ニセ首相の顔厚生労働白書「人口減少社会を迎えて」について

厚生労働白書「人口減少社会を迎えて」について


  先日発行された平成18年版厚生労働白書では、「人口減少社会を迎えて 」と銘打ち、わが国の抱える深刻な問題「少子化問題」の解決法を模索しております。これに関しては、各所で話題になっておりますが、2006年9月8日の読売新聞夕刊1面の記事の一部を紹介いたしましょう。

少子化要因に働き過ぎ 25〜39歳「週60時間以上」20%超 厚労白書

 厚生労働省は8日、2006年版厚生労働白書を公表した。白書は、少子化の要因の一つに、30代を中心とした育児世代の長時間労働を挙げ、労働者の仕事と生活の調和を実現する働き方の見直しは企業の社会的責任であると強調した。国民に対しても、長時間労働を生む原因となる「24時間サービス」「即日配達」など、利便性を際限なく求める姿勢を見直すよう訴えている。

 白書によると、25〜39歳で「週60時間以上」の長時間労働をしている人は、2004年には20%を超え、10年前より4ポイント前後増えた。仕事以外の時間が足りない状況は、「少子化の一つの要因で、長期的にみて社会の活力を低下させる」と分析。労働者が仕事に偏った生活から解放され、仕事と家庭の調和がとれた状況「ワークライフバランス」の実現を求めている。
厚生労働白書の該当するページを引用しておきましょう。

例えば、平均的な帰宅時間を見ると、正社員の夫の5割は夜8時以降に帰宅してお り、このような場合は子どもとともに食卓を囲むことは困難である。また、正社員の 割合が多い男性の平日家事時間は少なく、職場で過ごす時間の長さが、家族との団ら んや家事育児、地域での活動などを妨げていると言え、職場で過ごす時間が長い労働 者は、個人のライフスタイルにあわせた職場での過ごし方(働き方)ができなくなっ ていると考えられる。(中略)

特に、子育ての期間については、長時間労働を避けることができる労働時間管理が 強く望まれる。その際には、次世代育成支援の観点から育児休業の取得だけでなく短 時間勤務などを可能とする仕組みの整備促進、年次有給休暇の取得促進、所定外労働 の削減などの対応策を講じていくことが重要である。
(p.195)

 なお、企業のこうした行動を規定しているものの一つとして、多様で高度なサービ スを限りなく要求し続ける消費者の存在があることも忘れてはならない。24時間サー ビス、即日配達などに代表される利便性を徹底追求したサービスを要求することや、 そのために支払っている社会的なコスト・代償としての働き方について、国民一人一 人が消費者の目線だけでなく、人間としての在り方に思いをいたし、そこに働く労働 者やその家族、友人・仲間の目線で見直してみることも必要ではないだろうか。
(p.197-198)
 読売新聞にあったように、白書では子育て世代の長時間労働が少子化の原因の一つとしています。確かに「平均的な帰宅時間を見ると、正社員の夫の5割は夜8時以降に帰宅」という状態では、夫婦が協同して子供を育てるのは難しそうです。特に都市部では共稼ぎ夫婦がますます増加しており、可処分時間の少なさはより深刻な問題といえるでしょう。

 しかし、子育てに優しい社会を作るのは、簡単なことではありません。白書で指摘があったように、長時間労働から逃れられない理由の一つに、「消費者の要求」という錦の御旗があります。ようやく上向いてきたわが国の経済ですが、激しい企業間競争の中では、この「消費者の要求」に応えずにいることはできません。一方、長期的な構造不況からの脱出の陰には、企業のリストラなど合理化による収益の改善がありました。多少景気は持ち直したとはいえ、デフレ下の悪夢の記憶がある限りは企業も大幅に雇用を増やす事はないでしょう。より高度化する消費者の要求へ、人員を増やさずに対応しようとするとは、労働時間に関して言えば悪化することはあれど好転することは考えられないということになります。働き盛りの年代にかかる負担は重くなるばかりです。

 この負担は、子育ての面では少子化という形で現われてきますが、他にも大きな問題を引き起こすでしょう。なにより、この年代の可処分時間の少なさが、消費活動の減退を招いているのです。仕事に追われるあまり、平日はおろか休日もロクにリクレーションに時間を割けないとなれば、内需に与える負のインパクトも相当なものになるはずです。これでは、せっかく回復基調の景気の下支えもおぼつかないでしょう。少子化に関しても、景気回復に関しても、30代を中心とした育児世代の可処分時間を増やす事が肝要なのです。

 企業は、その本質として利益の追求を第一とします。長期的に見れば、子育て世代に時間の余裕を与えることは、企業にとってもプラスではありますが、短期的な利益をとれば、そう簡単にこれまでの企業文化・慣習を変えることも難しいでしょう。となれば、この問題の解決にはどうしても企業外部からの働きかけ、つまり行政・立法面での対策が必要だと思われます。

 それでは、どうすればよいか。企業にもあまり負担をかけずに、働き盛り世代にゆとりある生活を提供する方法はあるのか。私たちは、その工夫を江戸時代の人々の暮らしの中に見つけたのです。

 江戸時代の時刻制度をご存じでしょうか。当時は現在とは大きく異なる制度をとっていました。以下、簡単に説明します。日の出を明け六つ、日没を暮れ六つとし、昼間・夜間をそれぞれ六等分していました。実際の数え方は次の通りです。

現在の時刻当時の数え方
午前6時明け六つ
午前8時五つ
午前10時四つ
正午九つ
午後2時八つ
午後4時七つ
午後6時暮れ六つ
午後8時五つ
午後10時四つ
午前零時九つ
午前2時八つ
午前4時七つ


 この時間の図り方でミソなのは、日の出と日没の時間を基準としている点です。上記は春分の日、もしくは秋分の日の時期の例ですが、夏至の時であれば昼が長くなり、冬至の際は夜が長くなります。つまり、昼と夜で同じ時間の呼び名であっても、実際の長さは時期によって異なるのです。春分の日・秋分の日であれば、昼と夜で同じ長さなので、上に書いた通り、朝の五つから四つの間も、夜の五つから四つの間も、約2時間です。ところが、夏至・冬至の時期では、大きな違いが出てきます。

明石天文台によると、2006年は、

 日の出日の入
夏至(6/22)4:4719:17
冬至(12/22)7:0316:54


となっています。これを当てはめると、夏至では昼の長さが14時間30分、夜の長さが9時間30分、冬至では、昼が9時間51分、夜が14時間9分ですから、朝の五つから四つの間と、夜の五つから四つの間の長さは下記の表の通りです。

 
夏至145分95分
冬至98.5分141.5分


なんと、夏至では昼と夜とで50分も異なっていたのです。

 私たちが江戸の時刻制度で注目したのは、時間の一単位の長さを一日のうちに昼と夜とで変えてしまう点です。このような柔軟性のある時刻制度が江戸の文化をささえていたのではないか。現在の私たちは、不変の時間単位の中での生活に慣れきっていますが、そうでない世界がかつて日本には存在していました。今こそ私たちは、先人の知恵に学ぶべきなのです。

 今回、提案する時刻制度改革の骨子は以下の通り。


  1. 一年のうち、冬至の日の出、日の入時間をその年の時刻の基準とする(冬至の決定は国立天文台の計算によるものとする)。

  2. 上記の日の出の時間を「午前7時」、日の入の時間を「午後7時」とし、昼の時間と夜の時間でそれぞれ12等分する。

 上の明石天文台の例をみると、冬至では、昼が9時間51分間、夜が14時間9分間ですから、昼の一時間と夜の一時間を、現在の時刻制度(分)で計ると、

49.25分 70.75分


となります。昼と夜で、同じ一時間でも約20分ほど長さが異なっています。この時間制度の結果、どのように状況が改善されるのか。次の表をご覧下さい。

新しい時刻現在の時刻
7:00PM5:00PM
8:00PM6:10PM
9:00PM7:20PM
10:00PM8:30PM
11:00PM9:40PM
0:00AM10:50AM
1:00AM0:00AM
2:00AM1:10AM
3:00AM2:20AM
4:00AM3:30AM
5:00AM4:40AM
6:00AM5:50AM
7:00AM7:00AM


上掲の白書では、「平均的な帰宅時間を見ると、正社員の夫の5割は夜8時以降に帰宅」という記述がありましたが、新しい時刻制度の夜9時に帰宅した場合、旧時刻では、7時20分の帰宅。ちょうと夕食で家族団らんの時間です。この時間の余裕があれば、夫婦そろって子育てをすることも容易になります。また、父親がより多く子どもたちとコミュニケーションをとる機会もとれるようになるでしょう。そして、この余裕は子育てだけに向けられるだけでなく、会社帰りにちょっと豪華な夕食を取ったり、映画を見たりといった新たな消費行動につながるはずです。

 時刻制度を変えるメリットはこれだけではありません。この改革では、企業側で労務管理のやり方を変更する必要はないのです。変わるのは時刻の長さ自体。これまで通りの残業時間のままで就労者に時間の余裕を与えることができます。

 一日の長さは人知によって変えることはできません。しかし、その一日の時間の使い方はいくらでも工夫の仕様があるのです。わが国の将来のため、時刻制度の改革について国民の皆様のご理解とご支持をお願いいたします。



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