FPDF 毒十二号作戦 戦果報告 第弐項



 三菱航空と月面のアナハイム社が共同で開発した”十六試艦上戦闘攻撃機”は、日本海軍で最初に実用化された高高度戦闘機であり、現代に至るまで歴史上では事実上唯一の宇宙戦闘機(Star Fighter)であった。
 最初に製作された試作型4機は、当時海軍省直属の喧伝部隊という特異な素性を持つ海軍特殊飛行隊に配備され、本機の持つ優秀な高高度性能により、主に超高空での制空任務に利用された。

 卓越した能力を持つ本機であったが、試作型4機の後に計画されていた増加試作機25機の製作は、戦況の逼迫や技術的困難、そして何よりも搭乗員に過度の負担を強いるという、過酷な任務でもある本機の操縦が可能な、頑強且つ熟達した搭乗員が特殊飛行隊員以外には事実上存在しなかったということにより、キャンセルされそのまま終戦を迎えた。

 戦後、米は本機に非常に高い関心を示し、実機及び全ての関連資料を本国へ持ち帰り、これが後のジェミニ計画やアポロ計画、そしてあのスペースシャトルにも影響を与え、まさに戦後の宇宙開発の礎を築くという重要な役割を担ったとされる。
 これは近年、米において「情報公開法」に基づく情報開示請求により明らかにされた歴史の裏側であり、翻って本機の想像を絶する先進的能力を証明することとなった。






 アラート待機中の”十六試艦上戦闘攻撃機”。
 本機特有のランディングギアにより垂直に駐機させることが可能で、駐機スペースの削減に効果があったとされる。
 ご覧のような特徴的な駐機状態からお判りいただけるように、本機はいわゆる「VTOL」機能を世界で初めて装備したまことに斬新な機体であった。
 しかし、搭乗員は駐機中の機体に搭乗するのにロッククライマー並の登攀技術が求められ、その搭乗訓練も過酷なものであったという。

 ♪操縦席操縦席と我らは登る 操縦席いよいか住みよいか♪
 当時、海軍特殊飛行隊搭乗員の間で流行った「麦と兵隊」の替え歌の一節である。
 いくら登ってもなかなか操縦席まで辿りつけぬ搭乗員達の心情が伝わる唄である。

 ”十六試艦上戦闘攻撃機”を装備した海軍特殊飛行隊は、上図の桶川飛行場の他に、本拠地でもある「海軍特殊飛行場(神奈川県厚木飛行場の一部を間借)」、「館山洞窟飛行場(千葉県)」、「立川地下飛行場(東京府)」他数ヶ所の国内飛行場及び全国の離発着可能な空き地を拠点に作戦行動を展開、さらに台湾の「高雄飛行場」にも進出し、まさに神出鬼没のゲリラ部隊として敵味方双方に迷惑がられた。

 飛行場に降立った本機は、たちまちのうちに付近住民の人気の的となり、特に子供達はおおはしゃぎで飛行場の周りに集まり、その異形の姿に泣き出したという。






 本機の主要緒元は下記の通りである。

 開発    : 三菱航空、アナハイム社
 機体形式 : MSZ−006 十六試艦上戦闘攻撃機
 全長    : 19.8 m
 乾燥重量 : 28.7 t
 全備重量 : 62.3 t
 
 機関形式 : 主機  三菱 太陽21型 空冷星型熱核融合リアクター
         推進器 三菱ネ−201 熱核融合ヒートエアジェット
              宇宙開発研究所 液体水素ターボスラスター
 機関出力 : 熱核融合リアクター 2,020 kw (2,747 ps)
         ミリタリー推力 112,600 kgf (1,104 kN)
         再燃器使用時最大推力 330,000 kgf以上 (3,236 kN以上)

 武装    : 60mm速射機関砲 2門
         250kg噴進擲弾 4本
         (攻撃機型は荷電粒子砲 1門 を追加装備)






 本機の先進的装備の一つがこの「ベクタースラスト(推力偏向装置)」である。
 高推力の熱核ジェットエンジン及び液体水素ターボスラスターが収納された左右のランディングギアを兼ねる脚部型エンジンナセル、及び垂直尾翼を兼ねるフィンスタビライザーは、それぞれ独立して可動させることが出来、極めて高い機動性を確保することが出来たという。

 1枚目 : 偏向推力をかけた状態で推力旋回を行う”十六試艦上戦闘攻撃機”。
 2枚目 : 
変則的なインメルマン・ターンを行う”十六試艦上戦闘攻撃機”。
 3枚目 : 
トリッキーなバレルロールを行う”十六試艦上戦闘攻撃機”。

 これらは
全て「ベクタースラスト」の効果により実現した高機動であり、そのために本機の旋回加速度制限は設計値で+37.5G、-18.5Gに達し、一般的な航空機の常識を遥かに超える頑丈さを備えていたという。(一般的な航空機は+7〜+9G、-3〜-4G程度)

 しかし、それだけに搭乗員に掛かる負担は極めて大きく、全身骨折や内臓破裂等、搭乗中の事故が絶えなかったといわれ、効果的な耐Gスーツの開発が望まれたという。

 鳥宇:「ティムポルン爆発!」
 久武:「今日は脾臓が破裂したと思割れ。」
 些家:「いやこれは新しい快感。全身パキパキ逝ってますよ。」

 それでも海軍特殊飛行隊は、精神的にも肉体的にも過酷な任務を、半ば楽しみながら従事したという。






 上の3枚の写真は、超音速巡航時の”十六試艦上戦闘攻撃機”の様子である。

 数々の可動機構や重装甲により、流線型が主流の一般的な航空機と比べ、非常にゴツゴツした印象のある本機の特徴的な外形により、
高速時には非常に大きくなる空気抵抗が開発初期段階から問題とされた。
 ご覧のように脚部型エンジンナセルやフィンスタビライザーを畳んでいるのも、可能な限り空気抵抗を低減しようと努力した表れである。

 しかしそれでも開発初期においては、熱核エンジンの開発が遅れた為に従来の固体燃料ロケットを用いての飛行試験が行われた際、レシプロプロペラ機にも届かぬ速度性能しか発揮出来なかったという。

 だが、ようやく実用段階に入った熱核ジェットエンジン及び液体水素ターボスラスターを搭載した本機は、見違えるほどその性能を向上させた。

 正確なデータは残念ながら戦後の混乱期に永久に失われたままであるが、一説によるとマッハ4.5以上という驚異的な記録を叩き出したという。

 非常に高い翼面荷重を思わせる小さな主翼は、このような超音速飛行を視野に入れた結果であり、次世代SST等でも採用予定のいわゆるリフティング・ボディ理論をいち早く取り入れた斬新且つ巧緻な機体であったと言えるだろう。






 「戦闘機動、アフターバーナー!」

 敵編隊を確認し、空戦の常套でもある高空に遷移し、充分な位置エネルギーを確保することで状況を優位にせんと急上昇をかける海軍特殊飛行隊所属の”十六試艦上戦闘攻撃機”。

 この時点で高度は15,000メートルに達していたが、このような希薄な大気のなかでも比類ない発動機出力が確保され、矢のような急上昇が可能だった。

 本機に搭載された三菱ネ-201熱核ジェットエンジン及び宇宙研液体水素ターボスラスターは、ミリタリー推力112トン、アフターバーナー点火時には実に330トン以上の推力を発揮し、全備重量62.3トンの巨体を軽々と蒼空に持ち上げ、本機を地球の重力から開放したという。






 「交戦機動、降下角18度。 落ち着いてやれ。」

 高度95,000mで交戦機動をかける海軍特殊飛行隊所属”十六試艦上戦闘攻撃機”。
 本機の卓越した能力ならば、このように成層圏を軽々と飛び越え、遥か上空の熱圏にさえも到達することが可能であった。ここはもはや大気のほとんど存在しない、片足を宇宙空間へ突っ込んだに等しい世界であり、昼間なのにもかかわらず空が”黒い”。

 このような超高高度における編隊飛行が可能なのは、当時では本機のみであった。
 まさに時代を間違えて出現したかのような神がかった性能を持って生まれた本機であるが、残念ながら様々な技術的困難や資材不足、そして何と言っても用兵側である当時の日本海軍の手に余るほどの高性能ぶりにより、結局海軍特殊飛行隊に配備された4機を最後に終戦まで生産されることは無かった。

 海軍としては、どんなに能力が高くても実戦レベルで使えない航空機よりは、能力的には本機と比較すれば凡庸な機体とはいえ、当時の技術レベルに合致し扱いやすい”十七試艦上戦闘機「烈風」”の開発の方を優先したのである。

 生まれる時代を間違えてしまった、まさに悲運とも言える本機のエピローグである。

 そこは神々の領域・・・・・・そう、95,000mの蒼空に、敵は居なかったのである。









 三菱九試艦上戦闘機
 (正式採用後:九六式艦上戦闘機【A5M】)

 日本海軍最初の全金属製単葉機であり、当時の世界水準を超える高性能を発揮した機体。
 本機は、日本の航空史上特筆すべき傑作機で、これにより日本の航空技術は世界のトップレベルに一躍踊り出たと言っても過言ではない。

●要目(九六式四号【A5M4】)
 全長 7.565 m
 全備重量 1,671 kg
 最高速度 435.2 km/h
 航続距離 1,200 km
 発動機 中島 寿41型 空冷星型9気筒 最大出力 735 ps
 武装 胴体7.7 mm機銃 2挺、 30kg爆弾 2発

 


 三菱十二試艦上戦闘機
 (正式採用後:零式艦上戦闘機【A6M】)

 昭和15年から約5年間に亘り日本海軍の主力艦上戦闘機として活躍した大変有名な機体。「ゼロ戦」の愛称で市民に親しまれた。
 抜群の空戦性能、強火力、戦略戦闘機とも言うべき長大な航続距離等、世界航空史上に残る傑作機であった。

●要目(零式五二甲型【A6M5】)
 全長 9.121 m
 全備重量 2,743 kg
 最高速度 565 km/h
 航続距離 1,550 km
 発動機 中島 栄21型 空冷二重星型14気筒 離昇出力 1,130 ps
 武装 胴体7.7mm機銃 2挺、 翼内20mm機関砲 2門、 30kg又は60kg爆弾 2発



 三菱・アナハイム十六試艦上戦闘攻撃機【MSZ−006】

 本項において初めて公開された幻の新鋭機。
 強大な出力を連続発生する熱核炉、亜真空でも作動する噴進式推進器、推力偏向装置による高機動等当時の航空機の概念を大きく超えた卓越した能力を持つ機体であった。
 しかし、あまりにも高性能過ぎた為用兵側がその能力を理解できず試作のみで終戦を迎えてしまったのは日本航空史にとって残念なことである。

●要目
 全長 19.8 m
 全備重量 62,300 kg
 最高速度 不明(マッハ4,5以上?)
 航続距離 不明
 発動機 三菱 太陽21型 空冷星型熱核融合リアクター 2,020 kw(2,747ps)
 推進器 三菱ネ−201 熱核融合ヒートエアジェット 及び 宇宙開発研究所 液体水素ターボスラスター 推力112,600 kgf
 武装 60mm速射機関砲 2門、 250kg噴進擲弾 4本
 (攻撃機型は荷電粒子砲 1門を追加装備) 



 三菱十七試艦上戦闘機 烈風【A7M】

 日本海軍最後の艦上戦闘機であり、レシプロ機時代の最後を飾る傑作機。
 昭和15年末、海軍は三菱に十六試艦上戦闘機の開発を内示したが、同社は月面アナハイム社との共同開発計画で手一杯であり、改めて昭和17年に十七試艦上戦闘機として開発が再開された。
 上記十六試艦上戦闘攻撃機が高性能故に用兵側としては非常に扱いにくい機体だったため、本機に次期艦戦の主力として期待がかかったが、その真価を発揮する前に終戦を迎えた。

●要目(烈風一一型【A7M2】)
 全長 10.984 m
 全備重量 4,720 kg
 最高速度 627.8 km/h
 航続距離 巡航2.6時間+全力30分
 発動機 三菱「ハ43」11型 空冷二重星型18気筒 離昇出力 2,200 ps
 武装 翼内13mm機銃 2挺、 20mm機関砲 2門、 30kg又は60kg爆弾 2発





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