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MOMENT TO MOMENT
野良猫の試練
2007年4月15日14時21分 東池袋

東池袋4丁目の都市計画第1地区に超高層複合施設・ライズシティ池袋が2007年1月末に竣工、早くも4月上旬には第2地区の再開発がスタートした。 一部の建物は立ち退きが終わっていないものの、仮囲いボードにすっかり覆われた一帯は迷路のようで、まさに消えゆく街風景があった。 超高層ビルが目前に迫る谷間のような環境の中にも、昭和中期の面影が残る街だった。 古い街にはよく猫好きの人が暮らしていて、建物の隅などに住み着いた野良猫の面倒を見ているものだが、この春突然に猫たちの生活が一変してしまった。

この第2地区で、再開発前の半年間に野良猫を17匹確認している。 T字路の一角にあった築50年ほどの古いマンションでは、暖かい日差しの中で思い思いにまどろむ5匹の猫たちを一度に見たことがある。 マンション1階のほぼ半分を占めていた駐車場は、野良猫が集まる場所として地元ではよく知られていたという。 大家さんのお婆さんも、近所の野良猫たちを分け隔てなく世話する猫好きだった。 お婆さんが散歩する後にはいつもすり寄る猫の姿があり、彼らが自然とこのマンションに集まってくる理由もなるほどと思ったのである。

駐車場の開口部には、猫がやっと通り抜けられるほどの絶妙な間隔で鉄格子の並ぶ大きなシャッターが設置されていた。 もちろん人は鉄格子を抜けられず、通行人の悪戯を避けることができた。 この鉄格子は猫にとっては出入り自由であり、プロテクター兼フィルターの役割をしていたのだ。 冬季の午前中には駐車場の奥まで日差しが伸び、猫たちは冷えた身体を気持ち良さそうに暖めていた。 居住者専用の駐車場では他人から邪魔されることもなく、猫たちがその日を過ごす場所としてこれほど好条件の揃う環境はなかった。

隣の古い木造アパートにも世話をする人が住んでいたらしく、昼すぎに日が当たる玄関左側の軒先には、マンショングループに属さない猫2匹がいつも寝そべっていた。 そこには水の入った白いポリバケツが置かれ、仲間らしい若い猫もときどき喉を潤しにやってきた。 誰の目にも防火用水の器に見えたが、どうも猫たちの飲料水として置かれていたようである。 周りには築年数の古いアパートや一般用駐車場もいくつかあり、オフィスビルの境界隙間や中型エアコン室外機の上など、猫たちが好む居場所があちこちにあった。

建物の解体作業が着々と進む囲いの中で、未練がましく佇む猫を見かけた。 街並みがすっかり入れ換わる大規模な都市開発は、住み慣れた居場所だけでなく食餌のパトロンまで失ってしまうのだから、野良猫にとっては大事件に違いない。 取りあえず猫たちは、資材置き場になった元駐車場や解体が遅れているビルの片隅へ避難している。 食餌どきになると近くの公園へ出てきてゴミ箱をあさったり、近所の猫好きの人から世話をしてもらっているが、追い出された猫すべてが食に有りつけるわけではない。 彼らには超高層街に安住の地はなく、いま再開発難民の野良猫として21世紀の東京から試練を受けている。



data
camera : Minolta alpha-7
lens : TAMRON SP AF
         28-75mm F2.8
exposure : F4 , 1/200 sec.
film sensitivity : ISO 100

ある焼き鳥店への郷愁
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released : May 6, 2007

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