小特集:『緯度0大作戦』

第4回:マッケンジー艦長

 さてマリクといえば、この映画の主人公、ジョン・マッケンジー艦長を忘れる訳にはいきません。演じるは名優、ジョセフ・コットン。オーソン・ウェルズ監督・主演の名画、「市民ケーン(1941)」がデビュー作だそうです。「緯度0」の翌年には日米合作の戦争大作「トラ・トラ・トラ!」にも出演なさいます。

 渋いお顔に妙に若作りのスタイル。年齢が200歳近いという設定に、不思議な説得力があります。実はマリクと同級生で、もと親友だったって設定は…すっかり忘れてました。常に沈着冷静、行動力もリーダーシップの能力も申し分ない、完全無欠の海の男であります。

 吹替えは銭形警部こと納谷悟郎氏が担当。思えば納谷氏、この1969年夏は、かの「空飛ぶゆうれい船」の吹替えも担当し、東宝、東映夏休み映画完全制覇の偉業を達成した事も忘れてはなりませんね。この頃は声も若いし、シャベリにドスが効いててカッコイイ!最近さすがにお年を感じちゃうのは寂しい限りです。

 ジョセフ・コットン氏は1905年5月15日アメリカ合衆国、ヴァージニア州ピッツバーグのお生まれ。ロメロ氏とは実際にも2歳位の違いだった訳ですね。1994年2月6日、ロメロ氏の後を追う様に88歳で他界。


第5回:マリクのモンスター

 ドクター・マリクの生体改造手術によって生み出されたモンスター達。左から大ネズミ、コウモリ人間、グリフォンの諸氏。

 造形は東宝特撮映画で"ゴジラ"以来特殊造形を一手に担った故利光貞三氏(1982年逝去)。氏も特殊技術課の再編に伴い、次々作の"決戦!南海の大怪獣"(1970)を最後に東宝を退社されます(円谷英二という柱を失った東宝特撮は、この1970年に事実上空中分解してゆく事になるのですが…)。この頃になると"キングコングの逆襲"(1967)でゴロザウルスの造形を手掛けた安丸信行氏等も一本立ちし、利光氏は全体統括的なスタンスだった様ですが、この作品に関しては、メイキングスチル等でも先頭に立って作業する利光氏のお姿を見る事ができます。

 ただ、利光氏はどちらかというと植毛系の怪獣が苦手の様で、最初に取り組んだ獣人雪男と成虫モスラを除くと、2度のキングコング(中でも猿の造形は特に苦手の様。"キンゴジ"のコングを改修した"ウルトラQ"のゴローの方が、本家より出来が良いのは何とも皮肉)をはじめ、あまり生彩がありません。この作品は皮肉な事に、植毛怪獣のオンパレードで、数は出てくるのですが、どれも出来としては東宝怪獣の平均点以下でした。まぁ、見方によってはライオン君なんかは、ヌイグルミ人形みたいで結構カワイイのではありますが(いやはや…)。


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