booksTitle.JPG

1999.12.26
TVで『第44回 有馬記念』を観た。

 5歳2強、ライバル同士の最後の闘いは、写真判定にまでもつれこむというこの上なくドラマティックな展開に。
 思わず涙した。いいレースだったよ。ああ、競馬ってやっぱいいよなぁ。

 2連覇おめでとう、グラスワンダー。
 花道を優勝で飾れず残念(その差わずか4cm!)、だけどキミのこと忘れないからね。お疲れさまでした、スペシャルウィーク。

 そして。
 ご冥福をお祈りいたします、大川慶次郎さん。

 それから。
 2000年はキミの時代だ! 応援してるよ、ツルマルツヨシ。

 ちなみに。
 今年好調だった私は、このレースでもしっかり取らせていただきました。
 おかげで気分よく新年を迎えられそうです。
 来年もよろしくね、おウマさんたち。
 

『第44回 有馬記念』
1999年12月26日 中山9R 芝2500m
1着・グラスワンダー(的場/2分37秒2)  2着・スペシャルウィーク(武 豊/鼻)
3着・テイエムオペラオー(和田/首)  4着・ツルマルツヨシ(藤田/1/2)


1999.12.22
『大江戸死体考──人斬り浅右衛門の時代』を読み終えた。

 江戸の人々がいかに死体と仲良しだったかを綴った本。
 面白かった。

 副題にある「人斬り浅右衛門」とは、処刑者の死体を用いての刀剣試し斬りを稼業とした浪人・山田浅右衛門(初代から八代まで存在)のこと。
 試し斬りは将軍様の御前でも披露される(死体を斬って将軍様たちの御道具の状態をチェックするのだ)立派な芸事なので、浅右衛門やその弟子たちは日々稽古を欠かさなかったそう。
 さらに彼らは請われて処刑人も務め罪人の首をはね、また当時薬として密かに重宝されていた「人胆」を処刑者の死体から抜き取り、それらを売って財を成したりもしていたらしい。

 歴史モノに疎い私は、そんな人たちが存在したことをまったく知らなかったよ。想像したことすらなかった。
 勉強になったなぁ。
 

平凡社新書『大江戸死体考──人斬り浅右衛門の時代』
著/氏家幹人 発行/平凡社
1999年9月21日初版第1刷発行 ¥680 ISBN4-582-85016-2


1999.12.16
『YASHA 夜叉』第7巻を読んだ。

 遺伝子操作、殺人ウィルス、バイオハザード……ワクワクするねぇ。このハードぶり、骨太さ、さすがは吉田秋生さんだわ。

 双児の兄弟、静と凛の対立はいよいよ国家を巻き込んでの騒動へと発展。
 早く続きが読みたーい!!
 

別コミフラワーコミックス『YASHA 夜叉』第7巻
著/吉田秋生 発行/小学館
2000年1月20日初版第1刷発行 ¥390 ISBN4-09-136740-2


1999.12.16
『山田太郎ものがたり』第11巻を読んだ。

 太郎ちゃん、負けるなー!
 

あすかコミックス『山田太郎ものがたり』第11巻
著/森永あい 発行/角川書店
1999年12月14日初版発行 ¥400 ISBN4-04-924803-4


1999.12.11
『ある流刑地の話』を読み終えた。

 カフカの短編小説集。
 2、3の物語を除いては、特に思うところなく淡々と読んでしまった。
 

角川文庫クラシックス『ある流刑地の話』
著/フランツ・カフカ 訳/本野亨一 発行/角川書店
1963年9月20日初版発行 ¥500 ISBN4-04-208303-X


1999.12.11
『宦官──中国四千年を操った異形の集団』を読み終えた。

 性器を切除され(または自ら切除して)宮廷に仕えた者たち、すなわち「宦官」の実態に迫った一冊。
 彼らの心理や生活様式、また中国の歴史の中で担った彼らの役割、その功罪などを検証しつつ、多角的に見ることで、極めて特殊な集団「宦官」の全体像を捉えようという試みがなされている。

 そもそも何で? と疑問に思っていたんだよなぁ。
 宮廷に入るのに何で去勢しなきゃならんのだ、って。
 早くも序章でその答えを得ることができて、とりあえずは満足。

 ハーレムあるところに「宦官」あり、なのだそうだ。皇帝のお囲いの女性たちに手出しされてはかなわん、ということで去勢を義務付けたんだって。
 だから同じ理由でヨーロッパにもイスラム世界にもインドにもかつて「宦官」はいたらしい。
 けれどその制度が20世紀まで延々と続き、しかも彼らを歴史の裏舞台に大きく関与させてきたというところが、なんかスゲエよな、と思ったよ、中国。

 中国という国のとてつもないデカさ、奥深さを、改めて知らされた気がする。
 

『宦官──中国四千年を操った異形の集団』
著/顧蓉、葛金芳 訳/尾鷲卓彦 発行/徳間書店
1995年11月30日初刷発行 ¥1600 ISBN4-19-860393-6


1999.11.29
『ことばの贈物──岩波文庫の名句365』を読み終えた。

 岩波文庫の名句集。

 最も感銘を受けたのは次の一句。
 「まず食うこと、それから道徳」──ブレヒト『三文オペラ』より。
 

岩波文庫別冊『ことばの贈物──岩波文庫の名句365』
編/岩波文庫編集部 発行/岩波書店
1985年5月16日第1刷発行 ¥460 ISBN4-00-350006-7


1999.11.25
中野武蔵野ホールで『双生児』を観た。

 かつてこれほどまでに気味悪いモックンを観たことはなかった。
 かつてこれほどまでに美しいモックンを観たこともなかった。

 なんかやっぱスゲエよな、塚本監督って。
 

『双生児』
監督・脚本・撮影/塚本晋也 音楽/石川 忠 原作/江戸川乱歩
出演/本木雅弘・りょう・筒井康隆・石橋蓮司・浅野忠信ほか


1999.11.25
『アラマタ図像館1[怪物]』を読み終えた。

 荒俣 宏さんの図像コレクションの中から「怪物」に関するものを選び集めて編んだ本。

 いやぁ楽しいなぁ。スッコトゴッコイのオンパレード。しかもそれらがみなもっともらしく立派に描かれてる。彩色された銅版画のなんと鮮やかなこと!

 科学も情報網も発達していなかった時代には、実際に見て触れられる生き物以外は何でも「怪物」になれたんだね。
 海を泳ぐ巨大な鯨やエイも、遠く離れた大陸に棲むカバやサイも、み〜んな「怪物」。不確かな情報と想像力だけで描かれているから、ドラゴンやユニコーンといった空想動物と大差ない、いやそれ以上にトンデモナイ形になっちゃう。愉快〜。

 なんて言ってる私も先日、かなりスットコドッコイな絵を描いてしまった。自分の記憶力のみを頼りにある動物を描いてみたのだけれど、出来上がってみたらばそこには見たことのない「怪物」が……。
 実のところ、そのスットコドッコイな絵こそが、この本を手に取るきっかけだったんだけれど、私のスットコドッコイなどまだまだ甘いよな〜なんて思い知ったよ。
 

小学館文庫『アラマタ図像館1[怪物]』
著/荒俣 宏 発行/小学館
1999年6月1日初版第1刷発行 ¥733 ISBN4-09-403111-1


1999.11.23
『老人と海』を読み終えた。

 今夜の肴はマグロ刺にしようかなぁ、と思った。
 

新潮文庫『老人と海』
著/アーネスト・ヘミングウェイ 訳/福田恆存 発行/新潮社
1966年6月15日発行 1980年5月5日49刷改版 ¥400 ISBN4-10-210004-0


1999.11.23
『COMIC CUE Volume7!』を読んだ。

 今回はロボット大特集! でもロボットとは無関係の「傷だらけの天使」が一番美味だったな。
 東宝テレビ部協力、漫画:やまだないとさん/脚本:西田俊也さん/原案:市川森一さん。
 っもう、まんまオサムちゃんだよ! アキラだよ! 素敵。TV観てるみたーい。
 

『COMIC CUE Volume7!』
著/とり・みき、吉田戦車、小原愼司、地下沢中也、古屋兎丸、水野純子、やまだないと+西田俊也+市川森一、中川いさみ、おおひなたごう、水谷さるころ、黒田硫黄、田中圭一、能田達規 発行/イースト・プレス
1999年11月1日第1刷発行 ¥897 ISBN4-87257-190-8


1999.11.18
『MANGA EROTICS VOL.3』を読んだ。

 男性の方が描くエロより、女性の方が描くエロの方が、よりエロい。
 もちろん一概には言えないことなのだろうが、ふとそんなふうに思えてしまった。
 どーしてかなぁ? 私が女だから?
 

『MANGA EROTICS VOL.3』
著/町田ひらく、やまだないと、福山庸治、砂、重松ススム、駕籠真太郎、町野変丸、森園みるく+村崎百郎、林あまり、フレデリック・ボワレ、ナミルチモ、あめかすり、雁須磨子、久我山リカコ、卯月妙子、山本直樹 発行/太田出版
1999年10月30日第1版第1刷発行 ¥780 ISBN4-87233-484-1


1999.11.18
『種田山頭火の死生──ほろほろほろびゆく』を読み終えた。

 俳人・種田山頭火、いや人間・種田正一の生涯を小説風に綴った一冊。

 山頭火を神経症者と見る著者によって施された脚色が気にならないではなかったが、実際の山頭火を知ってるわけじゃなし、まぁあるいは本当にそういう鬱々とした人物だったのかもね〜なんて思う余裕が私にはまだ充分ある。つまり私は、とある特殊な像に腹を立てるほどの強い思い入れを、山頭火に対しては持っていないのだった。

 山頭火もいいなぁとは思う。思うけれど、やはり私は尾崎放哉の句の方が断然好き。
 

文春新書『種田山頭火の死生──ほろほろほろびゆく』
著/渡辺利夫 発行/文藝春秋
1998年10月20日第一刷発行 ¥640 ISBN4-16-660008-7


1999.11.15
『ブレスト ブラザーズ』を読んだ。

 しまった! 1年も前に出てたのか。気が付かなかった……。

 ホモ・カップルも顔負けのイチャイチャ仲良し兄弟、ヒロと拓を主人公とするアマチュア・バンド物語『THE 神田兄弟』(1994年 June Comics/マガジン・マガジン刊)は、私の密かなお気に入りの一冊なのだけれど、『ブレスト ブラザーズ』はまさにその続編で、同時に神田兄弟シリーズの完結編。

 嬉しいなぁ。ヒロと拓のほのぼのぶりも相変わらずだし、作者・加藤さんの洋楽ロック好きぶりも相変わらず。
 1年遅れとはいえ、読めてホント、ハッピー。

 それはそうと、ずっと気になってることがあるんだ。
 加藤さんってご自身もバンド経験者じゃありません? んでもって、神田兄弟のモデルはジザメリで、青山くんのモデルはモリッシー?
 違うかなー?
 

『ブレスト ブラザーズ』
著/加藤冬紀 発行/ヒット出版社
1998年9月18日初版発行 ¥619 ISBN4-89465-049-5


1999.11.15
『ドラゴンヘッド』第9巻を読んだ。

 テルくんの笑顔が見たい……。
 

ヤンマガKCスペシャル『ドラゴンヘッド』第9巻
著/望月峯太郎 発行/講談社
1999年10月6日第1刷発行 ¥514 ISBN4-06-336826-2


1999.11.13
『面白すぎる日記たち─逆説的日本語読本』を読み終えた。

 公刊されている多くの日記を楽しく読んでみましょう、という本。

 ゴシップばかりを口述筆記させたウォホール日記、天候の描写にこだわる藤原定家の日記、1日の出来事を記すのに5冊ものノートを必要とした小津安次郎の日記、セックスの回数がマークで書き入れられた大塚英子(吉行淳之介の愛人)の暗室日記、三島由紀夫が繰り返し登場する横尾忠則の夢日記、口語から突如文語調に変わる山田風太郎の日記、などなど、ここには実にさまざまな日記が紹介されている。

 なるほど、日記には多様なスタイルがあるものだなぁ。そしてそれらの日記を読む側にも、またいろいろスタイルがあるんだね。
 著者の持つスタイルのひとつ、同日日記の並べ読み、なんて私には思いもつかないものだったよ。 巣鴨プリズンで書かれたA級戦犯二被告、重光 葵と木戸光一の日記を手元に置き、同日の記述を比べながら読むくだりが、なんとも興味深かった。

 ところで私は、世の中に私の日記ほど面白い読み物はない、と常日頃、大真面目に思っていて、本書を読んでもその考えは覆らなかった。
 あまりに面白いので、たまに他人様にもお見せしたくなるのだけれど、お見せしたところで「面白い」とはなかなか言ってもらえないだろう。
 あるいは言ってもらえるかも知れないが、自分の日記を読む面白さは、他人様の日記を読む面白さとは、なんというか質が異なるような気がする。この面白さは、書いた本人だけが味わえる、多分特権的な面白さなんじゃないかな、と思う。いや、本書を読んで、そうに違いないと確信した。
 

文春新書『面白すぎる日記たち─逆説的日本語読本』
著/鴨下信一 発行/文藝春秋
1999年5月20日第1刷発行 ¥690 ISBN4-16-660042-7


1999.11.12
『LOGOS』を読んだ。

 とにかく今年はこの方にツボを押されまくってしまった。
 小野塚カホリさん!!

 最新刊にあたるこの本も迷わず購入。'97〜'98年に描かれた5つの短編からなる一冊。

 少年たちの一瞬の夏。トランクには愛犬の腐乱死体。旅路の果ては約束の地。物言わぬ生首と交わすキス……。

 ああ、いいなぁ。好き。大好き。涙、出そう。
 

June Comics ピアス・シリーズ『LOGOS』
著/小野塚カホリ 発行/マガジン・マガジン
1999年11月15日初版発行 ¥619 ISBN4-906011-63-2


1999.11.12
『哲学に何ができるか[現代哲学講議]』を読み終えた。

 20年前に留まったままの一冊。
 無味乾燥。
 

『哲学に何ができるか[現代哲学講議]』
著/廣松 渉+五木寛之 発行/朝日出版社
1978年12月10日第1刷発行 0310-178155-0039(古書店にて購入)


1999.11.04
『雪のひとひら』を読んだ。

 人生、山あり谷あり、だね。

 珠玉と呼ばれるファンタジーに接して、そんなひからびた感想しか持てなかった私は、どうやら人生の大平原で迷子になっているらしかった。
 

新潮文庫『雪のひとひら』
著/ポール・ギャリコ 訳/矢川澄子 発行/新潮社
1997年12月1日発行 ¥400 ISBN4-10-216803-6


1999.11.02
『家畜人ヤプー』を読み終えた。

 いつかは読みたいとぼんやり思っていた奇書。
 書店で文庫が目に入ったので、ついに、というか、今さらながら、というか、ともかく手にしてしまった。
 そしたらこれが、期待以上にめちゃくちゃ面白くて! 今まで読まずに生きてきてしまったことを、ちょっぴり後悔したよ。

 2000年後の世界、太陽帝国イースでは、差別が制度化されている。白人こそが人間であり(しかも女性上位)、黒人は半人間、そしてそれ以下の家畜とされるのが、かつて日本人と呼ばれた種・ヤプーである。
 生きながら白人たちの家具にされ、便器にされ、乗り物にされ、玩具にされ、食肉にされる、旧日本人のヤプーたち。しかしここではそれが当然のことなのだ。高い知性を備えていようが何だろうが、ヤプーは所詮家畜なので。
 『家畜人ヤプー』とは、早い話が、そんなとんでもない世界を描いた物語だ。

 とんでもない世界だが、しかし見事に構築された世界でもあって、歴史、政治、経済、文化、社会……隅々まで実によく書き尽くされている点に、すっかり魅了されてしまった。
 なんでも、『家畜人ヤプー』の帝国イースは作者・沼 正三さんにとっては憧れの地、ユートピアと呼べるものなのだそうだが、現実からまったく乖離したこの一大世界を創り上げるに至った、沼さんの発想力、想像力たるや! もうただただ、凄いと感嘆。

 ところで、最終巻に所収された著者あとがきの中に
「被虐愛好や崇物馴致(特に汚物の物神化)といった愛情の畸形、神聖冒涜や祖国呪詛といった精神の崖っ縁、それらに嫌悪ないし恐怖しか感じない素朴な心性の持ち主と健全な未成年者には、この本は毒だろう、読んでほしくもない」
 とあった。
 確かに、あらゆるタブーの蓋が開かれて、異端とされ隠されていたものがずるずると引っ張り出される光景を、理解の外に置く方は多く存在しそうだな。
 またヤプーとなる私たち日本人に対しては、人種偏見とか愛国心とかについての自問を執拗に迫ってくるから、自身の本心と向き合う覚悟のない方にとってもこの本は辛いに違いない。

 そのような、この物語に少しも楽しみを見出せない方々にはぜひ一言、声をかけてさしあげたいよ。
「お気の毒さま」。
 

幻冬舎アウトロー文庫『家畜人ヤプー』(全5巻)
著/沼 正三 解説/奥野建男(第1巻)、前田宗男(第2巻)、巽 孝之(第3巻)、荒俣 宏(第4巻)、高橋源一郎(第5巻) 発行/幻冬舎
1999年8月25日初版発行 各¥648 ISBN4-87728-781-7 782-5 783-3 784-1 785-X


1999.10.27
『死体しか愛せなかった男 ジェフリー・ダーマー』を読み終えた。

 いわゆる異常犯罪者を扱った記録ものである。
 ここでの主人公は1991年、米ミルウォーキーで逮捕された、ジェフリー・ダーマーという男。
 彼は17人もの青年を殺害し、相手の死体を愛撫して、犯して、切り刻んで、食べて、骨にして手元に置いた。

 何らかの答えを示した書というわけでは決してない。
 なにせ著者を含めて結局は誰ひとりとして──高名な専門家たちでさえも、異常な行動を繰り返した彼の心理を明確に分析・理解できた者はいなかったのだし!
 たがそれでも、とても読み出のある一冊だった。

 “殺人鬼もひとりの人間”。
 この視点を欠くことなく、ダーマーの生い立ち、犯行の一部始終、そして逮捕後の法廷の様子までを丁寧に追い、彼本人と彼の犯した罪をどう捉えたらよいか、その考察に努めた著者に、私は少なからず好感を覚えた。
 そして読みながら、実にさまざまなことを考えさせてもらった。

 残念ながら、それらさまざまな考えを文章にする力は、今の私にはないのだけれど……。
 

『死体しか愛せなかった男 ジェフリー・ダーマー』
著/ブライアン・マスターズ 訳/柳下毅一郎 解説/森園みるく 発行/原書房
1999年3月27日第1刷発行 ¥1900 ISBN4-562-03182-4


1999.10.19
シアターアプルで『大正四谷怪談』を観た。

 伊右衛門がいて、お岩がいて、直助がいて、お袖がいて、だけど馴染みの東海道四谷怪談とはまったく異なる物語だった。
 残忍非道な色男、伊右衛門。そんな彼をただひたすら愛し抜くお岩。むごい仕打ちを受けながらもやはり伊右衛門に尽くす直助。運命に弄ばれ実の兄・直助と恋仲へと陥るお袖。
 4人の関係は多分にドラマチックで、殺人あり、近親相姦ありのストーリーはその筋書きだけでも面白かったが、それを無駄なくシンプルに徹して見せた演出がまた、良かった。

 そして何より藤原竜也くん!
 舞台の上の藤原くんは、ブラウン管の中の彼よりずっとずっと大輪の華。
 冷酷で美しい伊右衛門、惚れ惚れしたよ。
 

『大正四谷怪談』
脚本/岸田理生 演出/栗田芳宏 企画制作/ホリプロ
出演/藤原竜也・松井 誠・田山涼成・寺島しのぶ


1999.09.27
『π[パイ]の神秘』を読み終えた。

 π[パイ]=円周率。つまり、円周は直径の何倍か?──ただそれだけのことである。ただそれだけのことなのだが……。

 「πほど神秘とロマンと誤解、そして人間の興味を呼び起こす数学記号は、たぶんほかにないだろう」──ウィリアム・L・シャーフ『πの性質と歴史』

 序章に掲げられていたこの言葉の、まさにその通り! というのが、本書『π[パイ]の神秘』を読み終えたばかりの私の感想。
 πについてのあれこれの中で、とりわけ「πの歴史」が私には面白かった。紀元前2000年から始まる、人類の長い長い、πとの格闘の旅。ホント、ロマンだよなぁ。

 2色刷りの装丁も好き。πの小数点以下100万桁(!)をデザインに組み込むという粋な仕掛けにもうっとり。買って得した気分になった。
 

『π[パイ]の神秘』
著/デビッド・プラットナー 訳/浅尾敦則 発行/アーティストハウス
1999年7月24日初版第1刷発行 ¥1600 ISBN4-901142-09-7