ニセ前首相の顔景気浮揚の為の施策の提案

景気浮揚の為の施策の提案

 今や戦後最大の不況と言われている昨今の経済状況であります。いわゆるバブルの崩壊によって土地価格が低迷し、結果銀行のもつ担保価値が低下して不良債権が膨らみ、それが貸し渋りを生み信用不安を生じさせる。この結果生じた景気の先行きの不安感から国民全体の消費マインドが冷え込み、この冷え込みによってさらに景気の悪化を招く。そして、この景気の悪化によって、さらに消費マインドを冷え込ませる。アメリカの好景気が一息ついた現在、全世界的な景気の動向を見れば、この悪循環が危機的なデフレスパイラルの状態に移る可能性が日増しに高まってきているといって過言ではありません。

 経済状態の改善のため、我々は、公定歩合を非常に低く抑え、公共事業を増やすなど主に生産者側の投資意欲を高める方面の対策をうってきました。しかし、現在のところ十全な効果があがっていません。生産者側の生産に対する対策だけでなく、これからは消費者の消費マインドを高める対策こそが求められているのです。我が国では、戦後経済復興の為に生産者を重視した経済対策がなされてきましたが、経済大国と呼ばれるようになった今、この経済政策を大きく変更すべき時期にきたと言うことができるでしょう。

 では、一旦凍りついてしまった国民全体の購買意欲を増進させる方策にはどのようなものがあるでしょうか。よくとられる方法は、なんといっても減税でしょう。通常であれば、収入が増加すれば、購買力も上がる筈です。しかし、現在の不況に対して何度か減税が行われましたが、目に見えた効果は現れませんでした。先行きの不安定な経済状況の中では、少々の収入増は貯蓄にまわされてしまうのです。しかし、貯蓄が増え、消費分が減れば減るほど景気は後退していきます。景気が後退すればますます人々の警戒心は強まり、ますます消費は冷え込んでいきます。減税よりもっと直接的な方法で国民の「物を買おう」という心に訴えかけなければなりません。

 我々のこの難題に対する解答は、国の機関を作って優秀なセールスマンを集め、育成し、業績の芳しくない業界・企業に対して無償で貸し出すというものです。物あまりと言われる現在、品質も良く機能も優れ、通常であれば人気商品として売れるであろう物でもなかなか売れません。消費マインドが冷え込んだ現在では、製作物の優秀さもさることながら、それ以上に営業力が重要となります。この「営業力」を国の力でサポートしようとするのがこの提案なのです。

 営業力のサポートにより経済上の貢献をするだけでなく、日本の伝統的なセールスのテクニックを保護育成に努めることで文化上の貢献をもこの機関は目指しています。その後世に伝えるべき伝統的セールステクニックとは「泣き売」。「泣き売」という古典的なセールス法の研究・継承を通して、経済へのカンフル剤になるとともに、日本文化の保護育成をも実現する、いわば一石二鳥の機関を設立しようとしているわけです。この機関の名称は「国立泣き売研究所」といいます。

 「泣き売」をご存じない方の為にこのテクニックを説明いたしましょう。基本的には二人で行う露天商のテクニックです。二人一組になって、一人が売り子、もう一人がサクラの客になります。


(売り子:以下「売」)「旦那、これ買って下さい」

(サクラ:以下「サ」)「うん?何だ、これ。万年筆か」

(売)「なかなか、いいもんなんです、ええ。一つ買ってくださいな」

(サ)「んなこと言ったって、おめえ こんな露天で万年筆買うやつなんていねえぞ、普通。第一、まっとうに書けるかどうかも分かりゃしねえじゃねえか。どうせ、ロクでもねえ場末で作ったもんだろ?」

(売)「そんなこたぁありません、へぇ。ちゃんとしたもんです。なにしろ×××万年筆製ですから....」

(サ)「×××万年筆?×××万年筆といやぁまあ名の通ったとこじゃねえか。(手にとってみる)おい、いい加減なことぉ言うなよ。どこにも×××万年筆なんて名が入ってやしねぇじゃねえか。んな分かりやすい嘘をつくバカがあるか。」

(売)「訳あって名前は入ってませんが、それは×××万年筆製なんです」

(サ)「訳あってったって、はいそうですかこれは×××万年筆製ですかって納得するわけねえだろう。その訳を言ってみろよ、訳を」

(売)「訳あって訳は話せないんですけど、でも本当に×××万年筆製なんすよ。」

(サ)「いいや、信用ならねぇ」

(売)「............これは言っちゃいけないことなんすが.....。ま言っちゃいやしょう。実は、私この間まで×××万年筆の工場に勤めていました。ところが、この不景気でお決まりの首切り通達。生来愚図な私は見事、首切り組に入っちまいました。(少し涙声)しょうがねぇ、退職金で食いつないで次の仕事を見つけようとおもっていたら、なんと退職金は現物支給、これ御覧の万年筆でやす。それだけでも馬鹿にしてやがるのに、旦那もおっしゃった通り、この万年筆には社名が入っていない。向こうが言うには「社名の入った物をそこらへんで安く売られた日には、うちの評判が落ちる。まあ、名前が入っていないとは言え中身は同じだから、素晴らしい書き味には変わりはない。万年筆は名前でなくて、書き味で勝負だから、売れば客も喜んで買う筈だ」だって、笑わせるじゃありませんか。てめえが一番、万年筆の名前にこだわってる癖に。(涙声)旦那、おねがいしやす。一つ買っておくんなさいな。家じゃ、かかあと二人の子が待ってるんで...。もう二日も薄い粥しかすすってねえんです。助けると思って、ねえ」

(サ)「ふん、聞けば可哀想な話だなぁ。丁度、万年筆がイカレたところだし、ま買ってやってもいいんだが....。なんか、こう試し書きできる紙はねぇか。こう見えても、俺ぁ若え頃は文房具の問屋で働いてた事があってな、まがい物がどうか、書いてみりゃすぐ分かるんだ。(紙に書きながら)ほーっ、確かになかなかいいもんだ、こりゃあ。そこらのまがい物とは大違いだ。うむ、気に入った。工場の偉いさんが「万年筆は書き味が勝負だ」と強気に出るのも無理は無えや。いいデキだ。時に、おめえさん、これ一本いくらで売るつもりだ。」

(売)「一万円と言いたいところですが、旦那が口開けだ、一本8000円でお願いしやす。」

(サ)「8000円......。正気か、おめえ。こんだけのもんなら3万円は下らねえぜ.......。よし、買った。3本おくんねえ。2本は、持って帰って知り合いに俺が売る。この品なら、2万で売っても拝んで感謝されらぁ。(集まってきた客にむかって)おう、みんなぁ。この万年筆は買って損しねえぜ、おいらが請け負う。別にこいつの商売の肩をもつ義理はさらさら無えが、この品でこの値段なら買わない法は無いね、俺に言わせりゃ。どうだい、一つ」


売り子が哀れっぽく泣くところが特徴のテクニックのために「泣き売」という名前がついたと言われています。

 国立泣き売研究所の設立骨子は以下の通り。

「経済」と「文化」という国家の骨格をなす両輪を支えることを目ざした新機関の設立に、国民の皆様の御理解と御支援をお願いいたします。


(参考:泣き売セールスの実際例)

No.1


(売り子:以下「売」)「旦那、これ買って下さい」

(サクラ:以下「サ」)「うん?何だ、これ。冷蔵庫か」

(売)「いえいえ、冷蔵庫じゃありませんよ。コンピュータです。なかなか、いいもんなんです、ええ。一つ買ってくださいな」

(サ)「コンピュータ?えらくでっけえもんをこしらえやがったなぁ。普通はもっと小さいじゃねえか。」

(売)「こりゃ、そんじょそこらのコンピュータじゃありゃぁせん。スパコン、スーパーコンピュータですから。」

(サ)「スパコンだぁ?んなこと言ったって、おめえ こんな露天でスパコン買うやつなんていねえぞ、普通。第一、まっとうに動くどうかも分かりゃしねえじゃねえか。どうせ、ロクでもねえ場末で作ったもんだろ?」

(売)「そんなこたぁありません、へぇ。ちゃんとしたもんです。なにしろNEC製ですから....」

(サ)「NEC?NECといやぁまあ名の通ったとこじゃねえか。(モノを見る)おい、いい加減なことぉ言うなよ。どこにもNECなんて名が入ってやしねぇじゃねえか。んな分かりやすい嘘をつくバカがあるか。」

(売)「訳あって名前は入ってませんが、それはNEC製なんです」

(サ)「訳あってったって、はいそうですかこれはNEC製ですかって納得するわけねえだろう。その訳を言ってみろよ、訳を」

(売)「訳あって訳は話せないんですけど、でも本当にNEC製なんすよ。」

(サ)「いいや、信用ならねぇ」

(売)「............これは言っちゃいけないことなんすが.....。ま言っちゃいやしょう。実は、私この間までNECの工場に勤めていました。ところが、この間の防衛疑獄で業績不振、お決まりの首切り通達。生来愚図な私は見事、首切り組に入っちまいました。(少し涙声)しょうがねぇ、退職金で食いつないで次の仕事を見つけようとおもっていたら、なんと退職金は現物支給、これ御覧のスパコンでやす。なんでも、防衛庁の哨戒システムに使用するはずだったものが、あの不祥事で入札に参加できなくなっちまって、あまったスパコンを退職金代わりにしたって寸法でさぁ。それだけでも馬鹿にしてやがるのに、旦那もおっしゃった通り、このスパコンには社名が入っていない。向こうが言うには「社名の入った物をそこらへんで安く売られた日には、うちの評判が落ちる。まあ、名前が入っていないとは言え中身は同じだから、素晴らしい計算能力には変わりはない。スパコンは名前でなくて、計算能力で勝負だから、売れば客も喜んで買う筈だ」だって、笑わせるじゃありませんか。てめえが一番、スパコンの名前にこだわってる癖に。(涙声)旦那、おねがいしやす。一つ買っておくんなさいな。家じゃ、かかあと二人の子が待ってるんで...。もう二日も薄い粥しかすすってねえんです。助けると思って、ねえ」

(サ)「ふん、聞けば可哀想な話だなぁ。丁度、うちのコンピュータもイカレたところだし、ま買ってやってもいいんだが....。ちょっと、試しに動かしてみてくんねぇか。。こう見えても、俺ぁ若え頃はシステムエンジニアをやってたことがあってな、まがい物がどうか、ちょっと動かしてみりゃすぐ分かるんだ。(キーボードになにやら入力しながら)ほーっ、確かになかなかいいもんだ、こりゃあ。そこらのまがい物とは大違いだ。うむ、気に入った。工場の偉いさんが「スパコンは計算能力が勝負だ」と強気に出るのも無理は無えや。いいデキだ。時に、おめえさん、これ一ついくらで売るつもりだ。」

(売)「一億円と言いたいところですが、旦那が口開けだ、一本8000万円でお願いしやす。」

(サ)「8000万円......。正気か、おめえ。こんだけのもんなら3億円は下らねえぜ.......。よし、買った。3つおくんねえ。2つは、持って帰って知り合いに俺が売る。この品なら、2億で売っても拝んで感謝されらぁ。(集まってきた客にむかって)おう、みんなぁ。このスパコンは買って損しねえぜ、おいらが請け負う。別にこいつの商売の肩をもつ義理はさらさら無えが、この品でこの値段なら買わない法は無いね、俺に言わせりゃ。どうだい、一つ」


No.2

(売り子:以下「売」)「旦那、私達を使って下さい」

(サクラ:以下「サ」)「うん?何だ、おめえら。うちのチームは人は足りてるよ」

(売)「そんなこと言わないで。なかなか、腕はたちますよ。ええ。一つ雇ってくださいな」

(サ)「んなこと言ったって、サッカーは11人でするもんだ。来る奴、来る奴 ハイそうですかって雇ってたらこっちのサイフがもたねえや。なんせ、こちとら一流どこのでっかいチームじゃあねえ、半ばアマチュアの道楽チームだからな。」

(売)「こいつら、そんじょそこらの選手じゃあありませんぜ、現役Jリーガーですぜ。」

(サ)「Jリーガーだぁ?んなこと言ったって、おめえ いきなりグランドに押しかけてきてJリーガーだ雇え、っていわれて雇うやつなんていねえぞ、普通。第一、本当にサッカーできるかどうかも分からねぇじゃなぇか?」

(売)「そんなこたぁありません、へぇ。ちゃんとしたもんです。なにしろJリーガーですから....」

(サ)「おい、いい加減なことぉ言うなよ。こいつらのユニフォーム見たってどこにもクラブ名が入ってやしねぇじゃねえか。痩せても枯れても、Jリーガー、所属のクラブの名前ぐらいユニフォームに入ってるのが道理ってもんじゃあねえか。んな分かりやすい嘘をつくバカがあるか。」

(売)「訳あってクラブ名は言えませんが、Jリーガーなんです。」

(サ)「訳あってったって、はいそうですかあんたがたはJリーガーですかって納得するわけねえだろう。その訳を言ってみろよ、訳を」

(売)「訳あって訳は話せないんですけど、でも本当にJリーガーなんすよ。」

(サ)「いいや、信用ならねぇ」

(売)「............これは言っちゃいけないことなんすが.....。ま言っちゃいやしょう。実は、私たいこの間まで横浜フリューゲルスでプレーしてました。ところが、この不景気で親会社の全日空は業績不振、おまけにクラブは大赤字で、なんと隣の横浜マリノスに吸収合併されることになりやした。生来愚図なオレタチは見事、首切り組に入っちまいました。(少し涙声)しょうがねぇ、昔のような金はない、主力は抜かれて戦力は大幅ダウンだろうが、もう一度フリューゲルスを作りなおして、薄給でもいいからプレーをしようと仲間うちで話していたら、なんと全日空側は、クラブ名もクラブキャラクターも商標登録済みでこっちの財産だから譲ることならねえ。向こうが言うには「同じ名前のフリューゲルスていうクラブをそこらへんで安く作られた日には、うちの評判が落ちる。まあ、おまえさんがたプロのサッカー選手だ。クラブ名なんか関係ない。サッカー選手は所属クラブの名前でなくて、技術で勝負だから、売れば客も喜んで買う筈だ」だって、笑わせるじゃありませんか。てめえが一番、クラブの名前にこだわってる癖に。(涙声)旦那、おねがいしやす。一つ雇っておくんなさいな。家じゃ、みんなかかあと子供がが待ってるんで...。もう二日も薄い粥しかすすってねえんです。助けると思って、ねえ」

(サ)「ふん、聞けば可哀想な話だなぁ。丁度、うちの選手も世代交代の時期だし、ま雇ってやってもいいんだが....。ちょっと、試しにリフティングしてみてくんねぇか。。こう見えても、俺ぁ若え頃からコーチをやっててな、まがい物か本物か、ちょっとリフティングさせてみりゃすぐ分かるんだ。(選手たちのリフティングを見ながら)ほーっ、確かになかなかうめえもんだ、こりゃあ。そこらの素人とは大違いだ。うむ、気に入った。クラブの偉いさんが「サッカー選手は技術が勝負だ」と強気に出るのも無理は無えや。時に、おめえさん、これ一人年棒いくらのつもりだ。」

(売)「2000万円と言いたいところですが、旦那が口開けだ、一人1500万円でお願いしやす。」

(サ)「1500万円......。正気か、おめえ。こんだけのもんなら3000万円は下らねえぜ.......。よし、決まった。6人雇ってやる。3人は、後で知り合いチームに俺が売りつける。この技量なら、移籍金5000万で売っても拝んで感謝されらぁ。(集まってきた他のチームの関係者にむかって)おう、みんなぁ。この選手たちは雇って損しねえぜ、おいらが請け負う。別にこいつの商売の肩をもつ義理はさらさら無えが、この腕でこの値段なら雇わない法は無いね、俺に言わせりゃ。どうだい、一つ」


No.3

(売り子:以下「売」)「旦那、これ買って下さい」

(サクラ:以下「サ」)「うん?何だ、これ。サーフボードか」

(売)「いえいえ、サーフボードじゃありませんよ。垂直尾翼です。なかなか、いいもんなんです、ええ。一つ買ってくださいな」

(サ)「垂直尾翼?垂直尾翼って、あの飛行機の後についてる.......。」

(売)「そうっす。こりゃ、そんじょそこらの垂直尾翼じゃありゃぁせん。救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼ですから。」

(サ)「救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼だぁ?んなこと言ったって、おめえ こんな露天で救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼買うやつなんていねえぞ、普通。第一、まっとうに動くどうかも分かりゃしねえじゃねえか。どうせ、ロクでもねえ場末で作ったもんだろ?」

(売)「そんなこたぁありません、へぇ。ちゃんとしたもんです。なにしろ富士重工製ですから....」

(サ)「富士重工?富士重工といやぁまあ名の通ったとこじゃねえか。(モノを見る)おい、いい加減なことぉ言うなよ。どこにも富士重工なんて名が入ってやしねぇじゃねえか。んな分かりやすい嘘をつくバカがあるか。」

(売)「訳あって名前は入ってませんが、それは富士重工製なんです」

(サ)「訳あってったって、はいそうですかこれは富士重工製ですかって納得するわけねえだろう。その訳を言ってみろよ、訳を」

(売)「訳あって訳は話せないんですけど、でも本当に富士重工製なんすよ。」

(サ)「いいや、信用ならねぇ」

(売)「............これは言っちゃいけないことなんすが.....。ま言っちゃいやしょう。実は、私この間まで富士重工の工場に勤めていました。ところが、この間の防衛疑獄で業績不振、お決まりの首切り通達。生来愚図な私は見事、首切り組に入っちまいました。(少し涙声)しょうがねぇ、退職金で食いつないで次の仕事を見つけようとおもっていたら、なんと退職金は現物支給、これ御覧の救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼でやす。なんでも、防衛庁に納入するはずだったものが、あの不祥事で入札に参加できなくなっちまって、あまった救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼を退職金代わりにしたって寸法でさぁ。それだけでも馬鹿にしてやがるのに、旦那もおっしゃった通り、この救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼には社名が入っていない。向こうが言うには「社名の入った物をそこらへんで安く売られた日には、うちの評判が落ちる。まあ、名前が入っていないとは言え中身は同じだから、素晴らしい飛行姿勢保全能力には変わりはない。救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼は名前でなくて、飛行姿勢保全能力で勝負だから、売れば客も喜んで買う筈だ」だって、笑わせるじゃありませんか。てめえが一番、救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼の名前にこだわってる癖に。(涙声)旦那、おねがいしやす。一つ買っておくんなさいな。家じゃ、かかあと二人の子が待ってるんで...。もう二日も薄い粥しかすすってねえんです。助けると思って、ねえ」

(サ)「ふん、聞けば可哀想な話だなぁ。丁度、うちの救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼もイカレたところだし、ま買ってやってもいいんだが....。ちょっと、試しに後部の舵の部分を動かしてみてくんねぇか。こう見えても、俺ぁ若え頃は救難飛行艇「US-1A改」のパイロットをやってたことがあってな、まがい物がどうか、ちょっと舵を動かしてみりゃすぐ分かるんだ。(手で舵の部分をいじりながら)ほーっ、確かになかなかいいもんだ、こりゃあ。そこらのまがい物とは大違いだ。うむ、気に入った。工場の偉いさんが「救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼は飛行姿勢保全能力が勝負だ」と強気に出るのも無理は無えや。いいデキだ。時に、おめえさん、これ一ついくらで売るつもりだ。」

(売)「500万円と言いたいところですが、旦那が口開けだ、一本300万円でお願いしやす。」

(サ)「300万円......。正気か、おめえ。こんだけのもんなら800万円は下らねえぜ.......。よし、買った。3つおくんねえ。2つは、持って帰って知り合いに俺が売る。この品なら、400万で売っても拝んで感謝されらぁ。(集まってきた客にむかって)おう、みんなぁ。この救難飛行艇「US-1A改」専用の垂直尾翼は買って損しねえぜ、おいらが請け負う。別にこいつの商売の肩をもつ義理はさらさら無えが、この品でこの値段なら買わない法は無いね、俺に言わせりゃ。どうだい、一つ」


No.4

(売り子:以下「売」)「旦那、これ買って下さい」

(サクラ:以下「サ」)「うん?何だ、これ。株券か」

(売)「いえいえ、株券じゃありませんよ。割引債です。なかなか、有利な金融商品ですよ、ええ。一つ買ってくださいな」

(サ)「割引債?割引債って、よくコマーシャルしてる「ワリコー」とか「ワリシン」とかってやつか」

(売)「そうっす。やっぱり割引債は安全で確実。おまけに無記名で保有できると、3拍子そろってますからね。」

(サ)「んなこと言ったって、おめえ こんな露天で割引債買うやつなんていねえぞ、普通。第一、まっとうなものかにどうかも分かりゃしねえじゃねえか。下手したら偽造品をつかまされて、こっちまで手が前にまわっちまわぁ。」

(売)「そんなこたぁありません、へぇ。ちゃんとしたもんです。なにしろ日本長期信用銀行の割引債・通称「ワリチョー」ですから....」

(サ)「日本長期信用銀行?日本長期信用銀行といやぁまあ名の通ったとこじゃねえか。(モノを見る)おい、いい加減なことぉ言うなよ。どこにも日本長期信用銀行なんて名が入ってやしねぇじゃねえか。んな分かりやすい嘘をつくバカがあるか。」

(売)「訳あって名前は入ってませんが、それは日本長期信用銀行発行なんです。ほら券の上んところにでっかく「ワリチョー」って書いてあるでしょ。」

(サ)「いくらでっかく「ワリチョー」って書いてあったって、日本長期信用銀行の名前と社印がなけりゃ信じられるもんかい。社名が書いてないその訳を言ってみろよ、訳を」

(売)「訳あって訳は話せないんですけど、でも本当に日本長期信用銀行発行なんすよ。」

(サ)「いいや、信用ならねぇ」

(売)「............これは言っちゃいけないことなんすが.....。ま言っちゃいやしょう。実は、私この間まで日本長期信用銀行に勤めていました。ところが、この間の株価急落で業績不振、臨時国営化リストラでお決まりの首切り通達。生来愚図な私は見事、首切り組に入っちまいました。(少し涙声)しょうがねぇ、退職金で食いつないで次の仕事を見つけようとおもっていたら、なんと退職金は現物支給、これ御覧の日本長期信用銀行の割引債・通称「ワリチョー」でやす。それだけでも馬鹿にしてやがるのに、旦那もおっしゃった通り、この「ワリチョー」には社名と社印が入っていない。向こうが言うには「社名・社印の入った物をそこらへんで安く売られた日には、うちの評判が落ちる。まあ、名前が入っていないとは言えワリチョーはワリチョーだ。券にでっかく「ワリチョー」と書いてあるし、素晴らしい金融商品であることには変わりはない。ワリチョーは名前でなくて、安全・確実・高利回りで勝負だから、売れば客も喜んで買う筈だ」だって、笑わせるじゃありませんか。てめえが一番、「ワリチョー」の名前にこだわってる癖に。(涙声)旦那、おねがいしやす。一つ買っておくんなさいな。家じゃ、かかあと二人の子が待ってるんで...。もう二日も薄い粥しかすすってねえんです。助けると思って、ねえ」

(サ)「ふん、聞けば可哀想な話だなぁ。丁度、うちの定期預金も満期になったところだし、ま買ってやってもいいんだが....。ちょっと、その現物を見せてくんねぇか。こう見えても、俺ぁ若え頃は拓殖銀行六郷土手支店の支店長をやってたことがあってな、まがい物がどうか、ちょっと現物みりゃすぐ分かるんだ。(手で券ををいじりながら)ほーっ、確かになかなかいいもんだ、こりゃあ。透かしの精巧さを見るだけで値打ちが分からぁ。そこらのまがい物とは大違いだ。うむ、気に入った。銀行の偉いさんが「ワリチョーは名前でなくて、安全・確実・高利回りで勝負だ」と強気に出るのも無理は無えや。いいデキだ。時に、おめえさん、これ一ついくらで売るつもりだ。」

(売)「額面1万円のこの「ワリチョー」、一枚7000円と言いたいところですが、旦那が口開けだ、一毎6000円でお願いしやす。」

(サ)「6000円......。正気か、おめえ。こんだけのもんなら9000円は下らねえぜ.......。よし、買った。100枚おくんねえ。50枚は、持って帰って知り合いに俺が売る。この品なら、一枚8000円で売っても拝んで感謝されらぁ。何しろ、一枚8000円で買って1年たてば一枚1万円になるんだからな。50枚買うとして、1年で10万円の得だぜ。(集まってきた客にむかって)おう、みんなぁ。この「ワリチョー」は買って損しねえぜ、おいらが請け負う。別にこいつの商売の肩をもつ義理はさらさら無えが、この品でこの値段なら買わない法は無いね、俺に言わせりゃ。どうだい、一つ」


******************************
戻る