The tokusatsu iseki tannbou


特撮作品に登場するあの場所は今?…

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この不思議な時間の中に入って行くのです…






この建物にご記憶ございませんか?

「妖星ゴラス」1962東宝  

そう、ある時は宇宙省の関連施設、またある時はTACミサイル基地、そして科学センターとして「ウルトラマン」にセミ・レギュラー出演のこの建物です。


第1回・東京都水道局長沢浄水場

ガラス張りの近代的な外観で、多くの作品に登場、特撮ファンの意識の奥底に深く擦り込まれたこの建物は、川崎市多摩区にある東京都水道局長沢浄水場の中央管理棟。特撮遺跡探訪の第一回は、現存する中央管理棟の様子をお伝えしましょう。

現在の中央管理棟 浄水場の正門から見たところです。残念ながらかなり改修されていますが、建物自体は往時のままです。さすが浄水場だけあって広い前庭が見事。


改修された管理棟 建物の改修自体はかなり以前に行われていた様で、「仮面ライダーV3(1973)」のスチルで、既に改修された建物が写っていた記憶があります。その後更に改修が行われている様で、現在では窓がシルバーのアルミサッシに変えられています。オリジナルでの最後の登場は、恐らく「ウルトラマンA(1972)」でのTACミサイル基地(第7話、第8話)だと思われます。


管理棟玄関周辺 玄関周りは比較的原形を留めています。建物全体にパターンをなす上部が開いた柱も当時のまま。因みに前庭の一角には「妖星ゴラス」でヘリコプターが着陸したブロック敷きの広場と、一瞬写る噴水が、当時のままの姿で健在です。


竣工当時の面影を残す玄関扉 サッシ関係で唯一原形を留める玄関扉。竣工当時は細部に渡り、意匠が凝らされていた事を偲ばせます。扉の上部に付けられた丸みや、デザイン処理された手摺がシンプルな美しさを漂わせます。玄関ホールは意外に狭く、左手前に受付がある他は階段がある位。


大改修された外壁 建物全体のイメージを変えてしまう程、大幅に改修された外壁部分。竣工当時この部分は、特注だと思われるスマートなカーテンウォールで被われ、外壁全体がガラス張りになっていましたが、最初期の改修で現在の形態に変えられています。恐らくコスト的な問題から既製の建築部材で改修したのでしょうが、近代的な外観も、建物全体のデザイン的なリズムも、これで失われてしまいました。


比較的原形を留める部分 建物右側は比較的原形を留めています。当初は外壁は塗装されておらず、最近流行のコンクリートによる打ち放しでしたが、やはり塗装しないと汚れが目立ったり、痛みが早い等の問題があるらしく、現在は塗装されています。比較的最近塗り直しているらしく、まだ新しい感じがします。しかし、柱部分の塗り分けは野暮な印象。


建築家の拘りが偲ばれる部分 窓の上部、柱の上部、建物の角の丸みが軽快なリズムを創り出しています。


折角建築家が意匠を凝らして建てた建物が、その意図を理解されないまま、駄建築に改悪されてしまった哀しみが、この建物には漂っています。まるで整形に失敗した、かつてのスターを見る様な哀しさとでも言うのでしょうか?改修以後その姿をすっかり画面で見なくなったのも納得できる気がします。


所在地:神奈川県川崎市多摩区三田5-1-1
交通:小田急線向ヶ丘遊園駅北口より小田急バスあざみの駅行(向11系統)にて約10分、浄水場入口下車。