The tokusatsu iseki tannbou


特撮作品に登場するあの場所は今?…

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この建物にご記憶ございませんか?

「ウルトラQ」1966 円谷プロダクション  

日本の頭脳、ウルトラ科学者一の谷博士が主宰する一の谷研究所。何とも趣のある古びた洋館が、初期円谷作品に共通するインテリゲンチャな雰囲気を、いやが上にも高めてくれましたね。


第2回・一の谷研究所(旧那須歯科)

この研究所が、その後どうなってしまったのか?以前からかなり気になっておりました。後年制作された「ウルトラQ・ザ・ムービー」では、再登場を期待したものの、実際にはビルの一室に移転したという設定になっており、既に先代の一の谷博士も他界されたという描写がなされていて、何だかとても残念でした。同時に、この建物もきっと現存していないのだろうと、二重に落胆したものでした。

当時は建物の所在地も分からず、確かめようもなかったのですが、その後、或る本でこの洋館が紹介されているのを発見。今回ようやく現地を訪れる事ができました。撮影に使用された洋館は、東京都世田谷区成城にあった、那須歯科という歯医者さんの御宅でした。しかし、この本も出版から既に15年が経過しており、恐らく現存は絶望的だろうという意識で現地に向いました…


現在の現地 昔の写真と同方向からみた様子。なんとマンションが建てられています。やはり現存せずか!?…しかし、良く見ると背後に緑が…


背後の洋館 敷地は小さな交差点の角に当る場所なのですが、周囲には既に新しい家が建てられています。しかし、周囲を回ってみると、小さな空き地の奥に、古びた洋館の姿が…


アプローチ 新しい家の間に、木の生い茂った細いアプローチがありました。何と、あの広かった正面アプローチと前庭を総て売り払い、そこに建物が建てられていたのです…家々は洋館を取り囲む様に壁を成しています。


樹々に埋もれた玄関 アプローチを進むとその奥に洋館が姿を現わします。現在の細いアプローチは、元の正面アプローチと、ほぼ直角に設けられており、洋館に沿う様に、柵で仕切られた小さな庭と藤棚の前を通って玄関に出る様になっています。周囲は物凄いボリュームで樹が生い茂り、洋館は殆ど樹々の間に埋もれています。しかし現われた玄関は、まさに一の谷研究所!とにかく樹が被い被さり、場所も狭いので全景ショットは撮影できませんでした。


周囲の位置関係を見る


玄関の内部 「ウルトラQ」でははっきりと分からなかった玄関の内部。扉は意外に小振り。しっくいの白壁に緑の柱や扉がいい雰囲気。扉横のガス灯の様なライトも趣があります。壁や天井にもツタが一杯。


建物を被い尽くすツタ 「ウルトラQ」当時の映像でも、建物の壁や玄関の小屋根部分にツタが確認できますが、現在は建物全体を多い尽くす程になっています。左側に2本見えるシュロの樹は「ウルトラQ」のフィルムでも確認できます。窓の手摺は後年の追加の様です。


藤棚 フィルムでは樹に隠れて見えなかった建物の左側には小さなテラスと藤棚が設けられていました。柱には玄関の柱と同じ石材を使う拘りが…


薔薇 荒れ果てた洋館の庭に咲く一輪の薔薇の花。現在は空き家になっているのか、洋館の周囲は全く手入れがされていません。樹に飲み込まれ、朽ちて行く洋館への手向けの花の様に、薔薇が一輪、寂しく咲いていました…


所在地:東京都世田谷区成城
交通:小田急線成城学園前駅下車。
参考文献:近代建築ガイドブック関東編 鹿島出版会1982