北海道に行って来ました。
バイクでの北海道は、今回が初めて。バイク乗りなら誰でもが行ってみたいところ。
行って良かったと思っています。全てのバイク乗りにお勧めしたい気持ちです。
だから、レポートします。何かの参考にして下さい。

1999年8月21日(土)〜26日(木)

■計画編
動機は、「それが、夢だった」ってことにすぎないと思う。ともかく宗谷岬まで、自分で走って行きたい。北海道を走るなら、まず最北端まで行ってみたい。そんな気持ちが、ずっとあったからだと思う。そのためだけに昨年の8月、9月に大型の自動二輪免許を取ったわけでもないし、1300ccという馬鹿でかいバイク、X4を手に入れたわけでもない。ただ、そうこうしている内に条件が揃った事だけは確かで、今年の夏にやらなければ、二度とやらないことになってしまうような気がしただけだ。
サラリーマンである以上、長期の休暇は夏だけだし、せいぜい取れて1週間。土日を挟めば9日間。その間になんとか北海道、自分で宗谷、しかもちょっとは大人らしく贅沢に、優雅に、のんびりもしたい、という欲張りな計画を練らなければならない。うーん、富良野の「ケンとメリーの樹」も見てみたい。小樽で寿司も食べたい。札幌の知り合いの所へも寄りたい。などなどテーマばかりが押し寄せる。どれもこれもは無理、で第一次案。
1日目【21日】 東京-青森 青森泊
2日目【22日】 青森-函館-富良野 富良野泊
3日目【23日】 富良野周辺観光 富良野泊
4日目【24日】 富良野-稚内 稚内泊
5日目【25日】 稚内-網走 網走泊
6日目【26日】 網走-釧路 釧路泊
7日目【27日】 釧路-東京 フェリー 8日目東京着
と、まるまる8日の計画を立てた。早速フェリーを調べる。ここで2つの発見。なんと青森-函館間は、結構遅くまでフェリーが動いている。しかも高速フェリーって奴が就航していて、2時間で函館に着いてしまう。ラスト高速フェリーが19時発。これならその日の内に函館に入れるじゃん。もう一つが、27日の釧路-東京が満員。せめてシングルの部屋を予約したかったけどだめ。ツインのシングルユースもだめ。ツーリストで30時間はちょっと辛い。よくよく聞いてみると、26日は便がない。しかたなく25日を予約。この日ならシングルの部屋でオッケー。でも計画を変えなくっちゃ。
一日目に函館まで行く。富良野は今回諦める。24日には釧路に着いて、25日のフェリーに乗る。まあ、2日縮まるけど、帰ってからのことを思えばちょうどいい長さだろう。と言うわけで、第二次案。
1日目【21日】 東京-函館 函館泊
2日目【22日】 函館-稚内 稚内泊
3日目【23日】 稚内-網走 網走泊
4日目【24日】 網走-釧路 釧路泊
5日目【25日】 釧路-東京 フェリー 6日目東京着
でも、これだと1日目、2日目が結構辛そう。600Kmと550Kmくらい。人に話すと、その歳で何考えてんの、と言う答えばかり。しかし悩んだ末に「よし、やってみよう」と決心。計画はこれで完成。
計画には、インターネットのホームページ「MapFan」のページが大変役立った。「ここからルート検索」で道順、距離も正確に把握。ツーリングの計画には欠かせないものです。
●写真 ロングツーリングに備えて、モトコのカウル装備、GIVIのトップケース装備のHONDA X4 あとはすべてノーマル。

■準備編
準備の楽しみ
準備は完璧に。それがまた楽しい。旅の楽しみの一つではないかと思う。様々な状況を考えて、その対策をあらかじめ考え、用意しておく。僕は、だから準備がとても好きだ。
今回の旅の目玉は、何と言ってもGPS。バイクに付けられるくらいの小型のGPSがあることは知っていたけど、果たしてどれほどの効果があるのかは、多少疑問だった。ちゃんと大きな画面で、ルートも教えてくれるようなカーナビをバイクに使えないかも検討したけど、電池寿命や雨での対策にどうも完璧なものがない。で、小型GPSを試そうと言う気になったのだ。日本製も含めいくつかのメーカーを検討した結果、バイクとの融和性、正確さ、そして何より地図表示ができるという点で、「GARMIN社製GPS3puls」という製品を選んだ。日本語対応の製品も出ているけど、機種が古く地図の対応ができない。英語だけの対応だけど、何とかなるでしょと言った気持ちで、通信販売で購入。世界のほとんどの地区の地図がCD-ROMで付いている。パソコンに繋いで本体にロードする。今回は、本州と北海道。細かく、正確ではないけど、ほほーう、と言ったくらいの凄さはある。これをどう使うかは、使う側の頭の良さにかかっている感じ。あらかじめWaypointを入力しておき、ルートを設定しておく。一秒ごとに緯度経度をGPSで計測し、現在位置、速度、目的地までの距離、時間が表示され、Waypointの近くに来る度に知らせてくれる。スペック的には便利そうで、予定されている日にちごとにルートを設定して、入力しておいた。出発までに近所で何度か試してみたけど、都内では、ビルの影、高速道路の影で計測できない状況がかなり多い。しかし、一度衛星を捕まえると、かなりの精度で情報が表示される。これは期待できるなと思ったところで、あとは北海道で試すきゃない。
次の目玉は、スピード違反取締レーダ探知機。クルマ用のものはいろいろ市販されているものの、バイク用はあまり聞いたことがない。今回は、ユピテル社製「BR-1」と言う機種。バイク雑誌では広告でときどき見かけるもの。秋葉原まで出かけていって入手。ポケットにタテに入れておいてもキャッチする。キャッチした情報は、ヘルメットの中のイヤホンに音で知らせてくれる。なにしろ北海道では、ねずみ取りが多いというもっぱらの噂。そんなにスピードは出さないつもりだけれど、法定速度で走る自信もない。せめてもの用心のため。効果についてはクルマの同じような装置で実証済み。まあ、試してみましょう。

暑さ対策と振り分けバッグ
何と言っても夏である。暑さの中を600Km高速道路を走り続ける。予定時間8時間。8耐だぞこりゃあ、といった感じなのだ。8耐は、2度ピットの中で体験したけど、暑さの中で走るライダーの体力の消耗はこの目で見ている。それなりの対策を考えなくっちゃといったわけだ。まず着るもの。コケた場合のリスクを考えれば装備は重く、頑丈に、そして暑くなる。それは避けたい。パット入りの皮パンツ、ツーリングウエアでは、暑さに参ってしまいそうだ。リスクは安全運転でカバーして、なるべく軽装。ホントは良くないことだけど、そう決めてしまった。パンツはごく普通の細目のジーンズ。長袖のシャツとポケットのいっぱい付いたベスト。これでいく。ヘルメットは、涼しさを考えるとジェットなのだが、高速を走り続けると風切り音があまりにうるさい。かえって疲れる。だから我慢してでもフルフェイス。眼鏡をかけているので、ショウエイのJ-Actorというふたが開くタイプに決定。グローブは、小さな穴がぼこぼこあいているメッシュの夏用。試してみるとかなり涼しい。着るものの次は、冷たい飲み物も何とかしたい。と言うわけで、昔から使っているくにゃくにゃの折り畳めるクーラーボックスを持っていくことに決定。トップケースの1/4はこれに占領される。中身はブロックアイスとサントリーのビタミンウオーター。飲み比べて、これに決定。小さなボトルで、一日分だけ3本用意。おかげで荷物が乗らなくなる恐れが出て、あわてて昔から愛用の振り分けバッグの採用決定。X-4は、シートの幅がバカに広いので、そのままでは装着できず、間のベルトを長いものと交換。固定用に短いテンションコードでバイクに繋ぐ。自分でも納得のいく出来映え。荷物はいくらでも積めるぞといっい感じ。これが後で大問題。

雨対策と燃費対策
雨には強い。何といってもX-4を買ってから、乗る度に雨が降る。それも半端な雨じゃない。瀧のような雨が本気で降る。僕はまるでアレジのように雨にはめっぽう強くなった。天気予報では、北海道のその時期は雨らしい。しかたない、僕が行くんだから雨は降るさ。そんなわけで雨対策は万全。ゴアテックスのレインコート、レイングローブにブーツカバー。タンクバックの雨カバーと振り分けバッグのレインカバー。ナイアガラの瀧だって、この装備なら横切れる。今回はさらににわか雨用も準備した。にわか雨程度なら大丈夫というSpeedyのライディングジャケットに、黒のレイン用オーバーパンツ。これは驚くほど小さくなる。着ていても軽い。ちょっとした雨なら、この組合せがかっこ良さを損なわない。さあ、どんな雨でもかかってこい。
しかしX-4は、タンクが小さい。1300ccのエンジンに14リッターのタンクだ。高速で200Kmがいいところ。これは辛い。しかもリサーブになると強制的に燃料がストップするようだ。だからコックは、いつもリザーブのまま。危ない危ない。いつも注意が必要と言うわけ。今回は、東北高速と道央高速の給油できるポイントを全部洗いだし、その間の距離を一覧表にした。これがあれば、とりあえず給油ポイントが計画できる。ガス欠で何時間も無駄にできないので、180Km給油で行くことにした。予備燃料も持っていくことを考えたが、約50Kmおきには給油できるので、必要ないと判断。あとはいつものツーリングの要領。これで準備は整った。
●写真 左 GPS バイクにはハンドルに縦に付く。当然表示も縦になる。
    右 レーダー探知機。本体を胸のポケットに。イヤホンはマジックテープでヘルメットの中に付
      ける。ヘルメットが小さいとちょっと痛い。加工するとグー。


■第一日目編
東京-函館(720Km)
東北自動車道に乗れないのだ。
まあ、一日で函館まで行ってしまおうと思ったのは、700Kmくらいなら走れるだろうと思ったからで、実際そんなにたいした距離ではない。70Km/h平均で走れば、10時間ではないか。と言うわけで、フェリーの受付が夕方6時だから、12時間見て朝6時に出ればなんとかなるだろう、って感じ。5時に起きるつもりが、5時半。6時に出るつもりが、6時15分。土曜日の朝だもの、世田谷から大泉までは30分もあれば着くだろうが、とんでもない渋滞で1時間。出足から、遅れ気味。なのに、なのにである、いつもは東北自動車道は、三軒茶屋から首都高でグルッと回って乗るのだけど、この日は初めて、MapFanの言うとおり大泉から乗ろうとした。関越には何度も乗っているから、同じ乗り口で乗れば、すぐに分岐があるのだろうと思っていた。走っても、走っても分岐なんかない。東北自動車道に乗れないのだ。情けない、ああ情けない。なにが準備万全だ。所沢を過ぎ、パーキングで地図を確かめる。げ、げっ、北海道の地図は持ってきたけど、東京の地図がない。パーキングのでっかい地図で、調べる。川越で降りて、久喜で乗る。これだ、これっきゃない。桶川へはホンダのモーターサイクル・スクールで行ったことがある、あの先が久喜だ、大丈夫と思いきや、桶川から先が分からない。久喜の入口の案内が全然ない。不親切なのだ。ええいっ、こうなりゃ4号線を走るきゃない。ということでトントコトントコ走っていると、やっと佐野の入口表示。それーっとばかりに佐野を目指す。これがまた遠かった。
●予定を2時間遅れて那須通過。
もともとタンクの小さいX4、高速でも200Kmもたない。180Kmくらいを目安に給油の計画。その一番目が那須。佐野に入る前に給油したからここは、パス。予定では、ここに9時到着だったのに、もう11時。あと450Kmはあるのに大丈夫なのか、と不安不安。ともかく走れ、と言い聞かせて、ひたすら走る。高速に乗るまでは元気だったGPSは、どういう訳かスイッチダウン。何の役にも立たない。電池かと思い新品に変えてもダメ。120Km/hを超えたあたりで、プツンと切れる。その速度でGPSに触れてみると、極めて細かい振動が伝わる。ははーん、これだな。振動でスイッチが落ちるんだ。100Km程度なら大丈夫。でもさ、こっちとらいそいでんだ、だいち高速ではGPSなんていらんもんね、でそのまま走行。オプションのハンドルバーにとりつけるキットでは、そんな問題点が発見された。まあ、バイクには取り付けないで下さい、って書いてあったんだからしかたないか。
高速に乗ったら後は順調、と言いたいけれど、世の中そうは甘くない。確かに仙台、一関、盛岡ぐらいまでは極めて順調。遅れていた時間も、休憩なし、昼飯なしで取り返し、給油予定3番目の岩手山に着く頃は、遅れも30分程度。これなら6時青森も大丈夫、となっていた。ところが・・・雨。雲行きが妖しい。確かに晴れている。晴れたいるのに進行方向だけが真っ黒な雲。ときどきパラッと冷たいもの。まあ何とかなるだろうと、岩手山をそのまま出発。走り初めて5分も経たない内に、雨、雨、雨。それも半端な雨じゃない。豪雨。雷。レインコートを着なきゃ、で立体交差下にまず避難。回りを真渡せば、高速道路の上以外は、青空が見える。なんだこりゃ、いじめじゃないか。でもしかたない、せっせとレインコート、ブーツカバー、オーバーグローブ。タンクバックにカバー、サイドの荷物にもカバー。再び走り出す。それにしてもすごい雨。足に当たる雨が痛い。トラックが前を走ると何も見えない。こんな激しい雨、そう長くは続かない、と長年の雨経験。でも全然弱くならない。なんだか雨雲と一緒に移動しているみたい。それでも東北高速が八戸道と別れるあたりから小雨状態。雲の野郎、道を間違えやがった。しかも急激にクルマの数も減る。対向車、前後ろ一台も見えない。道は山の中、景色は抜群。あと100Kmもない。「いっ、いゃっ、ヤッホーーーー」。思わずスタンディングで叫んでしまった。何とかなった、なんとか間に合う。後は、津軽で最後の給油。・・・のはずだったのに、津軽についてスタンドに行くと「いゃー、さっきの雷で、停電だ。給油できないだべさ」のお粗末。インジケーターは、赤い光が着く直前。あっても3リッター。これが旅だ。旅なんだ。行こう、前進あるのみ。俺にはフェリーが待ってる。北海道の大地が待っているんだ。津軽の風よさようなら。まあ、ドキドキでそーっと走っても時間的には十分間に合う。あと40Kmほど、何とかなる。で走り始めたら、夕焼け空が真っ赤っか。今頃お日様にっこり。ありがとよ、でもなぁ、太陽エネルギーじゃ、バイクは走らねんだよ。と、突然青森まで5Kmの表示。やった、もう大丈夫。料金所の手前で、レインコートを脱ぎ捨てて、東北高速脱出成功。ちょうど5時。
●フェリーであわや立ちゴケ。どうなっとるんじゃ。
すぐにガソリンを入れ、もう一度GPSをセットして、フェリー乗り場へ。GPSは正確に反応している。曲がり角も教えてくれる。でもこう言うときはたいてい道路標示がしっかりしている。あっと言う間にフェリー乗り場。余裕をもって到着。乗船手続き、待合い室。窓の外には、700Km走ってくれたX4、・・ななんと、雨。慌てて荷物にカバー。いいかげんにしろー、の気分。6時半乗船開始。なんと一番乗り。バイクは全部で5、6台。先頭を切って船内へ。遠くでおやじが手を振っている。あっちだな。で、近づいたとたん、「もっとこっち」と右側を指示する。そんなこと言っても、柱はあるし、床はボコボコだし、急には曲がれない。よいしょ、とハンドルを切ったとたん、バランスが大崩。左足に300Kgの車重が一気に攻めてくる。「だ、だ、だめだ」とX4初めての立ちゴケを覚悟して、バイクを離れる。ドサッ。X4が倒れたと思いきや、45度でちょうどあった船内の柱に支えられ、サイドバックをクッションに立っている。「もっと早めに指示だしてよ」なんてフェリーのオッさんに文句を言いつつ、二人で起こして、なんとか収納。「大丈夫かい、こんなでっかいバイクで」なんて言われてしまったのでした。
●フェリーの中で反省。そして函館。
フェリーは全て指定席。しかもデッキにも出れない。隣の席は、さっきのあわや立ちゴケ騒ぎを後ろで冷たく見ていたバイク青年。恥ずかしい、ああ、恥ずかしい。向こうも気を使って話しかけても来ない。静かに一人今日の反省。
1.なんで東北高速に乗れなかったのだ。ちゃんと調べたはずじゃないか。(この時はまだ原因が分かっていない)
2.なんで東京の地図を持っていなかったのだ。
3.なんでもう少し余裕を持って給油しなかったのだ。でも雷停電は予想以上だぞ。
4.なんでフェリーであんなに不安定になったのだ。しかも降りて押してるときもヨタヨタだったぞ。
1.2.3は、ただ反省のみ。4は原因追究。そうか、荷物だ。荷物が重いんだ。子供一人くらいのっけたまま、押しているようなもんだから、安定しないんだ。それを意識していないからヨタヨタなんだ。わかった、もうだいじょうぶ、かな。
X4は重い。本当に重い。下りのどんづまりに駐車しようものなら、金輪際取り出せない。押して、バックで上るなんて一人の力では、できない重さなのだ。だからX4を(大型の重いバイク共通だけど)扱うにはいろいろノウハウがある。止め方、押し方、乗り方。荷物を積んだときの押し方、乗り方にもノウハウがあるのだ。それを意識しなきゃいけない。重要な反省であった。
たった2時間で函館港へ。あっけない。こんどは慎重に押して、Uターン。一度スタンドをかけて、またがって、エンジンスタート。これでいいのだ。と言うわけで無事フェリーも脱出。そこは函館の街。泊まるところは駅前のビジネスホテル。寝るだけだから、駅前がいい。これは長年の経験。探す手間が省けるのだ。すぐに見つけてチェックイン。腹へったー。フェリーの中で夕食の予定が、フェリーには何もなかった。考えてみれば、朝5時頃から水だけではないか。早速函館の街へ。10時少し前でやっているのはラーメンや程度。それじゃ寂しい。歩いていくと、小さな飲み屋。覗いてみると、「いらっしゃい」の声。「まだ大丈夫」「どうぞ」で、夕食にあり着いた。生ビール、ともかく生ビール。グビッ、うまい。特別うまい。今日一日を思うと、なおさらうまい。そしていかそーめん、ほっけの焼き物、鮭のおにぎり。みそ汁。体中に栄養が染み渡る。し・あ・わ・せ

■第二日目編
函館-稚内(600Km)
●長万部へ。ここは北海道。
あまりにトラブル続きの1日目。それでもなんとか函館までたどり着いた。一夜明ければ、新しい僕。昨日のことなど気にしない。気持ちと自信をしっかり持って、しっかり行くぞ、北海道。
今日は稚内までの600Kmほど。フェリーの時間などに縛られないので気分は楽。まあ、夜の10時くらいまでには着きたいな、と言った感ーじ。9時頃出発。装備は万全。GPSも函館駅を表示している。レーダー探知機もピッと音を立ててスタート。ところでこの探知機はずいぶん正確。昨日の高速でもオービスを100%キャッチしていた。でもバイクには関係ないもんね。今日から頼むぞ、ねずみ取りだもんね。
長万部に向かって走り出す。しばらくは松並木。結構クルマは多く、80Km/h位でトコトコ走行。ひと山超えると海が見えてくる。内浦湾。淡々と道が続く。北海道と言うより、東北の海辺と言った感じ。クルマが繋がっているので、追い越しても意味がない。のんびり、ゆっくり走り続ける。それでも、もう、と言った感じで長万部。ここからは道央自動車道。ガソリンを入れておかなくちゃ。スタンドに入るといきなり「二輪は10円高いっすよ」とねーちゃんが声をかけてくる。どうせ10リッター程度、100円しか変わらないけど、そう言われると「そんじゃ、いいや」って言っちゃうよね、人間。ちょっと走って別のスタンド。「前のスタンドで10円高いって言われちゃったよ」と言うと、「なんでかねー」と無関心。良く見たらこちらはさっきよりもクルマも10円高い値段。納得と。
●道央は霧の中。
長万部からの高速は、しばらくは一車線。時々追い越しエリアが設けられている。それでもクルマは極端に少ない。しかものんびり。いやでも追いついてしまうが、そこは紳士的に追い越しエリアを待つ。気分良く走っていたら・・・・雨。また雨。今日はしとしと雨。霧雨のちょっと粒のでかいやつ。そうです、一番嫌な雨。レインコートほどではないので、パーキングで、軽い方の雨具を装備。荷物にはしっかりカバー。それからは、降ったり止んだりがずっと続く。室蘭、苫小牧、千歳。2車線になり、クルマの数も増えて、北海道の最大都市札幌をかすめる。札幌の手前で料金所。雨の日の料金所は、辛い。タンクバッグのカバーを取って、オーバーグローブをはずして、あーあ、チケットが濡れちゃう。お金が出てこない。ようやく払い終わって、インターチェンジを左に滝川・旭川方面へ。げ、げっ、また料金所。いい加減にしてよ。ちょっとは雨の日のバイクのことも考えて、高速の設計してよ。チケットもらうだけでも辛いのに、なんだよ区間一律料金って。降りるときまた料金所があるっことかい。と言う文句の気分も、札幌を過ぎると一気に吹っ飛ぶ。「あー、北海道だ。北海道の景色だ」いきなり牧場風景が、両側に広がる。岩見沢。いいとこだねぇ。滝川、風が強いぞ。と思っている内に深川西。ここは、降りてからが面白い。ひたすら真っ直ぐな道がサービスのように続く。このまま留萌まで行ってくれ、ってな感じ。秩父別から一般道。荒削りの風景の中を、今度は留萌を目指すのです。
●さあ、今回の旅のメインイベントだ。
留萌から稚内。バイク乗りなら誰でもが憧れるルートだ。海岸線を一直線に北上する。行き着く先は、日本の最北端。もう行きたくても行けないとこまで走るのだ。自分にとっても、これがやりたくてここまで来たわけだ。留萌で左折すると、すぐその気分が味わえる。左側は日本海。どこまでも、どこまでも続く。計画では、このルートを颯爽と気分良く走るはずだった。ところが、またこれがはずれる。またしても・・・雨。しとしと降っていた雨が、このルートに入ったとたん次第に強くなる。いやだなぁ、と感じている内に、どんどん強くなる。軽装の雨具では、ちょっと厳しい。雨に強いはずのスピーディのジャケットも水が滲みてくる。なんだか股のあたりは水が進入してきている。そう思っている間に、もう冗談でないほどの降り。大粒の雨。なんとか着替えのできるところを探す。軒のある何だか分からない建物が、広い駐車場の向こうに見える。よし、あそこだ。ノコノコ近ずいて、バイクを軒の中にいれ、バイクを降りる。ヘルメットを取る、グローブをはずす。この建物って何、と初めてガラス越しに中を見る。ゲームセーンター。誰もいない、でも音楽だけが何故か外にまで響いているゲームセンター。不思議な光景だと思う。でもこの軒だけはありがたい。そそくさと完全防水に着替える。雨はますます強くなっている。瀧のようだ。それにしてもよく、降る。嫌になるほど、降る。これでもかってほど、降る。もうなんだか雨に怒るのも通り越してしまった。X4を買ってから、ちょっと長距離を乗ると必ず雨だった。それも、瀧のような雨がジャンジャン降る。今年は雨が多いし、異常気象なんだよ、なんてことはなんの慰めにもならない。「降れ。降りたいだけ
降れ。空の水が全部なくなるまで、降れ。いくら降ったって、俺はバイクは降りないぞ。雨くらいでこの素敵な乗り物を降りるわけにはいかないんだ。へっちゃらだよ。」と強がって、再び走り始める。それにしてもこの時の雨は強かったよ。自動車が、道で止まって、一時避難していたくらいだもの。でもね、降り出した雨が止まなかった試しはない。そのうち止むんだ。そう思って走るきゃない。留萌から遠別へ、そんな思い出たどり着いた。
このルートの心配ごとは、ガソリン。特に今日は日曜日なので、地図にあってもやってないことだってある。留萌の手前で入れたから、天塩にできるだけ近いところで入れたい。これが難しい。あと、40Kmぐらい走ってから入れたい、と思っていても、開いてるスタンドがあると入れたくなる。入れてしまうと、ちょうどスタンドのないところでガスが切れる。今回は、遠別から天塩の間で必ずあると信じて我慢した。ところが、ない。あっても休んでる。スタンドの真ん中に夏祭りの御輿がデンと鎮座してたりする。ヤバイ、というのはこういう感じだろう。もうすぐ天塩。天塩からは、海岸沿いの裏ルートを行きたい。ここにはスタンドはない。雨も上がってきたというのに、裏ルートは、断念か、と思っていると「ホクレン」がやっていた。えらい。ホクレン。天の助け。一心左助。「ぜんぜんやってなくて、いゃぁー助かっちゃったよ。」スタンドの女の子が天使のように見えた。しかも、旗までくれた。「キャンペーン中なんでーーす」。えらい、ホクレン。東京でも入れたい。
天塩からは、海岸沿いの裏ルート、70Km。絶対お勧めのコース。オロロン街道だ。不思議なことに、雨もすっかり上がって、夕日も見えてきた。このルートを入るとすぐパーキングがある。まずそこで雨具を全て脱ぎ捨て、颯爽としたライダー本来の姿に戻る。利尻富士が見える。背中はサロベツ原野。ここが北海道なのだ。とうとうここまでやってきたのだ。やってこれたのだ。バイクは雨で、どろどろ。カウルのワックスもすっかりはげ落ちて、白い筋が付く。同じくらい僕だって、この歳でここまで来て、もうぼろぼろ。でもすごく嬉しい。すごく幸せ。もう一度走り始めて、夕日で真っ赤に染まった海と一緒に走って、ホントに涙が溢れて来るくらい幸せを感じた。今までいろんなことがあったけど、人生ってちっとも思っている通りにならないけど、悲しいことばかり多くて、それに耐えていかなきゃなんないけど、生きていて良かった。バイクに乗っていて良かった。ここは、俺にとって天国だなぁ。浄土ってこんな感じだろうな、と思いながら、走り続けた。「ゃっっったたー」って叫んだ。
■写真 オロロンの第一駐車場。時間も天気も、ドラマのように計算通り。


■第三日目編
稚内-宗谷岬-網走(340Km)
●とうとう来たぞ、宗谷だぞ。
稚内のホテルは「ホテル氷雪」。実に稚内らしい名前です。2食付いて1万円。まあ、寝るだけだからこんな所で十分です。昨夜は、7時半頃ホテルに着いたら、着くなり「すいません、すぐ食事して下さい」と言った感じで、風呂にも入らず、まず食事。カニあり、ウニありの北海道らしい品揃え。ビールをグビグビ飲みながら、あー、今日も無事予定通りだ、とホッとしていたのでした。隣でまだ酒を飲んでいたオッさん二人に話しかけられて、バイクの話をすると「ひぇー、大したもんだね。私ら飛行機で来ちゃったから、ぜんぜん遠くに来たと言った気がしないのよ」などと言っておりました。天気が悪くて、礼文、利尻には渡れず、昼間から二人で飲んでいたそうです。オッさん二人が引き上げた後、ひょっと見ると、開けたばかりのビールが半分以上残ったまま、これはもったいないと「いただきまーす」。日本酒も少し飲んで、こっちも結構いい気分。安らかな眠りにつきました。
翌朝は、やはり曇り。今日は稚内から網走までの340Km。楽勝のルートです。ゆっくり朝飯を食べて、9時出発。外には、防波堤のドームの下でたくさんのバイク・キャンパーが出発の準備をしてました。みんなグループで、若くて、楽しそう。「オッさんは、一人宗谷を目指す」のでした。
宗谷はもう目と鼻の先。30分程で着いてしまいます。海沿いを走っていくと、ああ、来たんだなぁと言う思いがこみあげてきて、感傷に浸ろうと思うまもなく、大きく右に曲がったところで、宗谷のパーキングに着いてしまいます。よっ、観光地というムードたっぷりで、観光バス、マイカー、の他バイクも沢山。例のあの記念碑の前でパチ、パチやっております。バイクを降りて、カメラを持って、自分もその仲間入り。自分自身のために、証拠写真を撮ったのでした。北緯45度31分。バイクのGPSもちゃんとその数字でした。「嬉しいなぁ」とほのぼのした感じ、それがその瞬間の感想です。19歳からオートバイというものに乗り初めて、社会人になって中型を取り、ずっと乗り続けてきたバイク。FS-1という原付から、DT125、XL-250、TLR、クラブマン、CB-1、セロ。その間にモトクロッサーが2台。練習中に足の骨を折って、1カ月入院したのが、もう20年前。バイクとの間にはいろんなことがありました。でもその全ては、楽しいことばかり。自分の人生に、もしバイクがなかったら、生きて得られる楽しさの半分はなかったかも知れません。その象徴のような今回の旅。そして宗谷岬。何時死んでもいいように準備しているみたいだなぁ、みたいなことを考えながら、みんなニコニコしている宗谷岬で、ぼーっとしていたのでした。
パーキングの少し先にガソリンスタンドがあります。ここでガソリンを入れると、日本最北端ガソリン給油証明書がもらえます。別にそれを持っているからと言ってなにも起こるわけではないのでが、これが嬉しいのです。ばかばかしさが、なんだかとってもいいのです。子供がウルトラマン・バッヂを胸に付けているあの感じ、いい年をして、気持ちが子供になれるのです。
さて、宗谷を出ると左側は、オホーツク海。いままで左側にいた日本海とは、見た目全然変わらないのですが、名前が違っている。昨夜のオッさんに依れば、捕れる魚も違う。水温も違うといいます。わかんないけど、「オホーツク」という響きがいいじゃありませんか。北を走っているんだぜい、って感じがするじゃないですか。だからバイク乗りは、ここを目指しちゃうのでしょう。そういえばこのルートは、たくさんのバイクとすれ違います。すれ違うごとに、サインを送り合います。基本的にはこれに反対するものではありません。むしろ、バイクって大変だよな、荷物はあんまり乗らないし、エアコンもないし、体はじっとハンドルで固定されるし、雨が降れば、濡れちゃうし、お互い大変だよな、ごくろうさん、と言った感じで、君も僕の仲間だよのサインを送り合うと、ちょっとメランコリーな気分も味わえます。いいんだけど、これだけ頻繁だと、俺たちって大変なことやってるわけじゃねえな、って雰囲気になってきて、メランコリーが、メンドクサーになりそうなのです。夏の北海道。たぶん何万台ものバイクが上陸し、ここを走っているのでしょう。その一つ一つに一つ一つ違った思いと想い出を乗せて、走っている。この道をほんの少し前にも、別のバイクが走っている。自分と同じような想いを乗せて。全然違う想いを乗せて。道って結構、人生みたいだねぇ。
●やっぱ景色が違うぞ。オホーツクだぞ。
枝幸あたりから、道路両側の建物の風景が、どっか違う。なんか違う。建物が全体に平らで、低い、伏せている感じ。耐えている感じ。その意味は、厳しい冬になると分かるんだろうが、ビュウビュウ吹きすさぶ真冬のオホーツク仕様になっているのだろう。樺太犬が出てくると、なーるほどと思うかも知れない。オロロンの道とは違って、こちら側は、ベタに海岸沿いではない。道の向こうに岬が見えてくる。時々海岸をはずれて山に入る。そしてまた海岸沿いに出る。すると街がある。その繰り返しでルートが進んでゆく。途中「雄武町」がある。オウムと読む。あのオウムとは何の関係もない町だけど、町の人はずいぶん嫌な想いをしたかも知れない。こんな北国の素朴な町にまで迷惑をかける奴等は、やっぱ許せないなぁ、と感じながら、この雄武にある「道の駅」でバイクを止めて、昼飯を食べることにした。
「道の駅」変な概念だと思う。駅とは、もともと街道沿いに置かれた人馬の乗継所のことだ。道にあって当然で、道以外では機能しなかったのが「駅」だ。それが「道の駅」と言われてしまうと、「武士の侍」が「決闘で戦って」「切られて斬殺され」「あの世に行って、死んじゃった」って気がしてくる。しかしこのちょっと変が、いいのかも知れない。言葉の歴史的背景より、地方の町興し事業としての「道の駅」は、クルマやバイクで旅をしている人、トラックなどの長距離ドライバーには、助かる存在だと思う。ちょっと変な名前が受けて、どんどん増えれば、地元も利用者も大喜びと言うわけだ。そんな訳で雄武の道の駅で食事。といってもスーパーの中にラーメン屋が一軒だけ。ほとんどのライダーは、弁当を買って食べている。せめてイクラ丼でも食べたかったよ。
だいたい目的地に一直線で行く北海道の道だけど、網走の手前は、グネグネする。その旅にGPSが距離と、時間の割り出しに苦労する。真っ直ぐ目的地に向かっている時は、42Km、あと18分、と明快なのだが、道が曲がって目的地の方角が進行方向とずれると、68Km、40分などと表示する。おいおいどんどん走っているのに遠ざかるなよ、である。しかしGPSを道ずれの旅はとても面白い。とても簡単な地図だけど、じぶんがどこを走っているのかが、よく分かる。20Km縮尺ぐらいで表示していて、ウエイポイント近くになると、自動的に拡大される。これは便利。間違うはずもない北海道の道だが、それはそれで安心できる。楽しめる。そういえばレーダー探知機もしっかり起動させているが、全く音が鳴らない。壊れたか、と思うほど。まあ、鳴らないに越したことはない。
のんびり走っているつもりだったのに、3時半には網走着。どこが町の中心だか分からない、平らで、だだっ広い町だ。網走自体は今度で3度目になる。昔、ロケや取材で来たことがある。その時寿司屋に入って、カニの身とカニの卵巣、カニの精巣をセットにして食べさせてもらった。「こりゃぁ、カニの一家心中だね」と言ったら、「そりゃ面白い。そういう名前にしよう」といって寿司屋の親父が妙に喜んだことがある。二度目にその店に行ったら、壁に「カニの一家心中 500円」と書いてあって驚いたことがあった。それ以来の網走である。
宿は網走からちょっと戻った卯原内の能取湖荘。もちろん能取湖の湖畔。天皇陛下もご覧になられたサンゴ草の群生地だ。湖畔に突き出て温泉が付いている。湖を眺めながら、湯に浸かる。夕方の4時半。ぼーっとした時間。しかも月曜日。東京ではみんな働いている。広い浴場にただ一人。「ぼかー、しあわせだなー」である。夕食も結構豪華。毛蟹まで出た。刺身もてんぷらも北海道ぽい素材ばかり。ビールも北海道限定ビール。湯上がりで、ほろ酔いで、結構体も疲れていて、お腹一杯で、再び「ぼかー、しあわせだなぁー」なのである。
■写真左 宗谷岬の駐車場。ずいぶんたくさんのバイクである。
 写真右 これが証明書。ウルトラマン・バッヂと言ったところ。

■第四日目編
網走-釧路(160Km)
●今日は楽勝、160Km。天気もまあまあ。
北海道地方の天気もようやく快方へ向かってきて、朝から青空がちらほら。サンゴ草の群生地が、朝起きて外を見ると目の前に広がっている。正直言って、これじゃあ客は呼べないぞと言った感じ。でも駐車場や公衆トイレなどはしっかりしていて、一応の観光名所風。一休みにはまあ、いいかな。
この日は、すごくのんびり出発。何と言ってもたった160Km。どんなにかかっても3時間の行程だ。まあ、なるべく早く着いて、釧路で最後のおいしい物を食べたいという予定だから、それなりの楽しみはあるわけで、気楽に走って夕方までに到着すればいいわけだ。網走の町を抜けて、しばらく海岸沿いを走る。左側がオホーツク海、右側は原生花園になる。大したことはないだろうと走っていると、結構すごい風景で気になる、気になる。都合よくパーキング。なるほどパーキングはいいところに作るもんだ。昔はここで脇見運転事故が多発して、その対策でパーキングを作ったんじゃなかろうか、などと考えたくなる。どうせ時間はたっぷりだから、じっくり風景を見る。土産屋も覗いてみる。タバコも吸ってみる。でも15分ともたずに出発。バイク貧乏性は、目的地ばかりを目指してしまう。浜小清水から右折。391号線に入って弟子屈に向かう。ここで海は終了。屈斜路湖、摩周湖のある美幌の山へ入っていく。クルマの数がぐんと減る。家の数もがくっと減る。まるで別荘地の中をずっと走り続ける感じ。スタンドが不安になって、とりあえずマンタンに。ここでマンタンなら釧路までは走りきれるのです。そういえば、レーダー探知機は、今日も全然鳴らない。鳴らないに越したことはないけど、せっかく用意したのに、みやげ話の一つとして「いゃぁー、弟子屈でね、ねずみ取り見破ってさ、大助かり」なんて言いたいじゃない、お巡りさんやってよ。反対にGPSは、大活躍。ウエイポイント毎にちゃんと教えてくれて、道を間違えることも全くなし。なんだか一緒に旅している相棒のような気分になって、「そうか、あと30キロか。頑張ろうな」なんて声をかけている。
●またかよ。雨の摩周湖。
391号線には、野山峠というワインディングがあって、でもぜんぜん大した山道じゃない。スイスイと登っていく。ただし、その前でトラック、バスをパスしておかないと苦労する。これは山道に入る鉄則。観光バスの真後ろについて、全然追い越せないと、ひどいときは、ターンの手前の一番の斜度で止まらなくてはならない。登りの場合、バイクの足つきが悪くなる。足の長い最近の若者には、この微妙な足つき変化は実感できないだろうが、ありったけの足の長さを全部使ってギリギリの足つきを確保しているオッサンにとっては、5ミリ、1センチが問題なのだ。できれば、登りでは止まりたくない。だから峠の前は、クリアラップを確保するよう心がけちゃうのだ。で、峠あたりから、「ねぇ、頼むよ、さっきまで晴れてたじゃない。もういい加減に雨は止めてよ」と言う言葉もむなしく、ポツポツ。かといってレインコートまでは必要ない。嫌なんだよねー、この感じが。自分のことを好きなのか、嫌いなのかはっきりしない女の子みたいな天気の態度。はっきりしろ、と怒鳴ると泣き出しそうで、放っておくと、いつまでも手も出せない。嫌なんだよねー。391号を川湯温泉で左折。摩周湖に繋がる道にちょいと寄り道。この道なら、来た道を戻ることなく再び391号線に繋がる。霧の摩周湖という歌がヒットしたのはきっともうかれこれ30年前。平尾昌明が作って、布施明が歌った。「霧に あなたの 名前を呼べばー」ってやつ。それ以来、摩周湖は一度は見てみたいなあ、と思っていた所。やっとその夢が叶うときなのに、なのにである、少し登ったところから「霧」。すごい霧。視界5メートル。のろのろ運転。登りで乗用車が止まる。シールドがべったりと濡れる。内側が曇る。シールドを開けると眼鏡が濡れる。眼鏡が曇る。・・・確かに俺は、いろいろ悪いことをやって、人様にも迷惑をかけ、自分勝手でわがままで、人に無茶も言ったし、困らせもした。確かにそうだけど、一年にいっぺん、休暇を取って頑張って北海道まで走ってきたんだ。摩周湖だけが霧ならしかたない。なにしろ一年の内半分は霧だと言うのだから、我慢もする。しかしだ、登るところから霧はないだろう。しかもこんなにすごい霧は、あんまりだぞ。前が見えないじゃないか。止まってスタートする度に、ずるずる後輪もスピンして危ないじゃないか。だいち登りは足が着かないんだぞ。とぶつぶつ言いながら登ること20分、第三展望台到着。それでも霧の中に観光客がゾロゾロ。お前ら、何しにきてんのよ、ああ俺もか。とても当然のことだけど、摩周湖は霧。霧の摩周湖。真っ白。何処で見ても、霧はこんな感じ。「あなたの 名前」なんて呼ぶ気にもならない。まあ、いいや。で、山を下る。下ったとたんに、晴れ。ながーい直線道が、濡れたウエアも乾かしてくれる。再び391号線に戻って、ここからは単調な道。そういえば釧路には「丹頂」がいる。関係ないか。
●ああ、釧路。ここがバイクの最終地点。
走っていると、そんなにお腹が空かない。昼飯は意識しないと、どんどん後になってしまう。べつにそれでもいいけど、今日は釧路でうまい物を食べるテーマだから、夜はなるべく空腹でいたい。だから早めの昼飯。でも食べるところがない。日帰り温泉は多くて、そこでなら食べれるけど、温泉に入る気はない。地図を見ると「レストラン草原」、これ一軒。あった。地図と同じ場所に、あった。当たれ前だけど、結構感激。スパゲティを食べた。いくら丼が食べたかったけど、なかった。それにしてもこのレストランよく商売がやっていけると思う。客は1組。後にも先にも他の客の気配はない。まあ、なんかの時にドドッと客が来るのだろう。この店の親父、と言っても若い人だけど、SUNのワークステーションで何やらやっている。ホントはシステムエンジニアなのだろうか。ここでソーホーとやらで仕事しているんだろうか。余計なことまで考える。調べてみたらありました。ホームページ。興味ある人は、どうぞ。http://www1.marimo.or.jp/area/oroppas/doutou/kusiro/sibecha/shibecya/Sougen/index.html
やたら長いね。了解を取っていないので、リンクはできません。さて、昼飯を食べてもまだ1時過ぎ。地図を眺めつつ、よし釧路湿原に行ってみよう。達古武から右に入ると細岡展望台とやらがある。トロッコ電車の駅でもある。途中までは快適なルート。途中から、一車線。その先はほとんど砂利道。ウヒョー、止めて帰ろうかな、一瞬怯んだものの走り始めるとどうってことない。この重いバイク、パワーのおかげでヒョイヒョイ走る。セロより調子いいみたい、と言う感じ。まあ、伊達に長い間オフロードをやっていたわけではないわい、と変に嬉しい。スタンディングで悪路を乗り越えている姿、他から見たら結構滑稽だろうな。と言ってるうちに展望台に到着。立派な施設じゃないか。大したものだ。大展望台まで歩いて5分程度。ほほー、よく見える。果てしなく広がる釧路湿原。果てしないもったいない土地。グネグネと川が流れ、一面の緑。一坪いくらかな。休憩の施設に戻ってコーヒーを飲む。ビデオで丹頂鶴の生態なんかを流している。壁には、湿原の生い立ちのパネル展示。突然湿原博士になってしまう。もともとここは海だった。釧路あたりが海の出口を塞いで、陸になった。それからずっと湿原、だそうだ。・・・ここから釧路は目と鼻の先。あっと言う間に着いてしまう。それにしても、突然の大都会と言った感じ。今まで黙っていたレーダー探知機が町のいろいろな電波に反応してピーピー鳴り始める。嫌だね、都会は。例によって宿は駅前。迷うことはない。バイクの駐車場もしっかりしている。「東映ホテル」一泊1万円朝食付き。到着後は、しばしのんびり。シャワーを浴びて、6時半になったらおいしいものを食べにいこっと。
●うまいっ。寿司は釧路に限るね。
駅からは少し歩いて国道の向こう側が繁華街。釧路は3度目だけど、全然覚えていない。ホテルにあった観光地図が唯一の手がかり。どこがいいかな・・・おっ、良さそうな炉端屋、覗いてみると超満員。ではこちらは、・・あれ客が一人もいない、これは不安。と、探し回っていたら、ポツリポツリ、そしてザーーッと雨。腹がたつ気にもなりません。ちょうど軒に入ったところが寿司屋、「八千代屋総本店」。ここでいいか、で入ってみるとなかなか高級ぽい。カウンターに座るなり、「お客さん、東京」と聞かれる。何で分かっちゃうんだろう。やっぱ東京って顔してんのかな。「そうだよ。会社でさ、釧路に来たらこの店にいけって言われてたのよ。いゃー、探しちゃったよ」なんて言いながら、ビールをグビッ。つまみを頼んで、待つことしばし。考えてみれば、バイクの旅もこれで一応の目的地。明日はフェリーに乗るだけ。ずいぶん走ったよなー、と感激がまたまたわいてくる。まあ、事故も違反もなく無事で何より。雨には最後までつきまとわれたけど、楽しかったぜい。と二杯目のビールを注いでいると、出ました、ホッキ貝、でかい、しかも生。東京のホッキ貝は、口のところが赤い。これは茹でているから。こちらのは紫。生の証拠。こりこり・・ぬちゅっー、うまい。つづいてイカ。つづいてカニ、つづいて白身。どれもうまい。すぐに日本酒にして、親父おすすめを次から次へ。「さんまも、いっとく」のおすすめでさんまの刺身。「北海道でね、おいしいさんまだけ取るわけよ。残りが、仙台とか銚子に行くわけ。日本で一番おいしいさんまは、釧路なんだよ」。どうもそうらしい。銚子の友達には聞かせらんない。「きんき、焼いたる」で、どでかいきんき。これがまたうまい。イカの沖漬け、鮭の凍った刺身。食べきれないほどの北海道魚三昧。旅の終わりは、うまいうまいで締めくくったのでした。
■写真 説明不要。真っ白。むっ。

■第五日目・六日目編
釧路-東京(フェリー利用)
●さてさて、帰路は、フェリーで30時間。
釧路のフェリー乗り場は、市内から10分程度。12時発だから、今日もゆっくり。10時出発で、駅前の和商市場に寄って、魚見学。水族館とは違い、泳いでないけど、見るだけでも楽しい。こんないっぱいカニを取っちゃっても、まだまだ海にはいっぱいいるんだろうかと心配になるほど、カニだらけ。ウニの瓶詰めを買って、いよいよフェリー乗り場まで。今度のフェリーは、でかい。タイタニックみたいだ。それほどでもないか。でも、でかい。これが9月からはなくなってしまう。もう最後の航海にちかい。いっぱいのバイク乗りを運んでくれたに違いない。いい思い出をたくさんの人に残したに違いない。残念だけど、しかたないのかな。・・・なにしろ行きのフェリーの失敗があるから今度は慎重に。慌てず、後ろについて行こう。おお、船に乗ったら、その中にまた坂があって、二階に上る。バイクのエリアがあって止めやすい。よし今度はうまくいったぞ。ここを降りるときは、もう東京なんだ。
30時間の船の旅。日の出を見たり、ビデオを見たり。まあ、のんびりでした。個室にはビデオが付いていて、一本500円でテープが借りられます。「タイタニックかポセイドンアドベンチャーは、ないの」って係りの人に聞いたら、冷たく「ありません」だって。そりゃそうだろうな。てなことで、昼食って、夜食って、朝食って、また昼食って、夜食ったら、お台場に着いていたのです。このレポートあまりに長くなりすぎたので、この辺で終わりにしましょう。
とても、とても、とてもいい旅でした。バイクが好きな人、お便り下さい。
■写真 左 釧路港にて  右フェリーから、知床半島の夕暮れ