ニセ前首相の顔出生率の低下について

出生率の低下について

 1999年6月11日厚生省がまとめた「人口動態統計の概況」によると、合計特殊出生率(女性が一生の間に産む子供の平均数)が1.38と史上最低を更新したことが明らかになりました。ここ最近は、ずっと減少傾向が続いており、予想された事態とはいえ、あらためて「1.38」という数字を突き付けられると、衝撃を感じざるを得ません。かつて「人口こそが国力」と見なされていた時代とは異なり、人口増加が全きの善という趨勢ではないとはいえ、しかし、このあまりに低い出生率を見ると我が国の将来に対して暗胆たる心持ちにならざるを得ません。

 通常、合計特殊出生率2.10が人口維持水準と言われていますが、1.38という数値は、この人口維持水準値を大きく割り込んでいます。経済的な視点に立つてみれば、この勢いで人口が減少すれば、我が国の購買力は急速に低下することは避けられません。昨今しきりに「内需の拡大による景気回復」が叫ばれていますが、人口が減少すれば国民の総需要が、それに伴って減少するのは火を見るよりも明らかであります。この人口の減少のペースは我が国の経済に深刻な影響を与えずにはおかないでしょう。また、経済への間接的な影響の点でみれば、低出生率による若者の減少は、21世紀に向けた新たなる産業分野の育成にとって大きなマイナスになることも言うまでもありません。

 戦争や疫病という原因でなく、新生児の減少というかたちで人口が落ち込むとなると、我が国の人口に対する高齢者の割合は幾何級数的に高まり、老人福祉を支えるべき年齢層が極端に薄くなってしまうことも考えられます。平均余命の伸びによる高齢者数の増加は、必ずしも経済に悪影響を与えるわけではありません。老人人口の増加は、すなわち老人関連の商品の需要の増加などプラスの波及効果をも見込めるからです。また、健康で働くことができる老人が増加することは、新たな労働力の創成と見なすこともできます。それに対して、出生率の低下による急激な人口減少は、純粋に労働人口の減少、消費人口の減少を意味するに過ぎず、なんら国民生活に益するところはないと言わなければなりません。

 出生率低下という現象はどうして生じているのでしょうか。よく、女性の社会進出が進み、経済的な原因で男性に隷属しなければならないといった悪弊が減ってきたために女性の非婚率が高まり、その結果出産をしなくなった、と言われることがあります。が、これはあくまでも間接的な理由であるにすぎません。女性が結婚しないからといって、出産しなくなるとは限らない筈です。出産は、必ずしも男性に隷属しなければできないことではありません。男女の対等な結びつきにおいても出産は可能な筈です。結婚という社会的な制度に縛られなくとも、子供を産むことはできるのです。極端な話ですが、真に自立した女性が、子供を欲する場合には、特定の男性のパートナーを持たず、人工受精という形で妊娠し、出産することも理論的には可能です。

 一体、出生率低下の真の原因とは何か。それは、妊娠-出産に伴う身体的な負担に他なりません。

 こう述べると、あまりに単純な理由であるため、失笑をもらされる読者もおられるかもしれません。しかし、考えてもみてください。何ゆえ、国の宝ともいうべき新生児を世に送りだす大変な事業をやってのける者だけが、出産時の想像を絶する痛みに耐えなければならないのか。また十月十日ものあいだ、身体的かつ精神的変調に苦しまねばならないのか。ちょうど働き盛りの頃に、長期に渡って仕事を中断しなければならないことも女性にとっては大きなハンディキャップとなりましょう。すべての男性と、出産をしない女性はこの苦しみとは一生涯縁がないのです。これを不公平と言わずして何と言いましょうか。もし、妊娠-出産に、この身体的な負担による不公平感がなければ出生率は大きく跳ね上がるに違いありません。

 しかし、残念ながら、この身体的な負担を、全くなくしてしまうことは難しそうです。確かに、医学の発展によって、いくらか軽減されては来ましたが、とはいえ妊娠-出産時の苦労を完全に払拭するには至っていません。臨月が近くなれば、妊婦が働きつづけることは、現代医学の手をもってしても、やはり困難であることには変わりはありません。現在のところ、公共の福祉の観点から、国民全体にとって善であると見なされる行為<妊娠-出産>を為す個人が、為さない個人よりもより多くの苦痛を味あわなければならない理不尽な状態にあるのです。これでは、国が出生率上昇の為に少々の出産手当を出したところで効果がある筈がありません。

 では、どのようにすればこの不公平な状態を克服することができるのでありましょうか。ここには、一つの大きな発想の転換が必要です。これまでは、苦痛を取り除くことによって不公平さをなくそうとしてきたのでありますが、逆に、国民全体でこの苦痛を分かち合うことで公平性を実現すればよいのです。「ワークシェアリング」という言葉がありますが、言わば「マタニティーシェアリング」を実現することで、妊婦だけが堪え忍んできた苦労を万人に義務づけ、妊娠-出産に対する不公平感を払拭できれば、出生率は必ず上昇する筈です。「マタニティーシェアリング政策」の骨子は次の通り。

----------マタニティーシェアリング政策骨子----------
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このマタニティーシェアリング政策が実現すれば、出産に対する不公平感もなくなり、出生率が上がるのは間違いありません。産むにせよ産まないにせよ、一生の間で2回はつらい思いをしなければならないとなれば、「どうせ苦しいならいっそのこと産んでしまおう」と思うのが人情というものではないでしょうか。また、男性も妊娠-出産を疑似体験することで、今までは頭では分かっているつもりではいても、身体では分からなかった女性の苦労を実感できれば、真の男女同権を実現する大きな一歩となることは間違いありません。

 出生率を上昇させ、将来の我が国を活気あふれるものとすると同時に、男女の本当の相互理解の促進にも役立つ、一石二鳥の「マタニティーシェアリング政策」への国民の皆様の御理解と御協力をお願いいたします。

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