誤りへの対応こそ試金石 


 東 陽一郎 




 「ブント」による佐藤氏襲撃事件には、確かに憤りを感じたし、だからこそ私は『共同声明』にも賛同した。しかし、より大きな問題は、その後の「ブント」の対応にあったのではないだろうか。どのような組織でも「完全」であることはあり得ないし、誤りを犯すことがないとはいえない(朝鮮労働党を除く)。起こしてしまった事件に対して、どのような態度をとるかが、その組織に自浄作用があるかどうかの試金石と言えるだろう。
 「ブント」が事件に対し正面から向き合い、謝罪すべきは謝罪する、という姿勢をとったなら、この党派に対する信頼はむしろ高まったのではないか、とすら思う。
 今回、このような姿勢をとった党派が、まがりなりにもニューレフト最良の部分の一つである「ブント」であったことには大いに失望させられた。革共同両派や社青同解放派ならともかく、「左翼思想のパラダイム・チェンジ」を目指す党派が、事実を自分たちの都合のいいようにねじ曲げて自己を正当化する、醜悪な一面を見せつけたのである。「ブント」ですらこの対応では、もはや「新左翼」から、新時代を切り開く勢力を期待することはできないのだろうか。
 「SENKI」「理論戦線」に登場してきた、田英夫、國弘正雄、内田雅敏、山川暁夫といった我が敬愛する論客たちはこの事件をどのように見ているのだろう。事件の詳細を知った後もこの党派とのつき合いは変わらないのだろうか。聞いていたみたい気がする。  最後に佐藤氏にも一言。「佐藤君を叱り励ます会」に参加して初めて、私が佐藤氏に抱いていたイメージが誤解に基づくものであるとわかったのである。7月8日に展開されたようなスタイルでは、本来味方となってくれる人達を自ら遠ざけることになりはしないか。一考をお願いしたい。




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