「相心賦」原文と訳


はじめに

 「相心賦」は変通星や神殺等と性格を結びつけている賦で、「淵海子平」「命理正宗」などに収録されています。


「相心賦」




人居六合,心相五行。欲曉一生,弁形察性。
官星愷悌,貴気軒昂。性優遊而仁慈寬大,懷豁達而和暢声音。豐姿美而秀麗,性格敏而聡明。
印綬主多智慧,豐身自在心慈。
食神善能飲食,体厚而喜謳歌。
偏官七殺,勢圧三公。喜酒色而偏争好斗,愛軒昂而扶弱欺強。情性如虎,急躁如風。
梟印当権,使心機而始勤終怠。好学芸而多学少成。偏印劫刃、出祖離家。外象謙和尚義、内心狠毒無知。有刻剥之意、無慈恵之心。
偏正財露、軽財好義。愛人趨奉、好説是非。嗜酒貪花、亦是如此。
傷官傷尽、多芸多能。使心機而傲物気高、多譎詐而侮人志大。権高骨俊、眼大眉粗。
 人は東西南北上下(以上を六合という)の中にあり、心は五行に表れる。一生を明らかにしようとすれば、形を論じて性質を推察する。
 正官は柔らかで、貴気は軒昂である。性質は優遊で仁慈寛大である。豁達をいだき声音はなごやかで伸びる。姿かたちは豊かで美しく、性格は敏にして聡明である。
 印綬は主として智慧多く、身は豊かで自ずから慈しみの心あり。
 食神は飲食に困らず、身体は太めで喜びを謳歌する。
 偏官七殺は、その権勢は三公(高官)を圧倒する。酒色を喜びひとえに争いごとを好む。軒昂を愛して弱きをたすけ強きを欺く。性格は虎のようであり、風のようにあわただしい。
 偏印が強いのは、心機を使い、始めは勤勉だが終わりは怠惰である。学芸を好むも多く学んで成すことは少ない。偏印劫財羊刃があるのは、家を出ることになる。外面は謙譲で義を重んじるようだが、内心は残忍で無知である。相手を傷つける気持ちがあり、慈恵の心はない。
 偏財正財があれば、財を軽んじて義を好む。人にへつらい、口舌の争いを好む。酒をたしなみ散財するのも財の特徴である。
 傷官が傷じ尽くせば、多芸多能。心機を使い傲慢で気位が高い。偽りが多く人の志を侮ること大である。頬骨が高くとがっており、目は大きく眉は粗い。

 ここでは、原則として、正である変通星を吉、偏である変通星を凶としています。その昔ならば当たっている部分もなきにもあらずですが、現代においてはまた別の見方をすべきでしょう。



日徳心善穩厚、而作事慈祥。
魁罡性厳有操恃、而為人聡敏。
日貴夜貴、朝栄暮栄、為人純粹、而有姿色、作仁徳而不驕奢。
金神貴格、火地奇哉、有剛断明敏之才、無刻剥欺瞞之心。
 日徳は心は善にして温厚、そして事をなすにも慈祥である。
 魁罡は厳格にして矜持があり、人となりは聡明で敏である。
 日貴夜貴は、朝に栄え暮れに栄え、人となりは純粋で、見た目もよい。仁徳をなし驕ることがない。
 金神貴格は火支にあればすばらしい。判断が鋭く明敏の才があり、人を傷つけたり騙したりすることはない。

 ここからは格局の性格について述べています。格局については、「命理正宗格局解説」を参照してください。



乙巳鼠貴、遇午衝貧如顔子。
壬騎龍背、逢丁破欲比申棖。
井欄飛天、其心傲物。
刑合趨艮、智足多仁。
六甲趨乾、主仁慈而剛介心平。
五陰會局、為人仏口蛇心。
二徳印生、作事施恩布徳。
五行有化、看何気而推。四柱無情、取元干而論也。
 乙巳鼠貴は、午の冲にあえば顔回の如く貧乏である。
 壬騎龍背は、丁の破にあえば申棖の如く欲がある。
 井欄、飛天は、心に傲慢さがある。
 刑合、趨艮は、智慧があって仁である。
 六甲趨乾は、仁慈があって剛毅であり心は平静である。
 五陰会局は、人となりは口ではいいことを言っても内心は蛇のようである。
 二徳印生は、事をなすに恩を施し徳を与える。
 五行に化あるときは、何の気があるかを見て推す。四柱無情であれば、元の干をとって論ずる。

 顔回も申棖も孔子の弟子です。彼らの事跡については『論語』を読んでください。
 最後の行について今読むと、干合しても化する五行が強くなければ化しないと読めます。これは今流の考え方と合致します。個人の形性についていえば、もとより化五行が強くなければその五行の性質は出ないという、ごぐあたりまえの話です。



且火炎土燥、必声洪而好礼。
水清潤下、主言悟而施仁。
金白水清、質黒肥円。
土気厚重、信在四時。
彙合如然、失時返此。
事則挙其大略、須要察其細微。欲識情理、学者用心於此。
 火炎土燥は、必ず声が太く礼を好む。
 水清潤下は、主として言うことは悟っており仁を施す。
 金白水清は、色は黒く太っている。
 土気が厚重なのは、いつも信がある。
 五行が集まる場合は以上のようなことになるが、時を失えばこれに反するようになる。
 以上、事に則してその大略をあげたが、その細かいところまでをよく見なければならない。情理を知りたければ、学ぶ者はこのことによく注意しなければならない。

 ここでは格局ではなく、五行のうち一行または二行が極端に強い場合を述べています。
 ただ、私の経験と感覚では必ずしもそのままあてはまるとはいえません。例えば、「金白水清」は「質黒肥円」というよりも、女性だと色白でぽっちゃりした美人か現代的な美人のイメージです。だいたいは五行が入り乱れているので、「失時返此」という場合が多いでしょう。



あとがき

 以上、相心賦を訳しましたが、これを杓子定規に適用して判断してはいけません。
 あまり重要な賦ではないと思いますが、意外によく引用される賦ですので訳してみました。



作成 2009年 5月5日
改訂 2020年 7月20日  HTML5への対応、一部見直し