産業ロック製作所推薦図書

簡単に実現する日本の文字革命

成松 長正 著.
学盲説法シリーズ<2>
宮崎:著者, 1987.

寸評
この本ばっかりは、くだくだ説明するよりも、実際に見ていただいたほうが わかりがはやい。早速序文のところを御覧いただこう。

妙な表記法にお気づきになられただろうか。この妙な表記法こそが、著者の いう「文字革命」実現のための最大の武器なのだ。著者のいう、「文字革命」 とは、日本人を漢字の重圧から解放することに主眼が置かれている。そのため に、著者が提案する方法は次の2つ。

著者によると、

「新聞雑誌などの刊行物を、こんな表記法に統一するだけで、漢字はだんだん へり、最後はきえてなくなるというのが、本書の主張である。漢字もいっぺん になくなると当惑するが、ながい時間をかけて自然になくなるなら、国民もこ まらない。それもそんなにながいことではなく、10年で半減、20年で全滅する と予想する。」(p.4)
だそうだ。筆者は戦時中に、インドネシアでオランダ人に日本語を教えた経験 から思いついたという。確かに、上記の表記法の1番目の「単語ごとにわけ て」表記するというのは、ややこしい日本語の活用を外国人に教える時便利だ ろうと思われ、それなりに合理性がある。前掲の序文の中で、「させ・ましょ う」と単語の中にはいっている「・」や、「お-ともだち」の「-」などが、単 語をわける記号らしい。

しかし、「でこぼこがな」の根拠はかなり薄弱。


「本書のひらがなは上下でこぼこのふぞろいである。これはかながき単語を、 かたちでおぼえて、よみやすくするためである。ローマ字も上下ふぞろいので こぼこである。英文がよみやすい秘密はこのでこぼこにある。」(p.5)

「ローマ字のでこぼこはローマ字の生命である。ローマ字にでこぼこがなかっ たら今日のヨーロッパ文明はないといっても過言ではない。日本が表音文字へ の革命をのぞむかぎり、でこぼこがなは絶対に必要である。」(p.57)


英文が読みやすいのがでこぼこのせいだとは知らなかった。しかも、ローマ字 のでこぼこがなければヨーロッパ文明がなかったなんて!しかし、著者の「で こぼこがな」にかける意気込みはかなりのものである。この表記のために、著 者はわざわざ、外字作成でひらがなをつくったのである。


「かな文字もローマ字同様上下にでこぼこをつける必要がある。しかしそんな 活字はどこにもない。個人で作成すると、莫大な費用になる。そこで規格外の 外字作成が簡単なパソコンにしたのである。」(p.23)
この外字で作成したでこぼこがなが、「簡単に実現する日本の文字革命」全体 に使われているのだ!しかし、160ページを越える分量の本を、外字でつくっ たひらがなで書くという根性には全く頭が下がる。しかも、奥付によると著者 は大正2年生まれで、この本を執筆時は74歳なのである。よくパソコンで外字 を作れたものだ。さすが、陸軍士官学校卒だけのことはある。ひらがな一字一 字を変換しながら書いていったのだろうか。気が遠くなるような作業だ。

最後に、文例集から二つ文章を引用しておこう。著者は、文字革命開始から 20年で漢字が絶滅すると予想しているが、その実例として、

を掲げている。文例のモデルとなった文章は、昭和62年9月8日の新聞記事から 無作為に拝借したもので、そのモデルの文を各革命年の文章作法に則って書き 直したものが文例とされているのである。最終革命年の革命50年の文例では、 完全にローマ字表記になっている。

ここでは革命開始後1-2年の文例と、革命開始後30年の文例を引用し、この 拙文を終わることとする。



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