ニセ首相の顔新しい総合デフレ対策について

新しい総合デフレ対策について


 需要が冷え込む中、デフレーション対策が急務となっておりますが、政府は2002年10月30日に「改革加速のための総合対応策」(いわゆる「総合デフレ対策」)を発表しました。これは、わが国のデフレへの対応の力強い第一歩となるべきものです。しかし、これはあくまで第一歩であって、世界中を覆うデフレ傾向の中、更なる対策が必要とされていることは言うまでもありません。

 では、デフレ対策の二の矢はどう放てばよいのか。残念ながら、デフレへの決定的といえる対策は今のところ見つかっていません。現今の未曾有のデフレ状態にたいして、政界・学界に限らず様々な対処法が叫ばれていますが、特効薬といえる決定的な対策はまだ発見されていないのです。第二次大戦終了の後の国際社会は、深刻なデフレに苦しむことはありませんでした。この点に、これまでの各国の対応が、危機感を欠いていた原因があったと言えるでしょう。

 デフレへの次なる対策を見出す為には、我々にはデフレに対処する経験の蓄積が無いという事実をまず直視し、その上で視野を広げ歴史的・理論的な国際経済の探求を通して、その対処法の発見に努めなければなりません。

<理論的な面からの考察>

 今日の一般的な経済学理論では、貨幣供給量とインフレショーン・デフレーションの関係について、次のような説明をしています。

  1. 中央銀行が、将来的に貨幣供給を増やすとアナウンスする。

  2. 国民は、将来インフレーションが発生すると予想する(予想インフレ率の上昇)。

  3. 予想インフレ率の上昇は名目利子率を引き上げる(「フィッシャー効果」による)。

  4. 名目利子率が上昇すると,現在の貨幣需要が減少する。

  5. 物価上昇が生じる
つまり、多数の国民が「将来のインフレ率上昇」を予想することによって、現在の物価が上昇するということになります。文中にある「フィッシャー効果」ですが、簡単に説明すると次のようなものです。

銀行などが支払う利子率のことを「名目利子率」、預金者の購買力の増加率を「実質利子率」と呼ぶとする。

名目利子率をi、実質利子率をrとし、インフレ率をπとすると、

       i=r+π

が成り立つ。
この「i=r+π」は特に「フィッシャーの方程式」と呼ばれています。この方程式によれば、インフレ率の1%の上昇は名目利子率の1%の上昇を招く、ということになります。つまり、インフレ率の変化と名目利子率の変化が1対1の関係にある、ということを示しているのです。この1対1の関係を「フィッシャー効果」と呼んでいます。インフレ率は、経済情勢によって日々変動のあるものですから、人々が利子の発生する経済活動を行う場合に、長期にわたるインフレ率の変動をあらかじめ予想する筈です。その意味で、フィッシャー効果におけるインフレ率は予想インフレ率と同じと考えられます。つまり、「インフレ率の変化と名目利子率の変化が1対1の関係にある」とは「予想インフレ率の上昇は名目利子率を引き上げる」と言い換えることが可能なのです。

 さて、利子率のrと予想インフレ率のπの和とは何でしょうか。これは、お金を手もとにおいた場合と、投資にまわした場合を比較すると分かりやすいと思います。インフレ率が常に正であると仮定します。まず、投資にまわさずに手もとにお金を置いていた場合を考えてみましょう。インフレが進行すると実質の購買力は目減りしていきます。さらに、投資していれば貰える筈の利子がつきません。次に、投資にまわした場合をみてみましょう。この場合も、お金を手元に置いておいた場合と同様にインフレによって購買力の減少は起こりますが、投資によって生じた利子分は新たな収入となってインフレによる購買力減少を補うことができるでしょう。つまり、投資にまわさなかった場合は投資にまわした場合に比べて「r+π」分だけ損をすることになります。これを言い換えれば「r+π」とは「貨幣を投資せずに保有する事に対するコスト」と考えることができます。

ここで現在のわが国の経済状態を見てみましょう。

  1. 将来のインフレ率の減少(デフレの進行)が予想される。

  2. 予想インフレ率が減少すると現在の名目利子率(r+π:貨幣保有に対するコスト)が減少する。

  3. 名目利子率が下がると現在の貨幣需要が上昇する。

  4. 現在の物価水準が下がる。

  5. デフレの更なる進行(1.に戻る)。
金融緩和政策により、貨幣供給自体は増加傾向にありますが、銀行の業績悪化などの金融システムへの不安、予想を超える需要の冷え込みなどのために予想インフレ率は一向に上向きません。このデフレ傾向の持続による予想インフレ率(π)の低下のために貨幣への需要が高止まりの状態になっているのです。ゼロ金利政策により、預貯金のメリットは確かに下がっているとはいえ、デフレ傾向下ではお金を寝かせば寝かすほど通貨の購買力は上昇していきます。つまり、貨幣保有に対するコストがコストでなく、デフレの分だけ逆の意味を持っているのです。であれば、例え金利がゼロであっても余分な金を消費に回さずに手元にできるだけ残そうとするのは人情でありましょう。

 こう見てくると、デフレ打開の鍵は「貨幣保有に対するコスト」にあることが了解されます。これまでのデフレ対策では、主に公共投資などを通じて需要を高め消費を煽る方法を探ってきましたが、ここで「貨幣保有に対するコスト」に目を向けコペルニクス的転回を図らねばなりません。「i=r+π」というフィッシャーの方程式の右辺に新たな項目を付け加えて「貨幣保有に対するコスト」をプラスに転じさせ、デフレスパイラルという悪魔のサイクルを断ち切らなければならないのです。

先ず最初に我々が考えた新しい対策は、通貨の保有に対し物理的な障害を付与する方法でした。例えば次のようなものです。 しかし、検討の結果、これらの方法は残念ながら有効性に疑問符がつけられました。クレジットカードを代表とする直接通貨を使用しない支払方法が発達した現在、上記の物理的コスト付加案はあまり意味のあるものとは言えません。そこで、このような奇抜なアイデアに頼らず、正道から貨幣の保有コストの上昇を実現する方策を策定いたしました。概略は以下の通りです。 日銀による交換レートをxとすると、上記の方策によりフィッシャーの方程式を

    「i=r+π+x」

と書き換えることができます。

 世界的なデフレ傾向の中、これまで伝統的に用いられてきた金融政策(通貨供給量の増加)の手法では予想インフレ率をあげることは難しくなってきています。それに対し上記の方法では、直接通貨の価値を変動させてしまう訳ですから、効果はより確実です。デフレ経済下では、予想インフレ率:πがマイナスになることで、通貨への需要が高まりすぎて消費が冷え込むのですが、このπのマイナス分をカバーするように日銀がレートを変更することで、貨幣の保有コストを上げることができます。人々は、デフレ経済下で日銀がデフレを押さえるようにレートを設定すると予想するでありましょうから、通貨への需要が下がり、投資や消費に向かうようになる筈です。


<歴史的な面からの考察>

 ここまでは、主に理論面からデフレ対策を探りましたが、続いて歴史的な探求に目を向けてみましょう。ケインズの登場以降、経済学理論に基づいた経済施策を各国が導入して大きな成果をあげてきましたが、近年になって国家による経済施策が思い通りの成果をあげることが難しくなってきています。このような状況下では、思い切って理論から離れて過去の経験に学ぶことも、また必要なことでありましょう。

 戦後の各国政府にデフレに直面した経験がないことについては前述しましたが、歴史を紐解くとデフレ退治の成功例を見出すことができます。ここではその成功例に習ってデフレへの対処策を考えることとしましょう。近代史の中で最もドラスティックなデフレ問題の解決は、第一次大戦後のドイツにみることができます。当時の対ドルのドイツマルクのレートを見ると、

1ドル=4.2マルク(1914年7月)
1ドル=493.2マルク(1922年7月)
1ドル=17,972マルク(1923年1月)
1ドル=98,860,000マルク(1923年9月)
1ドル=4,200,000,000,000マルク(1923年11月)

と、恐ろしいまでのデフレ克服ぶりです。当時のドイツでは、一体どのような施策をもってこのような物価上昇を可能としたのでしょうか。

 著名な経済学者のJohn Maynard Keynesは「The economic consequences of the peace」 (London : Macmillan , 1919)でその詳細をリポートしていますが、それによれば、このデフレ克服はドイツ一国だけの力で成し遂げられたものでないことがよく分かります。イギリス・フランスを中心とするヴェルサイユ国際会議に参加した国々の国際協調がなければ実現は不可能だったでしょう。ヴェルサイユ条約で有名なのは、ドイツに課せられた巨額の賠償金(総額は1921年のロンドン会議で定められた1320億金マルク)ですが、それだけではありません。ヴェルサイユ条約では、ドイツの植民地・炭田・鉄道・船舶の接収なども決められました。このような様々な国際協力の下、徹底的なデフレ抑制策を行うことによって、この偉大な結果がもたらされたのです。

 デフレ抑制策が効果を見せ始めると、ドーズ案(1924年)、ヤング案(1929年)と、対デフレ国際協力活動はしだいに縮小し、最終的にはローザンヌ会議(1932年)の際に、デフレの収束が認められ、ロンドン会議で定められた賠償金1320億金マルクは30億金マルクまで引き下げられ、この活動は成功裡に終わりを迎えることになったのです。

 現在、我が国でも様々なデフレ抑制策が考えられていますが、ほとんどの策は、我が国一国での対処を想定しているようです。ドイツの例は、頑固なデフレには一国での単独対処には限界があり、国際的な協力下にデフレ抑制策を行うことの必要性を示していると言えましょう。とはいうものの、我が国の経済情勢ではこれから国際会議を開いて方策を決定するというような時間の猶予は残されていません。事は一刻を争うのです。それでは、どのようにすればよいのか。我々の考える最善の策は次の通りです。

1932年のローザンヌ会議で放棄されたドイツの賠償金1290億金マルクの一方的な引き受け宣言を行い、現在の円レートに換算した上で第一次世界大戦の連合国側への支払いを開始する
 この施策については、既に1920年代に有効性が確認されていますから、効果は確実です。緊急のデフレ対策ということでは、まず第一に実行すべきものでありましょう。

 ここでとりあげたドイツのデフレ策以外にも、歴史にはデフレ抑制策のヒントがたくさん埋もれています。その中でも、史上最もスケールの大きなデフレ抑制策は大航海時代のスペインによる「新大陸の発見」ではないでしょうか。新大陸で発見された金をはじめとする貴金属類のスペイン国内への流入は、完璧にデフレを抑え込みました。緊急策としてのドイツ賠償金の引き受けが一段落した後に、より根源的で効果の大きいデフレ対策として、新大陸発見の為の一大探検艦隊を組織する予定です。

 いわゆる「失われた10年」と呼ばれる長い混迷状態から我が国を救い、希望にあふれた未来をもたらす、「新円(毎月レート変更式)切替」「ドイツ賠償金引受」「新大陸発見」という新総合デフレ対策の導入に、国民の皆様の御理解と御支持をよろしくお願いいたします。



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