昨年から約束だったむねちゅうさん、カズやんと私のオヤジ3人ツーリング。
狙っていた国民宿舎が取れず、
蓼科のロマンチックなペンションに行くことになった。
オヤジ3人で、ペンション?
全然似合わないのだ。

ところが行ってみると、続々と仲間が現れて、
オヤジ3人、大喜びだったのだ。

そして1日目の152号線。
これがまた素晴らしかった。楽しかった。
2日目は、みんなで美ヶ原へ。
うーん、やっぱりバイクツーリングは、最高です。


■浜松、9時集合。行き先は、蓼科。
蓼科に行くのに、集合が「浜松」である。しかも朝9時集合。オヤジ3人とは言え、一人が横浜、一人が大阪、そして私が東京なのである。私の場合でも、浜松9時と言うことは、6時前には高速に乗っていたい。大阪は、もう少しかかる。横浜のオヤジは下道派なので、おそらく3時、4時には出なければならないだろう。しかし、一度「任せた」と言った以上、このコースを選んだ大阪のX4乗りむねちゅうさんの言うことを聞かなければならないのである。浜松で集合し、152号線をひたすら北上するコース。かなりハードだし、国道は、途中二カ所途切れている。むねちゅうさんは「迂回路があるから、平気」と走ったこともないのに言っている。不安だか、任せたのだ。任せたのだが、不安だ。しかし、そんなわけで、5時に起き、6時には用賀の高速ゲートをくぐっていた。
もともとこの旅の始まりは、去年まで遡る。私のHPによく来てくれるむねちゅうさんとカズやんが、昨年二人で信州を走っていた。それを私は後から知った。HPを通じて仲良くなっていただき、一緒にツーリングに行ってもらうことはそれ自体私も嬉しいことだ。別にそのことをとやかく言うつもりは全くない。しかし、私も走りたかった。せっかく知り合えた方を一目でも見たかった。そう言えば、この頃は、まだお二人には面識がなかった。その二人がツーリングをしたという書き込みがあったとき、次はぜひ仲間に入れて欲しいと頼んだ。その時、来年は3人で、信州に行こうと言っていただけた。泊まりたい国民宿舎があると言うことで、夏の信州ツーリングが決まっていた。その後、むねちゅうさんが、その国民宿舎に予約を入れたが、1年前から予約いっぱいと言うことで、断念せざる得なかった。そこで、やはりバイク乗りの仲間である蓼科の「スノーベル」に行こうと言うことになった。「スノーベル」は、なかなかお洒落なペンションである。オヤジ3人で行って、一体なにすんねん、と不可解だったが、話はまとまったのだ。
その時私はむねちゅうさん宛にメールを書いていた。「・・・オヤジ3人ではお洒落すぎるペンションですが、HPで他にも参加者を募りましょう。その上で、やっぱり3人だったら、大笑いして飲みましょう。・・・・」。そんな乗りで、HPに予定を早々にアップした。KOJI&ririさんが、ちょうどその頃蓼科の別荘に行っているので顔を出すとの返事があった。AOIさんご家族が、新潟の実家に帰る途中、立ち寄るとの連絡があった。HPで繋がりのある松本のBakuさんが、「いきます」と応えてくれた。そして、keiちゃんも8日の朝、何とか行きますとのこと。最後に前日、KAORINさんが、スノーベル到着を待ち伏せるとのこと。おおっ、オヤジ3人だけではないような予感がしてきたのだ。

■あれれ、なんでririさんがいるの?
浜松のICを降りて、5分くらいのところが待ち合わせ。遠州豊田のPAでガソリンを満タンにして、そのおかげで10分ほど遅れて待ち合わせ場所に着いた。朝早いから大丈夫だろうとたかをくくっていた厚木手前が、やはり渋滞で、10分の遅れが出てしまった。なにしろ初めての待ち合わせ場所、もう一つ先の信号かなと信号待ちをしていて、危うく待ち合わせ場所を通り過ぎそうなときに、「植野さーーん」という女性の声が聞こえた。女性の声は全く予想していなかっただけに、空耳かとさえ思った。ririさんとカズやんがいる。えーーっririさん。何でこんな所にいるのーとまだ理解不能だった。大きくユーターンして、待ち合わせのコンビニの駐車場に入ってバイクを止めると早速ririさんが、「来ちゃった。」とケロッと言う。おお、そうか、来ちゃったんだ。

●集合場所に着いたら、ririさんがいた。しかも一番最初に着いたという。いやいや、驚いた。
●むねちゅうさんも到着して、いよいよ出発。むねちゅうさんは、来る途中すでに雨に降られていた。

なーーーんだ、一緒に走ろうというわけだ。しかし待てよ、ririさんは、今年X4を手に入れて、こないだ初めてロングツーリングを経験したばかりの人だ。152号線はかなりきついのではないかと、とっさに思った。分かってて来たのだろうか。・・・しかしね、来ちゃった以上もう仕方ない。走ってもらおう。と同時に、ririさんが一緒なら、自分も気が楽だと思った。むねちゅうさんも少しペースを落とすだろう。ririさんにだったら着いて行けそうだ、なんてずるい考えが頭に浮かび、「いやいや、ウェルカムだよーー」とご機嫌で答えたのだ。バイクで山道は、いままでずいぶん走っている。まあクルマが通れる道であれば、バイクで走れないわけがない。事実、走れなかった道の経験はない。だが、ずいぶん前に乗鞍の登りで、怖い思いをした。登りのタイトな左コーナーで、タイミングが合わず、完全にバランスを崩したことがある。それが、かなり強めのトラウマになっていて、何となく苦手意識があるのだ。前回の四国ツーリングで、なんとなく「大丈夫かも知れない」という感覚は掴んでいるのだが、まだ、嫌だな、と思う。これを克服する意味でも、今回のツーリングに期待していた。152号線を意識して走り切れれば、トラウマから解放されるだろうと信じていた。ただ、むねちゅうさんと、カズやんのペースだと、かなり不安があったまだ。ゆっくりであればなんとかなるが、スピードを出され、自分のペースでなくなったとき、どうなかるかが分からなかった。そこにririさんである。当然ペースは落ちる。自分のペースが守れる。ほっと安心したのは、こんな理由からだ。

■天竜川に沿って、登る、登る、登る。
大阪からやって来るむねちゅうさんは、途中豪雨にあって、30分ほど遅れて到着。4人が揃ったところで、出発だ。先頭はむねちゅうさん、ririさんが続いて、私、カズやん。
浜松から北に向かうと152号線は簡単に分かる。家並みがしばらく続き、やがて途絶えると、天竜川に沿って走る道だ。緩やかに登っている。急なカーブほとんどない道だが、ずっと登っている。なんだか天を目指す竜のような気分、それで天竜川か・・・などと自然に感じる。全く混むことがなく天竜市内をかすめてゆくと、「月、3キロ」のあの看板が見える。いくら登ったとは言え、ここから3キロで、月に到着するとは思えない。月村がここにあるのだ。この辺りは、いくつかの新しいトンネルができていて、大きく迂回していた道を短絡している。便利ではあるが、川に沿った大きなカーブが失われてしまった物足りなさを感じてしまう。やがて、いやに広い川だなあ、と感じると「秋葉ダム」が見える。この奥の山中に「秋葉神社」があるはずだ。まだ先は長いので、今回は寄せず、先を急ぐ。この辺りは、しっかりとした両通行の2車線で、道は快適だ。このまま続いてくれればいいのになあ、と考えながら走る。初めて走る道は、どこからどうなっているのか、全く分からない。地図ではしっかりした道でも、行ってみるとえーーっということがある。この152号線がこの先どうなるのか、少し期待、たくさん不安なのだ。

●兵越峠 予想していたほどひどい道ではなかった。慎重に走れば、初心者でも十分走れる。
●峠を越えて一休み。少しお腹が空いてきた。まだ、天気も上々だったのに・・。


下村の先で、左折し、橋を渡ると、いよいよ山に入っていく感じだ。水窪を過ぎて、何度かターンを繰り返して登っていくと、突然素晴らしい道に繋がる。「草木トンネル」を通過する道で、正確には474号線になる。152号線はここでいったん途絶え、青崩峠を越えた先から、また続いているのだ。この区間は、トンネルを抜けた先から迂回路になる。クルマ2台がギリギリすれ違えるほどの狭い道になるが、バイクにとってはむしろ快適な道だ。草木川に沿って走る道なので、アップダウンもそれほど大きくない。これくらいならいいや、とバイクを進めてゆく。ヘアピンカーブを左に回ると突然「兵越峠」の看板が現れる。第一の難所だと思っていた「兵越峠」に着いたのだ。ここで一枚写真を撮りたかったが、むねちゅうさんは、一旦停止をしただけで、走り出してしまった。まあ、いいや。峠を越えるとかなり急な下りに一変する。時々クルマも上がってくるので、慎重に下った。今のところririさんも、完璧に着いてきている。危ないところも感じさせない。これなら大丈夫でしょう。迂回路を下りきると、152号線に戻れるのだが、戻ったところで道はほとんど変わらない。むしろ山深く、不気味な感じだ。国道を示す看板も、なんだか惨めな感じ。やはり山奥深い場所なのである。しばらく「これが国道?」と思うほどの152号線を走るり、山を下りきると人の気配が感じられるところが現れる。ここで、ちょっと一休み。ずいぶん高い場所であるはずなのに、止まると暑い。太陽が容赦ない。バス停があって、その待合い場にトイレが付いている。何ともありがたいと入ると、蚊が飛んでいる。凄いつつも用を済ませ始め、回りの壁を見たら、そこには無数の蚊、蚊、蚊。しかし、出し始めているので、途中で止められない。騒ぐと一斉に飛び始めそうな感じ。何匹かは、腕に止まる。「フーー」と息を吹きかけるくらいの抵抗しかできない。こんな時に限って、なかなか用足しが終わらない。見れば見るほど、ものすごい数の蚊だ。早く終われ、早く終われと祈るばかりだ。こんなトイレを利用する人は居ないのだろう。単に蚊の繁殖場になっているのだ。「うへーーっ」と叫びながら、トイレから出てくるとカズやんが順番を待っていた。「だめだめ、蚊だらけだよーー」といって、中をほんの少し見せたら、カズやんは、黙って木立に向かった。

■第二の難所、地蔵峠
次の難所は、地蔵峠の筈だった。走っていくと「152号線通行止め・迂回路」の看板が見え、無理やり左折させられる。どこ行くの。一気に不安になる。カーナビにも出ていない道だ。くねくね、またくねくね。さっきの迂回路より狭くて、急だ。くねくね、くねくね。軽トラックが先導しているので、てっきり迂回しているのかと思いついていったが、そのクルマは、途中の民家に入っていった。「こんなとこに住んでんだ」、人間って凄い。
ようやく両通行の2車線道に戻って、再び152号を快適に走り続ける。しかし、目前には再び152号線が途切れる地蔵峠にさしかかることは分かっている。今度はどんな道だろうと、もう半ば楽しむ気持ちになっている。登りヘアピン恐怖症も、できるだけシフトを落とし、死んでもクラッチを切らずに回れば、それほど怖くないことが分かりかけていた。スピードは、リアブレーキでするとよい、と言う技法も少しできるようになっている。怖さが薄れると、だんだん面白くなる。ちょうどそんな気分だ。また、少しずつ登り始めると、高速道路のような橋桁が見える。いつかこの辺にも、素晴らしい道が出来上がるのだろう。152号線から大きく左曲がり、立派なトンネルが続いている。474号線「矢筈トンネル」だ。ここから152号はしばらく続くが、直ぐに途切れ、登山道だけになる。トンネルに入らず、152号を行くと、またまた迂回路の入口が見える。大きくユーターンするように「しらびそ高原」方面にバイクを進める。入口で、むねちゅうさんが、「ここでいいのか」と聞くようにこちらを振り返っている。カーナビの付いた私のバイクは、間違いなくその道であることを示している。大きく頷いて、正しいことを知らせるとむねちょうさんのバイクは、林道に消えていった。続いてririさんが、不安げに迂回路に入る。「またーーー」という声が、聞こえてきそうだった。

●国道とは思えない一車線が続く。バイクで良かった。クルマだとちょっと辛いなあ。
●地蔵峠に到着。地蔵は発見できなかった。残念。

こちらの迂回路は兵峠より幾分アップダウンが激しい。でも、もう怖さは全くない。できるようになったターンを何だか楽しめている。迂回路はほとんど一本道だから、道を間違える危険はまずないのだが、この迂回路は、途中で大きく別れるところがある。しらびそ高原に行く道と、152号に戻る道である。間違えなければいいけど、と思って走っていると、大きな看板のあるまさにその分かれ道をむねちゅうさんは、右に走った。「違う、左だ・・・と思う・・・」と思ったときはすでに遅く、むねちゅうさんとririさんは、しらびそ高原に向かっていた。その場に止まると、カズやんも止まる。たまたまその場にいた地元の人に聞くと、やはり152号は左だった。二人を連れ戻すためにカズやんが追いかける。私はその場で待機。10分ほどで3人が現れた。元の隊列に戻り、私蔵峠を目指す。ここからはかなりのくねくね、かなりの急勾配だった。慎重に登り、下り、地蔵峠の看板か見えたときは、さすがに嬉しかった。これで克服できたぞ、という気持ちでいっぱいだった。地蔵峠は、152号線に戻ってからの方が、険しい道だった。国道とは思えない林道だ。この辺りの道は、アスファルトであるが、道路が所々大きく陥没している。地盤の悪さがこんな所にも出ている。もともとこの大鹿村辺りは、日本列島を大きく東西に分けるフォサマグナと西日本がぶつかり合う断層地帯で、おかげで、南アルプスもできたのだし、地盤が悪く、152号が繋がらない理由でもある。この辺りにその断層が見える場所があるとあらかじめ聞いていた。色の違う地面が見事にぶつかっているのが、地表に現れているのだ。見られるものなら見たいと思っていた。ところがである。誰の行いが悪いのか、雨がぽつぽつと降り始めたのだ。

■峠を越えたら、雨との戦い
降ると予想されていた雨なら、まだ諦めもつく。それでも出てきた自分が悪いのだ。しかし、まさか降るはずもないと思っていた雨には、信じたくない気持ちが強いためか対応が遅れる。今回の雨は、まさにそんな雨だった。地蔵峠を降りたころから、「あれ。といった感じでぽつりぽつり来ていた。空を見上げるとかなり速い流れの雲が、山をかすめている。山特有の通り雨だろうくらいに考えた。山を過ぎれば、やむだろうと信じたかった。ぽつりぽつりから、やや強くなり始めたころ、先頭のむねちゅうさんが止まった。いい判断だった。ここでレインコートを着ていれば、全く問題はなかった。しかし、空を見上げ、あまりに速い流れの低い雲に騙された。「だいじょうぶ。ここだけだよ。走っちゃおう。」そう言ったのは私だった。これが間違いの元だった。全ては、私の判断ミス。リーダーとして明らかに失格。組織の癌となってしまった。その言葉では知り始めて1分も経たないうちに激しい雨。一瞬のうちに4人はずぶ濡れになった。もう、いまさらレインコートを着てもしかたない感じとなって走り続けた。いやいや、申し訳ない。何度もいうが、私のミスである。その後、激しい雨は少し収まったものの、にわか雨程度が降り続いた。ガソリンもなかったことから、ともかくガソリンスタンドまで、走ってしまおうと言った私が馬鹿者だったのだ。ガソリンスタンドは、いくら走ってもなかった。それまでは、所々にあったのだが、地蔵峠を越えてから全く見あたらない。ズルズル走り続けているのだ。「美和湖」に行けばあるだろうと思っていた。ない。その先に行っても、ない。濡れたまま、ズルズル走り続けているのだ。むねちゅうさんが止まった。おお、本当に小さなガソリンスタンドだ。やってるのだろうか。むねちゅうさんが覗いてみるが、誰もいない。その時、隣のコンビニから人が出てきて、「いらっしゃーーい」と兄さんが声をかけてきた。よかった、ガソリンが入れられる。実は、すでに202キロ走っていて、X4としては、限界に来ていたのだ。今回は、むねちゅうさん、ririさんと私、3人ともX4だ。同じ条件で走れば、燃費にも変わりない。同時にガソリンを入れれば、3人同時になくなってしまうのだ。まあ、なんとか助かった。濡れた身体をできるだけ拭いて、後は走れば、乾くだろうと3人が思った。空は少し青空も見え始めている。ずぶ濡れになったが、やはり、通り雨だった。もう、安心と、そのままでまたバイクを走らせた。これがまた、間違いだった。そこからは、あとは「杖突峠」を越えれば、茅野。1時間半もあれば確実に着ける距離だった。多少降っても、走りきれると思っていた。ところが違ったのだ。杖突峠に入ったとたんまた激しい雨。突き刺さるような雨になった。しかも気温も下がってきて、寒い。杖突峠頂上のレストハウスの駐車場にバイクを入れ、レインコートを着ることにした。あと30分で到着できる場所だ。いままで何時間も我慢して、いまになってレインコートだ。しかし、私、むねちゅう、カズやんは、これくらいでは風邪も引かないだろうが、女性のririさんは、そうはいかない。冷えて風邪でも引いたらえらいことだ。ともかく濡れた体を拭いて、レインコートを着れば、寒さは防げる。そうしてもらおうと、バイクを停めたのだ。その判断は、あまりにも遅かったが、まあよかった。レインコートを着た身体は暖かくなった。しかも、雨はさらに激しく降り続いた。「杖突峠」から眺める茅野の町は、雨は上がったように見え、今日の宿泊予定の「スノーベル」も多分見えているのだろうなあ、と思った。レインコートは早めに。これは、肝に銘じよう。

■kaorinさんが待っていた。Bakuさん、春さんがやってきた。
茅野の町中は、カーナビを持っている私が先導した。スムースにいくはずだったが、はははっ、道を2回も間違えた。結局、カーナビが指定する道ではなく、カーナビに見えていた152号に抜ける道を探し、ほんの少しの無駄で目的地を目指せた。茅野から「スノーベル」は、20分もあれば着いてしまうのだ。「スノーベル」には一度来たことがある。不良中年の集まりがあった時に泊まった。もともとこの「スノーベル」は、神戸のshinさんが、ひょんなことから見つけたペンションで、自分のHPやMLに紹介し、「スノーベル」のオナーの安藤さんもバイク乗りであったことから、何となくバイク乗りが集まるようになった。ここで、来訪者の名刺を見せてもらうと分かるが、不良中年の多くが訪れている。なかなか圧巻である。
宿に到着すると、すぐに建物から安藤さんが飛び出してきて、バイクを誘導してくれた。屋根付きの駐輪場所にきちんとバイクが納められる。何とも嬉しい。私、むねちゅうさん、カズやんどバイクを停める。一台ごと安藤さんが手伝っている。さすがバイク乗りだ。ririさんは、ほんの近所に自分の別荘があると言うことで、まずはそちらに戻り、世るまた遊びに来るという。ペーンションの前で、いったん別れた。バイクを入れ終わると、安藤さんが教えてくれた。「植野さんを待っている人が来てるよ」。おお、きっとKAORINさんだ。前日の掲示板に夕方顔を出すと書き込んでくれていた。少し到着が遅れたので、待たせる結果になってしまった。ベランダに来ていたレインコートを干して、ブーツを脱ぎ捨て、ようやく建物に入ると、「こんにちわ。はじめまして」と女性が挨拶で迎えてくれた。「おお、KAORINさん?初めまして。遅くなってごめんね」と初対面なのにいきなり親しくなっている。KAORINさんとは、全くの初対面だ。何度かHPの掲示板に来ていただいた。もともとは、メールマガジン「オートバイ旅倶楽部」に「女性のためのバイクとLoveLoveになる方法」を連載しているときに、それを読んでHPを尋ねていただいたのだ。それ以来時々HPを覗いてくてれいるらしく、今回のツーリングも知っていてKAORINさんの家の近くと言うことで、わざわざ尋ねてきてくれたのだ。ネット上でしか知らない方とこうして逢えるのは、とても嬉しい。お逢いした瞬間から、バーチャルの知り合いから、リアルの知り合いになる感じだ。ネットは、それ自体が目的ではなく、コミュニケーションの手段になる。KAORINさんとも、リアルなお友達になれたというわけである。
ペンションの一階と二階の階段の踊り場が、ちょっとした歓談の場になっている。そこで、さっそくお話が始まった。むねちゅうさん、カズやんも加わり、今日走ってきた道について、ワイワイと語り合った。雨に濡れたままだったので、途中失礼して乾いた普段着に着替えたものの、そのままずいぶん長い間話していた。バイクに乗って、目的地に着くと、バイク乗りは雄弁になるのかも知れない。ライディングしている長い時間一人で黙っていたことと、目的地に無事着いた安堵感と、ほんの少しの興奮状態が、その日のことをたくさん語らせてしまう。KAORINさんも面白がって聞いてくれた。話に夢中になっていると、新しいお客さんがやってきた。Bakuさんと春さんだ。
Bakuさんとは、一年ほど前にBakuさんからメールをいただいて、HPの相互リンクのご依頼をいただいた。Bakuさんの「BukuのX4部屋」は、特にツーリング・レポートがめちゃくちゃ面白い。思わず全て読んでしまった。一貫した「漢思想」が貫かれているのがいい。「漢だから、気にしない」は、名言とも言える。ぜひ、ご一読いただきたい。そんなことで、お知り合いになれたのだが、実は、Bakuさんの方はすぐにリンクしていただいたものの、私の方がリンク・ページを全面的に作り替えたく、全く更新していなかった。最近になってようやくリンクし、そのことを伝える書き込みをしたところ、今回のツーリングが松本の近くだから、顔を出していただけると言うことになったのだ。春さんは、Bakuさんの相棒と言うことになっている。それ以上の詮索はしないが、実に可愛い子で、エストレヤに乗っていることから、「エストレヤ美女軍団」に参加をお願いした。沖縄の焼酎をお土産にいただき、今日はおとなしく帰るものの、明日のツーリングには参加いただけるとのこと。おお、随分の人数になりそうだ。
これからもよろしくということで、KAORINさん、BAKU、春さんが帰ってゆき、残されたオヤジ3人での夕食となった。むねちゅうさんは、こうして会いに来てくれる仲間にいたく感動していて、「たいしたもんや」を連発していた。確かに、旅先に初対面の人が来ているだけで、会いに行ったりはなかなかしない。でも、HPで何となく知っていて、会えるチャンスがあれば、何とか合いたいと自然な気持ちをそのまま表現できるのは、お互いにとても嬉しい。何もわざわざを、敢えてやることで自分の世界が広がっていく、そんな感じだ。

●スノーベルに到着するとkaorinさんが待っててくれた。4人でしばしお話。すぐに仲良し。
●CB400がKAORINさんの愛機。アクセルが戻らないのをけーむねちゅうさんが直した。


■AOIさん一家がやってきた。ririさんが戻ってきた。
その日は、それだけでは終わらなかった。たまたま新潟の実家に戻る途中というAOIさん一家が、何時になっても顔を出すと言っていた。夕方4時頃には自宅を出発すると言うことで、7時には着くだろうと思っていたが、なかなか連絡もない。何度か電話もしてみたが、なかなか繋がらない。8時頃戻ってくると言っていたririさんも顔を出さない。疲れちまったのかなー、という感じ。ところがその直後AOIさんから電話がある。AOIさんだと分かるのだが、向こうの声が聞こえない。雰囲気で、近くまで来ているのだろうとは分かるものの、迷っているのだろうと誰もが感じた。昼間であればともかく、深夜にこのペンションを見つけだすのはかなり難しいと思う。しかも、ある程度の山の中で、電波間具合も良くない。せめて向こうの声が聞こえてくれれば、様子が分かるのに、通じてはいるものの全く聞こえない。表に出て、それらしきクルマをさがすが、真っ暗な高原の夜が広がるばかり。打つ手がなく途方に暮れていると、車のライトが近づいてきた。「おっ、あれかも知れない」と期待に胸を膨らませる。クルマの窓からAOIさんの笑顔が見える。yAsさんもいる。なんとまあ、家族全員で、お出ましだ。子供達も起きている。「お疲れさまーー」、ほっとした。
ほどなくririさんも到着して、全員が揃った。大人6人、子供3人。随分の大人数だ。実はこのペンションには、秘密の部屋がある。地下室になっている部分に、卓球台がすっぽり入るほどのスペースがある。以前ここで宴会をしたこともある。このスペースを使わせてもらえるようにあらかじめ頼んであった。子供達が走り回って騒いでも、大丈夫というわけだ。

●これが地下室、10人くらいならゆったりできる。子供たちも大暴れ。
●みんなで記念撮影。ここまできて、みんなに会えるのが不思議。でも、ある意味、自然。


さあ、持ち込んできた酒を開け、飲み直しだ。AOIさんのお手製のケーキも仲間入り、久々の再会を楽しんだ。やはり話すことは、バイクの話ばかり。よくまあこんなに話す事が次々あるものだと思う。それだけバイクの世界は細かくて、広いのかも知れない。そしてそれぞれに興味が強い部分が異なるのだと思う。しかし不思議なことに誰か一人の蘊蓄話には決してならない。自慢話にもならない。どちらかといえば、失敗話に笑っている。だから嫌味がなくいくらでも食べられてしまえるといった感じなのだ。だから楽しい。考えてみれば、この顔ぶれは、いつものメンバーという気がする。まだ初対面から1年も経っていないのに、ずいぶん前からの友達のような気もする。人の繋がりの不思議をつくづく感じる。時間の経つのも忘れて話していると、そろそろ明日になる時間。これからAOIさんは新潟まで行く。我々も朝9時には出発。楽しい時間もいい加減に我慢して、散会した。

■7台のうち4台がX4。まあ、美ヶ原に行こうか。
朝、予定通りKeiちゃんが到着した。真新しいフェザーだ。夜中に出発し、所々で寝てきたという。ここまで来てくれたのはとても嬉しい。そして一緒に走りたいと思ってくれるのが、また嬉しい。これもまた、人の繋がりの不思議だ。しかもkeiちゃんは、腕が痛い。ハンドルを握れないほどにもなってしまう。それを押してきてくれる。まあ、バイクに乗りたいのが本望なのだろうが。集合の9時少し前、Bakuさんと、春さんもやってきた。Bakuさんは、ブラックスペシャルのX4。春さんは鮮やかなブルーのエストレヤだ。お揃いのジーンズのベストで、バシッと決まっている。少し遅れてririさんも到着した。砂利の駐車場から出すのに時間がかかったと言っている。これで、総勢7名が揃った。むねちゅうさんが、「ほなら、美ヶ原でも目指しましょか」と言い、そうすることになった。天気は「晴れ」、風もない。絶好のツーリング日和だ。
むねちゅうさんを先頭に、Keiちゃん、ririさん、春さん、Bakuさん、私、カズやんと続く。女性もいるので、むねちゅうさんのペースはゆっくりだ。それがまた気持ちいい。高原の爽やかな空気を十分に感じられる。すぐにビーナスラインに入り、道も快適になる。ピラタスロープウエイ、すずらん峠を越えると白樺湖も目の前だ。大門峠の手前で、いきなりクルマが止まった。全く進まない渋滞になった。「事故かなあ?」そんな風に考えていると、レストハウスに入るクルマの渋滞だった。するりと脇を抜けて先に進む。車山の展望台で、一休みする。ものすごく気持ちいい。みんなバイクから降りて、話が始まる。それぞれのバイクの前に来ては、そのバイクの話だ。一台ずつ話していくのだから、時間がかかる。汲んでも汲んでも尽きない湖のように話が弾む。一休みの筈が、30分近くもそんな話をしながら、またバイクを進める。ここからは、和田峠、扉峠とノンストップで進む。ところが、扉峠に入る直前、最後を走っていたカズやんが、いきなり追い越し、トップのむねちゅうさんに走り寄った。バイクを止め、ラジエターを開け始めた。さっきの渋滞で、水温が上がり、このままでは走れなくなりそうだという。「何か、水はないかなー」とカズやんがみんなに聞く。ririさんが「お茶ならあるけど」とペットボトルを差し出す。「後で買って返すからーー」とカズやんは、ラジエターにお茶を入れ始めた。お茶を飲むバイク、生まれて始めて見た。

●新しいフェザーで走るKeiちゃん。腕が痛いのにここまでやってきた。凄い。
●むねちゅうさんのX4を見ながら話すBakuさんと春さん。バックステップを見る目が違っていた。
 

今回は何事もなく終わると宣言していたカズやんのバイク。バッテリー、レギュレーター、タイヤとトラブルを次々に起こしてきたカズやんのバイクが、今度はラジエターだ。みんなニヤニヤ嬉しそうな顔をしている。カズやんだって、自虐的に嬉しそうだ。峠の手前でよかった。ここから先は、扉峠の凄い登りばかり。ほぼ直角な斜面を九十九折りで登る。お茶が、役立った。ririさんの喉は乾いてしまうかも知れないけれど。
前日、峠道はさんざん走ってきた。走ってくる中で、何だか不得意気分があった登りのタイトコーナーも「もう大丈夫」とある程度の自信になっていた。美ヶ原への急な登りとコーナーも、そんな気分から楽しさを感じ始めた。登りタイトコーナー制服の秘訣は、意外に簡単だった。ギヤを出来るだけ落とすこと。そして、クラッチは死んでも切らないで、繋いだまま登ること。スピードの調整は、リアブレーキが中心。ある程度アクセルを開け、そのスピードをリアブレーキで殺す。スピードが欲しければ、リアブレーキをゆるめるのだ。登りのリアブレーキは、心理的にとてもいい効果だ。トルクが好きなときに得られる。クラッチを切らないから、失速することもない。こうして、少しずつ慣れていって、高いギアで回れるようになればいい。コーナー速度が高ければ高いほど、高いギアで回れるのだが、その分バンクをきつくしなければならない。むねちゅうさんは、どんに峠も4速で登ってしまうそうだが、これはコーナーの速度が速いから出来る芸当だ。瞬間的にバイクをバンクさせ、スピードを殺さないままコーナーを回っているから出来る。恐がりで、慎重で、一瞬でバイクをバンクさせられない私は、出来るだけコーナーでスピードを殺し、ゆっくりと回る。だからギヤは低くなる。低速での走行となるので、クラッチを切りたくなる。ここでクラッチを切ると、登り坂では一瞬に速度がなくなる。速度がなくなるとバイクは安定感を失う。ここで焦って、力が入ると、さらにクラッチを握る。ひどいときは前のブレーキをかけてしまう。こうなると結果はたった一つだ。「コケちゃう」のだ。
上手な人の走りを見てみると、コーナーは回っている感じがしない。バンクさせて、方向を変えている感じだ。時間をかけてトレースしているのではなく、一瞬で方向を変えるのだ。どうしてそんなことが出来るのかといえば、バンクした分、ハンドルが切れているのだ。バイクは、バンクさせると自然にハンドルが切れる。いわゆるニュートラルステアだ。ニュートラルのまま、ハンドルが切れていれば、バイクは瞬間的に方向を変える。ところが、怖かったり、力が入っていたりでは、このニュートラルステアを妨げるようにハンドルを押さえ込んでしまう。いくらバンクしてもバイクが曲がらない原因だ。バンクしたらコーナーの内側の腕の力を抜こうとしてみれば分かる。凄い力で押さえていたことが分かる。曲がろうとするバイクを乗っている人が妨げているのだ。これが意識できれば、コーナーは次第に走れるようになる。試して欲しいな。
こんなことを考えつつ、自分でも練習しつつ、次第にコーナーが楽しくなってきたのだ。

●お揃いのベスト。Baku&春。二人とも走りは余裕。Bakuさんは、コーナーになるとスピードアップ。
●走るririさん。カメラ目線で余裕綽々。X4に乗る女性って、他にいる?


■久しぶりの美ヶ原。ずいぶんモダンになっちまった。
峠を登りきると驚くほどの平原が出現する。美ヶ原だ。こんなに高いところに、どうしてこんなに広い平らな場所があるのか信じられないくらいだ。「宇宙人の基地だった説」を私は唱えているが、だれも本気にしてくれない。こには、10年くらい前にクルマできたことがある。その時は、その広さにとんでもなく驚いた。しかし、今回は、別の驚きがあった。ずいぶん綺麗に開発されていたのだ。美術館有り、綺麗なレストラン有り、風力発電のプロペラがあり、まるで、遊園地だ。何で真多恨なところにこんなものをと、思うのは、私だけでない気がする。ここに来ても、別に何をするところでもない。何故こんな所に美術館があり、遊戯設備があるのかとても不思議だ。いつまでも反映するのだろうか。
ちょうど昼になったので、昼飯を食べることになった。美術館横のお土産センター兼レストランにはいる。日曜日のせいか、人がいっぱいだ。これなら繁盛するなあ、それにしても何しに来てるのかなあ、と自分のことを棚に上げて感じてしまう。レストランは2階。本来ならここから美ヶ原の大パノラマが見られるはずなのだが、残念ながら一面雲に覆われている。正直、50メートル先も見えない。さっきまであれほど晴れていたのにと、すこしガッカリしてしまう。しかも、レストランのメニューが貧弱で、しかも高い。なんだか社員食堂みたいで、これまたガッカリだった。「まあ、美ヶ原でも行きましょか」くらいの軽い気持ち出来ているのだから、期待感もそれほど高くはないものの、もう少し何とかならないものか。とは思いつつも、減ったお腹を満たそうと、オムレツを食べた。1000円以上もした。みんなも、少し不満げにカレーを食べたり、蕎麦を食べたりだった。うーーん、バイクのツーリングは、こんな所で昼飯を食べるものではないなあと、ひっそり感じていた。別に特別なものでなくてもいい。土地の名物とか、もっともっと変なものとか、バイクだからこそが、少しでも感じたいのだ。このレストランが悪いのではなく、計画のなかった我々が悪いのだ。

●食べたオムライスと唐揚げ。1000円以上した。味の割には高い。
●Keiちゃんが食べたカレーライス。どこにも美ヶ原を感じなかった。


それでも、お腹いっぱいになり、バイクに戻ると、みんなまた元気になった。7台のバイクのうち、今回は4台がX4だ。こんなことって滅多にない。やはり私のHPに集まってくれた方の特徴だ。「X4を並べて写真撮ろう」ということになった。Bakuさん、ririさん、むねちゅうさん、私。4台が並んだ。でも、同じバイクに見えない。カウルがそれぞれ違うので、何だか顔が違うのだ。自分のバイクの前に立って、記念撮影もした。なんだか照れる。同時に、何だか嬉しい。同じバイクを乗っている仲間だという連帯感が、不思議にくすぐったい。写真を撮った後、4台のバイクの音の聞き較べをやった。それぞれにマフラーが違うので、音も全く違うのだ。むねちゅうさんのワイバンをはじめ、3人はマフラーを変えている。私だけノーマル。私のX4だけは、何だか子供のようにエンジンのメカノイズが響いていた。

●4代揃ったX4。まあ、珍しい風景。物好きが4人集まったと言うことでしょうか。
●あれあれ、写真を撮る春さん。カメラマンの才能がありそう。撮った写真は見てない。


■別れは、あっけなく。それでまた会いたくなるような。
美ヶ原に着いた。昼飯も食べて、写真も撮った。あとはやることがなくなってしまった。むねちゅうさんは、まだこれから大阪に帰る。我々も東京方面に向かう。みんなで集まって、走れたことが大切だったのだから、十分楽しめた。そんなわけで、なんとなく帰路につく。そんな感じがいいと思う。一人一人が集まって、どこかで少し一緒になる。そしてまた一人になる。バイクってそんな乗り物だ。いつまでもベタベタしていないところかとてもいい。
扉峠を降りたところで、むねちゅうさんが一人進路を変えた。次は、私が先頭になり、塩尻に向かって降りてゆく。20号にぶつかる寸前で、Bakuさんが、「私たちは、右行きます」と声をかけてくれた。20号を曲がって、いったん止まると、カズやんが「下道行きます」と声をかけ別れ、ririさんは、蓼科の自分の別荘へ戻る。keiちゃんは高速をマイペースで行くという。私も「ガスを入れて、高速で帰る」といってその場で4人もバラバラになる。いいなあ、この感じ。このあっけなさ。自由な羽を持つ鳥たちの集まりみたいだ。違う意志を持ったとたん、いままで列を成して飛んでいた鳥たちが、一瞬でばらばらになる。そして、みんな知っている。いつかまた、どこかで一緒の意志を持って走る日が必ず来ることを。
帰りの中央高速は、一人だけの走行だけど、何だかとても嬉しかった。みんなと会えて、走れて、話せて。たった2日の間に、10人の人が蓼科にいた。HPで知り合ったという、それだけがきっかけの人たちだ。そして、また必ずどこかで会いたいと思った。会えると思った。走り続けよう。道とみんながいる限り。そんなことで、帰りの道程は、短く感じた。(完)