精神治療新報・精神新報



精神治療新報
74號 (明43.春)-77號 (明43.冬) 東京 : 精神研究會

精神新報
81號 (明44.冬)-89號 (大2.冬) 東京 : 精神研究會

 前回、前々回と明治大正期の催眠術師古屋鐵石の著作を紹介してきたが、今回も古屋氏率いる精神研究会の機関誌から、掲載写真をいくつか抜き出して紹介する。

精神治療新報
明治四拾參年春號(第七拾四號)
口絵

催眠者ろうそくを「バナゝ」と思ひ
將に食はんとする處

 催眠術師が和装で、催眠者が洋装で蝶ネクタイというのが時代があらわれていて良い。なんとなくサイレントのコメディ映画のポスター写真という雰囲気。

精神治療新報
明治四十三年秋號(第七拾六號)
口絵

實驗の眞景
術者催眠者に向て汝の身體は後に傾きて倒ると暗示したれば
其通となる處(術者會員龜谷慶喜智君)



術者被術者をして何等の感覺もなき深き催眠状態となしたる處
(術者會員安原正暉君)


p.2

 嗚 呼 面 白 哉
 精 神 之 研 究

字を知らぬ少年がプランセツトにて書きたる書

 三枚目の「字を知らぬ少年の書」が目を惹く。プランセットとは「こっくりさん」の原型といわれるもの。19世紀の中頃、フランスの心霊術師のPlanchettが、ハート型の板に二本の脚と一本の鉛筆を付けた道具を考案したところフランス全土で大流行。日本のこっくりさんと同じように、被術者がこのハート型の板に手をおいて、術者の質問に対して無意識的にメッセージを書き出すというもの。
http://www.mahkah.com/AlterWegundmehr/witchboard__hexenbrett.htmにプランセットの写真があった)

 ということは、上記の実験は鉛筆の代わりに筆を一本しこんで使ったということなのであろうか。プランセットの仕組みを見ると、たとえ書道の達人でもプランセットの板の上に手をおいてこのように見事な字を書くのは至難の技だと思うのだが。

精神治療新報
明治四十三年冬號(第七拾七號)
口絵

催眠術の實驗
催眠者(塵打)を薩摩琵琶と思ひ弾奏す
(清國上海尚智大學堂に於ての實驗)
實者會友 三浦南醒君

 「清国上海での実験」とあるが、背景がいかにも書き割りくさい。国内の写真館での撮影ではないかと思われる。以下の写真でも、背景が書き割りくさいものが多数ある。雜誌掲載のために撮り貯めしていたのではないだろうか。

精神新報
明治四十四年冬號(第八拾壱號)
口絵

精神研究會に於て催眠術を實驗する處

 これも写真館撮影くさい背景。森の絵のようである。中央右よりのヒゲを生やして帽子をかぶっているのが、親玉の古屋鐵石らしい。

精神新報
明治四十五年夏號(第八拾參號)
口絵

術者催眠者に向ひ汝は鬼であると暗示したるときに呈せる顏面(術者古屋鐵石)



術者催眠者に向ひ身體後に曲ると暗示したれば
其の通りとなりし處(術者會員岩野伊之助君)



催眠者の身體を強直状態となし其上に載りし處
(術者會員望月仙之助君)



催眠者自刄を以て斬込みたるを術者御酒の口にて受留めたる處
(術者會員戸張唯一郎君)

 一枚目の鬼の面相する少年が可笑しい。四枚目の写真は再び写真館風写真。これも森の写真。明治四十四年冬號と同じ背景か。

精神新報
明治四十五年秋號(第八拾四號)
口絵

催眠者の音樂と踊



催眠者の劍舞と手踊



催眠者の踊りと強直状態

 明治四十五年秋號はなかなかの豊作。一枚目は、白木みのるさん似の被術者の踊りが楽しい。彼は二枚目にも出演して土俵入り風の踊りを披露している。三枚目では左端の踊る被術者がたまらない。失礼ながら恐ろしいまでのアホヅラである。この三枚目の写真は、既に「精神治療新報 明治四十四年夏號(第七拾九號)」の口絵で使われている写真の使い回しである。

 精神研究会の幹部連なのであろうか、彼らが三枚ともに被術者の後ろでいかにも普通の記念写真のようにしかつめらしくおさまっている姿も可笑しい。

精神新報
大正元年冬號(第八拾五號)
口絵

催眠者上手に浪花節を語る(本會實驗記事參照)



八名一度に精神を集注し催眠者の表情を變換す(本會實驗記事參照)

 二枚とも背景が森の書き割り。撮り貯め写真の一部なのであろうか。それにしても、催眠術にかけてまで浪花節を語らせなくてもよかろうに、と思うのは私だけか。

精神新報
大正貳年春號(第八拾六號)
口絵

催眠者の眼を細くし今正に閉ぢんとする處にて胸上の球を眺めさせ催眠せしむ



八歳と五歳と二歳との三少女を一度に催眠せしむ



手の先のみを催眠せしめ手甲に大なる灸を點ぜしに何等の感もせず

二枚目の女の子の頭の大きなリボンがかわいい。三枚目の被術者の顏が、サッカー解説者の木村和司氏に似ている気がする。

精神新報
大正貳年夏號(第八拾七號)
口絵

催眠者を強直状態となし圓椅子を身體の中央にのみ置きて支へ水平を保たしめたり

 またも同じ書き割り背景の写真。古屋鐵石氏も洋装で出演。帽子にマントという出で立ち。

精神新報
大正貳年秋號(第八拾八號)
口絵

精神研究會に於て催眠者に音樂の合奏をなさしめたる處

 中央のアコーディオンを弾いているのは、明治四十五年秋號の三枚目でアホヅラをしていた男であろうか。この写真でもかなりのイイ顏だ。

精神新報
大正貳年冬號(第八拾九號)
口絵

二名の催眠者の兩手は各強直し頭と頭とは附着して離れず



正規状態に在る犬及び天竺鼠



上段の犬と天竺鼠とを一度に深き催眠状態となしたり

一枚目の少年たちの写真だが、右端の男の子がイイ。催眠術の実験には目もくれず、一心にカメラを睨んでいる。ちょっととぼけた表情がたまらない。催眠術にかかる犬と天竺鼠という実験写真も驚き。ちなみに天竺鼠とはモルモットの事。犬の種類については詳しくないので特定はできないが、写真でみる限り和犬でなく西洋種のようだ。大正2年ごろだと西洋種の犬もペットとしてポピュラーになっていたのであろうか。


目次へ戻る

Industrial Rock & Roll Productions 2002
s-muraka@t3.rim.or.jp