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明日〔あす〕の「ダイナ」は(タイトルにモトネタあり)(1997.11.09)
第10話「禁断の地上絵」(脚本:右田昌万 監督:石井てるよし)

 先週に続き、今週もちょっと力の抜けた感があるエピソード。脚本の右田氏は超古代文明ネタってお好きな様ですね。ただ、単発エピソードでこなすには、ちょっと時間不足みたいでした。

 ドラマ的には開巻直後の戦闘機撃墜シーンなんかは、仲々緊迫感があって面白かったんですが、その後は非常にありきたりな展開になってしまって…どうもあんまりノれませんでした、私。こういうドラマにこそ、センス・オブ・ワンダーの感覚が絶対必要な筈なのに、それが微塵も感じられなかったのは凄く不満でした。石井監督の演出も、カット毎に凝った絵作りをしようとする意図は感じられたものの、場面のつなぎがあまりにもおざなりで、随所に多用される強引な場面転換や軽薄な効果音が、ドラマ自体をとても薄っぺらなものに感じさせてしまったのは残念です。

 以前にもそれとなく書いた記憶はあるんですが、「ダイナ」に限らず、近年の実写ドラマのカット割や演出手法は、どうも昭和30年代、40年代の作品と比べても、技術的に退行現象が起きている様で個人的に危機感を感じています。ちゃんとドラマを描ける演出力という意味では、最早アニメーション演出の方が実写を凌駕しているのではないか?という気さえします。

 今回のエピソードにしても、シナリオ、演出に一本芯があれば、受ける印象は随分変わって来ると思います。とにかく観ていてフカフカな頼りなさがずっと連続している様で、フラストレーションたまりました(いやはや…)。

 特撮の佐川監督も、今回はテンションの低い回だった様で(いやはや…)。ダイナのジャイアント・スイングに代表されるアクションの露骨な使い回しはちょっとね(いやはや…)。戦闘シーンはかなり冗長な印象でした。今回ノッて撮ってたのって、実は冒頭の戦闘機撃墜シーンだけって気もします。「ティガ」でも若干その傾向はありましたが、佐川監督、最近テンションに波がありすぎ(いやはや…)。

 ちょっと全体に論調キツいですが、今回のエピソードって、「ダイナ」のドラマ的な力量が伺える絶好の機会だったと思う訳です。こういうエピソードがビシッとキメられる様なら、「ダイナ」スタッフの力量は相当なものだと言えるでしょう。しかしながら今回はちょっと不満でしたが…只、こういう題材にあえてチャレンジしようというスタッフの意識がある限り、きっと向上する事はできると思った訳で、あえて書く事にしました。今後への期待を込めて…



良い子の友達ハネジロー万歳!(またまたモトネタあり)(1997.11.19)
第11話「幻の遊星」(脚本:川上英幸 監督:原田昌樹)

 ちょっと掲載が遅くなりましたが…

 試行錯誤が続く「ウルトラマンダイナ」。今回はセブンの「散歩する惑星(リッガー登場編)」を想わせるストーリー。全体的に低調な印象の「ダイナ」脚本陣の中にあって、川上氏の脚本は最ものびのびと、自身が楽しみながら書いている感が強くて嬉しいですね。ストーリーとしては、骨格にあたる怪獣=宇宙兵器っていうSF的なラインをエピソードの中でもうちょっと強調しても良かったかな?って気はしますが、レギュラー陣の掛合が仲々楽しくって、全体としては結構楽しめました。

 ただ、ハネジローの今後の扱いは非常に不安(いやはや…)。ひょっとすると「スターウルフ」のボールロボット、コンパチ君の様に、次週以降セミレギュラー化してしまうのでしょうか?いよいよ「ダイナ」も積極的にお子様層の取込みに走り出したのか…昔、戦隊シリーズでもハード指向のシリーズが続いて、「地球戦隊ファイブマン」で中盤から「ファイブくん」ってUFOキャッチャーの人形みたいな指人形が登場、幼児層の取戻しを図ろうとした事もありましたが、どうも今回のハネジローにもそんなニオイがいたします。デザイン的には好きなタイプだし、ネコみたいな雰囲気は仲々可愛いのでありますが、造形はちょっと玩具的。これまたホントは好きなんですけど(いやはや…)、「ダイナ」の世界では違和感強いですね。これって「スペゴジ」のリトルゴジラに共通した感覚かも知れません。今回も、キャラクターの出来不出来という部分とは別に、もうちょっと生物感のあるデザイン、造形ならSF的な雰囲気はより強められた気もします。

 とはいえ、変身やタイプチェンジの表現には、スタッフの試行錯誤の後が見られて、『「ダイナ」に対するスタッフの情熱いまだ衰えず』が実感できて嬉しい限りでした。

 全編を振り返ると、やっぱり今回一番の収穫はエンディング・クレジットの裏で展開されたアスカとハネジローの掛合い漫才でございましょう(いやはや…)。全ウルトラファンが一様に首をひねった(いやはや…)「ハネジロー」のネーミングセンスには、何と当のハネジロー自身も大いなる落胆を覚えていたという…可愛そうなハネジロー君、怨むならアスカのセンスのなさを怨みたまえ(いやはや…)。

 

蒸発都市1997 (1997.11.30)
第12話「怪盗ヒマラ」(脚本:太田愛 監督:原田昌樹)

 夕焼けの街を盗む怪盗ヒマラ。全体にちょっと甘いトーンが気になりはしましたが、ノスタルジックなものへの憧れがストレート現われた、太田脚本らしいやさしいエピソード。かなりシリーズの本筋から乖離した感も強いですが、たまにはこんなエピソードがあってもいいのかな?とも思えますね。ただ、最近の「ダイナ」は、こういう番外編的エピソードが大勢を占めてる気がしてちょっと気になります。まぁ元々ウルトラってシリーズとしての構成って「あってなきが如し」なのかも知れないですが(いやはや…)。ただシリーズとしてのカラーってのは、やっぱり作っていかないとね。「バラエティ豊か」ってのと「バラバラ」ってのはちょっと違いますし。

 今回のエピソードはホンネ言っちゃうと、もうちょっとしっかりした芯が欲しいんです。確かに情緒的な部分のイメージ作りはいい感じでまとまっていたと思うんですが、それを裏から支える骨太な構成がなく、ドラマのポイントが見えませんでした。太田脚本は割とイメージ先行で作られてる感が強いんで、構成の妙って部分にも踏み込んで頂けると嬉しいです。

 けどやっぱりショックだったのがスーパーGUTSの地上メカ。今回よく登場しましたが、90年代も末期の作品で、あの改造車はないよなぁ。70年代から時を超えてやってきたのかと思っちゃった。あれならシャーロックをそのまま使った方が全然いいのにね。さすがに山口修デザインにも疲れが目立ちます…「80」の頃と比べても元気ないよなぁ…

 ゲストは懐かしの村上冬樹氏。先日の柳谷寛氏といい、往年の俳優陣が現在も登場して下さるのは嬉しい限り。かつては東宝スーパー科学者陣の一人として地球防衛をしょって立ち、勢いでガス人間も生んでしまった(いやはや…)村上氏も、いまやすっかりいいお爺さん。また老科学者役で、お姿を拝見したいものです。

 ヒマラはダースベーダーを想わせる甲虫型で、渋いながらも仲々の好デザイン。ザラブ青野氏の慇懃な口調がまたピッタリでありました。


明日(あした)を捜せ (1997.11.30)
第13話「怪獣工場」(脚本:川上英幸 監督:北浦嗣巳)

 今回で早くも1クールを消化した「ダイナ」。先週に続いて、番外編とも言えるエピソード。やはり「ダイナ」はファミリー路線で行くんでしょうか?確かに親しみやすさはあるんだけれど…どうもどんどん卑近な感じが強まってる感じで、個人的には結構ヤかも(いやはや…)。第二期ウルトラのホームドラマ指向が結構苦手な私には、その悪夢(いやはや…)が再び繰り返されそうな予兆にうなされる毎日が続いております(いやはや…)。ああ、やはりダイナはこのまま餅つきをしてしまうのか(いやはや…)、どうもここしばらくの「ダイナ」を観ていると、もはやウルトラマンにはヒーローとしての神秘性は皆無なのかも知れません。

 でもまぁ、こういうエピソードを素直に楽しめなくなってしまった自分って、なんだかとってもスれた奴みたいで、ちょっと嫌だったりするんですが、手垢のついたストーリーを何のヒネリもなく差し出されると、お客としてはやっぱりね…桜金造さんが好演だっただけに、あのキャラクターをうまく使えば、とっても素敵な作品になる可能性はあったと思います。もったいない。

 不必要なバカ笑いするダイナや(いやはや…)怪獣はあんまり好きじゃないけど、宇宙人マスクはいいデザイン、造形でした。丸山さんはどっちかっていうと、こういう渋めの、ちょっとしたデザインの方に佳作が多い気がします。


歌って踊れるアイドル怪獣ケンちゃん満月に吼える!(1997.12.07)
第14話「月に眠る覇王」(脚本:古怒田健志 監督:北浦嗣巳)

 ケンちゃん脚本第2作。不覚にも1作目を見損なった私は、初めての古怒田脚本であります。エピソードとしてのまとまりは今迄のシリーズの中でも、かなりの高位置をキープ出来たんではないでしょうか?個人的には「ミイラの呪い」みたいな露骨に土俗的なカラーは、もうちょっと抜いちゃってもいいかな?って気はしましたが、全編を貫く緊迫感とスピーディーな展開は仲々の快感でありました。やっぱりこういうウルトラの王道を行くエピソードって好きなんだよなぁ(いやはや…)。

 ただ、ちょっと気になるのは、「ダイナ」というシリーズが目指しているシリーズとしてのカラーの事です。今回のエピソードは、今迄の中でもかなりクオリティの高いものでしたが、例えばこのエピソードを先週のエピソードと比較してみると、エピソードの演出カラーはもちろんの事、対象としている視聴者層すら全く異なる様に思えるのです。最近この「先の見えないバラバラ感」が「ダイナ」というシリーズを支配している様にも思えます。どうもシリーズとしての統一感を失いつつある様な感もあります。一応アンソロジー(独立したエピソードの集合体。傑作選。元々は詩華集の意。)ではないのですから、バラエティ豊かなエピソードの間にも、それなりの一体感は必要だと思うのですが…

 特撮は北浦監督得意の合成を多用したカットの連続で、立体感のある空中戦、スケール感のある宇宙の表現など、週一のテレビ作品としてはかなり贅沢な絵作り。今回殆ど破綻した合成カットがなく、演技陣の好演とあいまって、緊迫した雰囲気を損なわなかった事もこのエピソードが成功した大きな要因といえるでしょう。

 ゲストは何とその昔、「あなた作る人、ボク食べる人」のククレカレーのコマーシャルで物議をかもした佐藤祐介氏。かつてのアイドルも今や貫禄たっぷりの渋いオジサマなのだ!