何だか青春物のようなタイトルです。たかが防寒具に、青春物はないだろうと思われるかも知れません。でも防寒具って案外青春物なのです。考えると結構熱いのです。そこには、寒さとの戦いがあります。そしてその裏に予算とかっこよさの戦いがあります。すべてを満足させるためには、それなりに熱いドラマがあるのだと思うのです。

私がバイクに乗り始めたのは大学生の時。たかが原付です。寒い時は乗りません。だから防寒具の必要はなかった。ある意味で正しい事です。それですむならそれをお薦めします。でもこれでは防寒具のお話になりません。会社に入って、中型を取って、オフ車を買って、ツーリングするようになった。月に一度くらいのペースでツーリングをすると、嫌でも寒い季節にめぐり会います。寒いから行かない、となると何だか根性のない奴みたいに取られがちで、またその頃は、乗りたくて乗りたくて仕方ない頃でしたから、行く行くと言うことになるのです。今から、20年くらい前の話になります。
その頃から、バイクと言えば、ジーンズに革ジャンでした。でもその頃流行始めたオフ車はそうではなかった。何の決まりもなかったと言っていい状態でした。ツーリングに行くと、それぞれにみんな工夫して着込んでくね。とっくりセーター、革ジャンは、元オンロード車からの転向組。モトクロスパンツ、羽毛ジャンパーは、モトクロス勘違い組。スキーウエアー、スキーグローブは、明らかなスキー兼用組。そのころ

でも少しはオフ車専用のウエアー類は出ていたと思うけど、まず高かった。買えなかった。そしてそれほど暖かくなかった。で、それぞれの工夫となる。中には、胸に新聞紙を入れている奴もいる。風が通らないので効果抜群というふれこみで雑誌なんかにも載っていました。でもやってみると何だかゴワゴワしちゃってだめ。よっぽど薄い物しか用意できなかった人専用だと思いました。それぞれの工夫が面白かった。足の先に唐辛子、腰にカイロ、雨でもないのに合羽での防寒。変なカッコばかりのツーリングでした。それでも、いやそれ故寒かった。走っていると、震えで歯がガキガキとなるくらいです。そして時代とともに、私自身の防寒も少しづづ変化していきます。

冬の寒い時期にバイクに乗ると、ああ今日は寒かったと感じます。まず、スキーウエア時代から始まる私の防寒具は、高速道路で2時間も走ると、こんなもんじゃダメ、と言う感想になります。どんなに下に沢山着込んでも、風が入ってくるのだから致命的。スキーウエアは、ある程度体を動かすことが前提のスポーツウエア。そしてスピードも40キロ、50キロがせいぜい。バイクとはまるで違う使われ方です。感じは似ててもやっぱり寒い。それにそもそもそんなに高級な物ではないので、防寒性能はたかが知れています。そこで、ジャンパーのいい奴を手に入れよう、と言うことになるわけです。そこで選んだのが、ショウエイのジャンパー。その頃新発売されたピッカピッカのバイク専用商品です。マイナス20度で時速200キロを前提に作られた、と言うのですから、これに期待がかかります。上下で買いました。8万円位しました。滅茶苦茶高かったこの値段も、寒さと引き替えならいいや、と言う感じです。
これは、ずば抜けて暖かかった。上は、シャツ、スキー用下着、セーター、ジャンパーで、オッケー。下は、パンツ、シーパン、オーバーパンツでオッケー。「ももひき」がいらないのが何とも画期的でした。だいたいツーリングでも、ちょい乗りでも「ももひき」は、邪魔者でした。乗っているときはこれほどありがたい物はないのですが、降りてからが大変。熱いのです。飯を食べていても、人と会っていても、だいたいは暖かい暖房のあるところですから、その間が熱すぎるのです。だいち彼女と待ち合わせて、デートしても、「ももひき」を履いていると、何となく消極的になる。ホテルになど誘う気にもならなくなるのが一般的でしょう。これから解放されたのです。ごきげんで、寒さの中を走る。でも帰ってくると「ああ、寒かった」になるのです。手が冷たい。今までそれほど感じていなかった手が、冷たくてどうしょうもなくなるのです。考えてみれば、手袋は、これまたスキー用。防水性は高いのですが、防風性が考えられていない。バイクでは、手は、ご存じのように真っ先に風に曝されます。しかも、指が風を受ける。防ぎようがない。だから防風性の優れたバイク用冬手袋というのがあるのです。これまた深い反省とともに、買い換えました。指の甲側には縫い目がなく、風を通さない金属フィルムが入っている物。しかも軽く、運動性を妨げない。これで完璧のはずでした。ところが、また走って帰ってくると「ああ、寒かった」になるのです。
足がダメだ。特にオーバーパンツと、靴との間だ。ここが足首に沿ってリング状に寒い。こないだまでは感じなかった寒さ、でもその時も存在していたはずの寒さに襲われるのです。これを解決するのは、ブーツです。ふくらはぎあたりまであって、ジーンズの上にかぶせてはけるタイプのブーツ。これがあれば、防げます。理想的には、冬用の物もあるのでしょうが、厚い靴下がはけることを前提にまあ、平均的な物を購入。足首のリング状の寒さから解放されます。誤解しないでください。一度に回揃えたわけではありません。ここまでで10年くらい苦労しています。少しづつ買い揃えた物達です。
これで完璧だと思われますか。いいえ、まだ寒さが襲ってきます。ひとつを解決すると、今まで感じなかった寒さが感じられるようになるのです。もぐらたたきのようなものです。実は次は、首と顎でした。眼鏡をかけているので、ヘルメットはジェット型が好みです。でもさすがに冬は、フルフェイスです。顎がカパッと上に開くタイプのヤマハのヘルメットを使っていました。それまでは、寒さなんか感じなかったのです。でも、足の寒さから解放されると、今度はここが寒いのです。この寒さへの対応は、なんとスキー道具でした。スキー場で吹雪の時に買ったフェイスマスク、これがいい。ジャンパーを首までしっかりファスナーで止め、フェイスマスクを付けて、フルフェイスを被る。これで解決です。

さあ、これで完璧だろうと思って乗ると、そう、その通りです。またどこらかに寒さを感じます。その時は、指先です。そして肩です。次に、腕です。もうきりがないのです。冬の本当に寒い時に、完璧な防寒具はない、というのが私の主張です。いまもこうした寒さを克服し、しかも軽量で、動きやすく、モコモコにならない工夫を重ねています。最近手に入れたのは、フリースの丸首シャツです。フリースというとだいたいジャンパー型で、けっこうモコモコです。これは、毛糸のセーターに比べれば5倍くらい暖かで、私も5、6年前から愛用しています。でもモコモコ感が嫌なのです。それにジャンパータイプを一番上に着ると、フリースの裾の処理に困るのです。腰回りがさらにモコモコになるのです。今度のは、滅茶苦茶薄い。下着のような感覚です。しかも襟は少しとっくり気味で立っていて、ファスナーで閉まるようになっている。しかも二重になっている。これは優れものです。フランスでたまたま見つけたものです。フリースの密度もかなり高い。これを使うと、長袖シャツ(ダマールという会社の製品で、これ自体すごく暖かい。)、フランス製フリース、薄手のトレーナー、ジャンパー、でたいがいは大丈夫なのです。肩の寒さ、腕の寒さは、外気が自然に伝わるために起こります。着ているものの保温性が低いのです。たいがいは一番外に着ているものの性能によります。でもいくらいいものを着ていても、中で保温できるものがないと、外側のジャンパーの冷たさが伝わってしまうのです。空気の層がそれを防いでくれます。シャツとフリースの間にその暖かい空気の層ができているようです。軽くて快適です。
電池で暖かくなる手袋も試してみました。これも確かに暖かい。でも指先にヒーターがないためか、手のひらは満足、過酷な指先が可哀想と言うことになってしまいます。しかし、発熱という発想は確かにありがたいものです。クリップヒーターなんかもいいのではないかと思っています。最近では、ジャンパーにも発熱仕様のものがあるようです。試してみたいものです。

しかし、どんなものが生まれてきて、改善しても、次はどこかがまた寒くなるのです。もう一度言います。完璧な防寒具なんてない。そりゃあ、エスキモーのようなカッコでバイクに乗れば暖かいでしょう。でもできるだけ軽量にして、運動性を保ち、乗っているときだけでなく、降りて食事するとき、買い物するときも考えると、理想的なものはないのだと思います。結局、耐えられるギリギリの防寒対策で望むことになります。何故ならオーバースペックは、うっとうしいからです。結局、どこか少し寒いのに耐える必要があるのです。それがバイクなのです。
冬のバイク乗り。寒さと戦っているからカッコいいのです。「寒くないのかねー」などと言われるほど颯爽と乗るからカッコいいのです。エスキモーの様なカッコで乗っていたら、「あそこまでして乗るこたーねえだろー」と笑われてしまうことも知っているはずです。「寒さなんか気にしていたら、バイク乗りとは言えねえよ」みたいなやせ我慢が快感なのだと言う気がします。でも、カッコばかりで風邪を引かないようにしてください。体が固くなって事故を起こさないようにしてください。せいぜい工夫して、それがまた楽しいことを自覚しましょう。いいアイデアがあったら、教えてください。みんなで、カッコ良く乗るために。