「一行禅師天元賦」原文と訳


はじめに

 「一行禅師天元賦」と称されていますが、一行禅師という人物がどういう人物なのかは知りません。
 私の考えとは異なるところもあるのですが、適宜補足しながら訳してみたいと思います。
 今回もテキストは『命理正宗』を採用しています。もっとも意外とこの賦を納めている本は少ないのですが。


「一行禅師天元賦」




三才即定、五気混同、分之逆順、賢者皆通。
甲得癸而滋栄、衣食自然豊足。
乙伴壬而獲福、天賜禄位得高崇。
丙乙交会、平生福寿超群、出世深成才業。
戊印丁兮、似虎居山谷之威。
己交丙兮、象竜得風雲之勢。
庚逢己土、官禄有余。
辛到戊郷、衣食自足。
壬辛得会、福寿無彊。
癸庚相逢、偏饒僕馬。
清高符印、須知冠冕以乗軒。
沖破禄星、応顕威権而解綬。
 天干地支蔵干をみて、五行が混じっているところから、順逆陰陽などを分析すれば、賢者はみな理解することができるのである。
 甲が癸を得れば甲は育ち栄え、衣食は自然に満ち足りる。
 乙に壬を得れば福を得て、禄位を賜り名声は高くなる。
 丙乙が交会するのは、普段から福寿は群をぬき、世に出て才によって成功する。
 戊の印は丁であり、虎が山谷にいるような権威をもつ。
 己が丙に交わるのは、竜が風雲を得る形のような勢いがある。
 庚が己土にあうのは、官禄が十分にある。
 辛が戊の郷にいたるのは、衣食が十分に足りる。
 壬辛が会うと、福寿は限りなし。
 癸庚が逢うのは、多くの下僕や馬がある。
 印が清で強いのは、必ず冠をかぶり馬車に乗るようになる。
 官星が冲破されるのは、権威が顕れても官位が解かれるようになる。

 喜神の印綬(正印)の話です。ただしここに書かれたほどの良さかどうかは、干関係によってはちょっと疑問です。干関係が良いのは甲癸、戊丁、辛戊で、乙壬、己丙、庚己、癸庚は書かれているほどではないように思います。また壬辛は壬よりも辛に良い作用があり、丙乙はあまり好作用はないのではないように思います。
 「禄星」は正官として訳しました。官と印があるのは、いわゆる官印双全で、高位に昇るとされます。「綬」というのは官位を示す組み紐のことです。(おそらく行運で)冲や刑、剋を受けると官位を解かれるということでしょう。



陽木甲逢庚敗、枝幹不能無傷。
陰木乙遇辛金、茎葉自然有損。
炎炎丙火、遇壬而赫赫無光。
爍爍陰火、逢癸而明輝自暗。
戊居甲位、惟頼庚方能吉。
己坐乙郷、知是干頭有鬼。
庚逢丙哉、勢自傾危。
辛被丁侵、剋伐成害。
壬憂戊至、蹇気難通。
癸怕己臨、迍晦驚惶。
干鬼帯禄旺、扶持更破。
支神無吉神、禍皆難免。
 甲木は庚にあえば敗れ、枝や幹は傷つけられないことはない。
 乙木が辛金にあえば、茎葉は自然に損なわれる。
 非常に強い丙火は、壬にあえば、赫々として光なし。
 赤々と燃える丁火が、癸に逢えば明るく輝いても自ら暗くなる。
 戊が甲の位にいるのは、ただ庚を頼りにして吉となる。
 己が乙の郷に坐すのは、天干に乙が来れば鬼ありと知る。(地支に乙があっても害にならないという意味)
 庚が丙に逢うのは勢いは自ずから危うく、辛が丁に犯されるは剋伐により害となる。
 壬が戊に至れば憂い、気は閉塞し通りにくい。癸は己が来るのを恐れ、その気が止められて流れずおたおたする。
 干鬼が禄旺(強い正官)を帯びれば、干鬼は助けられさらに福は敗れる。
 支神に吉神がなければ、禍いは皆免れがたい。

 ここでは七殺について述べています。
 丙壬については、ここでは悪い関係のように書かれていますが、注に、丙火は太陽で壬水は江海であるから壬水は丙火を剋することができない、とあります。すなわち丙壬は他の七殺とは異なり、それほど悪い作用はないと言われます。
 戊甲については、庚が救神となることをわざわざ書いています。この作用は覚えておくとよいでしょう。
 「禄旺」は官が強い意味だとしました。官が強いわけですから、地支にあれば根となり、また天干にあれば官殺混合で日主を弱めるのでよくありません。
 七殺はだいたい悪いとしていますが、作用が強く出るのであって悪いかどうかは喜忌によります。ただ、丙壬は干関係がよく、また庚丙はとくに冬はよいといえます。



食堂福禄崇高、皆言甲到丙郷。
朝省権貴優昇、蓋為乙居丁舎。
官禄併畳、丙食戊而成功。
穀麦盈倉、丁啖己而有旺。
要得豊足、無過戊得逢庚。
欲問高遷、全頼己加辛地。
満堂金玉、庚禄有壬。
広置田園、辛能食癸。
壬食甲而有旺、衆福如麻。
癸向乙而生成、入食列鼎。
五行既廃、得救助而災軽。
四柱官印、無損壊而禄重。
 食神というのは福禄が崇高であるのは、甲が丙の郷に行ったときである。
 政府で権力を得て昇進するのは、およそ乙が丁を洩らすときである。
 官禄があわせてあれば、丙の食神戊は功成る。
 穀物が倉に満ちるのは、丁に己食神があり旺じるときである。
 豊かで満足するのは、戊が庚食神を得たときである。
 昇進するのは、己が辛地にあって頼るためである。
 金玉が堂に満ちるのは、庚が壬の食神を得るときである。
 広い田園を得るのは、辛が癸の食神を得たときである。
 壬の食神甲が旺じつときは、福が集まること麻の如し。
 癸が乙に対して生ずるのは、食の入った器が列をなす。
 欲しい五行が弱くなっても、救や助があれば災いは軽くなる。
 命式に官印があって、損壊することがなければ禄は重くなる。

 ここでは食神について述べています。
 食神については、喜忌はもちろんあるのですが、だいたい干関係が良くしかも強く洩らすのではなくマイルドな干関係です。ただし己辛は例外で干関係は基本的に悪いです。辛が喜神だとしても昇進するのに苦労したり忌神の行運が巡ってくるとあっというまに地位を失ったり、そういうことが起こりえる関係です。
 丙戊の場合は、丙がある程度強ければ正官癸よりは七殺壬の方が成功します。
 最後の句には食神が出てきませんが、例えば丙日主なら壬丙甲癸というような干の組み合わせを想定していると思います。地支にもよりますが、この組み合わせはいかにも出世しそうです。



甲逢丁而成焔、資財累歳多虧。
乙遇丙而化灰、金玉自消難聚。
天元正敗、丙見己而傷残。
干禄全軽、丁値戊而衰弱。
戊若逢辛、須仗吉殺以扶持。
己宜輸庚、実頼五行之救助。
庚中見癸、蕩散資金。
辛禄遇壬、銷鎔福禄。
年少逢災、壬傷乙運。
祖財随廃、癸被甲侵。
衣食難求、幼歳常逢五鬼。
遁悶休祥、長年元値三刑。
禍来難免、禄本逢衰、若遇敗神、滋生休咎。
 甲が丁に逢うのは炎となり、資財は年をへて失われる。
 乙は丙に遇えば灰となり、金玉は自ずから消えて集めるのは難しい。
 天干まさに敗れるのは丙が己を見るときで傷残る。
 干禄が全く弱くなるのは丁が戊にあったときで衰弱する。
 戊がもし辛に逢えば、必ず吉神の助けを必要とする。
 己が庚にあってよいのは、五行の救、助を必要とする。
 庚が癸をみれば、資金を使い尽くしてしまう。
 辛が壬をみれば、福禄を溶かしてしまう。
 若いときに災いにあうのは、壬が傷官乙運に逢うときである。
 祖先の財がすたれていくのは、癸が甲に侵されるからである。
 衣食を求めがたいのは、幼時に常に七殺に逢うからである。
 よいことがないのは、長年日主が刑にあうためである。
 災いが来て免れがたいのは、正官が衰に逢うときであり、もし敗にあれば一生目がでることがない。

 ここでは傷官について述べています。
 傷官というのは正官を傷めるものですから、昔は仕官や昇進の妨げになるということで嫌われていた変通星です。しかし今の世の中では個性を尊重しますので、必ずしも悪い変通星とはいえません。したがってここでは傷官を悪く書きすぎていると思うので、以下に傷官に対する私見を述べることにします。
 甲日主で丁傷官は、甲を洩らす作用が大きいので日主を弱めます。財に堪えられない日主になる可能性があります。
 乙日主で丙傷官は、ここで書かれてるほど悪いとは思われません。命式に水がない場合は財(土)があっても財を積むのは難しいかもしれません。
 丙日主で己傷官は、丙火が弱い場合には己の洩らす作用が強く出ます。
 丁日主で戊傷官は、壬正官が喜神の場合にそのよさを抑えるということです。傷残衰弱とは傷官見官の意味です。
 戊日主で辛傷官は、辛が埋金になりやすいです。  己日主で庚傷官は、通常の五行関係です。  注によれば土金傷官は財を喜ぶとありますが、いわゆる土生金、金生水で五行が流通する関係となります。通関に近い作用といってもいいでしょう。財を用いる場合には戊辛の場合は壬、己庚の場合は癸がよいです。
 庚日主の癸傷官は、通常の五行関係ですが、甲乙財を剋す作用を弱めます。これは甲乙が癸で湿木になりやすいからです。
 辛日主の壬傷官は、干関係のよい傷官です。女性だと美人が多いとされます。注によると辛禄とは戊のようですが、戊は辛を強め壬を弱めますので、弱い辛にとっては吉神といえます。この文は「辛禄」に対して壬は良くなさそうに書いていますが、そんなことはなと思います。
 壬日主の乙傷官は、普通の五行関係です。確かに忌神の場合は良くないとは思います。
 癸日主の甲傷官は、普通の五行関係ですが、癸が強い場合甲が腐木となり悪作用が大きいです。
 最後の「衰」や「敗」は十二運の衰や沐浴ではなく、単に正官を弱める物(すなわち傷官)という意味で使っているようです。



況夫甲憎乙向、逢之自己多災。
乙被甲臨、反与人為助。
壬行癸厄、丙最輸丁、辛忌庚方、丁嫌暗丙。
戊同己兮、多生脾胃之疾。
己共戊兮、反有奔波之事。
柔能制剛、多因辛与庚期。
大重之余、乃是辛居庚地。
癸中隠丙、壬午遇之多傷。
壬内蔵丁、癸水翻然自敗。
陽者若為暗損、平生為悪軽生。
陰位即曰敗神、処世憂賎抑塞。
 だいたい甲は乙に向かうのを憎み、これにあえば災いが多い。
 乙が甲に臨めばかえって人の助けを受ける。
 壬は癸に行くのを厄とし、丙は丁に最も与え、辛は庚の方を忌み、丁は暗に丙を嫌う。
 戊と己が同じくするのは多くは胃腸系統の病気となる。
 己と戊がともにするのは、かえっていろいろと苦労する。
 柔よく剛を制するとは、辛金により庚が元気になることである。
 多すぎてもよいのは、辛が庚地にいることである。
 癸は丙を隠し、壬午がこれに逢えば多く傷つく。
 壬のうちには丁が蔵されており、癸水は翻然と自ずから破る。
 陽はもし暗に損なわれれば、ふだんから悪となり生は軽い。
 陰はすなわち敗神であり、処世は賎を憂いまた抑圧閉塞される。

 ここでは劫財について述べています。
 劫財は一般的に悪いとされていますが、ここでは同じ五行で異なる干の強弱や作用について区別して書かれています。
 甲乙は、甲が乙を助け、乙は甲を弱める関係です。
 丙丁は、丙が丁を助け、丁は丙があると丁の作用が隠れます。
 戊己は、助けるという関係よりも多いか少ないかが問題です。土が多すぎるのはどの干に対してもいい作用はありません。土は身体では消化器官をつかさどります。
 庚辛は、干関係はお互いよくありません。辛は庚の助をうけますが、それよりは地支の庚(すなわち申)がいいということでしょう。また申には壬も含まれるので淘洗の作用があります。
 壬癸は、壬が癸を強め癸は壬にあまり作用はありません。
 「壬内蔵丁」とは干合のことを指すと思います。丁が壬を干合すれば癸は壬の助を受けなくなるので弱くなります。
 最後の句はわかりにくいと思いますが、その意味は、陽干の方が剋の害は大きく、陰干の方は洩らされる害の方が大きいということです。
 劫財は、だいたいは陽干が陰干の助けになり、陰干は陽干の助けになりません。



甲見辛而化官、剛柔相済。
乙見庚而為福、兄弟同郷。
水火既済、却言丙対癸郷。
意気相承、乃是丁帰壬舎。
戊臨乙位、得木而生成。
己向甲郷、陰遇陽而可貴。
白虎遇道、庚加丁臨。
太陰得路、辛帰丙舎。
壬憐己兮、遠泛洪波。
癸喜戊兮、波瀾漂渺。
陽遇陰而化合、陰得陽而成器。
 甲が辛を見るのは官とし、剛と柔がうまくかみあっている。
 乙が庚を見るのは福とし、兄弟同郷のようなものである。
 水火既済はかえって丙が癸の郷にいることを言うようなものである。
 丁壬は意気があう関係である。
 戊が乙の位にいるのは、木を得て生成する。
 己が甲の郷にいるのは、陰が陽にあって貴となる。
 白虎が道に遇うとは、庚が丁に臨むことである。
 太陰が路を得るとは、辛が丙を合することである。
 壬が己にあっても、遠くまで氾濫する。
 癸は戊を喜び、わずかに波が洗う程度である。
 陽が陰に遇うのは合や化となり、陰が陽を得るのは器となる。

 ここでは正官について述べています。
 正官は陰陽の違う剋関係であり、干合の組み合わせです。通常夫婦関係を指します。
 乙庚については「兄弟同郷」といっていますが、夫婦ではなく兄弟のような関係だと言いたかったのかもしれません。
 ここでは、正官はだいたいにおいてよいと書かれていますが、例外的に壬己は悪い関係であるとしています。いわゆる己土濁壬ですが、これは私も同意見です。  陰干が陽干を正官とするのは、陽が強く陰が弱いという順当な関係といえます。それを「成器」と言ったものでしょう。逆に陰干が正官となるのは、弱い陰が強い陽を剋すことになり、剋関係とは逆になります。よって剋よりも合や化の意味が強く出るということなのだろうと思います。



又有甲己相逢、化土為福、則夫婦遐昌。
乙庚相合、成金得位、則東西類化。
丙辛化水、智顕則必主文章。
丁壬為木、聡明則近善多仁。
戊癸得化、禄位崇高、二者相逢、三才可立。
陰遇陽而化官、到旺方官崇位顕。
陽得陰而成配、臨有気財旺妻賢。
 また甲己が逢うのは、化土して福として、夫婦は長く栄える。
 乙庚の合は、金が位をえて成る、すなわち物事が類化する。
 丙辛は水と化し、知があらわれ必ず学問(文章)をつかさどる。
 丁壬は木となり、聡明にして善に近く仁多し。
 戊癸ば化を得れば、禄位は高く、二者が逢えば、三才が立つ。
 陰が陽に遇うのは官となり、旺方に到れば官位が顕れる。
 陽が陰を得れば配となり、財がつよければ、財を得て妻は賢である。

 前項の正官に続いて、ここでは「化合」について述べています。
 甲己の合は化土で陰干にひきずられます。乙庚の合は化金で陽干にひきずられることになります。この二つは化する五行にひきずられる場合ですが、陰干にひきずられる場合には家庭、陽干にひきずられる場合は外部の組織にひきずられる傾向があります。
 丙辛は化水で水は智を示す五行です。丁壬は化木で木は仁を示す五行です。これは化する五行の性質を有するということを言っています。  戊癸は化火して、戊は癸の正官、火は癸の財、また火は戊の印で、三才すなわち財官印そろうということでしょう。
 また最後の2行は、陰日主が陽干の合の場合は陽が正官、陽日主が陰干の合を得る場合には正財ということを言っています。



是以平生不足、甲為壬傷。
処世多迍、乙因癸剋。
陽自敗兮、丙為甲傷。
陰不明兮、丁縁乙制。
上之凌下兮、戊遭丙食。
卑恐欺尊兮、己傷丁炎。
陽庚嘹唳兮、戊土晦之。
辛禄卑薄兮、己陰破之。
失之於智、皆因庚禍於壬。
喪之於権、毎遇辛傷於癸。
 これでふだんも充足していないのは、甲が壬を傷とするからである。
 処世で停滞が多いのは乙が癸により剋されるからである。
 陽が自敗とは、丙が甲で傷つけられることである。
 陰で明らかでないとは丁が乙の制を受けるということです。
 上が下を凌駕するのは、戊が丙の食に遇った場合である。
 卑が尊を恐れ欺くとは、己が丁の炎に傷ついたときである。
 陽である庚が涙を流すのは、戊が庚を覆い暗くなったときである。
 辛が禄は卑薄であるというのは、己の陰が辛を破るからである。
 知を失うのは、皆壬において庚の災いによるのである。
 権力を失うのは、だいたい辛が癸において傷を受けるからである。

 ここでは偏印について述べています。偏印は梟、倒食とも呼ばれ、正印とは異なり凶を含む傾向にあります。
 乙が癸に剋されるとは少し変ですが、偏印は倒食で凶意があるということなのでしょう。
 丙は強い干ですが、甲が多い場合は光が届かずあまりよくありません。
 乙は丁の印ですが、その作用は明らかではありません。あまり印の作用はなく凶意を含むという人もいます。
 庚辛に対する戊己の作用については、前者は埋金、後者は汚玉といわれることです。
 壬癸に対する庚辛は普通の五行関係でいいと思いますが、水が強すぎるのは凶意が出ます。



甲乙常欣戊己、乃為身内之財。
丙丁尤喜庚辛、実是生成之福。
勾陳得地、戊帰壬郷、陰土逢財、己加癸位。
庚辛寅卯、自然而福寿。
壬癸丙丁、喜楽以無虞。
当知我害彼吉、彼害我凶、以直而言之、消詳為可矣。
 甲乙は常に戊己をよろこび、これは財となるということである。
 丙丁は庚辛をもっとも喜びますが、実はこれは福をなすということである。
 勾陳が地を得るとは、戊が壬の郷に帰るということであり、己が財に逢うとは、己が癸の位にあるということである。
 庚辛の地支が寅卯とは、また自ずから福寿となる。
 壬癸丙丁は、喜び楽しみがありおそれることはない。
 我が彼を害するのは吉で、彼が我を害するのは凶だと知れ。簡単にいえばそういうことだが、詳しくみることも大事である。

 ここでは財について、正偏をあまり分けずに述べています。
 ただし戊己だけは偏財についてだけ述べています。理由はよくわかりません。
 庚辛には寅卯とありますが、ここで地支の話をするのは唐突なので、甲乙のことを意味していると考えます。
 害というのが仮に剋だとすれば、偏財は吉で七殺は凶ということでしょうか。
 「以直而言之、消詳為可矣」という部分は訳を変えました。「漢語網」サイトによると、「消詳」は推測するとか詳しくみるとか、あるいは引き延ばすというような意味があるようです。今まで知りませんでした。



あとがき

 解釈をかなりはしょっていますが、「十干体象」に書かれた以上に十干の特質を示しているところもあります。また干関係に着目しているので、「十干体象」よりもよほどわかりやすいところもあります。
 原文を注意深く読むと、単に干関係を示しているわけではありません。ところどころに解説はほどこしていますが、干ではなく支との関係も述べています。また細かに解釈していない部分で、実は天干ではなく地支との関係を指していると思われるところもあります。「郷」と書かれている部分は、だいたいは行運の地支を指しています。(それだけではないですが)
 実はこの賦の重要性に気づいたのは2005年頃です。「十干体象」と並べて、干ごとに解説すればもっとわかりやすかったかもしれません。



作成 2005年 日付不明
改訂 2020年 7月19日  HTML5への対応、一部見直し