ロフトプラスワン襲撃を許さない共同声明

■襲撃を許さないロフトプラスワン常連客有志■



 ありとあらゆるジャンルをテーマに、さまざまな知識や経験を持った人を「一日店長」として迎え、お客との交流をはかるトーク居酒屋。それが新宿「ロフトプラスワン」です。これまで、ジャーナリスト、ミュージシャン、漫画家、AV監督、風俗嬢、大学教授、現役女子高生、右翼、左翼、オタクなど、様々な人たちが出演してきました。独特な主張や表現を行なっている人たちと、ナマで接することのできる貴重な場。出演者からの一方通行に終わらず、お客として集まった人々からの発言で、予期しなかった方向に話が発展したり、意見のぶつかり合いで熱気に包まれたりするお店。本音のコミュニケーションが交わされる自由な空間。それが、ロフトプラスワンなのです。

 先日、このロフトプラスワンが襲撃されるという事件が起こりました。7月16日の午後7時15分頃、その日の出演者である佐藤悟志氏がロフトプラスワンに到着したところ、店の前で待ち受けていた男性10名ほどが、力ずくで佐藤氏をビルの地下に連れ込み、殴る蹴るの暴行を働いた上で逃げ去ったのです。

 この約10名の中には、政治組織「ブント」の幹部メンバー複数が含まれていました。「ブント」は埼玉県の蕨市に本部を置く、以前は「戦旗・共産主義者同盟」を名乗っていた集団です。

 佐藤氏は痛みをこらえて出演し、もう一人の出演者である高沢皓司氏とともにその日のトークを進めました。会場との討論も平穏に行われましたが、午後11時半頃、佐藤氏が「ブント」への批判を口にしたところ、「てめえまだそんなこと言ってんのか」と叫びながら男性一人が演壇に上がり込み、佐藤氏を殴打し始めました。さらにもう一人が佐藤氏を蹴りつけ始め、会場は騒然となりました。

 取り押さえようとした店員や来店客にも暴行を働き、襲撃者は逃走しました。逃走路を確保する役割の人物が、入り口付近に陣取っていた様子もありました。

 佐藤氏は二回の襲撃で頭や顔、眼などに全治18日間の傷を負いました。ロフトプラスワンもテーブルを壊される等の被害を受けました。

 二度に渡る襲撃の様子を見てみると、偶発的なものとは考えにくく、組織的・計画的な襲撃と思われます。襲撃者は何者で、目的は何だったのでしょうか。

 この事件に先立つ7月8日、ロフトプラスワンが出演者として招いたのは、「ブント」を主宰する荒岱介(あらたいすけ)その人でした。「飛翔主義と若者の俯仰」と題して、一水会代表の鈴木邦男氏と荒岱介氏の対談と、客席との質疑応答が行なわれたのです。  この質疑応答の時、荒氏に対して、客席から次々に質問や意見が出されました。その中には荒氏や「ブント」に対する批判の声も含まれていました。厳しい口調の批判もあり、「ブント」のメンバーとおぼしき人たちと怒鳴り合いになる一幕もありました。

 佐藤氏も批判的発言を行なった一人でした。彼は「ブント」に強い関心があり、発言だけでなく自作のビラも配布しました。このビラは「ブント」の人々の激しい反発を受け、荒氏も演壇からビラの内容を非難しました。16日の襲撃者の中には、このとき佐藤氏に詰め寄った者の姿もありました。このことは、襲撃の動機が佐藤氏の言動への反発であったことをうかがわせるものです。

 お酒を出す店である以上、ロフトプラスワンでは喧嘩や殴り合いもしばしばありました。また意見の対立や激しい批判の応酬から、怒鳴り合いや罵り合いが起こることもあり、8日のような光景も珍しくはありませんでした。

 しかし16日の襲撃は、そうした本音のぶつかり合いとは全く無縁な、組織的な暴力による威嚇と恐怖によって言葉を殺そうとする行為です。マスコミから無視されがちな小さな声や、世間の常識からは異端とされる声にも耳を傾けたいと望んで、私たちはロフトプラスワンに集ってきました。小さいけれども自由なこの空間が、暴力によって踏み潰されていくとしたら、それは決して小さな出来事ではありません。

 私たちは、ロフトプラスワンの存在意義そのものを否定する、こうした暴力に屈することなく、この自由な空間を守っていきたいと考えています。そしてそのためにも私たちは、今回の襲撃者たちに対して、釈明と謝罪を要求したいと思います。

 また、この問題に関心のある人々に対しては、クチコミで、コピーで、またはインターネットなどの電子メディアで、この声明と事件そのものに関する情報を拡げて、会話や討論を展開して下さることをお願いします。



1997年8月6日

「襲撃を許さないロフトプラスワン常連客有志」