、水気が重なり侵すのでさほどでもない。
火気がもし衰えれば木運がよく、水運に行けば災いが続く。
丙火は旺じているが、夏至の後であり二陰の際で、水気は進気である。更に丙は申位に臨み、三合水局であり、水が多く火が不足である。かつ丙火は下旬で、金水が進気で火気はまさに衰えようとしている。夏閣老のように丙火が上旬に生まれていれば、火神は旺であるが、この命では壬子癸丑にいけば、どうして殺重身軽にならないだろうか。大運のはじめは西方であり、やはり蹇滞寒儒となし、さらに北方に行くので、乞食となるのもむべなるかなというところである。

 丁壬は合して影響力がなく丙と壬の力の差となりますが、前の命式と違い申辰の水の半会があり、一方丙火は月令に旺じていませんから、壬水の方が強くなります。戊己運は壬を抑えるのでよいのですが、その後は金水運であり忌神運が続きます。壬子運は申子辰の水局が成立し水が極めて強くなりますし、癸丑運は丑未の冲で丙の根が取り去られ、癸が丙を抑え壬を強めますので、殺重身軽となり貧もしくは夭となります。


専禄格

金[ケイ]徐龍岡貴命専禄格以官殺為病格(金[ケイ]は地名)

41312111
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1472年11月7日生と推定。

楠曰、
辛酉分明専禄格、戌中有火喜神冲、
殺星原是柱中病、去殺方知禄位栄。
辛酉専禄、見戌有丁、為損禄之病神。辰字去之、所以有病者貴。癸丑運癸丑年、丑刑戌火去病尽矣、聯登黄甲、其貴宜矣。只丙丁両字損貴。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金水土火木
 従旺格  喜神:金水木(土)  忌神:火
 辰戌冲、卯酉冲



楠曰く、
辛酉日生まれは専禄格とする。戌中に火があり喜神は冲。
殺星は命式中の病であるが、殺を取り去れればまさに禄位は栄えると知る。
辛酉は専禄格で、戌中に丁があり、禄(酉)を損なう病神である。辰は戌を冲して去るため貴命となる。癸丑運癸丑年に丑が戌を刑して病を取り去り尽くしたので、科挙のトップになり、その貴は明らかである。ただ丙丁が来れば貴を損なう。

 辰戌と卯酉が冲であり、地支の作用は極めて薄いといえます。こういう場合に専禄格と言っていいかははなはだ疑問です。
 この命式の場合は、地支の根こそ弱いですが、庚辛が三干あり、また土用の生まれなので金は強いといえます。よって従旺格とし、傷官がありますので食傷、財は喜神です。官殺は忌神ということになります。
 癸は喜神の食神です。丑は酉と会であり、卯酉の冲を弱めます。よって酉が出てきて日主も強くなりますが、癸丑は北方であり壬を強めます。また卯木は財で力は弱いものの喜神です。もともと傷官があり、喜神の食傷が強くなるのですから、頭脳が冴え、試験に合格することになります。
 50歳以降は丙丁の忌神運となるためよくありません。


金神格

金[ケイ]高谷南少卿、己日金神土金仮傷官格

5444342414
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 1528年1月17日生と推定。

楠曰、
日干己未坐金神、土厚金軽理自真、
運転西方金閑地、金軽豈作等閑人。
己未日主、生於丑月、両土気厚、凡身旺多好泄也、見自丑結成金局、用金為仮傷官、又為己日金神、蓋喜有甲乙木之官殺、為傷官格之病、所以運行西方金運破木、其貴宜矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水土火金木
 財帛格  喜神:火土  忌神:水木金
 丑未冲



楠曰く、
日干己未で金神に坐す。土厚く金軽く理は自ずから真。
運が西方金旺の地に転ずれば、金軽ければどうして等閑な人になるといえようか。
己未日主で丑月生まれであり、二つの土の気が厚い。およそ身旺は多く気を洩らすのがよい。丑と酉は金局となり、この金を用神として仮傷官とする。またこれは己日の金神であり、この場合は甲乙木日の官殺を喜ぶ。ところが、これは傷官格の病である。それで行運で西方金運で木を破ると、(病から)貴となるわけである。

 改訂に併せて全面的に修正しました。(2021年5月)
 私の考えは張楠の見立てとは全く異なります。以下は私の独自の見方です。(まあ他の例もそうなのですが)
 丑未の冲があり水に比べて日主は相対的に弱く癸があり丁火もそう強くありません。仮の従財格といってもよいと思いますが、単なる財の強い内格ととらえることもでき、判断に迷います。こういう命式では、身財両停を目指した方がよいというのが私の独自の見方であり、この命式の場合は日主を強め、財は忌神ですが財を日主に比較して弱くするのは避けるべきだと思います。
 行運をみると、庚金は己土を洩らしますが辛金は己土をあまり弱めません。亥は未との半会で冲の作用を緩和して己土を強めることになります。また酉は丑と半会でこれも間接的に己土を強めることになり喜神です。してみると、表に挙げた大運で忌神なのは庚運と申運ぐらいであり、辛運は閑神運、あとは喜神運であり、比較的順調な人生を送ると思われます。


飛天禄馬格

高功韶尚書、飛天禄馬格

6151413121
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 1480年9月5日生と推定。

楠曰、
庚申日主子申重、午内財官暗喜冲、
金水両干無剥雑、邦家万世有奇功。
庚生申月、下通申子之気、水盛則能動午中丁己作財官、再行北方、重重水気冲之、又喜身主有気、飛天禄馬格真也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金木水、火土はなし
 建禄格  喜神:木水  忌神:土金(火)
 申子半会



楠曰く、
庚申(子の間違い)日主で子申が重なり、午の財官が暗に冲するのを喜ぶ。
金水両干不雑格でもあり、国家万世にわたり功がある。
庚が申月に生まれ、地支には申子の気が通じており、水は盛んでよく午の丁己を財官とすることができる。さらに北方に行けば水気が重なって午を冲し、また身主に気があるのを喜ぶ。真の飛天禄馬格といえる。

 尚書というのは日本でいえば首相のようなものです。
 庚は申に通根しており強く、甲は根はないのですが、申子水局に生じられています。ただ浮木のきらいがあります。五行的な喜忌をいえば、木水が喜神で金土が忌神となります。火は微妙です。21歳から北方運に入るのですが、その時期に丁官が巡ってきており、この時期に出世したものと思います。それ以降、大運は干は忌神、支は喜神という運になります。
 一応命式は喜神で構成されて、傷も受けにくいので貴命と判断できなくはないのですが、大変な貴命かどうかは五行、干支の関係のみでは判断が難しく、飛天禄馬格(この場合は両干不雑でもある)が時に有効だと『命理正宗』本文中で述べているのは、こういう例があるからなのです。


子遥巳格

古銭丞相造

5?4?3?2?1?
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昔の丞相ということで、誰を念頭においているのかはわかりません。

自十六七後、就行金郷酉申運、並運干庚辛金四十年不断、官至宰相、則生月多印綬、当行官運也明矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:木土水、火金はなし
 従旺格  喜神:木水(火)  忌神:金(土)
 亥自刑、亥子北方



16、7歳以降、酉申運、さらに干が庚辛と金運が40年続く。官職は宰相まで昇ったのは、生月に印綬が多くあるからであり、まさに官運に行ったためだというのは明白である。

 張楠は官殺運だからよいと言っているのですが、私は全く違う考え方です。形としては子遥巳格となりますが、甲は年月に通根しており、また比劫印が強いので、まずは従旺格というべきでしょう。ですから、結論としては子遥巳格と同じで、身旺運を喜び、官殺運を忌むと判断します。とすると、官殺運の多い行運をどう考えればいいでしょうか?10代から30代までは壬癸運ですからまずは喜神です。酉はあまり作用なしですし、申は印を含みますから喜神ではありませんが、忌神というほどもなく、間神というべきでしょう。辛は忌神ですが、甲を剋する作用はあまり大きくありません。未は甲の根となるから喜神です。庚は乙を合して取り去るので忌神ですが、幸い乙は甲を生ずる力がそれほどありませんから、致命傷ではありません。午は子を冲し一応忌神ですが、子は甲の根ではありませんから、それほどのことはありません。悪いのは己で甲を合しますし、巳は亥を冲しますから50代からは悪いでしょう。
 ただ、この命式では一国の宰相にまで昇るとは、私にはどうも思えない命式ではあります。


井欄叉格

王封君造

7464544434
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 1483年8月21日生と推定

合此井欄叉格、官成名立、勅封御史。至壬子運癸亥歳、干支倶傷官太過不禄、則経文所謂忌壬癸者益信。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水金木土、火はなし
 建禄格  喜神:土金木  忌神:火水
 申子辰水局



これはまさに井欄叉格であり、官職として成功し名声も得、御史に勅封された。壬子運癸亥年、干支ともに傷官で強すぎ亡くなった。すなわち経文にある壬癸を忌むということをますます信じる。

 庚日で秋生まれで官殺がありませんが傷官が非常に強いので、普通の建禄格でしょう。傷官が強いので、この場合は財が喜神といえます。すると、30代から50代は東方運ですから、基調として喜神運です。ところが、60代以降は北方運であり、丑運では丑は子と合して水の働きを少し弱めますが、壬子運では水が強くなりすぎ、いわゆる傷官太過となりますので、非常に悪いです。昔の70代ですから、死ぬことになるでしょう。
 これは別に井欄叉格を意識しなくても導き出せることです。


曲直仁寿格

臨川機橋丘普一公 木全類相

44342414
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 1482年3月23日生と推定

甲日生臨寅卯辰、木全類相喜全仁。
時逢財庫為休倚、南逢生財大異人。
甲木生卯、木神純粋、地支稟全東方、一片秀気、又喜有財透出身旺、用時上偏財、極好施捨恤孤、其格明矣、有一甲申日干者反貧、蓋為有申金、能破東方秀気、不知者反以此為美、蓋不知有此格也、入申運死、破木明矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:水木土火、金はなし
 従旺格(曲直格)  喜神:木水  忌神:金土(火)
 寅卯東方、子辰半会



甲日が寅卯辰の地支に臨み、木がそろって強く全て仁を喜ぶ。
時干支にある財は休むところであり、南方に行き財を生ずれば大変な人物となる。
甲木が卯月に生まれ、木神は純粋で、地支は東方をうける。一片の秀気である財が透干して身旺である。これは時上偏財を用神として、きわめて好く情け深く施しをするもので、この格は明らかである。これが甲申日であれば反って貧である。そもそも申金があれば、東方の秀気を破ることができ、申がないので曲直格が成立するが、この格には申がなくても、申運に入れば死にいたる。木を破ることは明らかである。

 曲直格にしては印が強すぎるような気がしますが、官殺は全くなく、寅卯辰がそろっていますから、曲直格としてもいいかと思います。戊運は癸印を合し、また申は寅と冲して、寅卯辰の方を壊しますから、破格となり、悪くすると命を落とすことになります。
 一行得気格は、食傷はそれほど恐れませんが、官殺を非常に恐れます。


稼穡格

撫城張華二公、富命土全稼穡

938373635343
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己臨丑月土重重、寒土堪全稼穡功。
有木微微来作病、運行金地主財豊。
己土生臨十二月、日坐土垣、四柱純土、且土気寒、堪作土全稼穡、頼辰時微有木気、暗来損土、豈不為病乎、早行東方甲寅乙卯二運、提出辰中乙木、来剋稼穡之土、深為不利、運到丙辰丁巳戊午己未、衰土喜見生扶、財発数十万、再行庚申辛酉壬戌、剋尽辰中乙木病神、富蓋一郡、行亥会木局方死、耄寿五福、本自然也。
有一命壬午癸丑己丑己巳、蓋縁巳丑合成金局、只作傷官、不作稼穡、且貧而患耳聾疾、只作庸医、蓋為傷官行財衰運也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:土水金火木
 従旺格  喜神:土火  忌神:木金(水)
 



 己が丑月に臨み土が多く、冬の寒い土が稼穡の功に堪える状況である。
 わずかに木がありそれが病となるが、金の行運にいけば病を抑えて財が豊かになる。
 己土が十二月に生まれ、日干は土支に坐し、四柱は純土で、かつ土気は寒く、土がそろった稼穡となっている。時支に辰がありわずかに木気を含み、暗に土を損なうため、どうして病といえないだろうか。(幸い)早くに東方甲寅乙卯運が来て、辰の乙木を出して、稼穡の土を剋したのでこの時期は不利である。(ただし若いため運への影響は少ない)行運が丙辰丁巳戊午己未にめぐれば、衰えた土を生扶するのでよく、財は数十万となった。さらに庚申辛酉壬戌に行けば、辰中の乙木病神を剋して、非常な富みを得る。亥運に行けば、まさに死ぬ。ただ亥運では十分に年をとっており、もとより自然である。
 とある命で、壬午、癸丑、己丑、己巳 という命式があるが、巳丑が金局をなし、ただ傷官となって稼穡とならない。この命は貧であり耳聾の病気を患う。ただの藪医者となった。傷官が財を衰えさせる運である。

 この命式は稼穡格というよりも従旺格でいいと思いますが、財がちょっと強すぎで、しかも寒い感じがします。それを救っているのは年支の午ではないかと思います。本文にもあるとおり、木運が第一第二大運に来ており、幸い若いですから影響が少なかったと思われます。亥運で死ぬとありますが、この時代の人にしては長生きしすぎでしょう。確かに、癸亥運は癸が戊を合して取り去り、亥が水の根となり強くなりすぎますから、破格となります。これはこれでいいのですが、年齢からみて酉運も十分危ないと思います。丑酉で金の半会で土を弱め水を強めますので、年運や月運次第では破格の可能性が出てきます。
 後に出てくる己巳時生まれの命式は土支が少なく、従旺格まして稼穡格とはいえません。


年時上官星格 その1

臨川曾元山御史、貴命時上財庫官星格

7464544434
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 1501年9月19日生と推定

楠曰、
癸臨酉月本無為、秀気財官喜在時、
時上虚官真可用、定能平歩上雲梯。
癸水生酉、偏印本非用神、蓋得戌時財官之庫、然酉月火土極衰、喜財官軽而為病也。又得卯中乙木、暗来損土、其病重而甚明也。然病重名大貴、喜年上有酉金、能破去卯木也。書云、格中如去病、財禄両相随、所以運行癸巳、会起金来、破去卯中乙木病神、連登科甲、御史権尊、宜矣、運入寅卯、木来乗盛、剋我虚官、隠而不仕、其知幾乎?凡月上正官、無可用之理、時上虚官、則有可用之理矣。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金火水土木
 偏印格  喜神:木火  忌神:金水土
 卯酉冲、卯戌合、酉自刑



楠曰く、
癸日酉月生まれで酉には本来意味がない。喜神の財官が時柱にあるのを喜ぶ。
時柱の虚官は真に用とすることができ、おそらくは高位を歩むことになる。
癸日で酉月生まれは偏印格であるが、それは用神とはしない。というのは戌時が財官の庫となり、酉月においては火土が極端に衰えるからである。したがって財官を喜び軽ければ病とする。また卯の中の乙木が暗に土を損なうため、病が重いのは明らかである。病が重なれば大貴と名づける。年柱に酉金があり、これは卯木を破る。書にいう、格中もし病を取り去れば、財禄あいしたがう。それで運が癸巳にいけば、金が強くなり、卯中の乙木の病神を破り去って、科挙に合格し、御史の権尊宜しきかな。運が寅卯に入れば、木が強くなって、我が虚官を剋し、引退して出仕せず。それをどうして知ろうか。およそ月上正官は用とするべき理屈がなく、時上虚官は用とするべき理屈がある。

 張楠がいうには、この命式には時支に戊正官があり、それが非常に重要であるということを言っていますが、はたしてどうでしょうか。この命式を検討してみましょう。
 まず、月支酉は卯に冲されますが、戌が卯を合しますので、解冲の作用が生じて酉は作用があります。天干を見てみますと、日主癸は壬に助けられますが、地支には水がありませんから強さはあまり感じません。丁火は戌に根がありますが、酉月なので季節的には弱くなってきます。辛金は季節に旺じて地支も酉ですから五行中もっとも強いといえます。
 印が強いのでそれを抑える財は喜神ですが、そのためには日主がもう少し強くあってほしいところです。30代から癸巳の大運になりますし、その間に戊戌年、己亥年がめぐってきて、これは官殺流年ですから、その時期に科挙に合格したと思われます。壬運まではいいでしょうが、辰運以降は地支に合冲入り乱れて悪くなり、寅運では寅戌の合で財が強くなりすぎ、財壊印となって地位も名誉も失うことになります。
 実はこの命式は、判断が非常に難しいです。一つは丁と辛の関係、一つは戊のからみ方、さらに合冲入り乱れた地支の作用がなかなか一筋縄ではいきません。みなさんも研究してみてください。


年時上官星格 その2

大源楊洪六公、富命金火相停時上官星之格

7161514131
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 1485年9月9日生と推定

楠曰、
庚金身旺透官星、金気微軽木火盈。
辛巳庚辰金運補、当年財富頗馳名。
庚金酉月雖日極旺、然金亦喜旺、不宜火太過、制其精鋭也、只喜巳中有金合局、所以金得乗旺也、然有三火三木、似木火気過盈、金気頗不足、行辛巳庚辰戊己運、興財富。有乙亥年人、只多了一亥字、則為金不足、木火過多、一生貧苦、吾都王彖一命也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金火木水、土はなし
 両神成象格  喜神:木水(火)  忌神:金土
 乙庚干合、巳酉半会



楠曰く、
庚金で身旺で官星が透干している。金気はかすかで軽く木火が満ちる。
辛巳庚辰の金運は補い、当年財富は多く名をはせる。
庚金が酉月に生まれ日主は極めて強いと思われるが、しかるに金を喜び、火が強すぎるのはよくない。金の鋭さを制することになる。ただ巳中に金があり合局を成して、金は旺に乗じていることになる。しかるに三火三木があり、木火が強すぎるように見え、金気が不足している。辛巳、庚辰、戊、己運では財富が興る。
この命式に似ていて、乙亥年生まれの人がいるが、巳が亥になって亥が一字多く、金が不足して木火が多すぎる。これは一生貧苦である。わが町に住む王彖の命式がそれである。

 改訂にあたり、この部分も書き換えました。(2021年5月)
 乙庚の干合は化金すると考えていたのですが、巳酉の半会を重く見過ぎ、丁火の剋を過小評価していました。やはりここは乙庚は化金しないとみたほうがよさそうです。そうすると金火の強さはやや金が強いとはいえ、化金ほどの強さとはなりません。その分財は強く、日主、正官、正財の力は拮抗しています。財官双全であり貴命といえるでしょう。
 丁は十分強いので庚辛を恐れません。また庚辛も十分強く火の剋に堪えられます。したがって巳運は亥を冲するので、財的にやや悪いのですが、それ以外はとくに悪くありません。庚運は年干乙木と合するだけで影響は小さいでしょう。辰運は酉と合で若干金を弱めますがたいしたことはありません。己運は丁を洩らすのでやや悪いかもしれません。寅運は財的によいのですが、午と会し亥と合して丁が強くなり、また丁運も火が強くなりすぎ、三干のバランスが崩れます。年齢的にもこのあたりが危ない時期となりそうです。
 乙巳年ではなく乙亥年だとすれば、金は確かに弱くなります。木火が多すぎるというほどではないと思いますが…。行運も中年期は東南運ですし、辛運は庚を助けることもなく、また庚運は年干の乙と合しますから、助けになりません。よって喜神運が喜神の働きをしないため苦命といえます。


従化格 その1

陸川陸江副使、貴命化火畏水

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 1491年5月29日生と推定

楠曰、
戊逢癸化火神高、巳午根通火局牢。
亥巳本来為我病、東方木火顕英豪。
戊午生巳月、干通火局喜癸水貼身、戊従癸化、用火有情、又喜丙辰時、有火透出、用火無疑、更得亥中有壬、微来破火、病在此矣、此為火不足之象也、運行東方、聯登黄甲至副使、蓋得殺旺、暗生丙火也、原雖有殺、被庚剋之、殺印病衰為病、所以東方殺印、而顕其貴、此命大運入子、冲破午中丁火而死、破格破印明矣、若柱中無水火多、則北方不畏、因原帯水也。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:火金水木土
 化火格  喜神:木火土  忌神:水(金)
 戊癸干合(化火)、巳亥冲、巳午半会



楠曰く、
戊が癸にあって火が強く、巳午に通根して火局をなす。
亥巳は本来我の病であるが、東方木火運では才能、豪気を顕す。
戊午日巳月生まれは、干が通根して火局を成すため癸水の貼身を喜ぶ。戊は癸を合化して、用神の火は力があり、また丙辰時を喜ぶ。火があって透干しているので、用神が火であることは疑いなし。さらに亥中に壬がありわずかに火を破るが、これが病である。よってこのため火がやや足りない形になっている。行運が東方に行けば、試験に合格して副使にまで出世する。だいたい殺旺を得るが、暗に丙火を生じるので、もともと殺があるといっても、庚に剋され、殺印の病は衰え、ゆえに東方の殺印で貴が顕れてくるのである。この命は大運が子に入ると、午の中の丁を冲破して死に至る。破格破印は明らかである。もし四柱に水がなく火が多ければ、すなわち北方でも恐れない。もともと水があるためである。

 これは比較的見やすい命式だと思います。
 月支巳が年支によって冲されますが、季節的には真夏に近く、しかも午に坐していますから、戊癸は化火すると考えます。すると火が極端に強く、辛はほとんど力がありませんから、従旺的な化火格と考えます。すると喜神は木火土、忌神は金水です。木は戊にとっては官殺となりますが、化火格の場合は喜神で、作用はむしろ用神火を生じるため、印に近いといえます。よって貴命となります。
 ところが、子運となりますと、午を冲して化火のもととなる根を取り去ります。すると化火の根拠を失いますので、これは破格です。仮に死にまで至らなくても職を辞することになります。


従化格 その2

盱江傅弼王公富命乙庚化金之命

655545352515
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 1498年1月19日生と推定

楠曰、
乙木生逢金局全、乙逢庚化透天元
西方金運誇豪富、見火傷金寿不堅
乙木無根、生丑月合成金局、且時上庚金透出、乙木捨命従庚、大運喜西方運純金之地、財富甲郷、一入甲木暗損金気、退晦退財、一入丙運、丙火剋庚、傷損金神、死矣、雖無金局、若有辰戌丑多生金、亦入此格。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:金水火土木
 化金格  喜神:土金水  忌神:火木
 乙庚干合(化金)、巳酉丑金局、辰酉合



楠曰く、
乙木日生まれで金局がそろう場合、乙が庚に逢うのは化金とする。
西方金運では豪富を誇り、火を見れば金が傷つき寿命が尽きるおそれがある。
乙木に根がなく、丑月生まれで金局をなし、かつ時上に庚金が出ていれば、乙木は自分を捨てて庚に従う。大運が西方純金の地に行くのを喜ぶ。財富は甲の郷にあり、ひとたび甲木が暗に金気を損なうのは退晦退財。また丙運に行けば丙火が庚を剋し金神を傷つけ損なうので死ぬことになる。金局がなくとも辰戌丑多く金を生じれば、またこの格となる。

 巳酉丑で金局を成しており、また辰酉は合して金となるとされます(これは異論あり)から、地支は金が強く乙庚は化金します。丁があるので従格とはなりにくいと思いますが、癸が丁を抑え込んで従格となるとここでは考えられます。ここは微妙ですね。
 従化格だとすると土金水がこの場合の喜神となります。ただし戊は癸を合するためよくありません。申運が巳を合して弱めますし、年齢もまだ若いのでからかろうじて助かったのかもしれません。丁運からは火運ですから明らかによくありません。未運は丑を冲しますし、丙午運に入れば火が旺じて非常に悪いです。年齢も年齢ですから、丁運以降はいつ死んでも不思議ではないとおもいます。


財官双美格

吾邑有此造

24144
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 1548年4月24日生と推定

年頭上帯殺、十四歳行戊午運、干頭又帯殺官混雑、遂死。

【"hiroto的"審査】
 五行強弱:火土水木金
 七殺格  喜神:金水  忌神:火土木
 巳午南方、申辰半会



 年干に七殺があって、14歳戊午運に行き、天干戊はまた殺であり、殺官混雑で遂に亡くなる。

 財官双美格は殺を忌むという、まさにそのとおりの命です。なお殺官混雑というのは、戊と午の中の己のことを指しています。
 命式をもう少し検討してみましょう。壬は申辰の半会があるので弱いとはいえませんが、丙は巳午に通根しており、戊は月令に旺じ、(考えようでは巳午にも根があり)火によって生を受けますから、火土の方が強く、壬水は相対的に弱いといえます。金水喜神で火土木は忌神です。天干はすべて忌神です。戊午運に入ると、どの年もあまりよくありません。ちなみに庚辛の行運でも庚は乙と、辛は丙と合するため、水を生じることはありません。癸は丙を弱めそうですが、戊と合してしまうので、やはり水を強めることはできません。

■ あとがき

 改訂にあわせて命式の表記を簡略化(スペースを節約)したのと、私の見解をだいぶ見直しました。張楠の注釈とは異なる見解を示しているところが多々あります。原文は載せていますので、みなさんでも検討してみてください。
 続きはまた後日ということで。




   作成 :  2008年12月28日
   改訂 :  2021年 5月 9日  内容修正およびHTML5への対応

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