ニセ首相の顔少年犯罪の抑止について

少年犯罪の抑止について


以下のような投書をいただきました。

「ニセ首相官邸」いつも楽しく拝見しております。
以下の施策を思い付きましたが、似たようなご意見がありましたらご容赦ください。

青少年の暴力対策について

先の総選挙で、某野党のテレビコマーシャルが注目を集めました。一党の党首が、街頭で顔面を2発、3発と殴られながらも、「日本一新」と叫ぶ、あのCMです。この党は、連立政権から離脱する際に党が分裂しながらも、総選挙で支持率を上げ、得票を大きく伸ばしました。この要因として、党首が殴られる、テレビCMの影響が大きかったことは明らかであります。

さて、目下の政府の急務は、多発しております青少年の暴力への対策であります。福岡のバスジャック、愛知の殺人事件、岡山の母親殴打殺害事件など、枚挙にいとまはないのであります。これは、青少年が周囲や社会に対して抱く不満が暴力となって噴出してしまったと考えられます。暴力のはけ口が親や教師、同級生へのいじめ、果ては全く見知らぬ他人へと向かっているのが実状であります。

青少年の不満のはけ口を一般人に向けさせることなく、どう処理すべきか、政府は慎重に検討を重ねてまいりました。全国の中学・高校に1校1人ずつ「殴られ役」の教員を配置する案も浮上いたしましたが、殴打1回につき教員の給与に手当を上乗せしなければならず、膨大な費用がかかります。しかるに、日本でただ一人、適任者がいることが判明いたしました。ラグビーで鍛えた丈夫な体を持ち、顔の表面積が広く表皮も厚い、わが首相であります。当初は、一国の首相が青少年から殴られることははたしていかがか、という議論もございましたが、青少年の暴力のはけ口を確保することで社会不安を早急に解消することこそ現内閣の最大の役割であることから、首相自ら決断されました。既に売春防止法違反問題、「神の国」発言問題、暴力団癒着問題など、精神的に殴られ続けているのに比べると、肉体的に殴られる痛みはほんのわずかであります。まして「殴られることで支持率が上がる」という定理が既に某野党の躍進によって証明されている以上、喜んでこの大役を引き受ける所存でございます。

ここに「首相殴打制度」(柔らかく言えば「殴られ首相」制度)を提案いたします。要項は以下の通りです。

  1. 週1回「首相殴打の日」を設ける。(選挙期間中は、遊説先で毎日とする)

  2. 首相官邸または全国各地に会場を設け、首相を殴りたい青少年を公募する。原則として希望者全員が首相を殴打、または足蹴にできる。

  3. 殴打希望者は20歳未満とする。

  4. 1人が殴打できる時間は2分以内とする。

  5. 殴打・足蹴にできる部位は、顔・腹・尻・太ももとする。(胸部は、小さな心臓に影響を与える恐れがありご容赦ください。股の間の膝蹴りは、まだ現役のためご勘弁願います)

  6. 首相が殴打されている様子は写真とビデオで記録する。写真は官報に掲載し、ビデオは政府広報として随時テレビコマーシャルを流し、希望者公募の一助とする。
なお、この首相殴打制度は、副次的に以下のメリットもございます。 以上、青少年の暴力対策や内閣支持率向上を含め一石五鳥の施策であります「殴られ首相」制度につきまして、国民皆様のご理解とご協力をお願いするものであります。何とぞよろしくお願い申し上げます。
(了)

"テル"

 最近の少年犯罪で最も人々の不安を掻き立ているのは、凶悪な事件を起こしたことに対する明白で分かりやすい動機が見えてこないという点にあると思われます。漠然とした「社会への不満」が背後にあるらしいということ以外は、何のために凶悪な事件を起こしたのか判然としない「分かりにくい」犯罪が増大しつつあるのです。上に掲げさせていただいた御提案もそのような世情の不安に根ざしているのであろうと思われます。

 少年法が制定された終戦後の混乱期には、「貧困」という社会全体に関わる大きな問題があり、未だ主体性の確立していない未成年者が、直接的にせよ間接的にせよ「貧困」の影響によって反社会的行為に走るのであろうと思われていました。終戦から少したって目立つようになった極左組織や極右組織に参加する未成年者のテロ行為についても、高度経済成長下の様々な社会のひずみを背景に、ある意味で理想主義的な若者が体制の矛盾に反発が遠因になっているのであろうと思われていたのです。

 このように我々は、「貧困」を代表とする社会問題を解決することこそが(未成年者によるものをも含む)犯罪防止のカギだと思っていました。ところが、現在では世界でも有数の経済大国となり、貧困問題を代表とする社会問題が一応の解決をみたかのように見える我が国においてなお、未成年者による凶悪犯罪が起こっていることに多くの人が不安を感じているのです。確かに、世界に類を見ないほど経済的格差の少ない社会を実現した現在の日本では、終戦直後に比較して犯罪件数は大幅に減少してはいます。しかし、人心の荒廃していた終戦直後ならば「貧困と、それに伴う社会からの疎外感によって生じた」と考えられたであろうような心魂寒からしめる残虐な事件が、現在の豊かな社会にあっても未成年者の手によって引き起こされているのも事実なのです。人々の不安は、犯罪への特効薬だと期待していたものが実は幻想の解決策であったのではないか、という疑惑によって高まってきているのではないでしょうか。

 しかし、改めて過去を振り返って考えるに、過去の未成年者による「貧困ゆえの犯罪」全てが本当に「分りやすい」犯罪だったのでしょうか。当時は、いわゆる「動機のわかりやすい犯罪」とされた事例についても、実は今現在ならば「不気味な犯罪」と分類されるであろうケースがあったのではないか。私見になりますが、そういった「不気味な犯罪」の陰にあって、現在の不可解な犯罪にも共通するものとは、若者に特有な英雄主義や冒険主義の暴発ではないかと感じております。

 通常、革命や社会改革といったものは、現実の社会の不都合に対する怒りが引き金になると見られており、引き金になりうる社会問題がなければ指向されないように考えられています。しかし、本来、革命への意志というものは現実の社会の状態とは関係ないものなのかもしれません。現在の状況をより良くしようとは意図とは別の次元に、その意志は存在していて、善悪はともかくもとにかく社会の劇的な変化を起こそうという、もっと端的に言えば、ともかく世の中全てを一旦破壊してやろうというデモーニッシュな意志こそが、英雄主義や冒険主義の本質ではないでしょうか。

 こういった英雄主義や冒険主義は常に存在してはいるのですが、戦後を通じて「革命」を擁護するイデオロギーが説明装置として働き、「革命」を(それについて賛成するにせよ反対するにせよ)社会的に了解可能なイベントと認知することで、反体制行動を(それについて賛成するにせよ反対するにせよ)「分かりやすい行動」である、と分類してきました。その為に、未成年者による犯罪と言えど極左組織や極右組織がらみの場合(山口乙矢による浅沼委員長暗殺事件やなど 難波大介による暗殺未遂)には、「分りにくい犯罪」と恐怖される度合いが少なかったのです。

 しかし、共産主義陣営の退潮、冷戦の終了に伴い、右翼左翼という分りやすい政治的対立が消滅していきます。そうした中で、極右極左組織による運動も低調となり、代わりに新興宗教、カルトが興隆していきました。ここで、オウム真理教による地下鉄サリン事件を筆頭に様々な反社会的行為がなされたのです。そのカルトによる反社会的行為も、オウム事件以来取り締まりも強化され、盲目的な革命への意思とも言うべき英雄主義、冒険主義という流れはついに組織としてまとまって発露できなくなり、個人個人による暴発という形をとっていると思われます。つまり、極論すれば極右、極左組織やオウムなどのカルトによる犯罪と、昨今の優等生の起こす何の前触れもない犯罪は、本来的には同根のものと考えられるのではないでしょうか。

 一方、国民一般の不安を大きくしている点に、こうした犯罪の標的が、一般人、それも女性や幼児など弱者に向かっている点もあげられます。かつての極左極右組織によるテロ行為では、政治家や財界の大物など、社会のエリート層が主に対象となっていました。当時は、社会の不満を代表して天誅を下すという大義名分によって名を売ろうという意識があったためにこういったエリート層が狙われていたわけです。しかし、現在ではこういった、売名行為の対象が変化し、社会的弱者への攻撃が増えてきています。犯罪者たちの中で、体制を揺るがすという意味では、エリート層への攻撃よりもむしろ社会的弱者に対する攻撃のほうがインパクトがあると思われている節があるのです。

 こういった、英雄主義、冒険主義の暴発に対して我々ができることは何でしょうか。暴力への欲求はある意味で人間の本性に根ざしたものでしょうから、これを完全に払拭することは難しいでしょう。となれば、こういった衝動を、暴発させないためにガス抜きをしてやる必要があると思われます。つまり、コントロールされた暴力発揮の場、それも大義名分が通り、青少年のヒロイズムを満足させる暴力発揮の場が必要です。このために、国政に対して死なない程度の暴力革命、疑似暴力革命とでもいうべき制度を導入しよう、というのが今回の提案の骨子です。


  1. 国政選挙の投票日の一週間間から前日までの間に、各選挙区の選挙管理委員会は未成年者を対象とする男女別の武闘大会(仮称:天下一武闘会)を開く。

  2. この武闘大会のルール(格闘技戦にするか、サバイバルゲーム形式にするか等の大枠から、実施上の詳細なルールまで全てを含む)については各選挙管理委員会で独自に定めるものとする。

  3. 大会において、男女それぞれ第一位、第二位、第三位までを決定することとする。

  4. 男女とも第三位者までに参政権を特別に認めることとする。この際、第一位の者には100票分、第二位の者には50票分、第三位の者には20票分の投票権を与えることとする。


御提案いただいた「首相殴打制度」も、我々の疑似暴力革命政策の一翼を担う素晴らしい制度であると思えます。少年による凶悪犯罪を減少させるための「首相殴打制度」と「天下一武闘会制度」の実現のため、国民の皆様の御理解と御支持をよろしくお願いいたします。
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