署名3

ひきつづきの客が
エントランスから入ってきた。
フロント係は台帳を広げた。

「ご署名を・・・」

男は背中にかついだ
太い筆をふり上げたまま、
じっと台帳をにらみつづけた。

フロント係は辛抱強く待った。

時が過ぎ、男は奇声を発したのち、
けたたましく墨の飛沫をとばしつつ、
一気に署名した。

署名は激しく燃えあがり、
紙の上から身もだえるように立ちあがると、
龍となって天に昇っていった。

 
署名4