ひきつづきの客が エントランスから入ってきた。 フロント係は台帳を広げた。
「ご署名を・・・」
男は背中にかついだ 太い筆をふり上げたまま、 じっと台帳をにらみつづけた。
フロント係は辛抱強く待った。
時が過ぎ、男は奇声を発したのち、 けたたましく墨の飛沫をとばしつつ、 一気に署名した。
署名は激しく燃えあがり、 紙の上から身もだえるように立ちあがると、 龍となって天に昇っていった。