★概要
とある寺の寺宝として伝えられる「隕鉄」(鉄を主成分とする隕石のこと)が、何者かにすり替えられて盗まれた。その隕鉄は、怨霊封印の要石として置かれていたものであり、それが失われたことによって寺から悪霊・幽鬼の類が現世にあふれ出ようとする。(ここで封印から漏れてくる悪魔として、ガキなどを登場させる。プレイヤーが熟練している、PCのレベルが充分に高い、プレイ時間がたっぷりある、などの場合には、さらに幽鬼・悪霊などの中から適宜選んで登場させてよい)★謝辞
この戦闘によって、封印が緩んでいることは疑いようがなくなる。このままでは、約十日後の次の新月には、より強力な悪魔が出現することになるだろう。PCたちは、封印の要石たる隕鉄の行方を追わなくてはならない。
ここでマスターは、直観チェック(特技〈鋭い勘〉も可)などにより適宜判定を行って、その成功の度合いに応じて以下のような情報を徐々に与えていくこと。件の助教授は比較的正直な人間であり、正面から隕鉄の話を持ち出すと明らかに動揺する。説得すれば、以下のような話をしてくれる。
- すり替えられた偽物は、現物を精巧に模した鋳物であり、事前に型を取ることが必要であるはず。
- 以前、とある大学の助教授が、研究のために型を取ったことがある。
- 魔法関係の資料を調査すれば、隕鉄にまつわる歴史的経緯の情報と、人がその中に霊力を求め、武器として鍛造していた事実が分かる。(蛇足ですが、「隕鉄」でウェブ検索すると、このへんの情報は比較的簡単に手に入ります)
- 「裏社会のコネ」で調査すれば、「某政治家がどこかの鍛冶師に流星刀を打たせて、さるやんごとなき筋に献上しようとしているらしい」という情報が分かる。(交渉判定の成功の度合いにより、またはコネへの報酬をアップすれば、その某政治家が、件の助教授が勤める大学の理事をやっていることまで分かる)
流星刀を鍛えている娘鍛冶師に会うと、彼女は流星刀を完成させることそのものを目指しているだけであり、完成した刀を政治家に渡すつもりはなくなったと語る。寺に流星刀を返すことも、快く承諾してくれる。
- この大学の敷地内には、昔ある鍛冶師が使用していた鍛冶場がそのまま保管されており、鍛冶師の娘を中心として「刀剣鍛錬部」が存在する
- 政治家は理事としての立場を利用し、刀剣鍛錬部廃部と引き替えに流星刀鍛造を娘に依頼(というより強要)した(さらに政治家は失敗した場合の見返りとして娘の体をも要求していた)
- その際、政治家は裏ルートで入手した隕鉄を材料として渡したのだが、その隕鉄が事故(事情を知らない素人部員が隕鉄と知らずに鍛造しようとして台無しになってしまった)によって失われてしまった
- そのため、事情を知った助教授は、以前に研究目的で取った型を利用して寺の隕鉄を盗み出すことを思いつき、実行に移した。幸い、寺の隕鉄の素材は政治家が娘に渡したものと非常に近く、流星刀鍛造には適していると思われた
- 既に流星刀は仕上げの段階にあり、あと一週間で完成する
しかし、刀を受け取ったまま放っておけば、彼女が政治家の毒牙にかかってしまうことになるだろう。彼女を救うためには、例えば政治家のスキャンダルを(〈ハッキング〉や「裏社会のコネ」などを駆使して)暴き、政治家の表だった行動を封じ込めるなどの方法が考えられる。ただし、こうした行動を採った場合、政治家が報復を行う可能性もある。プレイ時間に余裕がある場合、流星刀を奪うため、政治家の手先のヤクザが襲撃してきてもよい。データは「外道ちんぴら」や「外道やくざ」、「ガイアーズ 特攻隊」などを使用する。
そして一週間後、完成した流星刀を受け取ったPCたちは寺に戻って再封印を行うこととなる。しかし、要石と剣では形が異なりすぎるため、同じ形の封印を再現することは無理である。残された方法は、怨霊が封印を破るほどの力を蓄えて現れる前に、こちらから封印を破って、まだ力の満ちきっていない怨霊を引きずり出し、流星刀で倒すこと。
そして最終決戦である。ボスには「妖獣ヌエ」を想定したが、PCの人数やレベルに応じて、その他の悪霊・幽鬼などを用いてもよい。また、配下として悪霊はなこ、幽鬼おしち、悪霊ゴーストなどを適宜配置すること。
今回のシナリオは、森雅裕さんの小説「流星刀の女たち」(講談社)をヒントに……というより、設定のかなりの部分を借用させていただきました。
ちなみに原作には悪魔こそ登場しませんが(^_^;)、今回のシナリオに登場していただいた三人(女刀鍛冶、大学助教授(原作では講師)、悪徳政治家)以外にも、鹿児島出身で美人だが凄腕の女剣客、典型的ブリっ子の女子大生、主人公の女刀鍛冶に対して妙にライバル心を燃やすサバゲーマニアのヤクザの娘、といった女性陣。男性陣はヤリ手の若き理事長、口うるさい学生課長、そして流星刀を奪い返しにくる「人斬り」の異名を取る凄腕のヤクザ……など、ステロではあるけど魅力的な人物が登場する青春アクション小説(と言えばいいのかな)です。
それだけではなく、刀剣の鍛錬の過程の描写も緻密で、とりわけ隕鉄から流星刀を作る過程の、通常の刀とは異なる難しさは、クライマックスのアクションと同じくらいに息を飲む迫力、だと思います。
十年ばかり前に発行された文庫本なので、今もあるかどうかは知りませんが、もし興味があって見つけられたら、読んでみても損はないかと。