サイレンススズカに思う
先週の日曜に東京競馬場で行われた天皇賞では、圧倒的な単勝1番人気に支持されたサイレンススズカが、
4コーナー手前で左前脚を故障して競走中止になるという波乱の結果となった。サイレンススズカは今年に入って2月のバレンタインステークスを皮切りに破竹の6連勝。
前走の毎日王冠でもハイペースをものともせず1800mを1分44秒台で楽々と走られては、
天皇賞の出走場の中でもスピード能力がずば抜けているのは明らかであった。しかし、秋の天皇賞はこれまでに予想もし得ないことが起こりつづけていた。
シンボリルドルフのまさかの敗戦に始まり、オグリキャップ、トウカイテイオー、ビワハヤヒデ、
サクラローレルらの実力馬たちが、人気を背負い次々と負けていった。
メジロマックイーンでさえ実質勝負に勝ちながら、降着の憂き目に遭っている。平成6年の天皇賞は東京競馬場で観戦していたが、負けるはずがないと思っていたビワハヤヒデが、
故障とは言え直線失速していった光景は衝撃的で忘れられない。
たまたまあの場面で故障したに過ぎないのだが、秋の天皇賞が持つ
得体の知れない何かがあるとも思うようになった。
それだけに、サイレンススズカの能力の高さは認めつつも、何か胸騒ぎがしてならなかった。
まさかあのようなことが起こるとは・・。サイレンススズカが負った怪我は、「左前脚手根骨(しゅこんこつ)の粉砕骨折」である。
人間で言えば手首の骨の複雑骨折だろうか。
重い怪我ではあるが、それがもとで命をも落とすことになってしまった。競馬や馬のことをよく知らない人は、たかが骨折で、思うかもしれない。
実際私もわかっていながらどこかやりきれない気持ちがする。
だが結果的には、片脚が使えないことによりもう一方の脚に過大な負担がかかり、
それが元で合併症に侵され、苦しんで死を迎えることになるのだ。
それを思えば安楽死処分はやむを得ない。
今回のサイレンススズカの故障は非常に残念なことだが、今は彼の冥福を祈るしかない。G1レースでこういうことが起きると、ペースが、騎手が、馬場が、と馬鹿げた責任転嫁をする輩もいるが、
あのようなことは競馬が行われるかぎりなくならないだろう。
たとえ馬場をダートにしようが、ウッドチップにしようが、馬が起こり得ることなのだ。サイレンススズカは2度と戻ってこないし、その血を後世に伝えることはできなかったが、
それもまた競馬の歴史となるだろう。血は残せなくても実績と印象を残せたのだから。